『チューブ・テイルズ』/"THE TUBE TALES"
2000年8月5日よりシネクイントにて公開

1999年/イギリス/1時間29分/ヴィスタサイズ/提供:テレビ東京 テレビ大阪 アミューズ/配給:アミューズ/ロンドン映画祭プレミア上映作品
(C)1999 BRITISH SKY BROADCASTING LIMITED

◇プロデューサー:リチャード・ジョブソン ◇共同製作者:トニー・トンプソン ◇撮影監督:スー・ギブソン、デヴィッド・ジョンソン、ブライアン・トゥファノ ◇編集:ニーヴン・ホウイ、リズ・グリーン ◇プロダクションデザイン:イヴ・マヴラキス ◇キャスティングディレクター:サラ・クロウ ◇コスチュームデザイナー:ヴェリティ・ホークス ◇サウンドミキサー:ジム・グリーンホーン、シモン・ヘイズ ◇アソシエイトプロデューサー:スザ・ホーヴァット ◇ラインプロデューサー:クリス・ウィールドン




| 解説 | 『チューブ・テイルズ』製作ノート | ストーリー1〜3 | ストーリー4〜6 | ストーリー7〜9 |
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【解説】

ロンドンで全く新しい発想の映画が生まれた。 ロンドンの地下鉄“チューブ”をテーマに 9人のクリエイターが作り上げたクールなチェーン・ストーリー。 疾走するロンドン“アンダーグラウンド”。乗り遅れるな!


『トレインスポッティング』や『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』など、ポップな大ヒット作を送り続ける“映画の発信地”イギリスから、これまでなかった新しい発想の新作が誕生した。舞台は“チューブ”の愛称で親しまれているロンドンの地下を縦横無尽に走る地下鉄。その地下鉄をモチーフに9つのユニークな物語を、自然な流れで見せきるチューン・ストーリー。ロンドン生活には欠かせない地下鉄を舞台に、個性的でクレイジーな人間模様が交錯する。笑いがあり、涙あり、夢あり、ちょっとHな話まで。とびきりの若い才能と豪華なキャストで、ロンドン“アンダーグラウンド”が、クールに全力疾走する!

ロンドンのカルチャー・ライフに欠かせない週刊誌「タイム・アウト」で募集した物語をもとに組み立てられたこの作品。なんと、3000通以上の応募が寄せられたが、その中から9人のクリエイターたちが自分たちの好きな話を選び、全体を組み立てる。

とにかく、自由な発想の映画を作ろう。そんなコンセプトをもとに、製作者リチャード・ジョブソンは新人監督や演出経験のない俳優たちにも参加を呼びかけた。その結果、今、最も映画界で人気のある若手俳優、ユアン・マクレガーとジュード・ロウも、監督として参加。この作品がふたりの初監督作品となった。「地下鉄の映画なんて、最初はバカげていると思ったよ」とマクレガー。一方のロウは「地下鉄はあまり映画にでてこないが、これで変わるといいね」。美しい女性とのファンタジーを描くマクレガーの『ボーン』、老人と小鳥の出会いが感動的なロウの『手の中の小鳥』。ともに演技を離れたふたりの心の素顔をのぞくことができる。

他にもユニークな人物たちが登場する。憧れの女性のナンパに失敗するいけすかない男。犯罪を監視する男たちの視線に惑わされるストリート・キッズ。セクシーな女性のボディにとまどう中年男。車内に波紋を投げかける魅力的な女性。父と一緒に思わぬ事件を目撃する少年。迷子になって不思議の国をさまよう少女。奪ったブリーフケースから大金を手にするカップル。ここで描かれるのはふつうの観光映画には登場しない素顔のロンドンだ。猥雑で、ダーティなのに、愛すべき人間臭さがある。スタイリッシュな映像と音楽から、ロンドンの活気が伝わる構成になっている。

クリエイターとしてはマクレガーやロウ以外にも、今後の英国映画界を背負う新しい才能が積極的に起用され、『ロスト・イン・スペース』のスティーヴン・ホスキンス、『HEART』のチャールズ・マクドゥガル、『フェリシアの旅』の名演が記憶に新しい男優ボブ・ホプキンス等が参加。

俳優陣も豪華で個性的なメンバーがズラリと揃った。大ヒット作『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』のレイチェル・ワイズ、『ニル・バイ・マウス』の売れっ子レイ・ウィンストン、『トレインスポッティング』のケリー・マクドナルド、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のデクスター・フレッチャーとジェイソン・フレミング。 撮影スタッフには『トレインスポッティング』のブライアン・トゥファノや『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のニーヴン・ホウイなどもクレジットされ、新しい世代のための切れ味のいいカメラワークを見せている。

1999年のロンドン・フィルム・フェスティバルでプレミア上映され、ふだんは手きびしい評で知られる<ヴァラエティ>も「クレバーなアイディアの勝利。新しい才能が発見できる作品」と賛辞を送っている。



 




【製作ノート】

■雑誌「タイム・アウト」に寄せられた地下鉄をめぐる3000のアイディア

ロンドンを走る地下鉄。この街の生活には、なくてはならない乗物。そんなロンドン名物ともいえるアンダーグラウンドを舞台にしたユニークな映画製作のため、ウィークリー・カルチャー誌「タイム・アウト」で、地下鉄を舞台にした物語のアイディアを募集した。このコンテストには、なんと3000を超える応募があった。その中から、それぞれの監督が自分のお気に入りのアイディアを選び、1本の映画として作り上げた。「ロンドンといえば、ロンドン塔みたいに観光名所ばかりを映したがる。でも、この街特有のスラム街やタフガイなどを描くことで、ロンドンにしかない生活をとらえたかった」と語るのは、監督として参加した俳優のボブ・ホスキンス。同じく俳優ながらも監督として参加のジュード・ロウは「映画にあまり地下鉄が出てこないが、この映画をきっかけに変わってほしい」。


■監督初挑戦の人気スター、ユアン・マクレガー

プロデューサーのリチャード・ジョブソンから監督デビューの話が出た時、人気俳優のユアン・マクレガーがすぐに飛びついた。「ずっと監督をやってみたいと思っていたので、すぐにOKしたよ。映画作りの大変さを思い知るよい機会だからね」。実際に監督業をこなした感想は?「スタッフたちが支えてくれたので、何とか完成させることができた」。撮影監督を担当したのは『トレインスポッティング』などのダニー・ボイル作品で知られるステファン・トゥファノ。「撮影が始まると、ユアンはすぐに監督の大変さを理解し始めた。その変化を見るのが楽しかった」と彼の監督初体験について語る。彼のエピソードに出演した俳優ニコラス・テナントは「ユアンは俳優の立場で撮ってくれるので、すごくやりやすかった」とその演出の腕前を高く評価している。


■今年、大注目の個性派美形スター、ジュード・ロウの監督の腕前は?

新作『リプリー』でアカデミー賞候補となり、他にも新作が続々と待機中の個性派美形スター、ジュード・ロウ。彼もマクレガー同様、監督デビューを果たしたが、「監督は現場の知識も必要だ。俳優の時は知らなくてもいいことも含め、現場全体を把握しなくてはいけないことが分かった」。彼が描いているのは老人と一羽の傷ついた鳥の交流。「シンプルでも、叙事詩になるような映画にしたかった。老人を主役にしたのは、人生の年輪が刻まれた顔が撮りたかったからだ。しわのない若い顔は善人か悪人かのどちらかしかないからね」。ちなみにこの作品に主演しているアラン・ミラーは、俳優ジョニー・リー・ミラーの父親。ロウやマクレガー、ミラーたちは“ナチュラル・ナイロンズ”という製作会社を作って、映画作りにも積極的な姿勢を見せているのだ。


■短編小説の世界をめざしたプロデューサーのリチャード・ジョブソン

同じ地下鉄というモチーフで、9つの物語がそれぞれの個性を発揮するこの映画。プロデューサーのリチャード・ジョブソンは語る。「アメリカの短編小説のファンでね。ふつうの生活を描いているのに、違った世界を見られるところがおもしろい。この映画でも日常を違った視点でとらえたものにしたかった」。ボブ・ホスキンス監督のエピソードに主演した、レイ・ウィンストンは「限られた時間で表現しなくてはならないので、短編の方が長編より気が抜けないね。短編の方が演技的な充実度が高いこともあるよ」。導入部の演出を担当したエイミー・ジェイキンズのこのユニークな構成の作品に対するコメントは「短編映画って、どこかジョークみたいなものね」。



【この映画を支えたスタッフ】

■リチャード・ジョブソン(プロデューサー)

16歳の時、パンクロック・バンド“ザ・スキッズ”に参加し、後に作家に転じて「ア・マン・フォー・オール・シーズンス」「シクスティーン・イヤーズ・オブ・アルコール」などの著書を執筆。また、テレビではBBCの美術シリーズ、チャンネル4のドキュメンタリー・シリーズを手がける。他に映画の番組でも高い評価を得ている。


■トニー・トンプソン(共同製作者)

33歳のトニー・トンプソンは、元「タイム・アウト」の編集者で組織犯罪の分野のエキスパート。彼の著書には「ギャングランド・ブリテン:ブリテンの最も危険なギャングの内幕」などがある。また「オブザーバー」紙の犯罪担当の通信員でもある。


■ブライアン・トゥファノ(撮影監督)

ブライアン・トゥファノはテレビと映画で幅広く活躍している。これまでにテレビではカレル・ライツ、スティーブン・フリアーズ、アラン・パーカー、ケン・ローチなどと仕事をしてきた。映画ではダニー・ボイル監督とのコンビで『シャロウ・グレイブ』(1995)『トレインスポッティング』(1996)『普通じゃない』(1997)を担当。その他の作品には『さらば青春の光』(1979)などがある。


■スー・ギブソン(撮影監督)

スー・ギブソンは、ニューポート・カレッジ・オブ・アート・ナショナル・フィルム・スクールで学ぶ。彼女はBSC初の女性メンバーである。彼女が手がけた作品にはイヴニング・スタンダード映画賞受賞の『ヒア・マイ・ソング』(1991)『ダロウェイ夫人』(1997)などがある。


■デヴィッド・ジョンソン(撮影監督)

ジョンソンは、オリヴァー・パーカー監督とのコンビで『オセロ』(1995)『理想の結婚』(1999)の撮影を手がける。また、アナンド・タッカー監督の『星の王子さまを探して』(1995)と『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』(1998)を担当。その他の作品には『バジル』『マーサ・ミーツ・ボーイズ』(1998)などがある。


■ニーヴン・ホウイ(編集)

ホウイは経験豊富な編集者で映画、テレビ、CM、そして400以上のミュージック・プロモ、ドキュメンタリーで国際的に活躍している。彼が手がけた最近の作品には『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)がある。


■イヴ・マヴラキス(プロダクション・デザイナー)

マヴラキスはデザイナー助手として『ラストエンペラー』(1987)『太陽の帝国』(1987)から『エリック・ザ・バイキング』(1989)『危険な関係』(1988)まで幅広く活躍。プロダクション・デザイナーとしては『女盗賊プーラン』(1994)『普通じゃない』(1997)『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)などを担当。また、彼女は数多くのポップ・プロモやCMを手がける。ユアン・マクレガー夫人。


■ヴィリティ・ホークス(衣裳デザイナー)

シアター・デザインで学んだホークスは、コスチューム・スーパーヴァイザーとして『ショッピング』(1993)などの作品を担当し、次いでデザイナーとして活躍。また、彼女は数多くの宣伝キャンペーンを手がけている。