『プランケット&マクレーン』/"PLUNKETT AND MACLEANE"



2000年6月10日より有楽町スバル座ほかにて公開


1999年/イギリス/100分/シネマスコープ/ドルビーSRD/カラー/日本語版字幕:松浦美奈 (C)polygram films(UK) LTD 1999

◇監督:ジェイク・スコット ◇脚本:ロバート・ウェイド、ニール・パーヴィス、チャールズ・マッケオン ◇製作総指揮:ゲイリー・オールドマン他 ◇プロデューサー:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー ◇撮影:ジョン・マティソン ◇編集:オーラル・ノリ・オッティ ◇衣装:ジャンティ・イエーツ ◇音楽:クレイグ・アームストロング ◇キャスト:ロバート・カーライル(ウィル・プランケット)、ジョニー・リー・ミラー(ジェイムズ・マクレーン)、リヴ・タイラー(レディ・レベッカ)、アラン・カミング(ロチェスター卿)、ケン・ストット(チャンス卿)、マイケル・ガンボン(ギブソン卿)





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【解説】

◆逃げるが勝ち マッシヴ“紳士強盗”エンターテイメント

夢を叶えるため、友情を守るため、愛を貫くため、彼らが選んだ手段は“紳士強盗”。 そう、この世はいつだって逃げるが勝ち!!3人の若者はわき目もふらずに、自分たちの道を、新たな世界めがけて疾走する―。

プランケットとマクレーンは18世紀半ばのロンドンに実在した強盗。“紳士強盗”と呼ばれたマクレーンは実際にレディたちの人気を集め、ブレヒト作「三文オペラ」のベースになった舞台「乞食オペラ」の主人公マックヒースのモデルとも言われている。彼の裁判は社会的事件にもなった。

そんな実話に基いたエキサイティングな設定に、オリジナルな味付けを施した軽快なストーリー。『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』のロバート・カーライル、『トレインスポッティング』のジョニー・リー・ミラー、そして『アルマゲドン』のリヴ・タイラーという豪華なキャスト、そして、あのゲイリー・オールドマンの製作総指揮の下、リドリー・スコットの息子にしてMTV界の気鋭ジェイク・スコットが初めてメガホンをとった。これぞ、ストーリー&キャスト&スタッフと、すべてが揃ったマッシヴ“紳士強盗”エンターテイメント。シャープでスタイリッシュな新世代映像と音楽がスピード感いっぱいにスクリーンに広がる、型破りでゴージャスな映画なのだ。

営んでいた薬屋が破産して強盗稼業に手を染めたプランケットと、スコットランドの聖職者の息子として生まれ、高度な教育を受けたマクレーン。全く違う環境で育ち、たまたま牢獄で出会った二人は、それぞれの夢をかけて“紳士協定”を結ぶ。プランケットが提供するのは頭脳と盗みのノウハウ。マクレーンの強みは社交界のコネクション。両者が揃えば怖いものなし。マクレーンが上流階級の情報を集め、プランケットの指図で貴族の馬車を襲えばいい。金さえあれば、プランケットはアメリカに渡る夢が叶うし、マクレーンは紳士としての地位と裕福な生活を手に入れることができる。

二人の初めての獲物は裁判長ギブソン卿と姪のレディ・レベッカが乗った馬車。手荒な強盗など初めてのマクレーンは、美しく毅然としたレベッカに一目惚れし、“礼儀正しく”宝石を頂いていく。この日から二人は“紳士強盗”と呼ばれるようになった。ヤマを重ね、修羅場をくぐり抜けるにつれ、強い友情と信頼の絆で結ばれていくプランケットとマクレーン。

しかし、やがてチャンス卿の執拗な追跡が始まる。果たして、二人の夢は叶うのか?マクレーンとレディ・レベッカの恋の行方は?

映画化のきっかけは7年前に遡る。あるとき、ワーキング・タイトル社のエリック・フェルナーのために、ゲイリー・オールドマンが気に入った脚本の場面をいくつか演じることになった。その中の一本が“時代劇なのにアクション映画のような”この作品。彼らはこれをもとに企画をふくらませていった。

そして、彼らが監督として白羽の矢を立てたのがジェイク・スコット。ミュージック・ビデオという最先端のメディアにいる彼なら、史実や映画のセオリーにとらわれず、自由でビジュアル的に優れた作品が作れると考えたからだ。彼らの狙いはまさしく的中。父親譲りの鋭いセンスは、ダークな画面の中に毒気とエネルギーがみなぎる新感覚の“映像作品”を生み出した。

風刺に満ちた愉快なエピソード。アップテンポなアクション・シーンの興奮。胸が熱くなる男たちの友情。そして、ハラハラするロマンティックな恋の成り行き…。

ここには、映画のあらゆる娯楽要素がつまっている。まさに“2000年代版『明日に向かって撃て!』”とも言える楽しさだ。盗みのプロ、プランケットには『フル・モンティ』以降、007シリーズの『ワールド・イズ・ノット・イナフ』や『ラビナス』などハリウッドからも引っ張りだこのロバート・カーライル。恋する紳士強盗マクレーンには、最近ではアラン・ルドルフ監督の『アフター・グロウ』に主演しているジョニー・リー・ミラー。この二人が一緒にフレームに収まるだけで、不思議に“バディ(相棒)”の気分が流れ出す。紅一点のレディ・レベッカにはアメリカから『アルマゲドン』『クッキー・フォーチュン』のリヴ・タイラーがキャスティングされ、反抗的で意志の強い女性を快活に演じている。また、ケン・ストット、マイケル・ガンボン、アラン・カミングらイギリス映画・演劇界の名優たちが脇をがっちり固めている。

撮影監督は『ツイン・タウン』『ヴィゴ』のジョン・マティソン。撮影はチェコのプラハを中心に行われ、古都の歴史を感じさせる建物や町の雰囲気が映像に深みを与えている。プロダクション・デザインはノリス・スペンサー、ジョージア王朝の絵画やホガースらの作品からインスピレーションを受け、当時の猥雑で退廃的な空気を作り出している。

また、『日陰のふたり』や『ウェルカム・トゥ・サラエボ』などを手がけているジャンティ・イエーツが18世紀のファッションにヒップな匂いを加味した衣装も、重厚にして新鮮、時代がかった重みと今的なリズムを融合させた音楽は『ロミオ&ジュリエット』などで有名なクレイグ・アームストロングが手がけている。



【実在の紳士強盗 プランケット&マクレーン】

ジェイムズ・マクレーンは“紳士強盗”としてイギリス中を騒がせた実在の人物である。1724年にアイルランド北部のモナハンで生まれた彼は、スコットランド人の長老教会の聖職者の末息子だった。ジェイムズはきちんとした教育を受け、ラテン語を学び、商人になるべく、文章と経理の術をマスターした。彼が18才の時に父が他界、つつましい生活を送っていた父親は、息子が商売を始められるだけの財産を残していた。しかし、ジェイムズ・マクレーンは退屈な商売に興味を持てなかった。財産を手にした彼は手に入る最も派手な衣装を用意して、馬を手に入れ、“しゃれた”男となった。

その後ダブリンに移り、そこで悪い仲間と知り合い、有り金を使い果たしてしまう。しばらく、下男や執事などをした後、向かったイギリスで宿屋を経営する男の娘と結婚する。そして、500ポンドの持参金で、雑貨屋を始める。しかし、商売よりも、快楽的な生活やギャンブルを好み、“紳士”になることを目指すものの事業は失敗。妻も他界と不幸がふりかかる。運命を変える男プランケットと知り合ったのはそんな時期であった。破産した薬屋であるプランケットは、これまで狡猾に世渡りしてきた“いかがわしい人物”だった。

失った財産を取り戻す計画を立てたのはプランケットだった。ピストルや馬を手に入れ、覆面をかぶり、スミスフィールド・マーケットから戻る放牧者を待ち伏せた。ある人物から70ポンドを奪ったプランケットとは対照的に、マクレーンはすごく上がってしまい、強盗などできなかった。彼は自分で行動を起こすわけではなく、ただ恐怖にふるえた。次にふたりは聖アルバーンの馬車を襲ったが、マクレーンは恐ろしさのあまり、その場を去ってしまった。残されたプランケットが、その場をひとりで収集するはめになった。しかし、その時、マクレーンが戻ってきて、乗客たちの所持品を盗む手助けをし、ふたりの共同作業が始まった。その後、プランケットとマクレーンは精力的な行動を続け、6か月に16件の強盗を働く。ある夜、彼らは著名な作家のホレス・ウォルポールをハイドパークで襲った。緊張したマクレーンは、この時、ミスをした。誤って銃を発砲してしまったのだ。しかし、弾はウォルポールの顔をかすめただけですんだが、マクレーンは自責の念にかられる。翌朝、ウォルポールは強盗から詫び状を受け取った。ウォルポールは後にこう語っている。「すべての事件は礼儀を伴って行動に移された」。

“紳士強盗”と呼ばれるようになったマクレーンは、高級な生活を送るようになる。豪華な部屋を聖ジェームズ通りに持ち、見事な衣装を見にまとい、ぜいたくな愛人がいて、ロンドン中のギャンブルの場やサロンで知られる存在となった。会話はウィットと魅力にあふれ、彼はレディたちの人気の的となる。マクレーンは女好きの強盗を主人公にした「乞食オペラ」(注:後にブレヒトの「三文オペラ」の原作となったジョン・ゲイの作品)の主人公マックヒースのモデルともなった。

次第にふたりは自制心を失っていった。そんな矢先、ハウンズロー・ヒースで強盗を働いた際、エグリントン卿から貴重品と黄金モールが縫い込められた見事なコートを奪ってしまう。このコートがマクレーンの運の尽きとなる。質屋を通してコートを処分しようと考えたが、珍しい品物だったので、足がつき、逮捕される。相棒よりも狡猾だったプランケットは証拠も残さずに失踪し、生涯捕まることもなかった。

オールド・ベイリーで行われたマクレーンの裁判は社会的な事件となり、裁判所は著名人や着飾った人たちでいっぱいになった。そこには被告と交際していた貴婦人たちの姿もあった。弁護側の証人のひとりとなったレディ・キャロライン・パターシャムはこう言ったという。「お近づきになれて、本当に幸せでした。彼は私の家にも参りましたが、なくなったものは何もありません」。

マクレーンは有罪宣告を受け、死刑が決まった。監禁生活を送っていた時、彼がいるニューゲイトの死刑囚監房を3,000もの人が訪ね、大半の人々は彼に同情していた。死の直前に彼は聖書を読んでいたという。1750年10月3日に処刑されたが、彼は別れのスピーチはせず、「神は私の敵をお許しになり、私の魂を受け入れて下さるでしょう」とだけ語った。

(参考資料“Highwayman & Outlaws”by John Gilbert 1971 pub.Severn House)



 




【プロダクションノート】

この映画の脚本がイギリスを代表する製作会社ワーキング・タイトル社の興味を引いたのは7年前のことだった。社長のひとりエリック・フェルナーはその時のことをこう語る。「ゲイリー・オールドマンが何本かの脚本の中からいくつかの場面を自ら演じてくれた。その中の一本が二人の強盗の物語で、時代劇なのに、すごく現代的な動きがあった。ありふれた時代劇ではなく、派手なアクション映画のような脚本だった。すごく興奮したね。まだ映画化できる段階ではなかったが、アイデアがすごく気に入って、ゲイリーや彼のパートナー、ダグラス・アーバンスキーと一緒に企画を膨らませたいと考えた」。 次に問題となったのは、この題材をうまく映画化できる才能と想像力を持った監督を探し出すことだ。フェルナーはこれが初監督作となるジェイク・スコットの起用について語る。「これまで作られたどんな映画とも違う作品にしたかった。だから、ジェイク・スコットのアプローチは作品にぴったりだった。彼はミュージック・ビデオという大変スタイリッシュなメディアにいる。忠実の正確さにとらわれない視覚的な作品を作りたかったので、彼の手法がいいと思ったよ」

カーライルもリー・ミラーもこの映画のエネルギーと風刺に引かれ、出演を決めた。「あらゆる要素がつめこまれた作品なんだ」とリー・ミラーは言う。「とても愉快だし、その上、ロマンティックで、アクションもつまっている。ジェイクとプロダクション・デザインのノリス・スペンサーは、「他の世紀のものも取り入れながら世界を作り上げた。これまでみんなが見てきたような映画ではない。そこが僕としては好きだね」。 カーライルもこれに同意する。「時代劇とは思えないようなスタイルで、セリフの言葉使いにもそれが反映されている。昔の労働者も今と同じような話し方をしたに違いない、と思ってきたが、この映画の脚本にはそれが反映されている。セリフまわしに関して僕たちはすごく自然だった。ばちあたりな言葉もいろいろ出てくるが、映画の流れにうまく合っている」

リー・ミラーとの共演についてカーライルは言う。「ジョニーと僕は『トレインスポッティング』のとき、すごくうまくいったので、また一緒に仕事ができて本当にうれしいね。僕たちの間にはいつも強い信頼感があるが、これは肉体的なアクションを撮る時、すごく大事だ。マクレーンが壁にはりつけになったり、二人がケンカをするシーンもある。こういう時は相手の男優を信頼することが大事だ」リー・ミラーもそれに対して、「ロバートがプランケットを演じてくれるなんて、うれしいね。彼の演技のスタイルも、演技にすごく真剣に取り組むことも知っている。それでいて、いつもユーモアを忘れない。共演はいつも楽しいよ」と語る。

ロチェスターを通じて、マクレーンは魅力あふれるレディ・レベッカと出会い、激しい恋に落ちてしまう。レベッカ役を演じるのはアメリカの女優リヴ・タイラーで、彼女はこの役についてこう発言する。「賢いレディ・レベッカはロンドンの社交界にとけ込めないでいるのよ。当時の裕福な女性の趣味は限られていた。レベッカは音楽や刺しゅうなど、女性の伝統的な趣味には関心がなくて、孤立していた。でも、馬車が追いはぎにあった時、すごく興奮して、これが自分の求めていたものだと感じる。マクレーンとの間にはありきたりなラブシーンがなくて、そこが私としては気にいってるわ。お互いの気持ちが少しずつ高まっていくのね」

タイラーもこの映画の脚本にすぐに魅了されたひとりだ。「とても心を惹かれたわ。本当に愉快だし、人間的な魅力もある。どこか匂いがあって、清潔な映画ではない。ただきれいなだけの場所は出てこない。その向こうには実はおぞましいことが潜んでいる。酔っ払い、娼婦、殺人事件なんかがあふれていた。この時代の人々は毒気でいっぱい。きれいで、みだらで、セクシーな映画だと思う」

出演者たちはジェイク・スコットの仕事を楽しんだ。「ジェイクはとても才能に恵まれている。彼には本物の視点があるし、こういうスリルと冒険にあふれた映画が登場するのは久しぶりじゃないかな」と語るのはカーライル。タイラーもつけ加える。「ジェイクはカットをいろいろ撮らないのよ。だから、アクション・シーンがすごく生々しく見える。この映画を作ることにすごく情熱を抱いていたわ。細かいところまで自分で映像を作り上げていったのよ。見事なストーリーボードやコスチュームのスケッチも用意した。みんなの靴にまでこだわり、ステッチまで描いたデザイン画も作っていたわ」

乗馬や銃を修得するかたわら、リヴはイギリス・アクセントも勉強することになった。「最初は時間がかかったけれど、私のダイアローグ・コーチ、バーバラのおかげで、最後はなんとかなったわ。すごく集中力が必要だった。最初はすらすら出てこなくて、途中で何度も笑ってしまったの」と、後に語っている。



●ジェイク・スコット インタビュー (Total Film誌 1999年4月号より)

CMから映画まで幅広く活躍してきたスコットのキャリアは、どこか父親リドリーに通じる。つまり、スコット・ジュニアはナイキなどのCMを撮り、U2やR.E.M.などの音楽ビデオを手がけながら、トニー・スコットのテレビ・シリーズ「ザ・ハンガー」のエピソードも作ってきた。

Q.歴史的な背景を持つ映画で、あえてバディ・ムービー(相棒映画)のスタイルをとった理由は?

A.「互いを頼りにしない二人の男の友情を描いた作品だと僕は思う。確かに、そういう意味ではバディ・ムービーだね。僕としては『明日に向かって撃て!』や『サンダーボルト』みたいな映画にしたかったんだ。最初、マクレーンには好意を持たないで欲しい。“こいつは最低だ”と観客に思ってほしいんだ。でも、最後には二人のことを信頼してもらいたい。もし、僕ひとりでこの映画を作ったら、もっと暗くて、つらい話になったかもしれないね。悲劇的な終わりにすることもできただろう。オリジナル・シナリオではプランケットは最後に死ぬことになっていた。『明日に向かって撃て!』がそうだったように、商業的な映画は悲劇的に終わる。『テルマ&ルイーズ』でもそれがくり返された。でも、他の人と相談することによって、僕の悲劇的なアイデアがハッピーエンドに変わっていったんだ。」

Q.この映画はわざと暗い照明で撮られているシーンが多いですが、何か特別な理由があるのでしょうか?

A.「レンブラントなど、この時代の絵画を参考にしたので、こうなっただけさ。電気が無い時代の照明で、僕としてはブルーの照明やスモークをみたくなかった。うっすらと物は見えるものの、夜に近い感じの映像を作りたかった。部屋全体を明るく照らしている時代劇を見ると、いつも困惑させられる。でも、この映画で特に暗いのは、冒頭のいくつかの場面だけで、僕としてはこの世の地獄ともいえる世界を見せたかった。気取った言い方に聞こえるかもしれないけど、この時代は映画に出てくるような人間たちが闊歩し、ロンドンはぞっとするような場所だったんだ」

Q.“ミュージック・ビデオの監督”というキャリアをどのように意識していますか?

A.「いつも笑ってしまうことがあるんだ。みんなが話題にしているミュージック・ビデオといえば、スパイス・ガールズでも、メイン・ストリームのポップでもない、デヴィッド・フィンチャーのように映画から大きな影響を受けた監督たちの作品について語っているんだ。僕はミュージック・ビデオを見て、それはちょっとした実験映画だと思うようにしている。確かに映画を作っているわけじゃないが、映画を作るような行為には違いない。それに大半の作品はすごくうまく出来ているし、革新的だと思う。ミュージック・ビデオは音楽に合わせたモンタージュだし、こうした要素が実は映画にも登場していることを忘れがちな映画至上主義者がいる。映画同様、ミュージック・ビデオには最低のものがある。そして、仲間たちと同じように、僕の2本のビデオ作品もMOMA(ニューヨーク近代美術館)に所蔵されているんだよ。

Q.試写会で、太った50代くらいの男性がふたりでこんな事を言っていました。「これでまたイギリス映画の寿命が縮まったな。ピントがずれてるし、音楽の使い方もひどい」と。

A.「そういう反応は光栄だね。現代の音楽を使うことにひるんでしまうことがあって、やりすぎではないか心配になることもあるけど、伝統的なことに少しばかり意義を申し立てたかった。ただ音をなんとなく流すだけではイヤだった。素晴らしいサウンド・トラックがほしかったからね。その意味づけについても考えたかった。年配の観客よりも、若い層の反応のほうがいいね。とにかく、新しい気分を満喫できる作品だと思う。イギリス映画は、長い間、ちょっと単調だった。映画が大衆向きに作られるという理由だけで非難される傾向が強かったからね。確かにそういう映画にはそういう、面もあるけど、そんなことで攻撃するのはつまらないと思うよ」

Q.あなたはリドリー・スコットの息子であり、トニー・スコットの甥ですね。結局、いつか映画を作る運命だったと思いますか?

A.「僕はデッサンや絵を描くのが得意だったし、視覚に敏感な人間だった。これは僕が刺激的で、興味深いこの世界で育ったせいだろう。反対にフットボールは得意じゃなかった。だから、フットボール選手にはならなかった。もちろん、フットボールは嫌いじゃないし、試合をしたいとも思う。でも、僕にはどうも向いていなかったってことさ。

Q.姓を変えて、スコット・ファミリーというブランドを脱ぎ捨てようと思ったことはありませんか?

A.「一度も無い。家族のことは誇りだし、こんな家族がいて幸運だったとも思う。でも、もちろん、自分の力でやっていきたいし、生きている間に最低一本は価値ある作品を作って、みんなにショックを与えたい。さっきの質問に出てきた太った男性に「この映画は人をからかっているのか」なんて言われたら、最高だね。そういえば、『ブレードランナー』が登場した時のことを思い出してほしい。最初、みんなは分かってくれなかった。父はこの反応にすっかりまいった。完成した時、特別な作品と信じていたからね。観客に支持され、批評家に受け入れられたいと、どんなアーティストでも思っているはずだ。それが彼らの勲章だ。素晴らしい映画を作ったことをみんなに認めてもらいたいんだよ。」



 




【ストーリー】

ロンドン、1748年、兵士たちに追いつめられた名うての強盗ウィル・プランケット(ロバート・カーライル)は、撃たれた仲間を置いて危うく逃げ延びる。たまたまこの逮捕劇を見ていたのが金欠病の聖職者の息子ジェームズ・マクレーン(ジョニー・リー・ミラー)。二人は死んだ強盗が飲み込んだ略奪品のルビーを手に入れようとして、墓場でばったり顔を合わせる。そこに再び現れたのがチャンス(ケント・ストット)率いる兵士たち。二人はあえなく逮捕され、刑務所に収監される。風貌も物腰も正反対のプランケットとマクレーンは、看守に言わせれば“薄汚いカス野郎と紳士”。看守に受けがいいマクレーンを見たプランケットは名案を思いつく。マクレーンに例のルビーを渡し、看守を買収させてシャバに出るという“紳士協定”を持ちかけた。自分の頭脳と才覚、マクレーンの社交界でのコネ、二人で組んで稼げばアメリカに行く自分の夢も叶うし、マクレーンも本物の紳士になれる。かくして二人は、主人と従者にみせかけて上流階級の世界に足を踏み入れた。

手始めはマクレーンの旧友ロチェスター卿(アラン・カミング)宅。その晩の賭事で大金を手にした裁判長ギブソン卿(マイケル・ガンボン)の馬車を襲うことにする。覆面してハイドパークで待ち伏せする二人。馬車を止めたプランケットはギブソン卿を殴り倒して有無を言わせず金品を奪い取る。そして、同乗していたギブソン卿の姪のレディ・レベッカ(リヴ・タイラー)の首の宝石を取るようマクレーンに促す。彼女こそロチェスター卿宅でマクレーンが一目惚れした女性。彼は「乱暴な方法で申し訳ない」と強盗に似つかわしくない物言いで、気の強いレベッカを驚かせる。この事件がやがて二人を紳士強盗として有名にしていくことになる。その夜、ギブソン卿の屋敷で開かれた夜会で再会したマクレーンとレベッカの間には、特別な感情が響き合っていた。しかし、ギブソン卿はマクレーンを一目見ると「ろくな人間じゃない」とレベッカを牽制する。卿の右腕として働くチャンスもレベッカに思いを寄せているが、彼女の態度はそっけない。

プランケットはマクレーンに射撃を教え、強盗を重ねるにつれて二人の間には友情が芽生えていった。マクレーンが情報を得るために渋々イングランド随一の金持ち女とベッドを共にして性病をうつされたり、盗んだ宝石が偽物だったり、失敗も多々あるが、二人は強盗稼業を続けていった。プランケットは2年前まで薬屋を営んでおり、その知識を活かして作った火薬も仕事を成功させるための大きな武器になった。 ある日、売春宿で女に乱暴しているチャンスを見たプランケットは、女を助けようとして彼を殴りつけ、決闘を申し入れられる。翌朝、マクレーン立ち会いのもとに決闘が行われた。命中したプランケットの銃弾は、チャンスの胸に挟んだ聖書の中にどどまり、チャンスの放った銃弾はプランケットの腕をかすめる。二人の間の敵対意識はさらに強まっていった。

社交界は紳士強盗の話題で持ちきりだった。レベッカと同席した茶会で、思わず自分がその当人だと漏らしそうになるマクレーン。プランケットは彼の恋心が二人の危機を招きはしないかと心配でたまらなかった。ある日、フランス大使の馬車を襲った二人は、チャンスたちに取り囲まれる。大使は銃撃戦で死に、マクレーンも重傷を負った。プランケットは彼を家に連れて帰ると、薬屋の経験を活かして看病する。そして、彼は、これが潮時と、二人分のアメリカ行きの切符を買うことにする。

議会では大使死亡事件からギブソン卿への批判が噴出していた。やがて、チャンスの陰謀でギブソン卿は失脚し、国外への追放を言い渡される。それを伝えに来たチャンスは、帰り際に無理矢理レベッカを押し倒す。その夜、レベッカはマクレーンのもとを訪れた。彼女は叔父とともにフランスに旅立つことを告げ、馬車を襲うようにたのむ。彼女はマクレーンが紳士強盗であることに気づいていたのだ。「イエス」と答えるマクレーン。二人は初めてキスを交わす。

レベッカの計画に懐疑的だったプランケットも、相棒のためにしかたなく参加することになった。約束の時間、二人は馬車を襲う。しかし、車内にレベッカの姿はなく、包囲していたのはチャンスの一隊だった。チャンスはギブソン卿を撃ち殺し、プランケットとマクレーンは危機一髪その場から逃げ出す。しかし翌日、マクレーンはギブソン卿殺しの犯人に仕立て上げられていた…。





 




【キャスト&スタッフ】

■ゲイリー・オールドマン(製作総指揮)

1958年生まれ。数年間、舞台俳優として経験を積んだ後、『シド・アンド・ナンシー』(1986)でセックス・ピストルズのベーシスト、シド・ビシャスを演じ、強烈な映画デビューをはたした。その後も、キレた刑事役で話題をさらった『レオン』(1996)、続いてベッソン作品の悪役に挑んだ『フィフス・エレメント』(1997)などで、個性派俳優として確固たる地位を築く。監督デビュー作となった『ニル・バイ・マウス』(1997)では自伝的な要素を含んだ人間ドラマを描き、批評家達から高い評価を得た。新作はメアリー・スチュワートソン、スキート・ウーリッチ共演の『Anasazi Moon』(2000)。本作では初の製作総指揮を務める。


■ジェイク・スコット(監督)

1965年生まれ。これまで数々のミュージック・ビデオ、コマーシャルを手がけ、スコット・ファミリーのニューフェイスとして満を持して長編第1作に臨んだ。

R.E.M.のミュージック・ビデオ「エヴリバディ・ハーツ」があり、この作品はその技術力で1994年のMTV賞最優秀監督賞、最優秀躍進賞の2つの賞を獲得している。このプロモ・ビデオはグラミー賞にもノミネートされた。スマッシング・パンプキンズの「ディアストーム」のための彼のビデオは、1994年のMTV賞の数部門にノミネートされた。他にもオアシスの「モーニング・グローリー」、U2なども手がける。

最近ではリーの「サンド・デューン」、ナイキの「ワーク」などのCMの仕事もしている。



■ティム・ビーヴァン&エリック・フェルナー(プロデューサー)

ワーキングタイトル社の共同会長。ティム・ビーヴァンとエリック・フェルナーは、大ヒットした2本のイギリス映画、ヒュー・グラント、アンディ・マクダウェル主演『フォー・ウェディング』(1994)とローワン・ワトキンソン主演の『ビーン』(1997)を含む40本以上の作品を手がけてきた。また、スーザン・サランドン、ショーン・ペン主演のオスカー受賞のヒット作『デッドマン・ウォーキング』(1995)、コーエン兄弟監督、フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェーミ、ウィリアム・H・メイシー、ピーター・ストーメア主演の『ファーゴ』(1996)、大ヒット作『エリザベス』(1999)、『ノッティングヒルの恋人』(1999)も彼らのプロデュースだ。


■クレイグ・アームストロング(音楽)

アームストロングはロンドンの王立音楽アカデミーで作曲と編曲、ピアノを学んだ後、テレビ、映画、そしてCM音楽と幅広い活動を行っている。マドンナ、マッシヴ・アタック、U2、『ミッション・インポッシブル』のテーマ音楽、(注:ストリングスのアレンジャーとして参加)、スウェード、ティナ・ターナー、ペット・ショップ・ボーイズなどの仕事もこなす超売れっ子。最近ではデンゼル・ワシントン主演の『ボーン・コレクター』(1999)も手がけた。4年前にオリジナル・スコアを担当したバス・ラーマン監督『ロミオ&ジュリエット』(1996)のサントラは世界中で大ヒットした。



■ロバート・カーライル(ウィル・プランケット)

1961年生、スコットランド・グラスゴー出身。映画デビュー作は、映画学校時代に参加した『Apprentices』。その後、カーライルは、1991年ヨーロピアン・フィルム・オブ・ザ・イヤーに輝くケン・ローチ監督作品『リフ・ラフ』(1991)で主役のスティーブを演じた。さらにビル・フォーサイス監督の『Being Human』に出演し、アントニア・バード監督の問題作『司祭』(1994)では同性愛の司祭の愛人グレアムを演じた。国際的な成功をおさめたダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』(1996)に出演後、ピーター・カッタネオ監督の大ヒット作『フル・モンティ』(1997)で主役を演じた。最近ではアントニア・バード監督、ガイ・ピアースと共演の『ラビナス』(1999)、強烈な印象を残す適役“レナード”を演じた『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)、そしてレオナルド・ディカプリオ共演の『ザ・ビーチ』(2000)といったハリウッドでの活躍も目立つ。アラン・パーカー監督、エミリー・ワトソン共演『アンジェラの灰』(1999)も話題に。


■ジョニー・リー・ミラー(ジェイムズ・マクレーン)

1972年生。ダニー・ボイル監督の高い評価を得た『トレインスポッティング』(1996)で“シック・ボーイ”を演じて世界中に名をはせる。

最近ではアラン・ルドルフ監督、ジュリー・クリスティ共演の『アフターグロウ』(1997)でエリート・ビジネスマンを好演した。パトリシア・ロゼマ監督でジェーン・オースティンの原作を映画化した『Mansfield Park』(1999)にも出演。

最近、彼は仲間の俳優ジュード・ロウ、ユアン・マクレガーと劇団、ナチュラル・ナイロンを結成した。



■リヴ・タイラー(レディ・レベッカ・ギブソン)

1977年生。メイン州出身。『精神分析医J』(1994・ビデオ発売)で主役を演じて映画デビュー。その後、『エンパイア・レコード』(1995)で主役を演じ、ジェームズ・マンゴールド監督の『君に逢いたくて』(1995・ビデオ発売)では地方のレストランのウェイトレス役。この作品は1995年のサンダンス映画祭で審査員大賞を受賞した。その後、タイラーはベルナルド・ベルトリッチ監督、ジェレミー・アイアンズ共演の『魅せられて』(1996)、パット・オコナーの『秘密の絆』(1997)、トム・ハンクス初監督作『すべてをあなたに』(1996)、と次々に話題作に出演。そして『アルマゲドン』(1998)で人気を不動のものとした。最近では『クッキー・フォーチュン』(1999)での好演が記憶に新しい。レイフ・ファインズ共演の『オネーギンの恋文』(1999)でも注目を集める。


■アラン・カミング(ロチェスター卿)

1965年生、スコットランド出身。アラン・カミングの素晴らしいキャリアは、ロイヤル・シェイクスピア・シアターでの公演や、スタンダップ・コメディ、長編映画、彼自身のテレビ・シリーズの脚本、そして最近の短編映画『バター』の脚本と演出と多岐に及んでいる。

『Emmaエマ』(1996)、『ロミーとミッシェルの場合』(1997)、そして『スパイス・ザ・ムービー』(1997)でのあやしげなホテル・フロントの演技も話題となった。



 









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