【解説】
◆わずか13館から206館に拡大公開!全米の批評家たちも大絶賛!
『ドッグ・ショウ!』(原題 BEST in SHOW)は昨年9月に当初、全米のわずか13館の劇場で公開され、その上質な笑いが評判となり、またたく間に206館にまで拡大公開された大ヒット作である。興行成績上位にも長期間ランクインし、タイム誌の2000年ベストムービーでは第6位。人間洞察にあふれた秀逸な脚本は批評家たちにも大絶賛を受け、ゴールデン・グローブ賞のコメディ・ミュージカル部門作品賞にもノミネート。全米批評家協会賞のエクセレント・フィルム・メーキングにも選出されるなど、多くの賞レースで、高い評価を受けている。
◆21世紀、全世界的なマイ・ドッグ・ブームが到来?
犬を主役にした映画は数多くあるが、この作品に登場する犬たちの個性は格別だ。グルーミングに命を賭けるスタイリッシュな飼い主をもつシーズーは、その毛並みの良さがご自慢。どこか妖しい大富豪と共に暮らすスタンダード・プードルは、すっとした高貴ないでたちで、他を圧倒。愛犬と話ができていると信じて疑わない男のパートナーでもあるブラッド・ハウンドは、それを知ってか知らずか、のんきでひょうひょうとした毎日を送っている。犬が飼い主に似たのか、飼い主が犬に似たのか?誰もが、こんな飼い主と犬との親密な関係を見たことがあるだろう。人間関係が希薄になりつつある今、思わず自分の犬が欲しい!と思うことうけあい。
◆初めて知るドッグ・ショウの世界、そこには???
監督クリストファー・ゲストがテーマに選んだのは、『ドッグ・ショウ!』の世界だ。ペット先進国として名高いアメリカでは、ドッグ・ショウが一つのエンターテインメントして認知されている。ドッグ・ショウで愛犬をチャンピオンにすることに全てを賭ける人々。その誰もが自分の犬がナンバー・ワンだと信じて疑わない。日頃接する機会のないドッグ・ショウの世界には、ありとあらゆる地域、階層、職業の人々がたった一つの目的のために集結する。「うちの犬こそがチャンピオンなのだ!」と…。そこには、カリスマ・ハンドラー(犬を引く人)と呼ばれる“その世界”のプロも登場し爆笑を誘う。かたや犬は、カウンセリングまで受ける始末だ…。それぞれの思惑と犬との絶妙なバランス、超個性的な飼い主たち。そして、初めて知るドッグ・ショウの限りなく奥深い世界のリアルな描写が、この映画を最高の笑いへと導く。未知の世界の面白さを暴いたことが、本作の大ヒットの要因となったのである。
◆疑似ドキュメント=モキュメントの元祖、監督クリストファー・ゲスト!
本作で用いられた「疑似ドキュメント=モキュメント」の手法の元祖が、監督のクリストファー・ゲストだ。登場人物のあまりのリアルさに、観る者はいつしかこれが実話だという錯覚に陥る。このスタイルで作られた『ブレアウィッチ・プロジェクト』の大ヒットは、記憶に新しいところだが、その遥か以前にゲストは、いくつかの作品を手がけている。架空のロック・バンドを作り上げ、その活動をドキュメント風に描いた秀作『スパイナル・タップ』(1984)は、もはや伝説の映画となっているが、この脚本を担当したのがクリストファー・ゲストである。また、「サタデー・ナイト・ライブ」時代には、架空の黒人野球選手の回想ドラマを作り、話題を呼んだ。ゲストこそが、疑似ドキュメンタリーの開祖・達人なのであり、昨今作られた疑似ドキュメンタリーは、すべてゲストの影響から生まれたと言える。
◆アメリカン・コメディの実力派たちによる即興演技!
出演は、『プリンセス・ブライド・ストーリー』、『ア・フュー・グッドメン』など、コメディもシリアスもこなす芸達者の監督、クリストファー・ゲスト。『アメリカン★パイ』のトボケた父親役でもおなじみの超人気コメディアン、ユージーン・レビー(レビイはゲストと共同で脚本も執筆)。 モテモテの妻の役は、『ホーム・アローン』でカルキン君のママに扮したキャサリン・オハラ。ヒステリックな女弁護士役を、『愛・アマチュア』、『ヘンリー・フール』などのハル・ハートリー作品の常連、パーカー・ポージー。その他『スパイナル・タップ』の脚本をゲストとともに共同執筆した「サタデー・ナイト・ライブ」出身のマイケル・マッキーンなど。クリストファー・ゲスト作品の常連俳優であり、アメリカン・コメディ界の“本物”たちが勢ぞろいした。「俳優同士もそれぞれの演技を盗みたがった」と言われるほどの才能ある彼らゆえに出せた“日常性”のドラマが、この映画の最大の魅力だ。
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