『ポーラー・エクスプレス』来日記者会見
●2004年8月26日グランドハイアット東京にて
●出席者:ロバート・ゼメキス(製作・監督・脚本)、スティーブ・スターキー(製作)
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【挨拶】

■ロバート・ゼメキス:皆さんこんにちは。日本に来られて本当に嬉しく思っております。『ポーラー・エクスプレス』、本当は、まだ未完成でございます。でも今日は、皆様にお見せすることができまして、非常にエキサイティングな思いをしております。なぜ、世界に先駆けて最初に日本に来たかといいますと、日本は、新しい技術革新を非常に温かく受け入れてくださる。理解してくださるからです。お招きいただけて光栄です。私が今、アメリカでどういうことをしているかを観ていただきたいと思っております。そして、どういう新しい技術かと申しますと、今から観ていただきますけれど、この映像はすべてデジタル的に作られております。いわゆる、従来のアニメーションというものは、パフォーマンス部分、演技の面において全然使われておりません。また、原作ですが、これはアメリカの子供向けの小さな物語、短編が基礎になっております。この映画化権はトム・ハンクスがもっておりまして、彼からこの映画化の相談を受けました。内容は、少年の旅の話で、クリスマス・イブに起こる話です。まぁ、旅と申しましても、これは比喩でありまして、これは少年のスピリット、魂の旅の物語です。それでは、映像を観ていただきながら、どういうことをしているかを観ていただきたいと思います。これは未完、まだ進行中のものであります。大体、映画の感じがつかめるような場面場面を繋げております。また、どういうふうにこれを作っているかという裏的なもの(メイキング)も御覧いただきたいと思います。それで、監督としてお詫びを申し上げますけれども、これは再三申し上げているように未完成です。まだまだ完成していない部分がございまして、たとえば、カラーの部分、そしてSEなどはちゃんと完成しておりません。音楽などは簡単につけたものです。これがちゃんと完成してスクリーンで上映される時には、もっと素晴らしくなっているということを踏まえてご覧ください。まず、最初にご覧いただくのは、冒頭数分間です。これをご覧いただいて、今度、我々が開発いたしました“パフォーマンス・キャプチャー”で演技をキャプチャーする手法を説明したいと思います。それでは、ビデオカメラの電源を切っていただいて(会場笑い)、映像をご覧いただきたいと思います。


※特別映像上映1〜3



【質疑応答】

◆質問1:この作品のキャプチャーのカメラの台数なんですが、同時に200台使用したという話を聞いているのですが、それは本当でしょうか。

■ロバート・ゼメキス:それは本当です。赤外線に反応するカメラを使用しました。

◆質問2:これはアニマックス3Dを使っているということなんですが、立体を意識した演出をなさっているんですか。

■ロバート・ゼメキス:この技術のひとつのプラズマはデジタルです。3次元で撮っております。ですから、オプティカルカメラは一切使っておりません。ですから、非常に簡単なコンバーションで3Dになるわけです。

◆質問3:次に監督をなさる『モンスターハウス』でもこの技術を使いますか?

■ロバート・ゼメキス:“パフォーマンス・キャプチャー”を使います。

◆質問:質問4:“パフォーマンス・キャプチャー”という技術をもう少し詳しく解説していただければと思います。

■ロバート・ゼメキス:今回、私が伝統的アニメーションでは難しいと思いましたのは、この映画のキャラクターを観客を感動させるように描くには、非常に才能あるアニメーターが必要だったということです。しかし、これはアニメーターがやるのではなくて、本物のアクターがリアルタイムで演技をするわけです。そこで演技する非常に微妙な感情のひだというものを、キャプチャーするという技術なんです。ですから、素晴らしい名優が本能的に演技する、その演技をリアルタイムでキャプチャーできるということが、今までのアニメーションと決定的に違うところだと思っております。つけ加えると、もうひとつ革新的なのは、史上初ですが、身体と顔の演技を同時にとらえることができるという点です。俳優の顔に165のセンサーがついております。ですから、今までとらえられなかった顔の表情まで正確にとらえて、画面に現すことができるということが、一番素晴らしい点だと思います。

◆質問5:監督は、CGアニメーションはいつ頃から手がけたいと思っていらしたんですか?

■ロバート・ゼメキス:私は、今まで問題を抱えておりました。ライブで撮れないものをどうやって撮るか。それで、伝統的なアニメではないものへの興味はありました。これは、油絵の感触をどうしても大きなスクリーンにとらえたいということがきっかけで発想をしまして、スタッフに、油絵の感触を出せる技術を開発しようということでここに至ったわけです。

●司会:この映画で、トム・ハンクスさんのクレジットはどういうことになるんでしょうか?

■ロバート・ゼメキス:もちろん、彼は、『ポーラー・エクスプレス』というタイトルの前に出ます。そして、最後のキャスティングのクレジットには、役名、トム・ハンクス、役名、トム・ハンクス……という具合に全部出ます。


■スティーブ・スターキー:この映画で、トム・ハンクスは5役なんですが、ほかにも、この映画で1役以上を演っている人がいます。マイケル・ジーダーとレスリー・ゼメキスです。彼女は、女の子とお母さんの役で、監督の奥さんです。

●司会:原作のオールズバーグさんから脚本のアドバイスなどはありましたか?

■ロバート・ゼメキス:彼は、最初は画家で、次第に文章も書くようになり絵本を作るようになった人です。最初の全体ミーティングにはもちろんいらしていただいて、彼は、とてもコラボレ−ションの精神に富んだ方で、いろいろなアイディアを出していただきました。このビジュアルエフェクトは全部、ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスというところを使ったんですけれども、そこで、アーティストにセミナーを開くわけですね。そこにオールズバーグさんもいらっしゃいまして、彼の絵本の感情、エモーションをどのようにキャプチャーしていくかということを、セミナーで話していただきました。

◆質問6:この短いストーリーを長い映画にするにあたって、監督が最も見て欲しいという見どころを教えていただけますか?

■ロバート・ゼメキス:私が読みました原作の絵本は、本当に素晴らしいヒューマンストーリーのアウトラインを煮詰めたものです。ですから、映画にするにはそのアウトラインを膨らませていけば良かった。勇気のこもった内容になっていたので、自由に膨らませていきました。私がお勧めする見どころは、もちろん、スペクタクル場面も良いのですが、私が監督として非常にプライドを持っておりますのは、感情の微妙なところを、ハイテクを使いながら人間の感情の細かいところを出している、その部分です。

◆質問7:トムさんは、元々この原作が好きだったと聞いていらっしゃいますか?

■ロバート・ゼメキス:トム・ハンクスは、この本の映画化権を買って10年くらい温めていたと聞いております。トムは、この本を自分の子供に呼んで聞かせるために手にしたと思います。私も子供には読んであげたりしていたのですが、これが映画になるなんて、全然考えておりませんでした。でも確かに、今読むと映画になる要素が詰まった絵本です。これは、魂の旅を描いたものです。そのメタファー、その裏に人生を描いた比喩があるところが素晴らしいと思います。

◆質問7の質問者:私もそう思います。どうもありがとうございました。

◆質問8:(子供番組の製作者による質問。子供からの質問と思って聞いてくださいとの前置きあり)この『ポーラー・エクスプレス』の列車は、本当に走っている列車なのでしょうか? それとも、お伽話の列車なのでしょうか? 2つめが、クリスマスのエピソードが何かあれば教えていただきたいということと、日本の子供たちにどのように観てもらいたいかということの3つをお願いします。


■ロバート・ゼメキス:まず、最初の質問の、“この列車は本当にあるのかないのか”ということこそがこの映画の大事なメッセージで、私が言うのは立場をはずれたことですので、観た方にお考えいただきたい。それからクリスマスの思い出なんですが、不思議なのですが、私が子供の頃のクリスマスを思うと、この本が思い起こさせてくれるクリスマスの思い出と非常に似通っている。この絵は、大人がクリスマスを思い出しながら書いているという気がするんです。そういうことからも、私はこの絵に親近感を持っているのではないかと思うのです。この絵が思い起こさせてくれるようなクリスマスを、私は送っておりました。それから、日本の子供たちにはこう言いたい ─ 「マジックを信じなさい」。

◆質問9:“パフォーマンス・キャプチャー”ということで、役者さんには特別な苦労があったと思うのですが、トム・ハンクスさんはどのようなところで苦労されたのでしょうか。それと、音楽的話題として、エアロスミスが使われているということですが、なぜ彼らが起用されたのでしょうか? それと、ボーカリストのスティーブン・タイラーも登場するということなんですが、どのような形で映画の中に登場するのでしょうか?

■ロバート・ゼメキス:この映画のことで、トム・ハンクスは1つ感想を言っておりました。この映画で1つ残念だったのは、衣装を着られなかったこと。それだけです。後は本当に素晴らしい体験ができたと喜んでおりました。普通の映画では、演技に中断があります。ところがこの映画は、1つの場面は最後まで、つまり、演劇の芝居と同じなわけです。映画でありながらライブシアターに出ているような演技を堪能できたということで、楽しかったというふうに言っておりました。

今日は見られませんでしたが、サンタクロースと妖精たちが出てきて、ロックンロールを歌い踊るという場面があります。その妖精のリードシンガーが歌うわけですけれども、その役を誰にやってもらうかということで、2人候補がいました。ミック・ジャガーかスティーブン・タイラーということで、まず、スティーブン・タイラーのほうに連絡しましたら、受けてくださいました。彼もトム・ハンクスと同じで、レコーディングの後、センサーをつけてその妖精のリードシンガーの役を演じております。


■スティーブ・スターキー:それから彼は、妖精のlieutenant、少尉もやっています。

●司会:大体、出演すると2役は当たり前ということでしょうか。

■ロバート・ゼメキス:それは楽しいですね。

◆質問10:列車が走るシーンでは『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』を連想させられるのですが、列車が走るシーンでこだわった部分を教えてください。

■ロバート・ゼメキス:音楽的な部分が似ていたんじゃないですか。僕がなぜ列車が好きなのかわかりませんが、やはり、列車というのは映画的だから惹かれるのではないかと思います。今回、列車を使った場面の新しい試みは、大変スペクタクルなシーンなんですが、この“ポーラー・エクスプレス”が脱線いたしまして、氷原を滑っていく場面があります。そこが見どころなんですが、今回、とても嬉しかったのは、列車が脱線、滑るという場面は、そのとおり書けば映像化できるわけです。普通はどうして撮ろうかと頭を悩ますのですが、今回は、書けばそのまま映像になるし、作家として素晴らしい感動がありました。


●司会:最後に、プロデューサーのスティーブ・スターキーさんにお伺いしますが、公開が11月27日ということは、その時期、世界の宮崎アニメの新作がちょうどぶつかるというタイミングになりました。その辺に関して。

ロバート・ゼメキス、スティーブ・スターキー、「そうなの?」といったような笑い。会場からも笑いが起こる。

■スティーブ・スターキー:私は信じております。映画のマーケットというのは、グッドフィルムは何本でも抱えることができるのです。良い映画が作られて公開されれば、マーケットが広がるわけです。良い映画が何本も作られるのは歓迎されることで、すべての映画は成功するというふうに思っております。

(通訳者の表現をもとに採録。細部の言い回しなどには若干の修正あり)


『ポーラー・エクスプレス』は2004年11月27日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にて公開。