■「第12回東京国際映画祭」総括レポート
(10月30日(土)〜11月7日(日)/渋谷Bunkamuraほかにて)









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PHOTO BY H.AIKAWA



10月30日(土)から渋谷で開催されていた「第12回東京国際映画祭」及び協賛企画(「QFRONT 東京国際ファンタスティック映画祭'99」「カネボウ女性映画週間」「シネマプリズム/ビデオ・プログラム」)を含む全日程が、11月7日(日)のコンペティション授賞式とクロージング・セレモニー、クロージング作品『ターザン』の上映と、その後行われたフィル・コリンズのプレミア・ライブをもって終了し、幕を閉じた。





例年同様、大変な盛り上がりをみせたのは、オープニング作品『ジャンヌ・ダルク』を筆頭とする、一連の特別招待作品とその舞台挨拶。滅多に会うことの出来ない俳優や監督たちと同じ会場にいるというだけで、映画ファンは興奮の色を隠せない様子だった。特に、『ジャンヌ・ダルク』のリュック・ベッソン監督、フェイ・ダナウェイの一行や、外国からの観客も多く見受けられ、着ぐるみゴジラも登場した『ゴジラ2000 ― ミレニアム ― 』、前評判の高かった韓国娯楽大作、『シュリ』のカン・ジェギュ監督と主演俳優ハン・ソッキュへの拍手には目を見張るものがあり、『シュリ』の上映の際には、渋谷公会堂に詰めかけた1,500人余りの人々が、会場に入り切らないという事態が起こり、急遽、翌日の同会場での上映が決定されるなど、波乱の一幕もあった。

そして、他の映画祭では、まず体験することができないと思われる最終日のライブ・イベント。作品上映後の会場は、フィル・コリンズが舞台に登場するや否やコンサート・ムード一色に。中盤には、観客のほとんどが立ち上がったり、踊り出したり……。アンコールを含む約1時間、彼の音楽を大いに堪能していた。


コンペティション部門は、去年に比べ、エンターテイメント性が強いものは少なく、その分、じっくりと観せる作品が多かったように感じられた。東京グランプリと、新人監督を支援するために設けられた東京ゴールド賞(賞金1,000万円)がどの作品に授与されるのか、賞の行方に注目が集まったが、この2つの賞と、それより1日早い6日に発表されていたアジア賞(コンペティション、シネマプリズム、ニッポン・シネマ・ナウの各部門で上映されたアジア映画15本の中から選出される)が、審査員満場一致で、17歳の少女の前向きに生きる姿を描いた台湾の作品、『ダークネス&ライト』に授与された。授賞式では、ヒロインを演じたリー・カンイが、都合のために帰国したチャン・ツォーチ監督に代わって喜びの言葉を述べた。


全体の上映本数もやや少なめで、規模の点では昨年より縮小される形となった同映画祭だが、観客動員数は、協賛企画も含めて約4,500人増(昨年の協賛企画「英国映画祭」「インターナショナル・フラワー・アレンジメント・フェア」を除く)。


この結果から、「成功」という2文字が見えてくるように思うのだが、去年と比較したコンペティション部門の不作感(もちろん、『ルナ・パパ』や『アローン 〜ひとり〜』などの素晴しい作品もいくつかみられたのだが)と、それと対照的なシネマプリズム部門の充実ぶりとの落差を感じずにはいられなかった。と同時に、開催国である我が国の作品が、いずれの賞も受賞できなかったという事実には、やはり、非常にやるせない思いを禁じ得なかった。とはいえ、さまざまな国の映画を居ながらにして短期間で体験できるこの機会 ― そして何よりも、映画という表現の未来を模索する「磁場」に自分が含まれるこの幸せを、来年へのさらなる期待へとつなげてしまうのである。




「第13回東京国際映画映画祭」は、2000年10月28日(土)から11月5日(日)までの9日間、場所は同じ、渋谷Bunkamuraを中心に開催される予定である。









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