ガラスの脳

手塚治虫 原作/中田秀夫 監督作品
1999年秋 公開予定
製作・配給:日活株式会社


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解説 | ストーリー | キャスト&スタッフ |



手塚治虫の原作を映画化

 世界的な漫画家であり、アニメーションの先駆者であった手塚治虫は、その生涯に数多くの名作を残した。古代から未来に至る人間の姿を時空を越えて描いた『火の鳥』、医療を通して社会や愛憎に鋭くメスを入れた『ブラックジャック』、そして少年少女の夢を描いた『鉄腕アトム』など、没後10年経った現在も作品のテーマは古びることなく、普遍性をもって私たちの心に感動を呼び起こしている。

 その手塚治虫が1971年(昭和46年)に発表したマンガ『ガラスの脳』がこの映画の原作である。

 原作は「5日間だけ覚醒することを神から許された脳」という生命の神秘をテーマとし、手塚治虫の世界観を凝縮した作品で、限られた時間を精一杯に生き抜く少女の姿と、彼女にその生涯を捧げる少年の至上の愛が狂おしく描かれている。

 ホラー映画に新しいスタイルを打ち出し、大ヒットを記録した『リング』('98)、『リング2』('99)の監督中田秀夫はホラーだけでなく、一途な恋愛映画を監督したいとかねてより熱望していた。ホラーにおいても、登場人物の繊細な心情を描くことで定評のある中田監督はこの原作に出会い、自らの想いを託す素材として、映画化へと猛烈に駆り立てられたという。

 たった5日間だけの人生を懸命に生き抜く少女・由美に、ポカリスエットのCMなどで注目される新鋭、後藤理沙。無垢でフレッシュな魅力を、5日間で17年分の成長を遂げる難しい役どころにぶつける。由美を生涯かけて愛しぬく同い年の少年・雄一に、ティーンエイジャーの絶大な人気を誇るジャニーズJr.の小原裕貴。切ない片思いを永遠なる至上の愛へと昇華させていく姿を演じきる。また、現代医学の限界に苦悩する由美の担当医に榎木孝明。雄一の優しい母親役に名取裕子など、日本映画界を代表する豪華な俳優人が脇を固めている。

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ストーリー

 1954年3月のある未明、富士ノ原に旅客機が墜落した。たったひとりの生存者は臨月の妊婦・飯田昌子。間もなく彼女は死亡したが、お腹の子は奇跡的に誕生した。由美と名づけられたその「奇跡の赤ちゃん」は、その後一度も目覚めることなく、人々の記憶から忘れ去られて行く…。

 7年後の1961年。緑多き武蔵野に建つ病院。喘息で入院していた7歳の少年・長沢雄一は、病院内を探険していて眠り続ける美しい少女・由美を発見する。看護婦の福原みつ(河井美智子)に由美のことを「眠り姫」だと聞かされた雄一は、絵本を読んでみる。

 「王子様のくちづけで、お姫様は目を覚ましました…。」

 王子を真似てそっと由美にキスする雄一。しかし由美は目覚めない。退院した後もキスするために通い続けるが、少女が目覚めることはなかった。

 1972年。高校生になった雄一(小原裕貴)は、偶然テレビのワイドショーで飛行機の墜落事故のニュース映像と、続報として唯一の生存者である「奇跡の赤ちゃん」が今も覚醒することなく眠り続けていることを知る。その瞬間、子供時代の記憶が生々しく蘇り、思わず病院へと向かう雄一。

 かつてと同じ病室へと雄一が足を踏み入れると、そこには美しく成長した、由美(後藤理沙)が眠っている。再びキスする雄一。だが、やはり由美は目覚めない。雄一は由美の元へ通い、キスを続ける。

 とある激しい雷雨の夜、雄一は祈りを込めた長いキスをする。やがてゆっくりと由美の瞼は開く。17年間の眠りから由美が目覚めたのだった。

 1972年4月22日<1日目>。この日から由美は急成長を始める。最初は赤ちゃんと同じで喋ることも歩くこともできない。由美を背負って林の中を歩く雄一に言葉にならない歓声をあげる由美。

 1972年4月23日<2日目>。しかし、みるみるうちに言葉を喋り、新しい世界の素晴らしさを身体いっぱいに表現する由美。しかも驚くべきことに、眠っている間にも自分の周りで起こっていることを無意識に記憶しているのだった。事故以来失踪している父親・肇の顔も覚えているのだった。由美と偶然手を繋いだ雄一は、由美の無邪気さとは裏腹にその手の感触に戸惑う。

 1972年4月24日<3日目>。ワイドショーは由美の17年間振りの目覚めを奇跡として先を争ってレポートしている。戸惑いを見せる由美を雄一は割り込んで由美を連れ去っていく。逃げ込んだ林の中で雄一は唐突な由美の告白に驚愕する。由美は<5日間しか目覚めていられないこと、そして残りの2日間を担当医の斐川(榎木孝明)を愛することで終わりたい>と告げたのだ。その夜、雄一は絶望しながらも由美の思いを斐川に伝えるが、冷徹に一蹴されてしまう。それを知った由美は高台から身を投げようとするが、間一髪で助ける雄一。そして雄一にはただ由美を抱きしめることしかできなかった。

 1972年4月25日<4日目>。斐川も由美にキスをしていたことを知った雄一は斐川に詰め寄るが、彼は医師としての自分の無力さに泣くばかりだった。すべてを拒絶したように見えた由美が呟く。「…王子さまのキスで、眠り姫は目を覚ましました…。」それは、少年の頃、雄一が由美に囁き続けたあの言葉だった。雄一はどうしようもない思いから、由美にキスしてしまう。そして由美は知る。何年も由美に祈り続けてくれていたのは雄一だった、と。由美を目覚めさせたのは雄一だったのだと…。

 1972年4月26日<5日目>。小さな教会で雄一と由美の結婚式が行われた。バージンロードに踏み出そうとした由美は父の姿を認めた。式の終了後、斐川は由美の暗示を解くには雄一の祈りしかないと、言うしかなかった。そして由美と雄一は永遠の愛を誓うが…。

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スタッフ&キャスト

  • 製作総指揮
 中村雅哉
  • 原作
 手塚治虫(「ガラスの脳」集英社刊)
  • 企画
 明石知幸
  • プロデューサー
 椋樹弘尚・大澤茂樹
  • 監督
 中田秀夫
  • 脚本
 小中千昭
  • 撮影
 林淳一郎
  • 照明
 豊見山明長
  • 録音
 北村峰晴
  • 美術
 斎藤岩男
  • 編集
 田中愼二
  • 音楽
 川井憲二
  • ヴィジュアル・エフェクト
 松本肇
  • 衣装デザイン
 宮本まさ江
  • 助監督
 久保朝洋
  • 製作担当
 金子哲男
  • 協力
 手塚プロダクション
  • 撮影協力
 日活撮影所
  • 製作・配給
 日活株式会社
  • 出演
 後藤 理沙(由美)
 小原 裕貴(雄一)
 林  知花(恵子)
 河合美智子(みつ)
 名取 裕子(律子)
 榎木 孝明(斐川)



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