『グリーンマイル』 マイケル・クラーク・ダンカン来日記者会見
 4月12日(水)パークハイアット東京・ボールルームにて
●出席者:マイケル・クラーク・ダンカン

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【挨拶】

■マイケル・クラーク・ダンカン(以下マイケル): みなさん、お元気ですか? 是非、みなさんに私の名前を叫んでいただきたいんですけど。

●司会者: それじゃあ、いきましょうか。

▼記者・一同、「マイケル!」

■マイケル: ……(声が小さいというしぐさ)

●司会者: それじゃ、リハーサルは終わりました。もう一度、いきましょうか。

▼記者・一同、「マイケル!!!」

マイケル、満足そう。

■マイケル: 今回初来日で、昔から日本には来たいと思っておりました。日本の文化にも興味がありますし、でも、自費では来ることが出来なくって、今回、映画に出演してご招待いただきまして本当に嬉しいです。それから、今回、是非やってみたいことは、相撲の力士と戦ってみたい。会ってみたいと思うんですね。本当に、日本に来てから、私を王様のように扱ってくれて嬉しいです。みなさん微笑んでください(カメラで記者たちを撮っている)。



【質疑応答】

◆質問: ふたつお伺いしたいと思います。マイケル・クラーク・ダンカンさんは、用心棒とか警備員とか、いろいろなお仕事を経験されています。そのお仕事が、演技にはかなり役立っているんでしょうか。それと、『グリーンマイル』はとても感動しまして、いわばこの映画は、現代のキリスト、神を描いていると僕は思ったんですが、今回のジョン・コーフィを演じるにあたって難しかったところを教えてください。

■(マイケル): まず、最初の質問ですが、用心棒とかボディガードをやっていて、常に待たされるんですね。人を待つという仕事ですから、ハリウッドで仕事をやっていて、遅刻はしない、絶対人を待たせないというポリシーは、仕事の経験からきております。ハリウッドの役者さんたちというのは、人を待たせるという定説をみなさんお持ちだと思うのですが、私は、絶対仕事に遅れないということを心がけております。それから、ジョン・コーフィを演じるにあたって、一番難しかったのは「泣く」ということ。非常に多くの場面で泣きますが、全部自分の涙です。あの、今回この映画で、私は、ラリー・モスというアクティング・コーチに付いたんですけれども、彼からすべて、どうやって自分の感情を奮い起こして泣くかという技術も身につけました。彼から教えていただきました。とても、何度も何度も泣くシーンがあったので大変だったのですが、それ以外のところでは楽しめました。あまり、微笑むとか笑うというシーンがない映画でしたので、こんな役に挑戦するというのは、自分にとっては初めての経験でした。

◆質問: トム・ハンクスとの共演では、何か発見がありましたでしょうか。


■(マイケル): トム・ハンクスは、本当の意味でのプロフェッショナルです。彼は、絶対に仕事に遅刻するということはなかったです。そして、常に準備してくるんです。そういう役者さんですからあれだけの地位を確立したと思うのです。なにしろ、私は、こういう作品は『アルマゲドン』に続いて2作目の大作なんですが、あまり、業界のこと、ハリウッドのこと、役者がどう振る舞うべきかということをあまり知らない身分だったのですが、とにかく、トム・ハンクスというのは、監督が望むこと、監督から要求されたことをすべてやるという徹底した役者さんです。それだけではなく、自分の出番が終わったあとも、他の役者さんのために何時間でもいてくれるんですね。私の泣く場面でも、カメラの後ろから泣く演技をつけてくれました。私のためにそういう演技をしてくれて、私もイイ演技が出来たんだと思います。

◆質問: 先ほど、「泣く」というお話があったのですが、どういう風に、たとえば、自分の過去を思い出して泣くとか、そういったことをやったのでしょうか。あとひとつなんですが、やはり、身体がとても大きくて、初めて会った時、とても明るい方だという印象を私は持ったんですが、このコーフィみたいに、外見で何かトラブルがあったとか、エピソードがあったとかありますでしょうか?

■(マイケル): まず、「泣く」ことに関してですが、このジョン・コーフィがどういうような状況にいて、どんな気持ちでいるのかを考えるように言われました。このラリー・モスというアクティング・コーチは、アカデミー賞も受賞したヒラリー・スワンク(『ボーイズ・ドント・クライ』)さんのアクティング・コーチもなされたんです。ですから、彼がいかに素晴らしいかがわかっていただけると思いますが、私の魂の中の深みまで掘り下げていくという作業で、ジョン・コーフィを演じるというのではなくて、成りきるという手法を教わりました。ですから、私は自分を変身させ、見た目から歩き方まで、すべて身につけるようにしました。毎日毎日、このキャラクターの中へ深く入り込んでいくことができました。もうひとつの質問ですが、子供の頃から常に、外見で、トラブルと申しますか、誤解されることが多かったんです。とにかく、近所でも、子供の頃から大きかったんで。ちょうどハリウッドに出てきた頃の話なんですが、友達の家で、朝の2時頃、エレベーターに乗って帰ろうとしたんです。すると、ドアが開いてご婦人が乗ろうとしたんですが、私を見て、恐がって乗って来なかったんですね。そういう経験もしました。ですから、私は大きくて意地の悪い人間ではないかと思われるかもしれないんですけど、実際の私はとても優しい人間です。そして、皆さんが私を良くしてくだされば、私も良くしてあげますので(笑)。

●司会者: ジョン・コーフィというのは、汚れを知らないピュアな魂を持っているという部分も共通しているということに通じますか?

■(マイケル): ジョン・コーフィは、90%くらいマイケル・クラーク・ダンカンそのものです。

会場笑い。

■(マイケル): 実際、スティーヴン・キングの原作を読んだ時には、「これは、正に私だ」と、私以外にこの役をやれる俳優はいないと思ったくらいです。ですから、私を選んでくれて、とても嬉しいです。

◆質問: コーフィとご自分が共通していると思われる部分を具体的に教えていただきたいのですが。

■(マイケル): 共通点というのは、人間、動物に対する優しい気持ちがあるということ。そして、とても穏やかな人物ということも共通しています。平和主義者ですし。あまり、怒ったり、短気な部分もあまりないです。大体、外見から誤解されてしまうというのも非常に似ていると思います。みなさんも、たぶん、私が穏やかな人間だということをわかっているからここにいらしていただいたんだと思うんです。もし、私が意地の悪い、恐い人間だったら来なかったと思うんです。いずれにしても、彼は、人間、動物に対して非常に優しい気持ちを持っていますし、私もそうです。

◆質問: ふたつ聞かせてください。実際に、奇跡のシーンが映像になって初めて見た時の感想と、ミスター・ジングルズ(ネズミ)が、印象的な演技をしてたのですが、彼?彼女?との共演の感想を教えてください。

■(マイケル): 最初の質問ですが、完成品を見た時は、途中から泣いて泣いて涙が止まらなくなってしまいました。まるで、自分を外から、違う人間を見ているような感覚で見ていました。夢が叶ったファンタジーというか、自分の空想だったものが、スクリーンの中で自分が演じているということ。そして、『グリーンマイル』を私は、8回見ているんです。それ以上は見られない。なぜなら、毎回泣いてしまうから。もちろん、映画ということもわかっていますし、すべてのシーンがわかっていますけれど、感情的になって泣いてしまうのです。次の質問ですが、ミスター・ジングルズとの共演はとても素晴らしい体験でした。彼の方がギャラが高かったらしいのですが、まったく文句も言わずに、働くということも好きでしたし。トム・ハンクスはネズミは苦手みたいで、1回肩に置くシーンがあったんですが、あまり気に入っていなかったようです。でも、私は、このネズミはとても可愛くて大好きでしたし、非常に良くトレーニングされているネズミでしたし、ビックリしました。ほとんどセリフもトチらないし、トレーラーも私より大きいトレーラーにいました。

●司会者: 実はあれ、どのくらいいたのかは秘密ですか?


ここで、なにやらマイケルが通訳者にコソコソ……。

●通訳者: 今、いつもこんなに静かなのかって聞かれたんですが。

●司会者: (記者に向かって)でも、とても今日は、笑ったり、楽しい時間を過ごしていますよね。

■(マイケル): 素晴らしいと思っているんです。ハリウッドでは、うるさくてこうはいかない。ちゃんとみなさん尊敬してくださっているのがわかる。

◆記者: 管理されているんです。

■(マイケル): ハリウッドで、ちゃんと管理するように言っておきます。

●司会者: でも、これは管理ではなくて、これが日本人が持っている性格というか、歴史と伝統、モラル、謙譲、美徳……。

 会場、笑い。

■(マイケル): これだけ、カメラマンの方、プレスの方が多いのに、ちゃんと話を聞いてくださる。とっても嬉しいです。

●司会者: それは、日本の当たり前のことですよね。人の話をよく聞くというのは。

 会場、笑い。

■(マイケル): 僕、日本人になりたいなって考えているんですが。

●司会者: 大丈夫です。全然OKです。それで、先ほどのネズミですが、何匹ほどいたんでしょうか?

■(マイケル): 15匹くらいです。実はですね、15匹ともみんなソックリで、どれがどれだかわからないネズミなんですが、1匹1匹、特殊な技能を持っていて、あるネズミは真っ直ぐに走る、それだけをやる。あるネズミは糸巻きを押す専門で、それだけをやるんです。個々に専門があって、このネズミはこれだけをやるという風にしつけられていた。

●司会者: 特に、最後の年老いたネズミは素晴らしいものがありましたよね。

■(マイケル): そうですね。素晴らしかった。


◆質問: ここまで成功なさるまでに、さまざまな苦労があったと思うのですが、その時に、自分がくじけそうになった時、信念みたいなものがあったのかどうかということと、ダッグ・ハッチソン、サム・ロックウェルの2人が、この映画の中で、史上最悪の悪役だったんですが、見ていて本当に憎くなったんですが、実際に、撮影の時にはどうだったんでしょうか? どうしても聞きたいんです。映画史に残る悪役なんで、それをお聞きしたいんです。

■(マイケル): あの、本当に長い道のりでしたし、何度もくじけそうになった時もありました。でも、ひとつだけ、自分がこうやってやって来られたのは、母親がどれだけ自分を信じてくれたかという、その母親の信頼といいますか、強い信念があったと思います。ハリウッドに出てきてからは、本当に競争が激しいですし、辞めたくなったことも何度もありましたが、母親にそれを言うと、自分を信じなさい、自分を信じれば、何事でも乗り越えられるという言葉を受けました。ポケットに20ドルしかなかった時代もありますし、ある時代は、シカゴで、ほとんどホームレスだったような時代もあります。母親のその信念、彼女の言葉でここまでやってこられました。次の質問ですが、実は、ダッグ・ハッチソンさんにしても、サム・ロックウェルさんにしても、実際にはとても素敵な優しい方々です。しかし、あれだけうまく悪役を演じているので、みなさんは、生涯ずっと、あの役で覚えていると思いますが、私は、アメリカで映画館へ行って、人々の反応を見るのがとても楽しみなんですね。特に、パーシー(ダッグ・ハッチソン)が、ネズミを踏んづけるところのみんなの反応といったらないんです。本当にみんな大騒ぎになります。それから、サム・ロックウェルが、自分のチョコレートを吹きかける所ですね、ブルータスの顔に。そこも、みんな凄いリアクションがあります。彼らが凄い役者なので、あそこまで演じられたんだと思います。ただし、彼らは、常に冗談を言っている、冗談が好きな人たちですよ。

◆質問: 身長と体重を教えてください。

■(マイケル): 身長は6フィート5インチ。現在の体重は290ポンドなんですが、映画の時は、フランク・ダラボン監督に言われまして、350を維持しろということで、そのために一生懸命体重をつけました。

●司会者: ちなみに、足のサイズは?

■(マイケル): 15インチです。


◆質問: アカデミー賞を逃してしまってとても残念なんですが、他の方のお名前が読み上げられた時は、どういうお気持ちでしたか?

■(マイケル): 本当はですね、今回のアカデミー賞は、マイケル・ケインさんにとって欲しいとずっと思っておりました。とにかく、アカデミー賞では、自分が今まで生きてきた中で、一番素晴らしい体験をさせていただきました。あの赤いジュータンの上でも大騒ぎになっていたんですが、そこで、マイケル・ケインさんをつかまえて、「きっと君だよ。貴方以上の人は、考えられない」と告げたくらいなんですね。本当にそう思っていましたし、彼は、40年間この業界にいて、本当に素晴らしい仕事をしてきた方ですし、受賞するべきだと私は感じておりました。そして、マイケル・ケインの受賞スピーチが素晴らしかったと思います。彼は、すべて、他のノミネートした人たちのことを言ってくださいましたし、喋らなくてもいいのに喋ってくれた。私は、俳優としての彼をより尊敬しました。名前の初めが同じマイケルなので、私は、間違って勘違いして、少し立ち上がってしまいました。でも、最後まで聞いて、私ではない。マイケル・ケインに行くべきだと思いました。

◆質問: 映画の中では、超能力ということがかなり大きな意味を持っていましたが、ご本人も、超能力体験というか、それに近い体験をお持ちでしょうか。

■(マイケル): 超能力と言えるかどうかわからないのですが、何か、特別なものをすべての人が持っていると私は思います。私も、いろんな辛いこともありました。その辛い体験をしている中で、くじけそうになったりとか、ホームレスの時は、すべてを諦めてしまおうと思った時もありましたが、その時に、自分を信じること。何かやっている時に、信念を持つことが大事なんだと、そういう気持ちで、いつも気持ちを切り替えてきたんですけど、それで、物事がいい方向になってきましたから、そういう意味では、自分の中にもそういう力があるのではないかと思います。


 この後、フォトセツションに入ったが、ゲストとして、『グリーンマイル』を観て感動したという女優の田中麗奈が花束を持って会場に駆けつけた。マイケル・クラーク・ダンカンは、彼女を抱きかかえるなどしてとてもご機嫌な様子。マイケルは、田中麗奈主演の映画『はつ恋』が現在上映中と知ると、その映画に出演したかったと述べ、次回作で共演したいと言って会場を和ませていた。その後のマイケル1人でのフォトセッションでも、冒頭同様、彼の希望でマイケル・コールが会場に響き、表情豊かに、ボディ・ランゲージも交えながらフォトセッションにのぞむ彼の姿がとても印象的だった。


『グリーンマイル』は、2000年3月25日より日本劇場ほか全国東宝洋画系にて公開中。