1.「シンデレラ」を逆にした1ひとりの女と3人の男の愛のおとぎ話
「これは一種のおとぎ話だ。ジョセフがかわいそうなシンデレラで、トムとルーファスが意地悪な姉妹たち、そしてモニカが王子さまというわけだ。マーサの気をひこうとするフランクとダニエルは、シンデレラの姉妹のような行動をとる」。この映画の4人の関係をそう語るのは監督のニック・ハム。この映画のアイデアは脚本家ピーター・モーガン自身が体験した3人の友達とのつまらない口論からヒントを得た。友人たちと出席したパーティで、パリから来た美しい女優にみんなが恋をしてしまったのだ。この体験をもとにモーガンは脚本をふくらませた。「自分の感情を素直に出せない神経質な英国人の男性が、新鮮な感覚で表現されていると思ったわ。仲間と一緒の時は男性もまるで女性のように話す。こんな風な映画はなかった」とは製作者マーミオンの弁。
2.キュートで勇気あるヒロイン、マーサのキャスティング
マーサ役にはニコール・キッドマンやローラ・ダーンなど、ハリウッドの一流の女優たちが候補者として上げられた。そして新人のモニカ・ポッターと出会い、彼女こそがこの映画のヒロインだと感じた。「とても魅力的で、軽いコメディを上手に演じることができる。こんな女優は珍しいと思う。それでいてドラマ的な感情表現もうまい。彼女が部屋に入ってくるだけで部屋が明るくなった」と監督。ポッター自身は「どんな女性にもマーサ的な要素があると思うわ。どこか知らない土地に行って、自分の人生を始めたいって、考えることがあるんじゃないかしら」とマーサ役について分析する。
3.注目の大型スター、ジョセフ・ファインズの魅力
『恋におちたシェイクスピア』や『エリザベス』など話題の大作映画への出演が続くジョセフ・ファインズ。今回の作品ではブリッジの教師ローレンスを演じて、ロマンティックな魅力を発揮する。「ローレンスは優しくて、温かくて、率直な人物だ。ジョセフはこうした性格をすべて満たしていた。カメラを通じて、これほどエキサイティングなマスクと説得力を持った俳優にはめったに出会えないと思うね」。そう語るのは監督のハムだ。一方ファインズは「本当は僕はフランクの役を演じたかった。フランクはかわいそうな俳優という設定だけれど、僕たち俳優はみんな彼と似たようなところがあるからね」と言う。結局、内気なローレンス役を説得力を持って演じることになった。
4.ロマンスを盛り上げるロンドンの観光スポット
映画にはロンドンの印象的な観光名所が登場し、ハッピーなロマンスにふさわしいムードを大いに盛り上げる。マーサがフランクと出会うのはハイド・パークという設定だが、ハイド・パークは王室の持ち物なので、車両制限などがあり、結局、テムズ川近くのバタシー・パークで撮影されることになった。そのバタシー・パークの近くにあるのが有名なチェルシー橋。マーサとダニエルが再会する場面に登場する。この橋の近くにあるチェルシーは高級住宅街として知られ、作家のオスカー・ワイルドや詩人のダンテ・ガブリエル・ロセッティなどが住んだ場所でもあった。4人の主人公が一同に顔を合わせるクライマックス・シーンには下町にあるクラーケンウェルの雰囲気のいい広場が使われた。他にも高級住宅街のノッティングヒルやロンドン郊外のハマースミス橋など、ロンドンの落ちついたクリーンな地域がロケ地として選ばれた。
5.3人の大人になりきれない男たち
映画の3人の男性について監督はこう分析する。「3人は人生を考え直さなければいけない時期に来ている。年齢も20代から30代へと変わりつつある。この映画の男たちはまだ大人になりきれないでいたが、勇気あるマーサと出会って、自分たちも新しい人生を始めようと思う。前向きなアメリカ女性に出会って、刺激されるんだ」。ストレートで積極的なアメリカ人、マーサとどこか煮え切らない3人の英国人。その対比が映画の面白さにもなっている。「いざ3人の男優たちが集まると、まるで映画そのものだった。リッチな役のトムはいろいろ欲しがる。アメリカのリムジンがいいという。俳優役のルーファスはそんな彼をからかう。そして、ブリッジの教師役のジョセフは何も欲しがらないのに、いつの間にか手に入れていた」とはハムのコメントだ。