『マラソン』/"MARATHON"


みんな、誰かの一等賞。



7月2日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にて公開

2005年/韓国映画/35mm/カラー/1:1.85 ヴィスタ/SRD、ドルビーSR/117分/韓国公開:2005年1月29日/日本語字幕翻訳:根本理恵 /提供:シネカノン、アミューズソフトエンタテインメント、松竹、衛星劇場、テレビ東京、博報堂DYメディアパートナーズ/日本版テーマソング:「そして今も」小田和正(BMGファンハウス)/配給:シネカノン、松竹

◇監督:チョン・ユンチョル ◇脚本:ユン・ジノ/ソン・イェジン/チョン・ユンチョル(ノヴェライズ幻冬社刊) ◇撮影:クォン・ヒョクジュン ◇照明:イ・ジェヒョク/ナム・インジュ ◇編集:ハム・ソンウォン ◇美術:イ・グナ ◇CG:パク・ヨンジョン ◇音楽:キム・ジュンソン(サントラ:ソニー・ミュージック ダイレクト) ◇音響効果:パン・ソンチョル/キム・クァンス/チョン・レフン ◇メイク:ヤン・ヨニョン ◇衣裳:ハム・ヒョンジュ ◇助監督:イ・ソ ◇エグゼクティヴ・プロデューサー:キム・ウテク ◇アソシエイト・プロデューサー:チョン・テソン ◇プロデューサー:ソク・ミョンボ

◇キャスト:チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン、ペク・ソンヒョン、アン・ネサン



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【解説】

5歳の心を持つ20歳の青年チョウォン
ボクは走っている時がいちばん幸せ!


◆これが、韓国で500万人を号泣させ、しかもハッピーにした笑顔です。

身体は20歳だが、精神年齢は5歳のチョウォン。自閉症の障害を持つ彼の予測不可能な行動やストレートな感情表現は、いつも周囲に騒動を巻き起こしている。けれど、チョウォンの純粋で無垢な心は、いつしかみんなの気持ちをやんわりと解き放つ癒しのパワーをも秘めている。

韓国で記録的な大ヒットを更新中の『マラソン』は、そんなチョウォンの純粋さに笑わされ、同時に幸せいっぱいの涙で頬を濡らすあなた自身を発見することのできる、すがすがしい感動作である。

チョウォンのモデルとなったペ・ヒョンジンさんは、2002年、19歳でチュンチョン国際マラソン大会に出場し、自閉症という障害があるにもかかわらず、健常者でも困難といわれるフルマラソンを2時間57分で見事完走。その快挙は、TVや雑誌など、大いにマスコミを賑わせた。そしてその隣には、時に厳しく時に優しく、20年の間、惜しみない愛情を注ぎ彼を見守り続けた母親、パク・ミギョンさんの姿があった。この奇跡のような出来事は、スクリーンを通じて、より多くの人々に希望と感動を与えてくれることだろう。

チョコパイとシマウマが大好きで、音楽を聴くとところかまわず踊りだしてしまう。そんな純真なチョウォンの表情は、走る時だけは楽しそうに輝き、やがてフルマラソンを3時間以内に完走する《サブスリー》に挑戦することになる。演じるのは、『春香伝』『ラブストーリー』のチョ・スンウ。映画はもちろんミュージカル舞台でも活躍する彼が、チョウォンをイノセントでありながら力強く熱演。本作で大ブレイクし、現在CM出演や次回作のオファーが殺到している。また、息子の世話を焼くあまり、他の家族を顧みない母親キョンスクに、「LOVEサラン」でチャン・ドンゴンの恋人役で大人の魅力を放ったキム・ミスク。彼女は本作で22年ぶりにスクリーンに復帰、文字どおり "韓国の母"を、迫真の演技でフィルムに焼きつけた。ふたりは撮影中も実際の親子のように接し、完璧な信頼関係を築き上げたという。

また、兄にばかり関心を寄せる母に心を閉ざす弟チュンウォン役で、「天国の階段」でクォン・サンウの少年時代を演じた美少年ペク・ソンヒョンが瑞々しい演技を披露するほか、チョウォンと走ることで、自らもマラソンの楽しさを甦らせるコーチのチョンウクに、『黒水仙』のイ・ギヨン、チョウォンの父親で、妻のもとから離れてゆく夫に、『オアシス』でのソル・ギョングの兄役が印象深いアン・ネサンと、実力派が脇を固めている。

監督のチョン・ユンチョルは、本作が長編デビュー作。脚本を執筆する前にモデルとなったヒョンジンさんとマラソンをしたときの実感を、自閉症の障害を持つ主人公チョウォンが、社会とコミュニケートする重要性と喜びへと結実させた熱意あふれる監督ぶりは高く評価され、早くも今年の黄金撮影賞の新人監督賞を受賞。今後の映画賞レースをリードしてゆくのは間違いないだろう。また、ラストのチュンチョン国際マラソンのシーンは、2004年、実際の本大会で5台のカメラとヘリコプターを駆使して、参加者6万人を大画面に収めたもので、CGなど特殊撮影は一切使われていない。韓国映画史上最大規模となったこの空撮シーンは、クライマックスに相応しい臨場感と劇的な迫力を生み出しており、必見だ。

今年1月29日の韓国公開以来、『アビエイター』や『コンスタンティン』といったハリウッド大作を押さえ、翌週から5週間、ボックスオフィスのナンバーワンを独占、公開52日目には全国で500万人の観客を動員する大ヒットとなり、韓国歴代映画トップテン入りを果たした。また、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領とヒョンジンさん母子との面談が大々的に報じられるなど、かつてない社会現象を巻き起こし、文字どおり今年最大の話題作となった。



 


【プロダクションノート】

◆『マラソン』は実話の物語

『マラソン』は、実在する自閉症の青年ペ・ヒョンジンさんの実話を基にしている。健常者でも難しいといわれる42.195キロのフルマラソンを3時間以内で完走したヒョンジンさんの物語は、これまでTVや本を通して紹介され、多くの人々に感動を与えている。

『マラソン』は、歴史の中に隠されていたショッキングな事件やヒーローの物語を描いているのではない。これは、私たちが暮らしているこの時間、ほんの隣で起きた小さな奇跡だ。当たり前で平凡な身近な人間の物語の中に、私たちは自分自身の姿を再発見し、反省し、あるいは生きていく理由を考えるだろう。そして単純な共感よりも、より大きな感動を与えてくれるはずだ。



◆足で書いた脚本、繊細な監督

本作で長編デビューを飾ったチョン・ユンチョル監督は、『マラソン』の脚本を執筆しながら、チョウォンのモデルとなったペ・ヒョンジンさんと逢い、《ヤンジェチョン・マラソン・グループ》に加入して、彼と一緒に1年間、マラソンをした。初心者マラソンランナーであるユンチョル監督は、マラソンの先輩ヒョンジンさんと一緒に走りながら、"走る"ヒョンジンさんを見て感じ、彼の家族との距離を縮め、哀歓をともに分かちあった。『マラソン』には、このようなチョン・ユンチョル監督の実体験と感情が独特の繊細さと感覚的な映像によって反映されている。


◆撮影のためのマラソン大会開催!

ランナーのリアルな姿とマラソン大会の雰囲気を活き活きと伝えることが何よりも重要と考えた製作陣は、撮影のために実際のマラソン大会を開催した。専門マラソンコーディネーターを迎え入れ、3カ月の準備期間をかけて開催したインチョン・ソンド・マラソン大会には、1,300人のマラソンランナーたちがレースに参加した。おかげで作りものではない、実際の大会で感じられる緊張感とマラソンランナーのリアルな姿をカメラに捉えることができたのと同時に、大会に参加したランナーたちは、マラソンを走り、映画にも出演する特別な思い出を持てたのである。


◆6万人が走ったチュンチョン国際マラソン

クライマックスとなるチュンチョン国際マラソン大会のため、チュンチョン公設運動場にびっしり詰めかけたランナーと観客たち。およそ6万人に達する群集がひとつの画面に収まったこのシーンは、CGで作り出されたものではない。何と、実際の2004年チュンチョン国際マラソン大会の当日、俳優たちと製作陣がそこに潜り込んで、撮影を敢行したのだ。5台のカメラとヘリコプターを駆使した韓国映画史上、最大規模の空撮シーン。製作スタッフは、準備の段階から大会主催者と協議し、当日は関係者の積極的な協力のもと、実際の大会が開催されている運動場と道路で撮影を敢行することができた。


◆チョ・スンウとペ・ヒョンジンさんの美しい出逢い

「スンウ兄さんが、ヒョンジンの役をやったよ。スンウ兄さん、がんばったね」 『マラソン』の製作発表会で披露された映像を観たペ・ヒョンジンさんの感想だ。チョ・スンウは、撮影前にヒョンジンさんの自宅と彼が通っている育英学校を訪問し、彼の日常生活を観察し、また一緒にマラソン大会に出場して、併走したこともあった。家族以外にはすぐに心を開かないヒョンジンさんだったが、なぜかスンウにだけは逢った途端、親しげな微笑を見せた。そして、本当の兄のように彼の側をくっつき回り、みんなを驚かせた。スンウに逢うため、撮影現場を訪れ、常にチョコレートをプレゼントするヒョンジンさんと、そんな彼と親しく接するスンウ。並んで笑っているふたりの善良そうな眼もとは、まるで本当の兄弟のように似ていた。


<自閉症とは?>

自閉症とは、脳の発達障害のひとつで、一般的に専門医が「自閉症」とはっきり診断を下すのは、子供が4歳から5歳になったときがほとんどです。人口比率としては10,000人に一人の割合で、男女比は4:1といわれます。人とのコミュニケーションがうまくとれずパニックになったり、興味や関心が非常に偏っており、同じことを繰り返したがる特徴があります。併せ持つ知的障害の程度によって、重い場合は養護学校に通い、将来は福祉サービスを利用することもありますが、稀に特殊技能を生かし研究職に就く人もいます。 (自閉症ホームページより抜粋)


 


【ストーリー】

シマウマとチョコパイが大好きなチョウォン(チョ・スンウ)は、見た目は普通の19歳だ。しかし、彼は幼少期から自閉症という障害を抱えていた。母のキョンスク(キム・ミスク)は、チョウォンの世話に全精力を傾けるあまり、夫(アン・ネサン)や次男チュンウォン(ペク・ソンヒョン)のことを顧みなくなり、いつしか夫は自宅に戻らなくなっていた。そんな日々の中で、キョンスクはチョウォンの表情が走っている時だけは楽しそうに輝いていることを発見する。事実、走ることでチョウォンの腕の噛み癖が収まり、意志も強くなった。ハーフマラソンで3位入賞したことをきっかけに、キョンスクはチョウォンにフルマラソンを3時間以内で完走する《サブスリー》に挑戦させることを目標にする。そのためには本格的なコーチが必要だ。

ちょうど、チョウォンの通う養護学校に、かつてボストンマラソンで優勝した経歴を持つソン・チョンウク(イ・ギヨン)が飲酒運転の罰として社会奉仕にやってきた。これ幸いと、キョンスクは彼に息子のコーチを依頼するが、すでにマラソンへの情熱を失ったチョンウクにその気はない。しかし、いきなり母子でアパートに押しかけられ、部屋を掃除された挙げ句、彼はしぶしぶそれを承諾させられる。妻子に去られ、酒浸りの日々を送るチョンウクは「誰かに教える気分じゃない」とやる気もなく、ベンチに寝そべってチョウォンにグラウンドを走らせるだけだ。満足に意志疎通のできないチョウォンは、彼にとってはただ煩わしいだけなのだ。やがてチョウォンが憶えて帰ってくるのは、汚い言葉やツバ吐きといったコーチの悪癖ばかりなのに業を煮やしたキョンスクは、たまりかねてチョンウクに直談判するが、逆に彼から「走って病気が治るのか、母親のエゴでは?」と厳しく言い返されてしまう。

そんなある日、チョンウクは、「グラウンドを100周走れ!」という自分の気まぐれな命令を、チョウォンが実直に成し遂げたのを目の当たりにし、心動かされる。「100周走って嬉しい」。息も絶え絶えにそう言うチョウォンは、チョンウクの腕を取って、自分の胸の鼓動を彼に感じさせる。その日から、ふたりの関係は一変した。チョウォンと併走して、42.195キロを完走するためのペース調整を教えるチョンウク。いつしか彼の胸にも、マラソンの楽しさが甦っていた。


こうして打ち解け、心を許し合ったふたりは、マラソンだけではなく、一緒に競馬に行ったり、ビールを飲んだり。そんなチョウォンの変化を、コーチとしての不誠実な態度に原因があると不信を抱くキョンスクは、ついに彼と口論してしまう。「チョウォンが母親なしで生きられないんじゃない。あんたが息子なしでは生きられないんだ」「コーチはいらない。私の息子は私が育てる」。こう言い切ったものの、養護学校の校長先生からの職業訓練の勧めを断って出場したマラソン大会では、チョウォンは途中棄権。さらに、弟チュンウォンが警察に補導される事件が発生する。迎えに行ったキョンスクは、彼から「一度でも俺の身になって考えた? 大事なのはチョウォンだけだ。あいつの身になれよ、反抗もできずにウンザリしているはずだ」と言われ、顔色を失う。

そんなある日、地下鉄構内でシマウマ柄のミニスカートを履いた若い女性を見たチョウォンが、何気なしに彼女のお尻を触ってしまい、大騒動を巻き起こした。その直後、チョウォンは幼い頃、キョンスクが彼の手を離したことで動物園で迷子になったことを母に話し、キョンスクはチョウォンがそのことを憶えていたことに驚愕する。当時キョンスクは、チョウォンを育てることに自信をなくして、無意識のうちに彼を捨てようとしたのだ。そんな最中、倒れ込んだキョンスクは、胃腸穿孔の手術を受ける。病床で、彼女は夫に「好きなことを見つけてあげたかった。でも気づいたら、私が夢中になっていた。途中で辞めることはできなかった。生き甲斐を失う気がして」と、初めて弱気の本音を打ち明ける。

こうしてキョンスクは、意思表示のできないチョウォンを自分が強制的に走らせ、さらに彼に嫌だと言えなくさせていると自責の念を抱き、チョウォンをこれ以上、走らせまいと決心する。そして、チョウォンが走るはずのチュンチョン国際マラソンの開催日は、あとわずかに迫っていた……。





 


【キャスト&スタッフ】

■チョ・スンウ(Cho Seung-woo/ユン・チョウォン)

1980年3月28日、ソウル生まれ。高校時代に舞台に立ったことがきっかけで、演劇に興味を抱き、檀国大学演劇映画科で学ぶ。在学中の1998年に教授に勧められ、イム・グォンテク監督の『春香伝』のオーディションに応募、主人公、李夢龍役に2,037人の中から選ばれ、2000年に映画デビュー。その後、舞台「明成皇后」(2000)「地下鉄1号線」(2001)などに出演する一方、映画では『ワニ&ジュナ〜揺れる想い』(2001)でキム・ヒソン扮するワニの腹違いの弟ヨンミンをナイーヴに演じ、『フー・アー・ユー?』(2002)ではチャットゲームのプログラマー、ヒョンテ役で『英語完全征服』のイ・ナヨンと共演した。2002年には日本占領時代を舞台にしたソン・ガンホ主演の『爆裂野球団!』に友情出演。また、サイコサスペンス『H』では連続猟奇殺人事件の容疑者役でミステリアスな魅力を披露、新境地を拓く。2003年にはヒットメイカー、クァク・ジェヨン監督の『ラブストーリー』で運命に翻弄される主人公ジュナの悲劇的な恋のゆくえをドラマティックに好演。2004年にはイム・グォンテク監督の『下流人生』で1960年代、激動の時代を生きた裏町のヤクザを迫真の演技で体現、ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門でも高く評価された。また、同年はミュージカル「ジキルとハイド」で第10回韓国ミュージカル大賞主演男優賞を受賞するなど、幅広い演技力で活躍している。

映画とミュージカルを多彩に行き交い、"同世代最高の俳優"と賛辞を送られるチョ・スンウは、本作『マラソン』(2005)のチョウォン役について、「一生涯でも滅多に出逢えない役。それが早くやってきたので決して逃したくなかった」と語るとおり、眼差し、歩き方、口調といったすべてにおいてチョウォンになりきり、500万人を超える韓国の映画ファンの共感を獲得、2005年5月に行われた第41回百想芸術大賞の最優秀男優演技賞に輝いた。また、3月からは映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を題材にしたミュージカルに出演するなど、ますます俳優としての可能性は広がっている。

●フィルモグラフィー

2000 『春香伝』(イム・グォンテク)
2001 『ワニ&ジュナ〜揺れる想い』(キム・ヨンギュン)
2002 『フー・アー・ユー?』(チェ・ホ)
    『爆裂野球団!』(キム・ヒョンソク/友情出演)
    『H』(イ・ジョンヒョク)
2003 『ラブストーリー』(クァク・ジェヨン)
2004 『下流人生』(イム・グォンテク)
2005 『マラソン』(チョン・ユンチョル)



■キム・ミスク(Kim Mi-sook/キョンスク(母親))

1959年3月26日生まれ。KBSタレント6期生として芸能界デビュー。1998年にTVドラマ「LOVEサラン」でチャン・ドンゴン演じる主人公の年上の恋人ヨンジを大人の魅力で好演し、女優として脚光を浴びる。その後もTVドラマ「青い霧」(2000)「外出」(2002)「殴れ!」(2003)「愛するつもり」(2004)などに出演し、人気を獲得。知的で洗練されたイメージが愛され、DJとしても「世界のすべての音楽、キム・ミスクです」で活躍中。映画では、1983年の『他人の巣』(パク・ヨンジン)以来、本作『マラソン』(2005/チョン・ユンチョル監督)が23年ぶりの出演作となったミスクは、私生活では2児の母であり、「撮影中は鏡を見ない」と熱意に燃え、彼女の心情あふれ出る演技によって、キョンスク役に真の生気を与えることに成功した。2004年11月からは、TVドラマ「土地」にキム・ヒョンジュ扮するヒロイン、ソヒの祖母役で出演し、話題を集めた。


■イ・ギヨン(Lee Ki-young/ソン・チョンウク(コーチ))

1995年に、キム・ヨンビン監督の『テロリスト/哀しき男に捧げる挽歌』でナイフ使いの刺客チュンウを演じて注目され、キム・ジウン監督の『クワイエット・ファミリー』(1998)と『反則王』(2000)に友情出演。2001年には、ペ・チャンホ監督の『黒水仙』で朝鮮戦争時代の反共青年団長ダルス役で強烈な個性を放った。2002年にはチョン・フンスン監督の『大変な結婚』でコメディ演技を披露、TVドラマでは「千年至愛」(2003)「皇太子の初恋」(2004)などに出演する。過去の栄光に囚われ、酒びたりのマラソン・コーチを人間味たっぷりに好演した本作『マラソン』(2005/チョン・ユンチョル監督)に続く映画の新作として、イ・ビョンホンが主演したキム・ジウン監督のフィルムノワール『甘い人生』(2005)で冷酷な殺し屋ムソンを演じた。また、2005年3月に放映開始のTVドラマ「新入社員」では、ムン・ジョンヒョク演じるガンホの上司役でコミカルな味わいを見せている。


■ペク・ソンヒョン(Baek Seong-hyeon/ユン・チュンウォン(弟))

1989年生まれ。子役として、1994年にチェ・ジンシル主演、チャン・ギルス監督の問題作『私は望む、私に禁じられたことを』で映画デビュー。2001年にはチョン・ユンス監督の『ベサメムーチョ』でチョン・グァンニョルとイ・ミスク演じる、借金の返済に奔走する夫婦の長男に扮した。その後、TVドラマ「茶母(ダモ)」(2003)でイ・ソジン演じるボユンの、日本でも高視聴率を記録した「天国の階段」(2003)でクォン・サンウ演じるソンジュの、それぞれ少年時代を爽やかに好演、注目を集める。ほかに、TVドラマ「太陽人李済馬(イ・ジェマ)」(2002)「英雄時代」(2004)「海神」(2004)などに出演、子役スターとして引っ張りだこの存在になる。本作『マラソン』(2005/チョン・ユンチョル監督)では、自閉症の兄チョウォンに注がれる母の愛を渇望する多感な高校生チュンウンを情感豊かに演じ、大人の俳優への第一歩を踏み出した。


■アン・ネサン(Ahn Nae-sang/父親)

1964年12月25日生まれ。延世大学神学科卒業。舞台で頭角を現わし、1997年にチャン・ソヌ監督の『バッド・ムービー』で長編映画デビュー。『ゴースト・タクシー』(2000/ホ・スンジュン監督)『公共の敵』(2002/カン・ウソク監督)『ジャングル・ジュース』(2002/チョ・ミノ監督)などを経て、2002年にイ・チャンドン監督の『オアシス』で、ソル・ギョング扮するジョンドゥの父親代わりとなる兄ジョンイルを厳格に演じ、脚光を浴びる。その後も『菊花の香り〜世界でいちばん愛されたひと』(2003/イ・ジョンウク監督)『黄山ヶ原』(2003/イ・ジュニク)などで名バイプレイヤーとして活躍。2004年には『マルチュク青春通り』(ユ・ハ監督)でクォン・サンウ演じる高校生の担任教師に扮し、初主演作『欲望』(キム・ウンス監督)では妻(スア)と恋人(イ・ドンギュ)の愛に揺れるバイセクシュアルの中年男を演じ、センセーションを呼んだほか、ユン・イノ監督の『9歳の人生』にも出演。本作『マラソン』(2005/チョン・ユンチョル監督)では、長男チョウォンに人生のすべてを捧げる妻と疎遠になる兄弟の父親を寡黙な演技のうちに好演、深い印象を残した。


■チョン・ユンチョル(監督・脚本)

1971年生まれ。1997年、漢陽大学演劇映画学科卒業。同年、短編映画『記念撮影』を監督し、第4回ソウル短編映画祭の作品賞、シネマテーク賞に輝く。1999年に龍仁大学映画課大学院卒業。2000年の短編『冬眠』がクレルモン=フェラン国際短編映画祭(フランス)コンペティションに出品されたほか、シンヨン映画祭(韓国)監督賞に輝いた。2001年にはオーストラリア国立映画学校の編集課程を履修。2002年には『THREE/臨死』の『メモリーズ』(キム・ジウン監督)の編集を担当した。長編監督デビュー作となった本作『マラソン』(2005)について、「魂から滲み出る真実の感動を伝えたかった」と語るユンチョルは、この物語のモデルとなったペ・ヒョンジンさんとともに1年間、マラソンを走った。その実感によって生み出された真実の感動、普遍的でありながらも新鮮な物語、そしてディテールが際立つ繊細な監督ぶりが高く評価され、韓国で500万人以上の観客を動員する大ヒットを記録。また2005年の黄金撮影賞新人監督賞を受賞するなど、今最も将来が期待される若手監督になった。


■クォン・ヒョクジュン(撮影)

ポーランド国立映画学校卒業。2001年にムン・スンウク監督の『バタフライ』の撮影を手がけ、登場人物の感情を映像に込めることに優れた撮影監督と評される。2002年の『密愛』(ビョン・ヨンジュ監督)では、人物の繊細な情感を眩惑的な美しさで捉える一方、光と風に揺れる自然の風光を一幅の油絵のように収めた映像美を披露した。本作『マラソン』(2005/チョン・ユンチョル)では、感情の表現が不自由な自閉症の青年チョウォンの情緒を、映像を通して伝えることに焦点を合わせ、とりわけ、走るときの生命力溢れるカメラアングルと、燦燦と降り注ぐ陽射し、身体全体を駆け抜ける風、指先で感じる木の葉の感触などを映像に収め、新たな映像表現を展開させた。


■イ・グナ(美術)

1996年、弘益美術大学絵画科、絵画専攻卒業。1997年にイ・グァンモ監督の『スプリング・イン・ホームタウン』でデビューして以来、『8月のクリスマス』(1997/ホ・ジノ監督)『シュリ』(1998/カン・ジェギュ監督)『密愛』(2002/ビョン・ヨンジュ監督)などを手がける韓国映画界屈指の美術監督のひとり。本作『マラソン』(2005/チョン・ユンチョル)では、清らかで無垢なチョウォンが愛した暖かい自然空間と、彼が暮らす冷たい都市との相反するイメージを対比させ、劇的な効果を生み出した。また、マラソンのシーンでは、実際の大会を彷彿させる規模とディテールで、臨場感あふれる雰囲気を再現することに成功した。そのほかの主な作品に、『彼女を信じないでください』(2003/ぺ・ヒョンジュン監督)『花咲く春が来れば』(2004/リュ・ジャンハ監督)など。


■イ・ジェヒョク(照明)

AFI(アメリカ・フィルム・インスティテュート)卒業。演出と撮影、照明をこなす幅広い経験を積み、これまでの実践を基本に俳優の意図はもちろん、カメラと光の相性を正確に掴み取る能力を発揮する。本作『マラソン』(2005/チョン・ユンチョル監督)でも多彩な色彩感覚と深く豊かな光を作りだす手腕によって、登場人物の感情をより豊穣なものにした。これまでの主な作品はいずれも短編で、マイク・マイリー監督の『バグ・マン』(2003)のほか『柿の木』"The Loop""Vanished Acre"の撮影、『福日』の監督、『ドンタク星にはギタリストがいない』"Honey""The Florist"の照明がある。


■キム・ジュンソン(音楽)

1995年、ソウル大学作曲科卒業。中央コンクールで1位に入賞し注目された実力派で、作曲と演奏を並行して活動し、『殺人の追憶』の原案となった舞台「私に会いにきて」(1996)のほか、「ファウスト」(1999)「クルソブル」(2002)「時計が止まったある日」(2004)などの演劇音楽を担当する一方、映画ではいずれも短編で、『ある見知らぬ人々』(1996)『ガラスの天井』(1998)『子守り歌』(1998)『お母さん』(2002)、舞踊劇「金の砂」など多分野で活躍。2001年のドキュメンタリー『空色の故郷』(キム・ソヨン監督)を経て、初の長編劇映画となった本作『マラソン』(2005/チョン・ユンチョル監督)ではプロダクション初期から監督やスタッフと合流し、脚本を分析研究、暇を見つけては撮影現場を訪れた。こうして「俳優の感情とドラマが調和する音楽に比重を置いた」と語るように、弦楽とピアノ旋律による叙情的でありながら軽快なリズムが映画に溶け込んでいるだけでなく、楽曲としても魅力的な映画音楽を作りあげた。