『24時間4万回の奇跡』/"LES CONVOYEURS ATTENDENT"
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24時間4万回の奇跡 [DVD]
2月10日より渋谷ユーロスペースにてロードショー

1999年/ベルギー・フランス・スイス合作/1時間34分/モノクロ/ドルビーデジタル/アメリカンビスタ/提供:KUZUIエンタープライズ、ブエナビスタ ホームエンターテインメント/配給:KUZUIエンタープライズ/宣伝:ポップ・プロモーション

◇監督・脚本:ブノワ・マリアージュ ◇プロデューサー:ドミニク・ジャンヌ ◇撮影:フィリップ・ギルベール ◇音楽:ステファン・ヒューゲニン、イース・サンナ ◇編集:フィリップ・ボーギール ◇衣装:アナ・フォニアー ◇クリス・コーニル

◇キャスト:ブノワ・ポールブールド、ジャン=フランソワ・ドヴィーニュ、モルガーヌ・シモン、ブーリ・ランネール、ドミニク・バイエン、フィリップ・グランドンリー、リザ・ラクロワ



| 解説 | ストーリー | キャスト&スタッフ |
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【解説】

◆ドア開閉世界最高記録、切ないほど滑稽な記録に挑んだ人たちがいた。


郊外にあるちっぽけな工場地帯。町を一望出来る小さな丘からは、静かにそして黙々と灰色の煙を吐き出す工場の煙突が見える。地元新聞のしがない三流記者ロジェは妻と二人の子供とともに暮らしている。明るい未来など見えない彼にとって、ここでの人生は決して楽なものじゃない。精神的そして物理的にも閉塞した日々の暮らしは彼の心にひたひたと暗い影を落とし、言いようのない焦燥感が募るばかりだった。そして何の変化もなく迎えてしまった新しい時代への夜明けを前に、彼は何かを変える大きなコトをしでかしたいと目論む。

そこで思いついたのが商店組合のコンテスト。種目制限も無い上、どんなにくだらなくとも世界記録を更新すれば1300CCのスポーツカーが手に入る。かくして彼は、気弱で何の取り柄もない息子ミシェルに“24時間で41,827回”というドア開閉世界記録に挑戦させることにする。果たしてそんなことで、ロジェ一家は未来への扉を開くことができるのだろうか?

ただドアを開閉するだけという、もしかしたら世界で一番くだらない記録への挑戦。そんなことに本気で向き合う男たちに、独特のユーモアと詩情をもって真っ向からカメラを向けた。スポーツカーを獲得する為に暴走するダメ親父と木偶の坊の息子、そんな二人を複雑な想いで見つめる母と愛らしい娘が繰り広げる心を締めつけるほど切ない物語。それは、様々なプレッシャーを抱えながらもエネルギッシュに生きる一家の家長を描いた現代の寓話であり、コミカルで感動的な日々の格闘の記録でもある。
本人たちは大真面目だけれど、ハタから見ればズレまくっているユニークな登場人物たち。彼らの思いがけない行動とリアクションを生み出す奇妙な哀しみとおかしみ。あまりに情けない世界記録への挑戦という、フツーの人間には考えつかないユーモラスでひねりの利いた発想。そんなオリジナルなプロットに加え、ここではドキュメンタリーを思わせるモノクロームのシャープな映像と、皮肉で人を食ったようなシチュエーションが絶妙なまでに融合し、抜群に力強い詩情感を醸し出している。それはハリウッド映画には決して真似のできない一風変わった語り口。それぞれのキャラクター描写の断片がコラージュされ、ストーリーの展開と共に次第にモザイクのようにはめ込まれていく。

ここまで斬新で個性溢れる芸術的レベルの高い作品を作り出したのは、ベルギー出身のブノワ・マリアージュ監督。これまで数多くのドキュメンタリーを手がけ、既に短編では1997年にカンヌ映画祭国際批評家週間最優秀賞でを受賞している逸材である。その作風から『浮き雲』など寡黙な映像からエモーションをほとばしらせるフィンランドの俊英アキ・カウリスマキ監督と並べて語られることもあるほど。初めての長編映画となったこの作品は1999年のカンヌ映画祭監督週間で大好評を博し、ヨーロッパの新しい才能として世界中の映画人から注目を集めている。
家族を巻き込んでとんでもない記録に挑む愚かな父親ロジェは、監督いわく“不器用だが無限に善意のドンキホーテ”。演じるブノワ・ポールブールドは、監督の古くからの友人で「ありふれた事件」でも知られる俳優だ。また、息子ミシェルを演じるジャン=フランソワ・ドヴィーニュ、その恋人ジョスリーヌ役のリザ・ラクロワ、愛らしい8歳の娘ルイーズに起用されたモルガーヌ・シモンは、いずれもこれが初めての映画出演。エキストラも含め、素人俳優たちが自然体から醸し出す真実味が、プロの俳優たちの演技と絶妙に絡み合って、この映画のリアル且つ詩情豊かなムードを作り出している。




 


【ストーリー】


ロジェ・クロッセ(ブノワ・ポールブールド)は小さな新聞社のスクープ記事専門記者兼カメラマン。妻(ドミニク・バイエン)と15歳のミシェル(ジャン=フランソワ・ドヴィーニュ)、8歳のルイーズ(モルガーヌ・シモン)とともに、工場地帯にある小さな家で暮らしていた。
ロジェは日々、警察の無線を傍受し、スクープというにはあまりにもちんけな事件を追いかけていた。今日もルイーズをバイクの後ろに乗せて、交通事故の現場に駆けつける。どこにでもあるありふれた生活。未来に何の展望もないわびしい日常と日々募っていく言いようのない焦燥感。新しい時代の夜明けが近づく今、ロジェは何か大きなコトをしでかそうと考えていた。
その日の食卓で、ロジェは商店組合コンテストの世界記録の本を見ていた。2分半でバナナ52本を食べたヤツ、果物の種を14メートル飛ばしたヤツ…。そこで思いついたのがドアの開閉記録。世界記録を更新すれば1300CCのスポーツカーがもらえる。ロジェは失業中で甲斐性なしの息子ミシェルに、この記録に挑戦させることにする。
ロジェの家の隣りには、内気で無口な青年フェリックス(フィリップ・グランドンリー)が住んでいる。彼の唯一の友は伝書鳩だった。中でもナポレオンと名付けた雄はチャンピオン鳩。雌鳩恋しさに、どんなに遠くからでも一目散に帰って来る。ロジェは根暗なフェリックスをバカにしているが、ルイーズは彼の鳩に対する情熱に興味を惹かれている。

ロジェは友人のリシャール(ブーリ・ランネール)をコーチにつけ、ミシェルにアメリカ式のトレーニングをさせた。庭にしつらえたドアで特訓に励むミシェルにロジェの怒声が飛ぶ。ある日、ガールフレンドのジョスリーヌ(リザ・ラクロワ)がトレーニング中に訪ねてくる。ドアの向こう側に消え、草の上に裸で横たわる二人。それはミシェルにとって初めての性体験であった。



やがてコンテストの日がやってきた。観衆の拍手と生演奏が鳴り響く中、特設リングの上でミシェルはドアの開閉を始めた。ロジェは商品となるはずのスポーツカーに乗り込んで、早くもわがものにしたような喜びようだ。しかし、9,000回を越えたところでミシェルは脚の痛みを訴える。やがて観客も消え、励ましてくれるのはジョスリーヌだけ。体力が続かないミシェル。その不甲斐なさを激しく罵るロジェ。ミシェルはスポーツカーで暴走し、事故で意識不明に陥ってしまう。人工呼吸器につながれて植物状態のミシェル。けれど、ジョスリーヌのお腹には彼の子供が宿っており、二人は病室で結婚式を挙げる。ロジェは友人でもあり、ミシェルのコーチでもあるリシャールのアメリカ式治療法を信じてミシェルの意識を回復させようと、彼が好きなプレスリーのそっくりさんや愛犬を病室に連れてくるが、効果はない。失ったものの大きさを思い知るロジェ。考えつくあらゆる手段を使い、やがて治療費も底をついてしまうが…。



 


【キャスト&スタッフ】

■ブノワ・マリアージュ(監督)

1961年生まれ。報道カメラマン・映画監督。ルーヴァン・ラ・ヌーヴのIAD(INSTITUT DES ARTS DE DIFFUSION)で教鞭も執っている。報道カメラマンとして活躍した後、ずっと情熱を傾けていた映像の世界に身を転じ、ブリュッセルのINSAS(ナショナル・フィルム・アカデミー)に学ぶ。RTBFのテレビ番組「STRIP-TEASE」用に多くのルポを敢行した。以後彼自身の会社トラム・33による数多くのドキュメンタリー作品を制作。唯一の短編フィクション映画『LE SIGNALEUR』は1997年カンヌ映画祭国際批評家週間最優秀作品賞を含む多くの国際映画祭で賞に輝いた。初の長編映画となる本作はカンヌ映画祭監督週間をはじめ、トロント映画祭、ニューヨーク映画祭などに出品され世界中で絶賛された。


■ブノワ・ポールブールド(父親:ロジェ・クロッセ)

1964年生まれ。連続殺人犯の素顔をドキュメンタリー・タッチで描いた問題作『ありふれた事件』(1992)が、カンヌ映画祭国際批評家賞をはじめとして数々の映画祭で賞を受ける。ベルギーの若い製作者2人と共同で製作、監督、原案、脚本、撮影、編集、そして主演をこなしたことでも話題を集めた。ブノワ・マリアージュの短編映画『LE SIGNAELUR』(1997)への出演がきっかけとなり、本作で破天荒な父親役に抜擢された。


■ブーリ・ランネール(コーチ:リシャール)

1965年生まれ。リエージュのアカデミー・ロワイヤル・デ・ボザールで美術を学び、卒業後にベルギーとロンドンのギャラリーに出品している。1986年からテレビや映画の小道具、セットデザイナーを務める。同時に短編・長編映画、テレビ映画に出演し演技を磨いた。短編映画『TRAVELLINCKX』(1999)で監督デビューも果たしている。


■ドミニク・バイエン(母親)

パリのクール・シモンを卒業後、ブリュッセルのロイヤル・コンサーバトリーのドラマティック・アート及び弁論において最優秀賞に輝いた。舞台、映画で広く活躍した後、チェーホフ、シェイクスピアなどの作品にも出演している。


■フィリップ・グランドンリー(フェリックス)

1966年生まれ。ロイヤル・コンサーバトリー・オブ・ミュージック・アット・リエージェのART DE LA PAROLE部門で最優秀賞を受賞。すでに舞台活動では定評があるが、本作で映画デビューを飾った。