『華氏911』/"FAHRENHEIT 9/11"




第57回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞
国際批評家連盟賞ダブル受賞
2004年8月14日より恵比寿ガーデンシネマ
2004年8月21日より全国公開

2004年/アメリカ/2時間2分/ビスタサイズ/字幕翻訳:石田泰子/提供・共同配給:ギャガ・コミュニケーションズ×博報堂DYメディアパートナーズ×日本ヘラルド映画/宣伝:ギャガGシネマ海×オフィス・エイト

◇監督・製作・脚本:マイケル・ムーア ◇製作:ジム・チャルネッキ、キャスリーン・グリン ◇製作総指揮:ハーヴェイ・ワインスタイン、ボブ・ワインスタイン、アグネス・メントル ◇製作監修:ティア・レジン ◇共同製作:ジェフ・ギブス、カート・イングファー ◇編集:カート・イングファー、クリストファー・スワード、T・ウッディ・リッチマン ◇録音:フランシスコ・ラトーレ ◇撮影:マイク・デジャレ ◇記録主任:カール・ディール ◇オリジナル音楽:ジェフ・ギブス ◇ライン・プロデューサー:モニカ・ハンプトン




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【解説】

世界大沸騰! 驚異の全米初登場第1位!
ムーア命がけの突撃強行取材!
今度は笑って泣ける、リアル・エンターテインメントだ!


史上最長級、25分にわたるスタンディングオベーション! 空前の大混乱となったカンヌでの最高賞受賞から2カ月余、制作開始当初からのさまざまな圧力に屈せず全米公開へこぎつけた『華氏911』。ドキュメンタリーとしては異例の868館という超拡大規模で公開するや、売り切れ続出、場内騒然、なんと3日で『ボウリング・フォー・コロンバイン』の記録を更新した! そしてドキュメンタリーにして史上初の全米興行収入第1位を記録! 公開直前のUSプレミアにはオノ・ヨーコ、ディカプリオ、メグ・ライアン、シャロン・ストーン、ダイアン・レイン、ジョディ・フォスターなどなど超セレブが続々来場。マドンナは自身のライブで「華氏911最高!」と叫んだ。獄中のサダム・フセインは弁護士に「華氏911を観たい」と懇願。世界中で白熱する異論反論! 映画というよりはもはや"事件"となった本作、あなたはもうすぐその目撃者となる。

アカデミー賞を受賞した『ボウリング・フォー・コロンバイン』でKマート倒産の口火を切り、大スター、チャールトン・ヘストンが逃げ出すまでを執拗にカメラで追い続けたマイケル・ムーア。今度の標的はなんとアメリカそのもの!

ブッシュ政権を根っこから揺るがす衝撃映像満載。独特のユーモアで大爆笑のうちに展開されるストーリーの下から滲み出す真実とは、国家システムの恐ろしさと戦争の悲惨さ。ムーアは本作で、今の彼にしか成し得ない新しいエンターテインメントを確立させた。観客にとって初めての映画体験となるだろう。



 


【公開までのドキュメント】

◆2003年3月23日
○『ボウリング・フォー・コロンバイン』がアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞

授賞式でマイケル・ムーア監督、「私たちは戦争に反対です。ブッシュ、恥を知れ!」とコメントして会場ブーイング。



◆2003年春
○『華氏911』アイコン・プロダクションが全額出資の契約

アイコンはメル・ギブソンが友人と作った会社。最近では『パッション』を製作。『ボウリング〜』のオーストラリア、ニュージーランドの配給も手がけており、アイコンからムーアのほうに出資が持ちかけられた。3〜4カ月の交渉を経て契約成立。

プロジェクトスタート3週間後、アイコン側から契約反故の連絡。ホワイトハウスの関係者から「この映画をサポートするなら、メル・ギブソンはホワイトハウスから二度と招待を受けることはないだろう」と言われたとエージェントがコメント。



◆2003年4月
○米娯楽産業大手のディズニー傘下ミラマックス・フィルムズが出資と配給を受諾

ミラマックスはディズニーの配給専門社ブエナビスタを通じ、全米配給することになった。



◆2003年5月
○ディズニーの最高経営責任者マイケル・アイズナー、配給は絶対許さないと通達

すでに撮影開始されていたが、アイズナーはシノプシスも読まずに決定。ただし製作中止を命じなかったばかりか、その後1年の間、ディズニーは600万ドルの資金を投入。ミラマックスは「配給上の問題は生じない」と保証。



◆2003年夏
○撮影快調




◆2003年10月7日
○ムーアの著書「おい、ブッシュ、世界を返せ!」全米発売

ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー3週連続ナンバーワン。



◆2004年4月21日
○カンヌ映画祭正式出品決定

決定後、ディズニーの製作担当幹部がやっと試写を観て「この映画は爆発的」と語る。



◆2004年5月5日
○ディズニー、『華氏911』の配給を禁止

ミラマックスがディズニーの説得に尽力したものの、ディズニー側曰く「政治的に偏った映画を配給することは我が社の利益にならない」 ニューヨーク・タイムズ紙は「言論の自由より会社の収益を重視している」と非難。大統領の弟のジェブ・ブッシュが州知事をつとめるフロリダ州において、ディズニーはテーマパーク、ホテル事業を展開。この映画の配給によって税優遇措置を危うくするからだと解説。ディズニーは、『華氏911』にも登場するサウド王家から赤字経営のユーロ・ディズニーランドに20%以上の資金を供給してもらっていた。



◆2004年5月11日
○マイケル・ムーア監督の新作、英国は配給決定

英紙フィナンシャル・タイムズは、『華氏911』が今夏に英国では公開されると伝えた。



◆2004年5月12日
○ムーア監督の新作、米国にて新たな配給元探しで合意

ミラマックスは、『華氏911』の新たな配給元を探すことをディズニーとの間で合意した。



◆2004年5月17日
○カンヌ映画祭にて上映

プレス試写2回では入場希望の記者がもみ合う混乱も。上映後の記者会見も熱気ムンムン。オフィシャル上映ではスタンディング・オベーション。



◆2004年5月22日
○カンヌ映画祭でパルムドールと国際批評家連盟賞のダブル受賞 !! マイケル・ムーア感涙

ついに発表されたパルムドール! その政治的内容に受賞はないという声もあったが、見事『華氏911』が受賞! ムーアはスタンディング・オベーションの中、何度も感激の涙を拭った。ちなみにこの日、ブッシュはマウンテンバイクで転倒。



◆2004年5月30日
○幾多のトラブルを経て、ついに『華氏911』、アメリカ公開決定!

ディズニーから配給を拒否され、全米での公開が危ぶまれていたが、ミラマックスの創業者であるワインスタイン兄弟が個人的に権利を買い取り配給することが決まる。



◆2004年5月31日
○使われなかった16分、ムーア監督、遺族に映像贈る!

イラクの反武装勢力に首を切られ殺害された米民間人ニコラス・バーグさんが、『華氏911』用のインタビューを受けていたことが発覚。編集段階でカットした映像を遺族にプレゼント。



◆2004年6月2日
○全米での公開、6月25日に決定!

『華氏911』が遂に6月25日より全米1,000館規模で公開されることが決定。配給にはワインスタイン兄弟と、カナダのライオンズゲートフィルム(ムーアの"TV Nation"製作)、IFCフィルムズ(同じく「恐るべき真実」製作)が協力。



◆2004年6月8日
○USプレミア開催! セレブ続々ご来場!

ロスで行われたスクリーニングはカンヌバージョンに新たなサウンドがミックスされ、10分ほど新フッテージが追加された。出席者も多彩、セレブに送られた招待状に対してもかつてないほどの高い出席率となった。

<主な来場者たち>

レオナルド・ディカプリオ/ジョディ・フォスター/シャロン・ストーン/メグ・ライアン/ロブ・ライナー/ドリュー・バリモア/ヴィゴ・モーテンセン/デミ・ムーア+アシュトン・クッチャー/ウェス・アンダーソン/ケヴィン・スミス/ジャック・ブラック/スパイク・ジョーンズ/ダイアン・レイン/マシュー・ベリー/クリス・ロック/ロザンナ・アークエット/ビリー・クリスタル



◆2004年6月10日
○『華氏911』の題名"パクリ"騒動!

アメリカSF作家レイ・ブラッドベリ氏が自作「華氏451」から題名を盗まれたと非難する騒ぎが起こる。ムーアはブラッドベリに<敬意を表して>題名をつけたと告白。



◆2004年6月11日
○次回作のテーマは、ブレア英首相!?

ムーア監督は次回作のテーマにブレア英首相を検討中であることを明らかにした。ムーア曰く、「今回のイラク戦争について個人的にはブッシュよりブレアのほうが責任が重いと考えている。なぜならブレアはブッシュのようにアホではないから」



◆2004年6月13日
○ブレア首相テーマ作は冗談!

次回作のテーマにブレア英首相を検討中と述べたムーアだが、自身のホームページで「トニー(ブレア首相)、怖がらせてごめんね。マイケルは冗談を言っただけなんだよ」と告白。



◆2004年6月13日
○"STOP MICHAEL MOORE"キャンペーンって!?

『華氏911』全米公開を妨害するため、上映が決まっている映画館に対する抗議運動が勃発。イリノイ州のある映画館ではオーナーが「死ね」というメッセージを送られたとか。



◆2004年6月14日
○米映画協会『華氏911』R指定に!

米映画協会は、17歳未満の鑑賞に保護者同伴を義務づける「R指定」を決めた。監督側は「2、3年後にイラクに派兵されるかもしれない15、16歳は、この映画を観る権利がある」と主張。



◆2004年6月14日
○NYプレミア上映もスタンディング・オベーション!

ロスに続き、ニューヨーク・ジーグフェルド劇場で行われたプレミアに、ティム・ロビンス、マイク・マイヤーズ、グレン・クローズ、グレチェン・モル、リチャード・ギア、ローレン・バコール、フィリップ・シーモア・ホフマン、リンダ・エヴァンジェリスタなどなど錚々たる顔ぶれが集まった。さらにヨーコ・オノが、亡き父親にそっくりになった息子ショーンとともに登場。ロスのプレミアに引き続き現れたレオナルド・ディカプリオ、ムーアの追っかけ状態!?



◆2004年6月23日
○NY先行上映館大盛況! 興行収入の新記録樹立!

25日の全米上映に先駆けて上映を始めたニューヨークの映画館2館で、1日の興行収入の新記録を達成! 1館での1日の興行収入は、49,000ドルで、1997年の『メン・イン・ブラック』の43,435ドルの記録を抜いた。もう1館でも、興行収入は30,000ドルを超え、2000年の『グリーン・デスティニー』の24,013ドルの記録を塗り替えた。また、前売り券の売れ行きも前代未聞! ネット販売会社は23日、今週末分では『華氏911』は全体の48%を占めると発表。



◆2004年6月25日
○全米、怒濤の868館でついに公開! 驚異的大ヒットでスタート !!

ついに『華氏911』が全米50州868館で公開され、週末の興行収入は2,180万ドル(約23億円!)、館アベレージは25,000ドルの全米NO.1スタートを切った。ドキュメンタリーとして過去最高であることは言うまでもなく、あの『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(館アベレージ24,000ドル)をも抜く驚異的なスタートとなっている。



◆2004年7月
○アメリカ・メディアのうち、CNNなどで連日ムーア報道! 『華氏911』論争、全米席巻 !!


◆2004年7月25日
○全米公開1カ月、1億ドル突破!

7月25日までの1カ月で1億ドルの大台を突破し、1億310万ドル(約113億4,000万円)に達した。



◆2004年7月26日
○ムーア、民主党大会に出席!

民主党全国大会のゲストとしてムーア監督はボストン市内の会場を訪問。ブッシュについて「大多数の米国人はあの男に投票したことはない」とコメント。前回の大統領選への不満を露わにした。



◆2004年7月28日
○ブッシュ大統領のお膝元で上映会!

大統領の地元である米テキサス州クロフォードで上映会が行われた。人口700人の町に周辺地域から5,000人の観客が押し寄せる大反響となった。クロフォードで休暇中のブッシュ大統領に向け、ムーアは招待状を送ったことを自身のホームページで発表。



◆2004年8月14日
○ついに待望の日本公開 !!! 恵比寿ガーデンシネマ独占先行ロードショー!


◆2004年8月21日
○日本全国150館以上にて怒濤の拡大ロードショー !!


 


【基礎用語解説】

●ジョージ・W・ブッシュ/George W. Bush

1946年7月6日、コネチカット州生まれ、テキサス州育ち。1995年よりテキサス州知事。2001年に第43代のアメリカ合衆国大統領に就任。映画の中で「my dad」と呼んでいるパパ、ジョージ・H・W・ブッシュは、第41代の大統領。現ブッシュ政権の主要メンバーは、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、パウエル国務長官、ライス大統領補佐官、そして「ワシよ高く飛べ〜(Let the Eagle Soar)」と歌うアシュクロフト司法長官など、パパ・ブッシュ政権から因縁の顔ぶれが並ぶ。パパは湾岸戦争後に失脚したが、ということは息子のほうも……? ブッシュ、チェイニー、ラムズフェルド、トニー・ブレア首相のパロディ場面の映像はTV番組「ボナンザ/カートライト兄弟」(1959〜1973)、音楽は映画『荒野の七人』(1960)から。


●オサマ・ビン・ラディン/Osama bin Laden

サウジアラビア国籍のアラブ人で、1957年生まれらしい。大富豪ラディン一族の財産が、テロ組織の資金源になっているらしい。ソビエトのアフガニスタン侵攻(1979〜1989)にアフガン義勇兵として戦った。その後、イスラム急進主義派テロ組織ジハード団などの影響を受け、反米活動に転じた。1988年、イスラム教徒による国際武装勢力のネットワーク、アルカイダを設立。1998年、アメリカに対する聖戦を宣言。国際テロの黒幕として、1993年のニューヨーク世界貿易センター爆破、1998年のケニアとタンザニアの米大使館爆破、2000年イエメン沖の米駆逐艦コール爆破等の事件に関わったとされる。9.11テロもこの人らしい。が、ムーアは「アフガニスタンの洞窟で腎臓透析治療を受けている男が、あんなことを指揮できるのか?」と疑問視している。2001年7月、入院したドバイの病院にCIAが面会に来たとの報道や、9.11から2周年の折り、アルジャジーラ衛星放送局が放送した"犯行告白"ビデオはインチキとの指摘もあった。現在はアフガニスタンとパキスタンの国境近くに潜伏している……らしい。


●タリバン/Taliban

1996年よりアフガニスタンを支配していた、イスラム原理主義政権。タリバンとはイスラム教の神学生の意味。9.11後、ビン・ラディンを庇護しているとの理由でアメリカに侵攻され、政権の座を失った。ブッシュがテキサス州知事だった1997年には、アフガン経由でパイプラインを引きたがっていた<ユノカル>のお客さまとして、テキサス流の手厚いもてなしを受けていたというのに。


●ビン・ラディン一族/bin Laden Family

サウジアラビア/中東屈指の財閥。国の道路、発電所、飛行場など建てまくり、世界中の企業に投資している。全米各地に不動産を所有、ハーバード大にも多額の寄付をしている。パパ・ブッシュが顧問を務める<カーライル・グループ>も、投資を受けていた。オサマとは縁が切れているというが、9.11の直前に、親族がオサマの息子の結婚式を祝う映像が公開されている。アメリカ在住の一族は24人いたが、9.11の直後に政府上層部の許可を受け、自家用ジェット機でボストンへ移動した後、ヨーロッパに出国した。リッキー・マーティンでさえ乗れなかった非常時に。


●バンダル・ビン・スルタン王子/Prince Bandar bin Sultan

サウジアラビア王家の王子で、駐米サウジ大使。ワシントンにいる全世界の外交官のうち、国務省が身辺警護の措置をとっているのはこの人だけとか。ブッシュとは仲良しで、9.11の2日後にディナーをともにしたという。アメリカでは1日150万バレルのサウジ産石油を使っており、金融市場には何兆ドルものサウジ・マネーがつぎ込まれている。ブッシュは議会が9.11についてまとめた報告書から、サウジが攻撃に関与した部分28ページ分を削除させた。なんでかなー。


●ジェイムズ・R・バス/James R. Bath

テキサス州軍航空隊時代のブッシュの友人。オサマの兄サレムの代理人として、ビン・ラディン一族の資産をテキサス州の企業に投資していた。2000年の軍事資料にはあった名前が、2004年の資料では消されている。これも、なんでかなー。


●サダム・フセイン/Saddam Hussein

さまざまな民族や宗派の人々が、理想の国像を実現しようとしたイラク。その複雑な歴史の中で、フセインは若い時からバース党で才覚を発揮し、1979年大統領に就任した。体制を身内で固め、被支配者に完全な忠誠を求め、容赦ない懲罰や殺戮で「血塗られた独裁者」と呼ばれた。2003年4月の政権崩壊から8カ月の逃亡を経て、12月に拘束。半年ぶりに世間に顔を見せた2004年7月1日の特別法廷では、怪気炎を上げた。フセインに対する容疑は以下のとおり。1974年:宗教指導者殺害、1983年:クルド人数千人の殺害、30年間にわたる政治関係者らの殺害、1987〜1988年:クルド人大量殺害、1988年:クルド自治区ハラブジャでの毒ガス攻撃による虐殺、1990年:クウェート侵攻、1991年:蜂起したシーア派住民とクルド人に対する弾圧に関するもの。イラクは、2004年6月に連合国暫定当局から主権が完全移譲されたが、今後、国家としてどうなっていくのか道は長そう。


●アメリカ大統領選/Presidential Election

アメリカ人にとって大統領は、最高責任者であると同時に国の英雄。そのヒーローを選ぶ大統領選は、4年に一度の大イベントだ。大まかには、1〜3月:州ごとの予備選(各党の全国大会に出席する代議員を選ぶ)→7〜9月:全国党大会(党代表の大統領候補を選ぶ)→11月本選挙(大統領候補が州ごとに創った選挙人リストに対し投票)という流れだが、この10カ月間は候補者予想や支持率、政策論議など、連日カウントダウン報道が繰り広げられる。日本と異なるのは、選挙が平日にも行われることと、有権者となるには登録の必要があること。実際には未登録者も多く、国民の約50%は投票に行っていない。ムーアはこの無関心層へ「起きろ〜」と呼びかける。


●9.11アメリカ同時多発テロ/September 11, 2001 Terrorist Attacks

国内線民間航空機4機が同時にハイジャックされ、アメリカの政治経済を象徴する建物に激突し、全世界に衝撃を与えた自爆テロ事件。2機はNYの世界貿易センタービルに、1機はワシントン郊外国防総省(通称ペンタゴン)に激突。ピッツバーグ近郊に墜落した1機は、ホワイトハウスが標的だったらしい。このテロによる犠牲者は3,000人以上。日本人の死者・行方不明者も20名以上いる。


●大量破壊兵器/Weapons of Mass Destruction

「サダムがテロリストに核兵器を提供したら、恐ろしいことになるぞ」といきまいてイラク戦争に突入したものの、あるはずのそれは見つからない。イラク側は大量破壊兵器は湾岸戦争以降に破棄したと主張しており、国連の兵器査察も受けている。米国民の間にも「どこにあるんじゃい?」とイライラが高まった。ちなみに1985年から1990年まで(レーガン&パパ・ブッシュ時代)にアメリカ企業がフセインに売った化学剤は、炭疽菌、ボツリヌス菌、マルタ熱菌などなど。軍事に転用できる高性能コンピューターなんかも売っていた。


●テキサス石油企業/Texas Oil Companies

テキサス州はブッシュ一族の牙城。ゆかりの石油大手がそれを固めている。まず、顧問のパパ・ブッシュをはじめ、役員に過去の大物政治家が名を連ねる<カーライル・グループ>は、特に軍事投資では米国有数。ブッシュは一時、子会社<ケイターエア>の役員だった。アフガン経由のパイプライン敷設計画の中心となっていたのは<ユノカル>。現アフガン大統領であるカノザイは、同社の元最高顧問。2001年に経営破綻したエネルギー大手で、不正会計等で今もニュースを賑わしている<エンロン>は、ブッシュ父子の強力な支援者だった。現ブッシュ政権には元エンロン関係者が多い。副大統領チェイニーの前職は、カーライルの主要投資先である油田・インフラ関係のエンジニアリング企業<ハリバートン>のCEO。


●オレンジレベル/Orange Level

テロの危険度を知らせるレベルは、下から緑Low、ブルーGuarded、黄色Elevated、オレンジHigh、赤Severeの5段階。9.11から1年後にオレンジにアップ。へんてこなテロ対策商品が続々登場した。


●愛国者法/Patriot Act

個人の電子メール、銀行取引の記録、図書館の貸し出し記録等、プライバシー権にほとんど配慮することなく、情報を集める大幅な権限を政府に認める法律。これを通称「愛国者法」と名づけてしまうセンスがすごすぎ。法案は深夜に書き換えられたため、ほとんどの下院議員が人権保護規定が削られたことに気づかないまま決議された。「それならぼくが読んであげちゃうよ」 ムーアはソフトクリーム屋のワゴン車から、元気に法案を読み上げる。


●FOXニュースチャンネル/Fox News Channel

画面に星条旗を翻し、愛国心をかきたてる報道で高視聴率を獲得。他局の報道にも影響を与え、ブッシュの支持率上昇に貢献したが、「戦争を挑発した」などの批判を受けた。役員のジョン・エリスはブッシュのいとこ。


●ブラックホーク・ダウン/Black Hawk Down

この映画には、CNN、NBC等のニュース映像のほか、負傷した兵士など国内のメジャーテレビ局では放映が控えられた映像が登場する。その中でも衝撃的な映像のひとつは、米民間人4人がイラク人反米グループに襲撃され、車に火が放たれ、焼死体が鉄橋から吊された時のもの。それは、1993年にソマリア共和国で起きた「ブラックホーク・ダウン」事件を思い出させる。2機の「ブラックホーク」が撃墜され、虐殺された兵士の遺体が住民によって引きずり回された。この映像の放映を機に、クリントン政権はソマリアを撤退。『華氏911』のライラさんの息子もまた、「ブラックホーク」を撃墜されて亡くなった。


●民間人人質問題/Hostages

映画には人質となった日本人3人(救出)とハミル氏(救出)の映像が出てくるが、民間人人質問題は日本では「自己責任」で喧々諤々の議論となった。ムーアはこの映画のためにニコラス・バーグ氏(斬首処刑)をインタビューしていたが、映像は使用せず遺族に贈った。バーグさんら処刑された人質は、オレンジのジャンプスーツを着せられていたが、これはイラクの旧アブグレイブ刑務所やタリバン、アルカイダのメンバーを収容するグアンタナモ米軍基地捕虜収容所のものに似ている。


●ミシガン州フリント/Flint, Michigan

ムーア作品おなじみの、故郷の町。労働者階級の血と汗と涙がしみこんだ、ムーアの原点である。「ブッシュ、見に来いよ。こここそ、戦場だよ」とは、映画に出てくる地元民の発言。


●音楽/Music

休暇を楽しむブッシュには、もちろんゴーゴーズの「Vacation」を。2003年航空母艦を訪問するブッシュのバックに流れる脳天気な歌は、1980年代のテレビ番組「The Greatest American Hero」のテーマ曲「Believe it or Not」。またエンドクレジットではニール・ヤングの名曲「Rockin' in the Free World」が、観客を鼓舞する。


●ドラグネット/Dragnet

捜査の基本を教えちゃうべくインサートされた映像は、米人気テレビシリーズ「再現ファイル/捜査網」(1952〜1970)。劇場版は『本家・ドラグネット』(1954)と『ロサンゼルス捜査網』(1969)。パロディ版の『ドラグネット・正義一直線』(1987)もある。


●「1984年」by ジョージ・オーウェル
 Nineteen Eighty-Four by George Orwell


映画の終盤、ムーアによる以下のナレーションは、英国の作家ジョージ・オーウェル(1903〜1950)最後の著作「1984年」第9章からの引用。"...it does not matter if the war is not real. For when it is, victory is not possible. The war is not meant to be won, but it is meant to be continuous.(戦争が実際に起ころうと起こるまいと問題ではない。それに勝利の可能性がない以上、戦争が好転しようとするまいと問題ではないのだ。大切なのは戦争状態を存続させるということだけである)"


 


【キャスト&スタッフ】

■マイケル・ムーア/MICHAEL MOORE(監督・製作・脚本)

1954年4月23日、ミシガン州フリント生まれ。14歳のときに聖職者をめざしてカトリックのセミナーに参加、また18歳のときには米国で最年少の公職選挙当選者となるが、22歳で政界を引退。ジャーナリズムの世界に足を踏み入れて創刊した"THE FLINT VOICE"紙は、国内で評判の高い反体制新聞になった。1989年、ムーアの地元フリントを荒廃に導いた大企業ゼネラルモーターズを追ったドキュメンタリー映画『ロジャー&ミー』で、ニューヨークとロサンゼルスの批評家協会賞ドキュメンタリー賞など、全米各地の映画祭の受賞を獲得し、映画監督として高い評価を得る。このとき見せた突撃アポなしインタビューは、その後のムーアスタイルを決定づける。1990年代にはテレビ界からも声がかかり、大手メディアでは決してレポートされなかった裏話を徹底取材したテレビシリーズ"TV Nation"で、プロデューサー、監督、脚本、司会をつとめ、エミー賞を受賞。『ボウリング・フォー・コロンバイン』の発端ともいえる「マイケル・ムーアの"恐るべき真実" アホでマヌケなアメリカ白人」は、LAタイムズが<最高におもしろいテレビ番組>と絶賛し、2期連続でエミー賞にノミネートされている。

前作『ボウリング・フォー・コロンバイン』で、コロンバイン高校銃乱射事件をきっかけに銃社会アメリカを鋭く描き、2003年アカデミー賞長編ドキュメンタリー作品賞受賞のほか、2002年のカンヌ映画祭55周年記念特別賞やナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀ドキュメンタリー賞、フランス・セザール賞最優秀外国映画賞など数々の賞を受賞。

ムーアは作家としても有名。主な著作にいずれも大ベストセラー「アホでマヌケなアメリカ白人」「おいブッシュ、世界を返せ!」「アホの壁 in USA」がある。現在、ムーアはプロデューサーも兼ねる妻キャスリーン・グリン、一人娘ナタリーとともにニューヨークシティおよびミシガン州で暮らしている。



■ハーヴェイ&ボブ・ワインスタイン/HARVEY & BOB WEINSTEIN(製作総指揮)

ミラマックスの共同経営者。全米公開が危ぶまれた本作を配給するために個人会社を設立。全米公開へと踏み切った。兄ハーヴェイが1952年、弟ボブが1953年に、ニューヨーク州で生まれる。1979年に兄弟でミラマックス・フィルムズを創設し、数々の名作を製作してきた。