カンゾー先生

'98 カンヌ国際映画祭特別招待作品


1998年10月17日 公開

全国東映系 にて上映
配給: 東映

  • 監督
今村晶平
  • 脚本
今村晶平・天願大介
  • 出演
柄本明(赤城風雨)
麻生久美子(万波ソノ子)
ジャック・ガンブラン(ピート)
世良公則(鳥海)
唐十郎(梅本)
松坂慶子(トミ子)



世界中のマスコミから絶賛の声!

 『楢山節考』('83)、『うなぎ』('97)で2度カンヌ国際映画祭グランプリ(パルムドール)に輝いた今村昌平監督待望の新作『カンゾー先生』。本年度のカンヌ国際映画祭では特別招待作品に選ばれ、世界中のマスコミから絶賛された話題作である。
 物語は、敗戦2カ月前、人々がまだ苛酷な戦時生活を強いられていた時代にはじまる。舞台は瀬戸内の田舎町、なんでも肝臓病に診たててしまい、町の人々から「カンゾー先生」と呼ばれる初老の医師と、彼を取り巻く様々な人々の人生模様が時代の風刺をこめながらほのぼのと描かれる。
 原作は、坂口安吾の『肝臓先生』(角川文庫刊)。大戦後に原作を手にして以来、長年、映画化の企画として構想を練っていた今村監督にとって、まさにライフワークともいえる作品となるだろう。
 主演は「うなぎ」に引き続いての出演となる柄本明、ヒロインには19歳の新人・麻生久美子が今村監督のメガネにかなって大抜擢された。他にフランスで人気NO.1の男優ジャック・ガンブラン、今村作品は初出演となる世良公則、唐十郎、松坂慶子ら、個性派を揃えたユニークなキャスティング。
 撮影は、7月中旬から岡山県牛窓町を中心に、今村組お馴染みのスタッフ、キャスト全員合宿の長期オールロケで行われた。


ストーリー

開業医は足だ。片足折れなば片足で走らん。両足折れなば手にて走らん。

 昭和20年、夏。岡山県日比の海岸を赤城風雨が走っている。手には黒い鞄を抱え、汚れた白衣をバタバタさせながら、ひたすら走る。
 赤城は、この田舎町の開業医である。父の代からの家訓にならい「開業医は足だ。走りに走りて生涯を終わらん」とばかり、風ニモ雨ニモマケズ町中を走りまわっている。しかし赤城は、町の人達から「カンゾー先生」と揶揄されている。赤城にかかると誰も彼も「肝臓病」にされてしまうからだ。
 赤城医院にソノ子が看護婦として来ることになった。ソノ子は田舎町には珍しい美女であるが、親もなく、幼い弟妹を養うために時々「売春」まがいの事をしている。ソノ子の母親は女郎あがりで、ソノ子は幼い頃から「タダマンさせるのは、生涯一人きりだ」と教えられていた。「タダマン」じゃないから金を取るのは、ソノ子なりの道理である。しかし「近所の聞こえが悪い」と隣組の区長が赤城に監視役を押し付けたのだ。
 ソノ子は勇気と正義感にみちた赤城の生き様をみつめ、感動を覚える。「タダマンの相手は先生に決めた!」と赤城に迫るソノ子。うろたえる赤城であるが、嬉しくないわけでもない。ある日、帰ってみると、診察室のベッドに見知らぬ白人の男がいた。オランダ人の俘虜ピートで、収容所を脱走し、怪我をして苦しんでいたのをソノ子が見つけて勝手に入院させたのである。俘虜だろうが敵兵だろうが患者には変わりがない、と赤城は手当をしてやる。ピートはオランダでカメラの会社の技師だったと言い、赤城の顕微鏡作りに協力を申し出る。思わぬ味方を得て、赤城はいよいよ顕微鏡作りに熱中する。有り金をはたいて高価なレンズを買い、深夜、墓を掘り起こして肝臓炎で死んだ患者の肝臓を取り出す。医者仲間でモルヒネ中毒の鳥海が、墓堀を手伝いながら呟く。「赤城、ついにお前も狂ってきたのう…」
 肝臓炎の病原体さえ発見できれば苦しんでいる多勢の人達を救える。医者としての赤城の執念だった。
 顕微鏡作りに熱中していて、往診を頼まれながら、つい行きそびれていた家の患者が死んだ。遺体を前に打ちひしがれる赤城。罪滅ぼしに戦場に行こうと役場に志願をするが、赤城の年齢ではそれもならない。苦悶する赤城。「ワシは一体どうすればええんじゃ……。」
 ある夜、離れ小島に住む娘が赤城医院の戸を叩いた。父親が肝臓炎で苦しんでいると言う。立ち上がった赤城は作りかけの顕微鏡を掴むと床に叩きつけた。「ソノ子往診じゃ!」黒い鞄を手にソノ子と共に海岸を走る赤城。島の患者を診ながら、赤城は「田舎の町医者」として走り続けることを改めて決意するのだった……。



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