『エニイ・ギブン・サンデー』オリバー・ストーン監督来日記者会見
 5月17日(水)ホテル西洋銀座サロン・ラ・ロンドにて
●出席者:オリバー・ストーン監督
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【質疑応答】

■オリバー・ストーン監督: なんだか、この音楽で出てきたならば、ファッション・ショーでキャット・ウォークしている気になりました。

◆質問: 4月30日でベトナム戦争終結から25年経ったんですけれども、貴方にとっていろいろなことが思い起こされると思いますが、ある記事で、ベトナム戦争を知らないフィルム青年と体験者の貴方が、映画の中のトニーがウィリーに向かって諭すように、まるでだぶったんです。映画ではコーチの言っていることを理解しますが、対談中、貴方とフィルム青年との間でギャップがあったのではないですか。それとも若い時の貴方に似ていましたか?

■オリバー・ストーン監督: 知らなかったのではなくて、ディメンションとして違ったということを言っておきたい。非常にいい質問だと思うのですけれども、シンプルに答えさせていただきます。彼は、『季節の中で』という映画を作ったトニー・ブイという30歳くらいの監督ですよね。彼は、知らなかったわけではないけれども、たまたまそのジェネレーションではなかった。私としては、ベトナム戦争戦後になってから6回ほど戻っていますけれども、素晴らしいことは、200万、300万の死者を出したあの戦争に対しまして、ベトナムの方々が、それは過去として思い出の中に閉じこめるというか、先へ進むためにはそのことは置いておいて、先へ行こうとして下さっていることだと思うんですね。そして、それは素晴らしいことだと思います。なぜなら、ジョン・マッケインという大統領候補がいますけれども、彼のように過去のことに拘っていては、本来の真実というものを歪めてしまって、我々は先へ進むことが出来ないと思います。

簡単にと言いつつも、非常に微妙な話なのでもう少し続けさせてください。しかしですね、ジョージ・ブッシュとかロナルド・レーガンが言っていたように、ベトナム戦争を忘れて先へ行きましょうというのは、それはいけないと思います。やはり、我々は戦争を忘れちゃいけないと思います。私としてはこれまで、ベトナム戦争について、映画なり、本、実は、来月、カンサス大学出版社から出る本があります。この本で初めて、私はなぜこのような映画を作ってきたか ― このバックにはどのようなことがあるのかという自分なりの資料やいろんなものを集めて、そして、200ページに近いんですけれどもエッセイを書きました。私としては、ものを作る人間にとって、歴史家が、間違った歴史を、あたかも真実のように伝えていくことに対しては我慢がならなかったので、このような形で本が出ることを大変嬉しく思います。そして、そういうことを続けてきた自分を誇りに思っています。

またちょっと、ふたつばかり言いたくなりました。それと、私のベトナム三部作と言われている作品は、1994年に公開されたかと思うんですけれど、『天と地』、あれは、真実を、女性が書いたものをベトナム人側から描いたものでした。ただですね、実際には、あの映画は北ベトナム側からの難民の方、それから南ベトナムからの難民の方、両方ともアメリカに住んでらっしゃる方を怒らせてしまいました。これは、『プラトーン』でも繰り返し言いましたけれども、非常に重要なことは、ベトナム戦争を忘れないということだと思います。これは、先ほど、ベトナムの方々が、戦争のことを忘れて先へ進むことは素晴らしいと言ったことと、あたかも矛盾するようですけれども、そういうことではなく、私が言いたいのは、やはり我々の中にきちっと思い出として残しておかなければ、戦争で亡くなられた方々に対しては、それじゃ、彼らの死が「無」になってしまうのではないかということなんですね。『プラトーン』の最後の部分を覚えてらっしゃいますでしょうか。私は最後に、「これから何か良いことをしていかなくては。それが結局、死んでいった者たちへの私なりの償い、思いなんだ」ということ。正に、そういう意味で良いことを続けていきたいと思います。



◆質問: この映画では、男の団結するチームの中でですね、女性のキャメロン・ディアスが、ビジネスライクな考え方を持ち出してきたためにチームが混乱したりする状況が描かれています。キャメロン・ディアスをそういう役にキャスティングした理由を聞かせてください。

■オリバー・ストーン監督: 彼女は非常に美しい女性で、今までは、どちらかというとコメディアン的なもの、または、可愛らしい役が多かったと思うんです。ですから、彼女は今までこういう役をやったことがなかった。しかし、彼女は、この撮影の時27歳だったんですけれども、本当に美しい女性でした。ああいうきっちりしたスーツを着てみると、もう、こちらが震えるほど美しい女性で、本当に金髪碧眼という ― マリリン・モンローのような美しさでしたね。つまり、あの年齢の女性しか持っていない美しさ、その瞬間しか得られない、その瞬間を、私としては映画に撮っておきたかったというのがひとつ。それは、特別に自分を興奮させる思いで撮ったわけですけれども。

あとひとつは、私は強い女性が好きです。今回の彼女の役は、父親が、フットボールチームを運営させていくために、息子のように育てた娘なわけです。ところが、彼女のほうは、女性として逆にアンバランスな状況があった。皆さまも、最後のほうを気をつけて観てもらえば分かると思いますが、試合が終わった時に、アン・マーガレット扮する母親が、彼女に対して「あなたの人生も大変だったわね。そういうふうに育てられたから悲劇的になっちゃった」みたいなことをブツブツ言うんだけれども、実は、あの所で、彼女は、頑張ってつっぱってるだけじゃなくて、ふと女を出してもいいんじゃないかという思いが、あそこで親子の中の心の交流があったのではないかと思う。私としては、そういうふうにキャメロン・ディアスに演じてもらいたいと思いました。

日本語に訳すと長いですね ― でも、まだまだコメントしたいので ― アメリカの女性について語りたい。アメリカにおいての文化の女性の強さというのは、たとえば、日本において、中国においての文化の中では描かれていないのが事実です。私はとかく、自分の映画の中では、女性をネガティブに暗く描いているとか、あまり本当に賞賛して描いていないというふうに批判されています。しかし、私に言わせていただければ、男も女も同じように描いている。人間としての欠点もあるし、同じように描いていると言い返したい。たとえば、キャメロン・ディアスの今回の役に関しては、結構「ビッチ」、クソ女だという人がいますけれども、しかし私は、それこそ正に性差別だと思うんですよね。確かに、彼女は非常にタフな女性ですけれども、あれが男ならばみんな何も言わないのに、女だからそういうことを言うわけです。私に言わせれば「なに言ってんだ」って思いがします ― 。



◆質問: この映画は、フットボールの試合のシーンがすごい迫力があったんですけれども、監督は、かなりのアメフト・ファンとお聞きしたんですが、このアメフトのシーンを撮るために、かなり工夫と研究などをされたと思うのですが、その経緯を簡単にお願いします。

■オリバー・ストーン監督: まず、これまでで一番苦労した複雑な撮影だったと言いたい。12人の主役がいて ― 選手がやるというのは、たとえば、カンフーのような演出があるというものではなくて、本当に肉体のぶつかり合いなわけです。ですから、役者がケガしないように、うまく選手に溶け込ませなければいけない。フットボール選手役の6人の役者ですが、みんな非常に体力があって、それでもケガしました。でも、文句は言わなかった。それと、7万人の群衆がいるということで、ゲームをするたびにいなければいけないんですけれども、でも、実際に試合の撮影のたびに7万人集めるということは不可能なわけです。ですから、よく観ていただけると、その辺のところで苦労して、試合を撮った時に、上手く後ろに群衆が入っているというふうに5つの試合を撮っていくことが大変でした。映画として観ていただける場合に、これは、フットボール以上に、大きな企業とか体制とかシステムの中の強欲とか欲とかを描いているんだと思うんです。つまり、どれだけ大きな大金が絡んでいるか。その中で、どんどんスポーツとしての芸術性が失われていく。それから、チーム内の忠誠心、選手に対する責任もない。もっと言えば、そういうことがないというのは、記憶を忘れていくということだと思うのです。そういう、会社側に社員に対する思いやりがないということは、アメリカでもヨーロッパでもそうだし、最近では、日本でもそういう状況だということを聞きました。

◆質問: フットボールと戦争の関係をどのようにとらえたのですか?


■オリバー・ストーン監督: 自分としては、戦争もフットボールの試合も同じようなとらえ方をしていて、その中から描きたいと思った。つまり、テレビでのフットボールの試合では、外から見ているだけなんだけれども、選手たちの主観的な視点で描きたいと思いました。確かに、戦争と同じだけれども、ここでは死ぬこともないし、ある形式化した形では行われているけれども、あるローマ時代の決闘士と同じような形での闘いがそこにあると思っているわけです。それともうひとつは、これはハイテクを駆使したものであって、でもローテクも組み合わされている。つまり、肉体がぶつかり合うという意味で厳しいものもあるんだけれども、それと同時に、たとえばクォーターバックというのは、300くらいのプレイを知っていなければ出来ない。瞬間的にチーム同士に暗号があって、科学者というか、エンジニアというか、瞬間的にすべてを分かって判断して、非常に複雑なわけで。たとえば、ラクビーなんかだと、選手の即興性が求められるけれども、フットボールは、初めから全部プランして一緒に戦うというところが似ているところだと思います。ゴルフと相撲を組み合わせた感じかな……(笑)。

◆質問: 次回作のプランがありましたならば、教えてほしいんですけれども。

■オリバー・ストーン監督: 私はずっと、国境なき医師団を舞台にして、15年間2人の間を追いかけていくラブ・ストーリーを考えております。『天と地』に続いて2作目にあたるラブ・ストーリーになるのではないかと思っております。

◆質問: キャスティングで決まっている人は?

■オリバー・ストーン監督: 今、ちょうどキャスティングしているところなんですけれども、最近、アメリカでは、1人しかスターにはギャラが払えないような状況なんですけれども、運が良ければ、2人のスターにギャラを払って出演してもらおうと思っております。


ここで、ゲストとして、本作を観て自らエールを送りたいという、タレントの藤原紀香が花束を持って会場に駆けつけた。「日本へようこそ。本当に素晴らしい映画でした。いつかチャンスがあったら、私も貴方の映画に出られたら嬉しい」と英語で挨拶を述べた。それに対し、監督は、彼女の服装を見て、「その衣装なら絶対に映画に出しちゃいます」とご機嫌な様子だった。2人の写真撮影後、会見は終了した。
(通訳者の表現をもとに採録。細部の言い回しなどには若干の修正あり)


『エニイ・ギブン・サンデー』は2000年5月27日より日比谷映画ほかにて公開。