映画『ロッキー・ザ・ファイナル』来日記者会見
●2007年3月26日帝国ホテルにて
●出席者:シルベスター・スタローン、檀れい(ゲスト)
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【挨拶】

■シルベスター・スタローン:まず、日本の北の方で起こりました恐ろしい地震(能登半島地震)で被害にあわれた方々にお悔やみを申し上げたいと思います。日本の方は強いから、必ず立ち直ってくださると私は確信しております。

●司会者:本日は、『ロッキー』の舞台フィラデルフィアに縁りのあるこの方にいらしていただいております。「フィラデルフィア美術館展 印象派と20世紀の美術」のイメージキャラクターを務められています、女優の檀れいさんです。どうぞ、ステージに!

フィラデルフィアは『ロッキー』の舞台となった街です。特に、フィラデルフィア美術館正面の階段は、ロッキーのトレーニングの終着地点として、今や、“ロッキー・ステップ”と呼ばれ、名所にもなっているようです。あの有名なシーンですね。駆け上がって、両手を天に突き上げるシーンですが……。一方、檀さんは、本年、7月から京都、そして、10月から東京で開催される『フィラデルフィア美術館展 印象派と20世紀の美術』のイメージキャラクターでいらっしゃいます。本日は、フィラデルフィアの男、ロッキーことスタローンさんに、フィラデルフィア美術館にちなんだプレゼントをお持ちいただきました。どうぞ!(会場拍手)檀さん、今スタローンさんにお渡しいただいたものは、どんなものなんですか?


■(檀れい):日本でも人気のあるルノワールの「大きな浴女」という作品なんですけれども、今回の展覧会でも最も注目されている、彼が傑作と認めた作品です。

●司会者:スタローンさん、檀さんからのプレゼントのこの絵、いかがでしょう。

■(シルベスター・スタローン):素晴らしい。ありがとうございます。本当に、30年前、貧乏な青年だった私が美術館の階段を登って映画を撮った。それが30年後に、その美術館の絵を日本でいただくという……感無量です。

●司会者:檀さん、この世界的スター、シルベスター・スタローンさんに、間近でお会いになって、印象はどうでしょう。

■(檀れい):このお話をいただいてから、とても楽しみであり、すごく今日は緊張する一日だなと思ってこのステージにあがったんですけれども、彼の傍に立たせていただくと、本当に温かい雰囲気をお持ちの方で、なんか、とても優しくて、リングで戦っているロッキーの姿とは違う素晴らしさを感じました。

●司会者:本当に、目は優しいんですが、身体は引き締まってますね。こういう引き締まった身体の男性ってどうでしょう。

■(檀れい):もう、憧れです。




【質疑応答】

●司会者:この映画の「チャレンジに年齢は関係ない。決して諦めるな」というメッセージに、私などは本当に勇気づけられるのですが、スタローンさんご自身は、壁にぶつかって諦めそうになったり、挫けそうになったりするということはありませんでしたか。

■(シルベスター・スタローン):私は、ずっと人生を生きてきまして、どの段階におきましても、自分は社会に適合しない人間だという実感がありました。あるドアが閉まってしまい、次のドアに行く。そして、次のドアも閉まってしまう。そうしたら窓から出る……というふうに、決して諦めずに努力を続けてきた人間です。友達はそれを見て、“やめろ。夢なんか追うな”と言いますけれども、私は夢を追い続けた。それが人生というもので、生きるすべてだと思って夢を追い続けました。そして、非常に幸運なことに、『ロッキー』で運をつかみまして、夢を叶えたわけです。そして、年をとりました。年をとってわかったことは、年をとることによって、人生は楽にはならない。むしろハードになる。友達を失い、家族は成長して離れていきます。仕事でもうまくいかないこともあります。どこへ行ったらいいのか……。確かに年をとって、離婚もし、経験も積んだ。正しいこともしてきた。税金を払い、法を守って生きてきた……それなのに、社会は、お前はいらないよと言う。この私の気持ちを、『ロッキー・ザ・ファイナル』では描き込もうと思いました。自分はこう考えるのだが、もしかしたら、観客のみなさんも同感してくれるのではないか……これは人間の普遍的な感情なのではないかと思って、この映画を作りました。人は年をとって賢くなるけれども、社会からは、お前はもう引っ込みなさいと言われる。私はそうは思いません。まだ、若さが残っています。ハートはまだ燃えています。そういうものを、あくまでも信じて闘い続けていく。自分は社会からはみ出た人間ではない。実世界の一部にまだいるんだという気持ちを持つことが重要だと思っています。それを、他人から馬鹿だと思われても、自分がそれに満足して、それでいいと思えば、それでいいじゃないか。そういうことをしない人間の人生は悲しいと思います。私はやはり、年をとっても情熱を持ち続けること、自分が、若いころと同様に価値ある人間だと思い続けること、そして、諦めず闘い続けること、そういう人生が素晴らしいと思います。

◆質問:今回、この『ロッキー・ザ・ファイナル』を製作しようと考えられた理由を教えてください。

■(シルベスター・スタローン):最後の『ロッキー5』、17年前の作品ですが、あれははっきり申しまして、失望した作品です。失敗でした。芸術面も、感動を与えるといった感情面も失敗しました。私のハートは入っていなかった。その責任はすべて私にあります。その後、私の人生にいろいろなことが起こりました。キャリア的にも波がありました。子供の問題もいろいろありました。それが年をとるということなんですね。そういう経験を積んだ時に、ここに面白いストーリーがあると気付いたわけです。ただのボクシングの映画ではなく、面白い話が作れるのではないかと思ったんです。もちろん、『ロッキー』シリーズの中で、リング上は、人生を象徴しています。人は決して、人生をKOすることはできません。人生が勝つのです。けれど人は、その中で闘い続けることによって、質の高い人生を生きることができるわけです。ですから、私は自分自身のストーリーを書きました。そして、自分に起こった良いこと悪いことを書きました。この作品は、最初のパート1より作るのが10倍難しかった。これを年輩の方々に伝えたかった。特に、ハリウッドの連中に伝えたかった。ハリウッドほど厳しく残酷な社会はありません。でも、俺にできるならお前たちにもできるだろうと言いたかったのです。そういう気持ちで作りました。

◆質問:私にとって、『ロッキー』シリーズは人生のバイブルなんですけれども、スタローンさん自身にとって、ロッキー・バルボアとはどんな存在でしょうか。

■(シルベスター・スタローン):『ロッキー』は、非常にシンプルな1人の男の願望や想いを描いた作品です。すべての人間は、自分のシンプルな願いや気持ちというものを、人の前で証明したいという気持ちに駆られます。ところが、社会的には、貧乏人もいる、いろいろな問題を抱えている人間もいる。社会はなかなかチャンスを与えてくれません。それに負けてしまう人生はとても悲しい。でも、ロッキーという人間は、自分からチャンスをつかみ、夢をつかんだ。それがこのロッキー・バルボアという男であり、彼が言おうとしたことです。人間というもののシンボルですね。人間は、日々、失敗する恐怖と闘い、挑戦していくわけです。失敗を恐れないことが大事です。月曜日に失敗したら、火曜日に賭ければいい。火曜日に失敗したら、水曜日に賭ければいい……どんなに時間がかかろうとも夢に賭ける。それをしない人生は悪夢です。

◆質問:作品の舞台であるロッキーの故郷、フィラデルフィアには、スタローンさんにとっても特別な思いがあると思うのですが、再びフィラデルフィアに撮影に行かれていかがでしたか。

■(シルベスター・スタローン):フィラデルフィアという街は、200年ほど前はアメリカ合衆国の首都でした。独立宣言があそこで書かれて、先駆者がそこに住んでいたんです。でも、それからフィラデルフィアという街は、忘れられていくわけです。ニューヨークとか、ボストンがのし上がってくるわけですね。だから、ちょっと悲しい街というか、忘れられた都市になっていくのです。それこそ、ロッキーにとってパーフェクトな街はないじゃないですか。ということで、そのような設定にしました。私自身、16才の時に問題がありまして、学校を辞めてしまいました。8カ月で学校を辞めて、川で荷揚げの仕事をしていました。そこで、フィラデルフィアの人たちのことをつぶさに見まして、まさか将来、映画を作るとは思わなかったのですけれども、そこで経験を積みまして、フィラデルフィアの人々の気持ちが非常に理解できたわけです。そこの人々は誰からも尊敬されませんから、自ら尊敬を得よう、勝ち取ろうとするんです。そういう精神があるわけです。スタイリッシュな街じゃない、ニューヨークとも違う、貧乏な街……でも、チャレンジ・スピリットだけはある。そういうところがすごく好きで、私にとってとても重要な街になったんです。本当に、ロッキーはしがない街の男です。でも、そのしがない街の男が上へ上へと登っていく……あの美術館の階段ほど象徴的な画はないわけです。たぶん、ロッキーはあの建物が何なのか知らないでしょう。中に何があるかも知らないでしょう。でも、上昇していこうという気持ちを、映像的にあれほど見事に表わすシーンはないということで使ったのです。そのような意味で、フィラデルフィアには、本当に好きな理由があるんです。まさに、地獄から天国へというイメージなのです。

◆質問:17年ぶりにロッキーを演じるにあたり、ボクサーとしての身体作りはしたのでしょうか。特別なトレーニング方法があったら教えてください。

■(シルベスター・スタローン):年をとると若いころより敏捷性がありません。柔軟性も失います。技も衰えてきます。それに反して、年をとっても意志の強さだけはある。ですから、若いころより動きは衰えているのですが、映画の中でロッキーがやっているように、本当にジムに通ってトレーニングをすることで自信に繋がるのです。メンタルなパワーがあがるんです。身体を鍛えると、メンタルな力になる。それは自分を強くしますし、自分を高めることができるのです。

◆質問:冒頭から名場面、名シーンが満載だと思うのですが 一 スタローンさんご自身、一番思い出のこもったセリフ、シーンがあったら教えてください。あと、クライマックスのファイトシーン、すごく迫力があったんですけれども、裏話を聞かせてください。

■(シルベスター・スタローン):セリフは一杯あるのですが、みなさんが一番覚えているのは、「エイドリアン!」なんですよね。それが一番、記憶に残っているようですね。最初の質問のノスタルジアということですけれども、人は、昨日は昨日のこととして過去に追いやろうとするけれども、決して廃れていくものではなくて、心の中で生き続けるものなんですね。それで、特に冒頭の3分間には思い出のシーンを入れまして、みなさまのノスタルジアを掻き起こすような場面を入れました。それから、最後のところですけれども、私は、この『ロッキー』シリーズを30年間やってきましたが、自信を持って、これほどリアルなファイトシーンは今回が最高だと思います。大変なトレーニングをしましたし、傷は数知れずです。でも、そのパワーを、リアルなファイトをお客さんに伝えたくて、時間を問わずに撮っていきました。ハイビジョンカメラで撮りました。9000人の観客、レフリーはすべて本物で、偽物は私1人(笑)、あとはすべて本物でした。KOは、本当にKOしたんです。もしもDVDがありましたら、ボーナストラックで観ていただきたいのですが、パンチがリアルなのはわかるでしょうし、すべてがリアルだとわかるはずです。臨場感のあるファイトシーンということでは、私も自信があります。

●司会者:それではこれで 一 。

■(シルベスター・スタローン):ワンモアクエスチョン 一 (手を挙げている記者を見て)トゥモアクエスチョン 一 (ボクシンググローブ姿で手を挙げ続けていた人物が指名され、彼に向かって)あなたを待っていました。

◆質問:ありがとうございます。昨日、映画を拝見したのですが、KOパンチを喰らったように感動しました。これまでのロッキーと今回のロッキー、大きく違うのはどんなところでしょうか。

■(シルベスター・スタローン):私は、多くを学んできましたが、その実りがここにあります。私がシリーズの中で、本当に自信があると言えるのは、『ロッキー』と『ロッキー・ザ・ファイナル』です。私の自伝的要素が入っているということでも思い入れがあります。2、3、4、5は、いわゆる続編で、ボクシングを中心に据えた作品だったので、感動作という点では、『ロッキー』と『ロッキー・ザ・ファイナル』になると思います。そして、相手役は、ヘビー級のチャンピオンで、映画撮影の直前に、2ラウンドめでKOした本物のファイターですからね。そういう人を相手にしたので、本当にリアルであるという意味では、他とは異なっています。

◆質問:実は、第1作目の時は、私は生まれていないんですけれども、私たちの世代でも感動して楽しめました。私たちのような若い世代へのメッセージをお願いします。

■(シルベスター・スタローン):とても不思議なのですが、これは私の世代の人に語りかけようと思って作った映画だったんですね。最初の『ロッキー』を観ている人たちは、愛着を持ってくれている大人なんです。ところが、今回この映画を封切りまして、世界中のお客さんの大多数は、若い人なんです。それは私にとってとても嬉しいことです。今の若い人たちはとても頭がいい。映画も観慣れていますから、映画を観る目がとても厳しいわけです。今の映画は、そういう人たちに向けて作られていると思います。ですから、シンプルな人生の問題を語ろうとする映画はあまりないのです。そういうところで、この映画が生き方というものをシンプルに教えてくれるので、若い人たちは、非常に新鮮なものを感じているのかもしれません。そこに真実というものが見えるのかもしれません。それから、若い方は、今までの『ロッキー』をテレビやDVDなどで観ていて、映画館では観ていない。そういう若い方の多くが、この最後の『ロッキー』を映画館で観ようとされているので、若者が映画館に来るという現象が起きているのではないでしょうか。彼らにとっては、『ロッキー』という作品がどういう映画かという好奇心があり、そこに込められたメッセージに感動するのではないか……そして、テレビではない、大きな画面。そういうものが重なって、若い方が来てくださっているのだと思います。

◆質問者:ありがとうございます。

■(シルベスター・スタローン):今、私は日本にいますけれども、明日はジャングルに帰り、『ランボー4』の撮影に戻ります。今回は、東京が『ロッキー』ツアーの終着点なんです。30年にわたる『ロッキー』の旅をここで終えるわけですから、感無量です。ありがとうございました。

(通訳者の表現をもとに採録。細部の言い回しなどには若干の修正あり)





『ロッキー・ザ・ファイナル』は2007年4月20日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて公開。