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『青春』"Youth(Spring)" |
2023年/中国、フランス、ルクセンブルク、オランダ/212分/ドキュメンタリー/監督:ワン・ビン( WANG Bing )/2024年春、シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー/配給:ムヴィオラ
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手持ちカメラによって捉えられた雑然とした作業場。そこでは若い男女が猛烈なスピードで衣服をミシンで縫っている。彼らはその反復労働に慣れており、手を動かしている間でも、同僚同士で活発な会話を続けている。あちこちで言い争いが起こり、若い男女の間では恋愛に関する会話が交わされる……。ワン・ビン監督の新作は、そのタイトルが示すように、中国の10代後半から20代の若い世代と、衣料品製造の中心地である浙江省湖州市の織里鎮という町での彼らの反復労働の日々に焦点を当てた作品だ。カメラはあくまでも中立的で観察的な姿勢を崩さず、若者たちの劣悪な労働環境や、彼らが人生や恋愛や賃金交渉にどのように対処しているかを淡々と捉えていく。若者たちの多くにより良い未来が待っているようにはとても見えない一方で、今ここを楽しもうとする彼らの楽観主義的な姿が強く印象に残る。カンヌ映画祭のコンペティション部門でプレミア上映された。
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<ワン・ビン監督バイオグラフィー>
1967年、中国陝西省西安生まれ。瀋陽の魯迅美術学院で写真を学び、その後、北京電影学院に進学し、ミケランジェロ・アントニオーニ、イングマール・ベルイマン、ピエロ・パオロ・パゾリーニの作品に出会う。中でもアンドレイ・タルコフスキーを敬愛している。1990年代を通じて様々な映画作品の助監督やカメラマンとして生計を立てるも、主流な映画製作やテレビ界では自身の望むような成長に繋がらないと思い、自身の映画制作を始めた。
2002年には中国北東部の巨大な工業地帯の衰退についての9時間を超える長編ドキュメンタリー作品『鉄西区』を制作。ファーストカット版として、5時間バージョンの作品が2003年のベルリン映画祭にて上映。最終的な完成版は3つのパートに分かれており、ロッテルダム映画祭にてプレミア上映。その後、2004年にはフランスで配給され劇場公開された。今日、同作はデジタル時代に開かれた新たな可能性の前触れでもある傑作として評価されている。その後も同じスタイルで制作し、システムに囚われず非常に挑戦的なテーマに取り組み続け、1950年代後半の反右派運動を描いた『鳳鳴 ― 中国の記憶』(2007)、極度の貧困を描いた『三姉妹〜雲南の子』(2012)、そして精神病院での生活を描いた『収容病棟』(2013)といった作品を発表。2017年には『ファンさん』でロカルノ映画祭金豹賞を受賞し、2018年には『死霊魂』がカンヌ映画祭アウト・オブ・コンペティション部門に選出。2021年は、パリの Le BAL で「The Walking Eye」と題した展覧会が開催され、シネマテーク・フランセーズでも特集上映が実施された。また、2023年のカンヌ映画祭では2つの新作、『黒衣人』が特別招待作品部門で上映され、『青春』がコンペティション部門に出品された。
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