『オネーギンの恋文』/"Onegin"






第12回東京国際映画祭最優秀監督賞
1999年トロント国際映画祭クロージング上映作品
1999年サン・セバスティアン映画祭クロージング上映作品


5月20日よりシネマスクエアとうきゅうほかにて公開

1999年/イギリス映画/106分/ビスタサイズ/ドルビーSR

◇監督:マーサ・ファインズ ◇原作:アレキサンダー・プーシキン ◇製作総指揮:レイフ・ファインズ ◇キャスティング:メアリー・セルウェイ ◇製作スーパーバイザー:レスリー・スチュアート ◇ヘアー&メイク:ピーター・オーエン ◇音楽:マグナス・ファインズ ◇衣装:クロエ・オボランスキー&ジョン・ブライト ◇編集:ジム・クラーク ◇美術:ジム・クレイ ◇撮影監督:レミ・エイドファラシン ◇脚本:マイケル・イグナティフ&ピーター・エテギ ◇製作:アイリーン・メイゼル&サイモン・ボサンケッド ◇提供:セブン・アーツ・インターナショナル ◇制作:ベビー・プロダクションズ ◇配給:ギャガ・コミュニケーションズ

◇キャスト:レイフ・ファインズ(オネーギン)、リヴ・タイラー(タチヤーナ)、トビー・スティーブンス(レンスキー)、レナ・ヒーディー(オリガ)、マーチン・ドノヴァン(ニコライエフ公爵)、アラン・アームストロング(ザレツキー)、ハリエット・ウォルター(ラーリン夫人)、アイリーン・ワース(公爵夫人エレーナ)





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<LOVE LETTERS>

オネーギン様

もし出会わなければ
あなたを知らずに苦悩もなかったはず
でもあなたと出会う運命だったのです
はじめてあった瞬間
すぐ分かりました
ああ 運命の人が 現れたのねと
どうか 疑念から救い出してください
運命に身を委ねます
秘密を明かした手紙を
読み返すのが怖い
あなたの心を信じますが
恥と恐怖で消え入りそうです

タチヤーナ



** ** ** ** ** ** ** ** ** **



タチヤーナ様

初めて会った時
あなたの愛の火花を 信じられなかった
そして決闘事件が
僕らを引き裂き
僕はすべてを捨てて 根無し草に
自由と安らぎは
幸福に代わると思ったのです
何という間違いでしょう
その罰も受けました
毎朝 あなたに
会えることを祈りながら
恋の渇きに
身を焼き尽くし
理性で静めています
自分の心には逆らえません
僕はあなたの意のままです

オネーギン





【解説】

■運命の出会い、捨てられない手紙―
愛とその喪失を描いた文豪プーシキンの自伝的傑作を映画化


溢れるような想いを恋文に託し、享楽的で身勝手な貴族オネーギンにまっすぐに告白する若き日の田舎娘タチヤーナ。あまりにも純粋すぎる彼女の想いを、拒絶するオネーギン。そして二人はある事件により引き裂かれてしまう。6年の空虚な生活を経てペテルブルグに戻ったオネーギンは、舞踏会で人々の注目を集める貴婦人に心を奪われる。

人妻となり美しく成長したタチヤーナとの鮮烈で残酷な再会は、彼に失った愛の存在を気づかせ、激しい悔恨を抱かせる。一方ですでに貞節を夫に捧げ、守らなければならない義務を背負っているタチヤーナの苦悩。永遠に交わることのない、恋文に託されたそれぞれの秘めた想いは、あまりにも鮮烈に時を超え、観るものの心をとらえて離さない。

19世紀ロシアの社交界を舞台に、すれちがう愛の悲劇を描いた一大叙情詩「オネーギンの恋文」。ドストエフスキーやチェーホフに多大な影響を与えた文豪プーシキンの自伝的最高傑作といわれるこの作品を、『イングリッシュ・ペイシェント』で知られる英国演技派スター、レイフ・ファインズが自ら製作総指揮、主演を兼ね、同じく原作に惚れ込んだ実妹マーサ・ファインズを監督に迎えて念願の映画化を実現した。



■レイフ・ファインズ、リヴ・タイラーを始め、豪華実力派キャストが織り成す華麗で痛切なラヴストーリー

レイフ・ファインズが演じるのは、偽善と虚飾に満ちた上流社会に厭き果て、人生の意味を見出せずにいる冷笑家の貴族オネーギン。彼を苦悩へと導くファム・ファタール、タチヤーナ役には『魅せられて』『アルマゲドン』などで国際派女優として活躍目覚ましいリヴ・タイラーが起用された。自由な精神を持つ純真な田舎娘から社交界の華へと変貌するタチヤーナを存在感豊かに演じて強烈な印象を与える。

ふたりのメインキャストを強力にサポートするのは英米の映画・演劇界を代表する実力派スターたち。タチヤーナの夫となるニコライエフ公爵を演じるのは『ある貴婦人の肖像』で全米映画批評家賞を受賞したマーチン・ドノヴァン。悲劇的な最後を迎えるオネーギンの親友レンスキーに『十二夜』の若手演技派トビー・スティーヴンス。レンスキーのフィアンセ、オリガには『ダロウェイ夫人』で国際的注目を集めたレナ・ヒーディー。タチヤーナを社交界にデビューさせる公爵夫人エレーナには数々の受賞歴を誇るベテラン舞台女優アイリーン・ワース。タチヤーナとオリガの母親、ラーリン夫人には『いつか晴れた日に』のハリエット・ウォルターが扮する。



■まなざしに愛を語らせた女性監督による、ディテールにこだわった耽美的な映像美

英国のCM&ミュージック・ビデオ界をリードする俊英監督マーサ・ファインズは、本作で劇場映画監督として鮮烈デビューを飾った。恋をする女性の想いを、窓やテーブル越し、或いは湖の対岸や木立の中から無言の眼差しに語らせた演出や、時間軸を微妙に前後させたカットバック手法が本作では効果的に用いられている。

彼女の個性的なヴィジョンを映像化するために結集したのは、英国映画界でも最高レベルの才能と経験を併せ持つスタッフたち。撮影監督は『エリザベス』で英国アカデミー賞を受賞したレミ・エイドファラシン。プロダクション・デザインは『クライング・ゲーム』のジム・クレイ。衣装はピーター・ブルック一家として知られるクロエ・オボランスキーと『眺めのいい部屋』でアカデミー賞に輝いたジョン・ブライト。編集は『キリング・フィールド』でアカデミー賞を受賞しているジム・クラーク。メーキャップ・デザインは『オスカーとルシンダ』のピーター・オーウェン。また音楽をレイフの実弟マグナス・ファインズが担当している。

19世紀初頭のペテルブルグの社会と風俗を、確かな時代公証と現代的要素との大胆な組み合わせによって再現してみせた豪華なセットと衣装、メーキャップは、退廃的な貴族社会の耽美性を見事に表現しており、ディテールに徹底的にこだわった映像は1カットたりとも見逃すのが惜しい出来映えになっている。



 


【プロダクションノート】

■Why Onegin? [オネーギンに魅せられて]

原作に魅了されたレイフ・ファインズ


レイフ・ファインズが初めて原作を読んだのは1990年代初頭、映画デビュー前、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで舞台活動に励んでいた頃のこと。彼はシンプルな物語と確かな時代感覚、そして複雑で奥行きのある謎めいた主人公オネーギンにたちまち魅了された。

“プーシキンの原作は、愛と喪失を力強く語ったもので、僕はすっかりその虜になってしまった。僕を引きつけたのは彼の英知とユーモア、そしてその中心にある偉大な悲劇性だった。オネーギンは陰のある人物で、いろんな意味でロマンスのヒーローの典型だと言える。つまり他人には計り知れない印象を与える人物、常に本心を心に秘めている人物で、その行動は彼自身を深刻な不幸に陥れてしまう。自分の過ちに気づいた時はもう手遅れなんだ。彼は物語の冒頭ではシニカルで尊大な男だが、最後には自分の侵した過ちに気づく。その心の旅路が、彼を深い共感を呼ぶ人物にしている”。

レイフは本作で初めて製作総指揮も兼務することになる。“財務や予算のことで決断を下すよう人から言われた経験は今まで一度もなかった。でも今回、脚本作りの段階から深く関わってみると、いかにそれが大変で難題続きかが分かったよ”。



■タチヤーナの現代的な女性像に惹かれて監督を引き受けたマーサ・ファインズ

レイフは粗っぽいストーリーボードと脚本の草稿を自ら書きあげると、妹のマーサ・ファインズにアプローチした。“マーサはとても奇抜で独特な目を持っている。それにカメラワークも柔軟だ。この物語のデリケートな愛情を描くのにぴったりだと思ったんだ”。

原作を読んだマーサは、この物語の時代を超えた普遍性に心を打たれたという。

“フラれた人に。半年後や一年後、好きだと告白された。またはその逆の立場になった―そんな経験あるでしょ?これは恐ろしいくらい人間的。時代が変わっても愛のテーマとしては永遠だわ。それにプーシキンがタチヤーナをとても現代的な女性として描いている点も気に入ったの。つまり、愛する人に拒まれたからといって絶望して落ち込むようなステレオタイプのヒロインではなく、愛の敗北を潔く受け入れて自分の道を歩んでいく女性。それがふたりの主人公の関係をいっそう深いものにしている。それに時間と場所に細かい配慮がされていて、とても視覚的な韻文になっている点も気に入ったわ。その意味ではすごく映画的だと言えるわね”。



■リヴ・タイラーが示したタチヤーナ役への熱意

タチヤーナ役には何人もの英国のトップ女優が候補に上がったが、ナチュラルなイノセンスと直感的演技で際立っていたのが、リヴ・タイラーだった。また彼女もオーディションの時点で台本を暗記してしまう程、タチヤーナ役に惹かれていた。

タイラーは、“タチヤーナ役を演じたかった”と言う。“脚本と原作を読んで、すっかりこの役に心を奪われたわ。うっとりするくらい美しい物語で、タチヤーナはあんなに魅力的。彼女は表面上は物静かだけれど、その内側には強い生命力とヴィヴィッドな想像力が秘められていて、奔放な空想をめぐらせている。彼女は、都会から来たこの謎めいた男性に恋をした時、自分の気持ちを抑えるのは不可能だと知るの”。



■Location&Costume [ロケーション・衣装]

本場サンクト・ペテルブルグでロケを敢行


クルーはロシア各地でロケハンを行った末、サンクト・ペテルブルグで1998年3月初旬にクランクイン。厳しい寒さと雪に覆われた街並みは、この物語の舞台にまさにぴったりだった。原作の舞台でもあり、プーシキンが晩年を過ごした地でもあるこの街で撮影を行うことは、ファインズ兄妹の強い希望でもあった。

一週間のロシア・ロケの後、クルーはイギリスへ戻り、シェパートン撮影所と近郊のロケ地で10週間に渡って撮影が続けられた。ロシアで全編を撮影できればそれに越したことはなかったが、4月まで雪に覆われているこの国で、物語の半分が春に設定されている映画を撮影する事は不適当だったのだ。幸いシェパートン撮影所から数マイルのところにあるサーズリー公園にロシアによく似た風景が見つかり、白樺と松の林に囲まれたラーリン家の屋外シーンの撮影に使われた。またウィンチェスター近郊にあるエリザベス朝のカントリー・ハウスが、オネーギンの田舎の屋敷になった。ニコライエフ公爵の屋敷や化粧室、舞踏場などの屋内セットはシェパートン撮影所の4つのサウンドステージに組まれた。

プロダクション・デザインに際してはプーシキンの世界を忠実に再現すると同時に、現代的な要素も取り入れることがマーサのコンセプトだった。そこでラーリン家の庭にあるタチヤーナの廃墟風の小屋は、20世紀初頭にデザインされたガウディのサグラダ・ファミリア教会や、1940年代の建築をヒントにデザインされた。また、クラシックな様式をもつサンクト・ペテルブルグと自然が豊かな田舎の対比をはっきり出すことも重要視された。



■タチヤーナのゴージャスなドレス・デザイン

タチヤーナの衣装は15通りのものがデザインされたが。“名の日”のパーティーで着るのはベージュとクリーム色の刺繍が入ったシンプルなドレス。サンクト・ペテルブルグのシーン用には、バイオリンの演奏会の時に着るブロンズ・ゴールドのブロケード・ドレスを始め、より洗練されたドレスがデザインされた。中でもひときわ印象的なのが、赤と玉虫色のサテンが見事なデザインを織り成す舞踏会用ガウンだ。これには、袖の膨らみとバルーン・スカートの弾力を増すために、羽毛入りペチコートと袖用の裏地を使うという19世紀の手法が用いられている。


■Who is Alexander Pushkin―[アレキサンダー・プーシキン]

自らも愛の悲劇で死に至ったロシアの文豪 アレキサンダー・プーシキン


「プーシキンはロシア文学における新しい声であった。彼は、ロシアの古典文学にとらわれず、既成体制を茶目っ気たっぷりに観察し、社会とそこにいる人々や自分の周りで見聞きしたことについて辛辣に描いた作家だ」とレイフ・ファインズは語る。

アレキサンダー・プーシキンは、1799年に生まれ、貴族の家庭で育ち、ツァールスコエ・セローの貴族の子弟のための学習院(リツェイ)で教育を受けた。1814年に詩集「ツァールスコエ・セローの思い出」を発表。1年後、詩人デルジャーヴィンがこれを激賞し、若き詩人の名はすぐに広まった。

卒業後、彼はペテルブルグの文学サークルに参加して快楽を追い求めた。その後、自由主義的で皇帝(ツァーリ)に反対するデカブリストたちの秘密サークルに加わる。このため彼は、1820年に追放される。追放の身となっていた6年間、彼は文学活動を続けいくつかのバイロン風の物語詩を書き、「ジプシー」と「ボリス・ギドゥノフ」を完成させた。その後、彼の最高傑作と言われる叙情詩「エヴゲニー・オネーギン」の執筆を始めた。

1825年のデカブリスト蜂起の後、彼はもはや脅威ではないと皇帝(ツァーリ)の「温情」によって自由の身となった。しかし、執筆活動と身の移動は厳重に禁止されていた。1831年、彼はロシア一の美女ナターリヤ・ゴンチャローヴァと結婚する。二人はペテルブルグへ移り、そこで宮廷社交界と交わるようになる。しかし、経済上の問題と当局の継続的な監視に悩んでいる上に、妻の多数の取り巻き連中、とりわけジョルジュ・ダンテスという名のフランス人との隠れた浮気で傷つく。

そして彼はダンテスに決闘を申し込み、その結果二人とも死んでしまう。社会のあらゆる階層の多くの人々がプーシキンの死を悼んだ。ドストエフスキーやチェーホフに多大な影響を与えたと言われるプーシキンは、叙情詩、物語詩、叙事詩などを含めて、多くのジャンルで多数の著作を残した。「ボリス・ゴドゥノフ」と「エヴゲニー・オネーギン」に加えて彼の文学遺産には、「青銅の騎士」、「大尉の娘」、「金鶏」、短編で「ベールキン物語」などがある。



 


【ストーリー】

男“愛していると言ってくれ。ウソでもいいから。”
女“永遠に立ち去って。―”




1820年代のペテルブルグ。享楽的な生活の末、財産を使い果たしたオネーギン(レイフ・ファインズ)は、虚飾に満ちた社交界にも、生きることにさえも、すっかり厭きて嫌気がさしていた。そんな時、田舎の伯父に死期が迫り、オネーギンは彼の地所を相続するため思いがけなくペテルブルグを離れることになる。

オネーギンは、伯父の死を看取り、新しい地主となる。だが、この土地では都会人の彼は場違いな存在である。田舎の生活にも、そこで暮らす人々の生き方にも馴染めない彼は、領地を農民に貸して自分はペテルブルグに戻るつもりでいる。しかし、青年地主レンスキー(トビー・スティーヴンス)と親しくなったことから彼の運命は思わぬ方向へ進んでいくのであった。レンスキーはドイツの名門大学の出にもかかわらず、この田舎で詩作にふけっているロマンティストだった。彼はオネーギンを未亡人マーシャ・ラーリン(ハリエット・ウォルター)に紹介する。マーシャの次女オリガ(レナ・ヒーディー)はレンスキーの婚約者だった。普段は何事にもシニカルな見方をするオネーギンも、このカップルには好感を抱く。

オリガの姉のタチヤーナ(リヴ・タイラー)は、洗練された都会から来たどことなく謎めいた雰囲気のあるオネーギンに、一目見たときから強烈に心惹かれてしまう。眠れぬ夜、とうとう彼女は熱い想いを手紙にしたためる。

まっすぐで情熱に満ちたタチヤーナの手紙はオネーギンを驚かせる。数日後、タチヤーナの“名の日※”のパーティーに招かれた彼は、彼女に愛を受け入れることはできないと告げる。彼はまるでタチヤーナの想いを断ち切らせようとするかのように、オリガと親しげに戯れる。だがそれはレンスキーの嫉妬心に火をつけてしまう。つめよるレンスキーにオネーギンは、愚かで尻軽な女を誘惑するつもりはないと答える。恋人を侮辱されたレンスキーは怒りにかられ、決闘を申し込む。

オネーギンはレンスキーの気持ちを鎮めようとするが、彼の決意は変わらない。早朝の湖畔に二発の銃声が響き渡る。親友の亡骸を抱きしめ、声にならない嗚咽にむせぶオネーギン。心に深い傷を負った彼はこの土地を去り、空虚な流浪の旅に出る。

6年後、ペテルブルグに戻ったオネーギンは、舞踏会で人々の注目を集める美しい貴婦人に心を奪われる。それがタチヤーナだと知った彼は、我が目を疑った。彼女は叔母の公爵夫人エレーナ(アイリーン・ワース)の手引きで社交界入りし、3年前にオネーギンの従兄弟、ニコライエフ公爵(マーチン・ドノヴァン)と結婚していたのだった。あまりにも鮮烈で残酷な再会。悔恨がオネーギンの胸を締め付ける。一方で、すでに貞節を夫に捧げ、守らなければならない義務を背負っているタチヤーナの苦悩。 かつてタチヤーナの愛を拒絶した彼は、彼女の愛を取り戻そうとするが…。

※聖名祝日。自分と同じ名前の聖人の祝日。ロシアでは誕生日と同じように祝った。





 


【キャスト&スタッフ】

■レイフ・ファインズ(オネーギン・製作総指揮)

シニシズムゆえに純真なタチヤーナの愛を拒絶し、親友レンスキーとの決闘を余儀なくされる悲劇の貴族オネーギンを演じる。また本作では初めて製作総指揮も兼ねている。 1962年、英・サフォーク生まれ。父は写真家、母は小説家であり画家、妹マーサは本作の監督、弟マグナスは本作の音楽を担当、弟ジョセフは『恋に落ちたシェイクスピア』の主演俳優というアーティスト一家。

最初は画家を志すが、俳優志望に転じ、ロイヤル・アカデミーで演技を学ぶ。1985年に同校を卒業し、ナショナル・シアターやロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで「ヘンリー6世」「リア王」などの舞台に立った。その後、1991年のTV映画「ロレンス1918」で“アラビアのロレンス”役を演じて注目を集める。翌年、『嵐が丘』(1992)のヒースクリフ役で映画デビュー。『シンドラーのリスト』(1993)と『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)で二度アカデミー賞候補に。

他の映画出演作に『ベイビー・オブ・マコン』(1993)、『クイズ・ショウ』(1994)、『ストレンジ・デイズ 1999年12月31日』(1995)、『オスカーとルシンダ』(1997)、『アベンジャーズ』(1998)。最新作はイシュトヴァン・サボー監督の『Sunshine(原題)』(1998)とニール・ジョーダン監督によるグレアム・グリーン原作『情事の終わり』の映画版。

舞台ではロンドンとモスクワで上演された「イワーノフ」で絶賛され、ロンドンとブロードウェイで上演された「ハムレット」ではトニー賞最優秀俳優賞を受賞している。



■リヴ・タイラー(タチヤーナ)

恋する純真な田舎娘からエレガントな公爵夫人へと変貌するタチヤーナを演じる。 1977年、米・ニューヨークで生まれ、メイン州ポートランドで育つ。父はロックバンドのエアロスミスのスティーヴン・タイラー。母は1970年代に活躍したトップモデルのベベ・ビュエル。

14歳の時に知人が彼女の写真をエージェントに送ったのがきっかけでモデルの仕事を始める。1994年にエアロスミスのミュージック・ビデオにアリシア・シルヴァーストーンとともに出演して注目を集めた。同年、ブルース・ベレスフォード監督のミステリー『精神分析医J』で映画デビュー。サンダンス映画祭審査員大賞を受賞したジェームズ・マンゴールド監督のインディーズ映画『君に逢いたくて』(1995)で初主演。アラン・モイル監督の青春群像『エンパイア・レコード』(1995)でメジャー映画初主演。その後、ベルナルド・ベルトリッチ監督の『魅せられて』(1996)のヒロインに起用され、国際舞台に躍り出た。カバーを飾った雑誌は世界で100誌以上。日本では化粧品のCMで人気に拍車をかけた。以後、トム・ハンクスの監督デビュー作『すべてをあなたに』、パット・オコーナー監督の『秘密の絆』(1997)、SF大作『アルマゲドン』(1998)と話題作への出演が続く。近作にロバート・カーライルと共演した『プランケット&マクレーン』(1999)、ロバート・アルトマン監督の『クッキー・フォーチュン』(1999)がある。



■マーチン・ドノヴァン(ニコライエフ公爵)

社交界の華となったタチヤーナを伴侶とするニコライエフ公爵を演じる。

1957年、米・カリフォルニア州出身。ロサンゼルスのアメリカン・シアター・オブ・アーツで演技を学び、舞台俳優としてキャリアをスタート。その後ニューヨークへ移り、ハル・ハートリー監督の『トラスト・ミー』(1991)に主演して注目される。以後、『シンプルメン』(1992)、『愛・アマチュア』(1994)、『フラート』(1995)など同監督の殆どの作品に出演。ジェーン・カンピオン監督の『ある貴婦人の肖像』(1997)では全米映画批評家協会賞助演男優賞を受賞した。他に『マルコムX』(1992)、『カリブ 愛欲の罠』(1994)、『ナジャ』(1994)、『熟れた果実』(1998)など。1989年にオビー賞を受賞した劇団クカラチャ・シアター・カンパニーに1994年まで所属し、前衛劇でも活躍した。



■トビー・スティーヴンス(レンスキー)

フィアンセを侮辱されて親友オネーギンに決闘を申し込む、ロマンティックな理想主義者レンスキーを演じる。

父親は『蜜の味』のロバート・スティーヴンス。母親は『眺めのいい部屋』のマギー・スミス。1994年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの「コリオレーナス」でサー・ジョン・ギールグッド賞最優秀男優賞とイアン・チャールソン賞を受賞して一躍脚光を浴びた。他にもジェシカ・ラングと共演した「欲望という名の電車」、「フェードル」、ピーター・ホール演出の「タルチェフ」など多くの舞台に出演している。映画では『オルランド』(1992)、『十二夜』(1996)、『従妹ペット』(1998)などに出演。将来を最も期待されている英国若手俳優のひとりである。



■レナ・ヒーディー(オリガ)

レンスキーと婚約している素朴で現実的なタチヤーナの妹オリガを演じる。

ヨークシャーの学校で趣味として演劇を学んでいたが、たまたまナショナル・シアターの舞台に立つ機会がありそのまま女優の道へ。スティーヴン・ギレンホール監督の『秘密』(1992)で映画デビュー。ジェームズ・アイヴォリー監督の『日の名残り』(1993)を経て、『ジャングル・ブック』(1994)でジェイソン・スコット・リーの相手役に抜擢され注目を浴びた。以後、『グロテスク』(1995)、アントニア・バード監督の『フェイス』(1997)、マルレーン・ゴリス監督の『ダロウェイ夫人』(1997)といった作品に次々と出演。マリア・リボル監督の『イフ・オンリー』(1998)ではヒロインを演じて各映画祭で絶賛を浴びるなど、英国映画の次代を担う若手スターとして人気が高まっている。



■マーサ・ファインズ(監督)

イギリスを代表するCM及びミュージック・ビデオ監督のひとりで、そのスタイルは“視覚的、本能的、官能的、そして奇抜”と評されている。ロンドンのハロウ・カレッジで映画を学び、ボーイ・ジョージ、アル・グリーン、ファニチャー、XTC、OMDといったミュージシャンのミュージック・ビデオを手がけてきた。今回兄レイフが製作総指揮・主演を兼ねた本作で劇場映画監督デビューを果たす。

現在はロンドンのブッシュ・シアターで上演されたドミニク・ドロムグール演出の「Bright Light Shining」のために短編映画を制作している。ニューヨークでドキュメンタリー映画の製作・共同監督を務めたこともある。



■アイリーン・メイゼル(プロデューサー)

ハリウッドでトップ・スタジオ・エグゼクティヴとして活躍した後、1990年にはパラマウント映画の英国製作オフィスを開設。二年後にパラマウントが撤退した後も英国にとどまり、英国映画界で重要な役割を果たしてきた。

主な作品にスティーブン・フリアーズ監督の『危険な関係』(1988)、レイフ・ファインズの劇場映画デビュー作『嵐が丘』(1992:製作総指揮)、『十二夜』(1996:製作総指揮)がある。また、英米の映画製作会社のコンサルタントも多く務めてきた。



■サイモン・ボサンケット(プロデューサー)

『アナザー・カントリー』(1983)『マリリンとアインシュタイン』(1985)のプロダクション・マネージャー、『エンゼル・ハート』(1987)のプロダクション・スーパーヴァイザーを経て、『白い炎の女』(1987)でアソシエイト・プロデューサーに。以後、『相続王座決定戦』(1993)、『プリンセス・カラブー』(1994)、『ヴィクトリー 遥かなる大地』(1995)などを製作。『嵐が丘』(1992)では製作総指揮と第二班監督を務めた。


■レミ・エイドファラシン、BSC(撮影監督)

BBCのミニシリーズ「Christabel」(1988)とTV映画「Memento Mori」(1992)で二度、英国アカデミー賞にノミネート。『エリザベス』(1998)ではオスカー候補になった他、英国アカデミー賞撮影賞を受賞。劇場映画では他に『愛しい人が眠るまで』(1991)、『愛に囚われて』(1994)、『スライディング・ドア』(1997)を手がけている。また、『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)では第二班カメラマンとして砂漠のシーンを担当した。


■ジム・クレイ(美術)

BBCのTVシリーズ「Singing Detective」(1986)でジョン・アミエル監督と初めて組んで以来、彼の『ラジオタウンで恋をして』(1990)、『コピーキャット』(1995)、『知らなすぎた男』(1998)も手がけてきた。他の作品に、マット・ディロン主演の『死の接吻』(1991)、ニール・ジョーダン監督の『クライング・ゲーム』(1992)、ジョン・ロバーツ監督の『草原とボタン』(1995)、パット・オコナー監督の『サークル・オブ・フレンズ』(1995)などがある。


■クロエ・オボランスキー&ジョン・ブライト(衣装デザイナー)

クロエ・オボランスキーはパリを拠点に活躍する装置・衣装デザイナー。「カルメンの悲劇」、「桜の園」、「テンペスト」、「ペリアスとメリザンド」、オペラ「ドン・ジョバンニ」など、ピーター・ブルックの舞台を18年以上に渡って手がけてきたことで知られる。「マハーバーラタ」では舞台とブルック自ら監督した映画版(1989)の両方を担当している。他にエルマンノ・オルミ監督との仕事もある。 ジョン・ブライトは『眺めのいい部屋』(1986)、『モーリス』(1987)、『ハワーズ・エンド』(1992)、『日の名残り』(1993)、『ジェファソン・イン・パリ 若き大統領の恋』(1995:ビデオ発売タイトル『ある大統領の情事』)といったジェイムズ・アイヴォリー監督作の衣装をジェニー・ビーヴァンとともに手掛けた。これら全作品がアカデミー衣装デザイン賞候補になり、うち、『眺めのいい部屋』で受賞している。他の作品に『いつか晴れた日に』(1995:ビーヴァンと共同)、『十二夜』(1996)がある。


■マグナス・ファインズ(音楽)

本作の製作総指揮・主演のレイフの実弟。作曲家、音楽プロデューサーとして、オール・セインツ、スパイス・ガールズ、パルプ、ボーイゾーンといったバンドや、コナー・リーヴス、ネナ・チェリー、マリアンヌ・フェイスフル、メレディス・ブルックスといったソロ・アーティストの曲のプロデュースとアレンジを手がけてきた。映画ではスチュワート・アーバン監督の『プリーチング』(1997)、アート・カマチョ監督の『アベンジャー』(1997)などの作・編曲を担当。セガのモータル・コンバット、プジョー、ペプシなどのCM音楽も多数手がけている。


■ジム・クラーク(編集)

1931年、英・リンカーンシャーのボストン生まれ。ローランド・ジョフィ監督の『キリング・フィールド』(1984)でアカデミー賞とイギリス・アカデミー賞の編集賞を受賞。また同監督のカンヌ映画祭グランプリ受賞作『ミッション』(1986)でも再びアカデミー賞とイギリス・アカデミー賞にノミネートされた。他に『回転』(1961)、『シャレード』(1963)、『ダーリング』(1966)、『ヤンクス』(1979)、『メンフィス・ベル』(1990)、『ネル』(1994)、『コピー・キャット』(1995)、『ジャッカル』(1997)など。


 












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