ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
 Knockin' on Heaven's Door


1999年10月23日(土)より
新宿武蔵野館シネマ・カリテ にて上映

1997年/ドイツ映画/90分/カラー/
スコープサイズ/ドルビーSR/
日本語字幕=寺尾次郎

後援:ドイツ連邦共和国大使館/東京ドイツセンター
提供:ツイン/K2エンタテインメント/フジクリエイティブコーポレーション
配給:K2エンタテインメント
(C) CINEPOOL/DREFA & TELLUX MUNCHEN




ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア (デジタルニューマスター版スペシャル・エディション) [DVD]
監督=トーマス・ヤーン
脚本=トーマス・ヤーン/ティル・シュヴァイガー
製作=ティル・シュヴァイガー
   アンドレ・ヘンニッケ
   トム・ツィックラー
撮影=ゲーロ・シュテフェン
編集=アレクサンダー・ベルナー
音楽=ゼーリッヒ
美術=モニカ・バウアート
衣装=ヘイケ・ヴェーバー
出演=ティル・シュヴァイガー
   ヤン・ヨーゼフ・リーファース
   ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ
   モーリッツ・ブライプトロイ
   フープ・シュターペル
   レオナルド・ランジンク
   ラルフ・ケアフォート
   コーネリア・フローベス
   ルトガー・ハウアー


| 解説 | プロダクションノート | ストーリー |



<解説>

ポスト・ジャーマン・シネマはここから始まる!

 『バンディッツ』(97)『悦楽晩餐会』(97)『ラン・ローラ・ラン』(98)『カスケーダー』(98)など近年日本での公開が相次ぐドイツ、ポスト・ジャーマン・シネマ。その中で1997年に公開されるや本国ドイツで350万人を動員した大ヒットムービー、『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は、その年のドイツ映画動員数第1位、外国映画を含めた年間BOX OFFICEにおいてもハリウッド大作に続き第4位を記録した。『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は誰もが楽しめる一級のエンターテイメント作品としてドイツの若者から圧倒的な支持を受け、これまで<芸術>として語られてきたドイツ映画のイメージを破り、<娯楽>としてのドイツ映画パワーを見せつけた作品だ。本作でドイツ映画界に彗星のごとく現れた新人監督トーマス・ヤーンは、キレのいい派手なアクションと斬新なユーモア感覚、観客のココロをギュッと掴むサウンドで“ドイツのタランティーノ”と称され、ドイツ映画界の話題を独占した。



新人監督トーマス・ヤーンが描く<男のロマンと友情>
ドイツ発アクション・ロード・ムービーの決定版


 「天国じゃ、みんなが海の話をするんだぜ」 死期の迫ったふたりの重病患者、マーチンとルディ。ひょんなことから病院で同室になった彼らは病棟から抜け出し、まだ見たことのない海をめざして旅に出る。が、盗んだ車にギャングの大金が積まれていたことからギャング、警察の両方から追われるはめに…。「死ぬ前に海が見たい」という共通の目的を持ったアウトローな男たちの夢とロマンが溢れたドラマである本作は、同時に彼らと彼らを追うふたりの落ちこぼれギャングが繰り広げるデュアル・アクション・ロード・ムービーでもある。 また本作は『夜の人々』(48・米)、そのリメイクである『俺たちに明日はない』(68・米)、『ボウイ&キーチ』(74・米)『ワイルド・アット・ハート』(90・米)『トゥルー・ロマンス』(93・米)などクライム・ロード・ムービーの流れをくんだ作品であるが、主役の二人が<男女の愛>ではなく<男の友情>で結ばれていることが他の作品にない面白さだ。また、クエンティン・タランティーノを彷彿させる銃撃シーン、カー・アクションがスタイリッシュに描かれている一方、ひとりの死人も出すことなく、見る者のココロをあたためてくれる優しさとユーモアセンスが映画全体にちりばめられている。



現代ドイツ映画界を代表する新進気鋭の俳優、スタッフが結集!

 トーマス・ヤーンの脚本に惚れ込み、製作、脚本、主演の3役を引き受けたティル・シュヴァイガーは、主役マーチンを好演し、本作で97年モスクワ映画祭最優秀主演男優賞を受賞した。最近では『リプレイスメント・キラー』(98)でハリウッド進出も果たしたドイツ映画界の若手を代表するトップ・スターである。彼のプロデュースのもと、キャストも個性的な一流俳優が集まった。

ワイルドでクサい魅力をふりまくマーチンとは対照的に、ピュアでメランコリックなルディ役を東ドイツ出身の俳優ヤン・ヨーゼフ・リーファースが好演。ふたりの絶妙なコンビが本作の大きな要になっていることはいうまでもない。また、『ラン・ローラ・ラン』でローラの恋人役を演じたモーリッツ・ブライプトロイが下手なドイツ語で憎めない落ちこぼれギャング、アブドゥルを演じ、本作で97年ドイツ映画賞最優秀助演男優賞を受賞している。またその相棒ヘンク演ずるティエリー・ファン・ヴェルフェーケは『Troublemaker』(88)『A Wopbopaloobop A Lopbambroom』(89)などアンディ・バウシュ監督作品で活躍するドイツの実力派俳優。そして、『ブレードランナー』(82)のルトガー・ハウアーが大物ギャング、カーチス役でカメオ出演している。

またスタッフは『Uボート』(81)『第五惑星』(86)などを手掛けたドイツで人気のデザイナー、モニカ・バウアートが装置、衣装を担当し、トウモロコシ畑のカーチェイスシーンなど、シリアスとファンタジーの世界を見事に作り出した。撮影は映画、CMなどで活躍中のゲーロ・シュテフェンが手掛けている。衣装協力はHUGO BOSS。




ロックの古典「Knockin' on Heaven's Door」

 タイトルにもなったナンバー「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」はロックの神様、ボブ・ディランが1973年に発表した名曲「天国への扉」。ディラン本人も出演した「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」(73年サム・ペキンパー監督)のサウンドトラック盤に収録され、エリック・クラプトン、ガンズ&ローゼズらがカバーし、ロックの古典として世界中に知られている。本作ではドイツの人気バンド「SELIG(ゼーリッヒ)」がこの映画のためにカバーしたバージョンをフィルムをじかに見ながらライブレコーディングし、ラストにより深い感動を与えている。



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<プロダクション・ノート>

<男の夢とロマン>が作り上げた、『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』

 本作の完成をもたらしたのは、製作、脚本、主演の3役をこなしたティル・シュヴァイガーとただの映画フリークであったトーマス・ヤーンとの<運命の出会い>であった。 本作がデビューとなるトーマス・ヤーンは当時、タクシーの運転手をしながら、自主映画を撮る映画おたく。そんなある日、“ガールキラー”の異名をとるドイツのトップ・スター、ティル・シュヴァイガーと偶然出会い、書きためていた脚本の束を大胆にもティルの元へ送った。その中のひとつが『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』であった。脚本を読んだティルはこの物語にすっかり魅せられ、「なんとしても映画にしたい!」と考えた。1年をかけトーマスとともに脚本を練り上げた末、96年ティルは映画の実現のために、「“ミスター・ブラウン”エンタテインメント」を設立。その名称は、尊敬するタランティーノの監督デビュー作『レザボア・ドッグス』(91・米)でタランティーノが演じていた役名から命名したものだ。自らプロデューサーとなったティルの動きは、「あのティルが強力に後押しをしている企画がある。という評判を呼んで、大手映画会社ブエナ・ビスタまでも興味を示した。ティルはブエナ・ビスタの製作者を説得するためホテルのバーで2時間半もかけて脚本を朗読し、実際にその場面の演技までしてみせた。ブエナ・ビスタのヘッド、ヴォルフガング・ブラウンは「この企画に喜んで乗ったのは、なによりまずティル・シュヴァイガーの持つ説得力のおかげですね。そして台本を綿密に検討した結果、これは絶対に素晴らしい映画になると確信しました。ドイツ映画界は冒険を恐れてはだめですね。もちろん今回も、経験豊かなテレビ監督か誰かを起用することはできましたが、そうしたら映像も編集もドラマ全てが無難な出来になってしまったでしょう」と語っている。



ルトガー・ハウアーのギャラは1日10万ドル!?

 ティルはプロデューサーとして一流の役者とスタッフを集めた。特筆すべきは『ブレードランナー』のルトガー・ハウアーであろう。「カナダで撮影中のルトガーを訪ねてこの企画の話をしたら、すぐに興味を持ってくれた」とティルはいう。ところが彼のオフィス・マネージャーが介入してきて、撮影一日につき10万ドル払えといいだした。「そんな大金、百年かかっても払えない」と思っていたらルトガー本人から「マネージャーのいうことなんか気にしなくていい、どっちみちやらせてもらうから」とティルに電話があった。そしてこのビッグなキャスティングは実現した。



プロダクション・デザイナーのモニカは自分で作ったセットを食べた!

 装置・衣装担当のモニカ・バウアートは『Manta,Manta(マンタ、マンタ)』(91)以来ティルとはお馴染み。モニカはこの映画に関して、「脚本がすばらしくて、モチーフ探しのうえで色々な新しい視点が開拓できた。チーム全体の共同作業の雰囲気も最高に良かったのよ」と語っている。

モニカはまず非現実的でシュールな雰囲気を作り出すため銀行、丸椅子、ガソリンスタンドといった日常的な事物をファンタジックに作り込むことにこだわった。また、ロード・ムービーとして重要な役割を果たす自動車も真っ青なメルセデス・クーペと、ピンクのキャデラックを揃えた。そして最大の見せ場であるトウモロコシ畑のカーチェイスシーンを苦心の末、作り上げた。「3月半ば、まだどこの畑も閑散としているときに、適当なトウモロコシ畑を選定するのはとても難しかった。やっと、これという場所を見つけたら、今度はお役所と悶着が起きた。その土地のお百姓さんたちが、もうジャガイモやカブや小麦を植え付けてしまったからトウモロコシ畑に使うなら賠償金をよこせといって訴えたのね。でも、お百姓さんのひとりが、リスクを引き受けてくれたの。もう植え付けずみのジャガイモ畑を鋤き返して、トウモロコシを植えてくれたの。もちろんある程度の損害賠償はしなくちゃならなかったけど、でも胸のつかえがとれたようだったわ。撮影までにはトウモロコシは立派に成長し、撮影が終わってから、穫って食べちゃった。自分のセットを食べちゃうって、面白いでしょ」。




ドイツのバンド「ゼーリッヒ」がカバーしたニューバージョン「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」

 本作のサウンドトラックは、フランツ・プラザのプロデュースのもと、ハンブルグのスタジオで録音された。メインに起用されたのは、ドイツで目下売り出し中のロックバンド「ZELIG(ゼーリッヒ)」。スタジオでフィルムを映写しながら、スクリーンに合わせてライブで録音したのである。その結果、音楽と映像が極めて密接に寄り添い、かつてない効果を得た。ティル・シュヴァイガーは、彼らのビデオクリップを見て「とてもクールで、この映画にぴったりだ」と考え、起用を決めた。ゼーリッヒのギタリスト、クリスチャンによれば「フィルムをじかに見ながらライブでレコーディングするというのはすごくさわやかでクリエイティヴなやりかただと思った。もちろん、個々のシーンから直接の刺激を受けて、音楽が即座に反応するしね」



天国への海は、オランダの海

 撮影は真夏に行われたので、天候がとても不安定だった。次々と撮影プランの変更を余儀なくされたが、チームの士気が下がることはなかった。最後にオランダの北海沿岸で夢のように美しい海の映像が撮影できた。



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<ストーリー>

 テニスボール大の腫瘍を脳に抱えたマーチン・ブレスト(ティル・シュヴァイガー)と末期骨髄腫のルディ・ウルリツァー(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)はそれぞれ余命幾許もないと宣告され、「死人病棟」の同室に入院させられる。突っ張った態度のマーチン、気弱で内向的なルディ、死を宣告された二人は、同じ運命に連帯感を感じていたわけでもない。少なくともテキーラの最初の一口を飲むまでは…。

病院の厨房で酒を交しながらマーチンはルディがまだ一度も海を見たことがないことを知る。

「天国じゃ、みんなが海の話をするんだぜ。海がどんなにきれいかってね。海を見たことがないやつは指くわえてるしかないな。おまえ、話には加われないぜ」

次の瞬間、二人が向かったのは病院のベッドではなかった。病院の駐車場からパステルブルーのベンツを盗み出し、アクセルをふかし、人生最大の、おそらく最後の冒険に出発した。盗んだ車がギャングのものだと知らず…。

そのころ、車を盗まれたヘンク(ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ)とアブドゥル(モーリッツ・ブライプトロイ)はボスのフランキー・“ボーイ”・ベルーガ(フープ・シュターペル)から大目玉をくらう。実は車には大物ギャング、カーチス(ルトガー・ハウアー)へ渡す大金が積まれていたのだ。マーチンとルディは車中でピストルを見つける。無一文、パジャマ姿のふたりはそれを武器にスタンドでガソリン代をチャラにし、新調のスーツに着替えるために銀行強盗までやらかす。これでギャングだけじゃなく、警察も二人を追ってくることになってしまった!

そんなことにはおかまいなく意気揚々と旅を続けるふたりだったが、忘れた頃にマーチンの腫瘍が痛みだし発作を起こす。マーチンのカウントダウンはルディよりも早く迫ってきている…。

薬で発作を抑え、間もなく回復したマーチンは車のトランクから百万マルクの入ったスーツケースを発見!上機嫌のふたりは豪華ホテルにチェックインし、シャンパンを浴びるほど飲んで一生分の「豪遊」をしようとそれぞれの望みを紙に書きだした。マーチンの一番の願いは、プレスリーファンの自分の母親(コーネリア・フローベス)にフリートウッドのピンク・キャディラックをプレゼントすること。同じタイプの車をプレスリーが実母にプレゼントしたことを覚えていたのだ。一方、ルディが絶対かなえたいことといえば…「一度に二人のオンナとセックスがしたい」。

翌朝ふたりが目覚めると、なんと警察がホテルを包囲している。とっさにマーチンはルディを人質にし、警察から制服まで奪って逃走に成功する。マーチンはルディ誘拐犯として指名手配され、事態はどんどん大きくなっていく。しかし病魔は容赦なく進行し、再びひどい発作がマーチンを襲った。ルディは薬局で発作を抑える劇薬を脅し取る。が、ここでの犯行もマーチンの仕業とされ、またもや警察、その上マスコミまでも現場に現れる。マーチンはルディを人質にトルコカフェに立て篭り、今度はテレビ中継までされ、騒動はドイツ中に放送されてしまう。

なんとかカフェを抜け出し、ふたりは車をぶっ飛ばし、海へひた走る。だがその後にはパトカーの大群、前方にはあのギャング一味が銃を構えて待っているという挟み撃ち状態に追い込まれる。まさに絶体絶命!次の瞬間、マーチンはアクセルを踏み込み、トウモロコシのど真ん中を切り込んでいく。マーチンとルディ、ふたりは命あるうちに念願の海を見ることはできるのか…。




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