■「第12回東京国際映画祭」オープニング・レポート
(10月30日(土)/渋谷Bunkamuraほかにて)









| 特別招待作品 | コンペティション | シネマ・プリズム | ニッポン・シネマ・マスターズ | ニッポン・シネマ・ナウ |




世界中から選りすぐりの秀作が東京・渋谷へ集結する「第12回東京国際映画祭」が、10月30日(土)に華々しく開幕した。


開催初日午前6時―。

毎年、徹夜組を含めたオープニング作品目当ての観客と当日券を求める人たちで長蛇の列をなす光景が、風物詩のごとく見られたものだが、今年はまったく様子が違う。オーチャードホール前は凍りついたように静まり返り、長蛇の列はおろか、ひとっ子ひとりいやしない。それもそのはず、今年のオープニング作品は整理券方式に切り替えられたため、指定された集合時間にくれば整理番号順に入場できるようになったのである。当日券も、同じように集合時間までにくれば、並ぶことなく整理番号順に買うことができる。ちなみに、クロージングの『ターザン』も整理券を配布するとのことなので、当日券ねらいの方は、今年は少しばかりラクになるかもしれない(もっとも、当日券発行枚数は未定で、今年はなおかつ、前売りも5分間で売り切れるほどの人気を誇るフィル・コリンズの来日が予定されていることもあって、注意を要するが……。)




午後2時00分オープニング・セレモニー開始―。

今年のメイン司会は朝岡聡氏(ちなみに昨年はフリーに転身したばかりの松宮一彦氏だった)。石田敏彦・映画祭実行委員会委員長の挨拶に始まり、代理人による深谷隆司・通産大臣の祝辞、石原慎太郎・東京都知事の挨拶、代理人による小倉基・渋谷区長の挨拶。続いて27分頃より、映画祭の企画・プログラムがスクリーン上で紹介され、その後、東京国際映画祭実行委員会ゼネラル・プロデューサーより、コンペティション部門の紹介が行われた。

ここでの注目は石原慎太郎氏。小説家や政治家としてばかりではなく、映画人としても知られているが、実弟の故・石原裕次郎氏のデビュー作『太陽の季節』('31)の原作、『日蝕の夏』('31)や『危険な英雄』('32)などの主演作も多い。自身が監督した作品はこれまで2本で、『二十歳の恋』('62)は、フランスのフランソワ・トリュフォー監督ら5ヶ国の新鋭監督が集まって製作されたオムニバス。実際に起きた女子高生殺害事件をモチーフにした作品で、石原氏が監督と脚本を担当している。




■石原慎太郎氏のコメント(一部省略) 「私は今でも映画は好きです。でも、ここのところ映画は振るわないね。日本の映画も(アニメ以外は)影が薄くなってきたし、イギリス映画もフランス映画も影を潜めて、今ではハリウッドだけになってしまった。いろんな種類の映画をつくることは、世界の文化のために望ましいと思っています。みなさんもっと映画を相次いで作りましょうよ。映画というのは、テレビの画面では味わえないビジュアルな迫力が楽しみで、期待もしています。この映画祭も、本当は渋谷みたいなごみごみしたところじゃなくて、三多摩とかわりと空気の良いところでやった方がいいと私は思っていて、小倉さんへも先ほど陳情したところなんですが。まぁ、もっとビッグなところで来年からやろうじゃないですか。芸術家として知事として、東京国際映画祭のためにみんなで知恵を出し合って、日本映画も外国映画も育てていきたいと思っています」



そして、いよいよ午後3時15分オープニング作品上映開始―。

リュック・ベッソン、フェイ・ダナウェイ、デズモンド・ハリントン、エリック・セラの順番にゲストが舞台へ登場。ややぎこちない質疑にもリラックスしたムードで答え、10分ほどの舞台挨拶の後、『ジャンヌ・ダルク』の上映となった(以下、舞台挨拶での監督ほかゲストのコメントを要約してお伝えする)。


■リュック・ベッソン監督

(ヘアスタイルについて)

「こんにちは。朝起きると猫を頭の上に乗っけるんです。そうすると自然にこうしてくれるんです」

(今回の作品を作った動機について)

「この質問を僕が答えるんですか? だってまだ皆さん何もご覧になっていないのに。みなさんにご覧になっていただけたら、僕がなぜこの作品を作ったかがおわかりいただけるかと思います。何を見てくださいということは事前に申し上げたくないので、今日はちょっと内緒にしておきます。この作品にはいろいろ展開があり、観客に参加していただくような作品になっています。もしもご質問があれば、ご覧になっていただいた後で、みんなでバーにでも行って話し合いましょう」




■フェイ・ダナウェイ

「今回の映画に参加できてたいへん嬉しく思っています。特に、この映画は歴史的な物語を扱っているということで、私も思い入れが強いです。リュック・ベッソン監督は尊敬するとても素晴らしい監督で、彼は今回、本当に情熱を持って、そして、とても新しい感覚でこの作品を作りあげてくれました。この作品の素晴らしい点は、いろいろ疑問点を投げかけてくれるというところです。感動的なこととか、歴史上のこと、戦争についての疑問も投げかけてくれます。ですからおそらくみなさんも、(私と同じように)作品を通じてたいへん考えさせられると思います」




■デズモンド・ハリントン

「今日はどうもありがとうございます。僕は、この作品に出演できてたいへん楽しかったです。ですから、みなさんもこの作品をご覧になって、楽しんでいただくことを願っています。多くの俳優さんと共演できてとても勉強にもなりました。今日は本当にこんなにたくさん方が来てくれてとても嬉しく思います。どうぞじっくりご覧くださいませ」




■エリック・セラ

「リュック・ベッソン監督とは、これまでいろいろな仕事をさせていただきましたが、今回の作品は今までのものとはちょっと違っています。でも、とても楽しんで作曲することができました。(音楽について)もっとも難しかったのは、シンフォニックな、オーケストラを使うような曲が求められていたという点です。この作品には、2時間以上もの音楽が含まれていますが、たいへん自分では満足しています。でも、最終的に評価を下すのは観客の皆様です」








 
→冒頭に戻る