『日曜日の恋人たち』/"J'AIMERAIS PAS CREVER UN DIMANCHE"


2000年4月29日より
俳優座トーキーナイトにてレイトショー


1998年/フランス映画/カラー/91分/1:1.85ビスタサイズ/ドルビー・デジタル

サントラ盤:イーストウエスト・ジャパン
デザイン:フィッシュデザイン
配給:アルバトロス・フィルム
パンフレット製作:アルバトロス・フィルム、シネマ・キャッツ

◇監督:ディディエ・ル・ペシュール ◇脚本:ディディエ・ル・ペシュール ◇撮影:ドニ・ルーデン ◇録音:パスカル・オーモン ◇編集:シルビー・ランドラ ◇音楽:フィリップ・コーエン=ソラル、ピエール・アンリ ◇製作:ファブリス・コート ◇キャスト:エロディ・ブシェーズ(テレーザ)、ジャン=マルク・バール(ベン)、マルタン・プティギヨ(デュコン)、パトリック・カタリフォ(ボリス)、ジェラール・ルシーヌ(アベル)、ジャン・ミシェル・フェト(ニコ)、エレン・ザジ(ジャンヌ)、ジャンヌ・カシラス(マリー)




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【解説】

■現代の恋人たちに贈る「眠れる森の美女」の物語

この『日曜日の恋人たち』は、「犯された死体が蘇る!」というセンセーショナルな発端で始まるが、そのスキャンダラスな出来事は、この映画のささやかな一部分でしかない。

この映画は、愛を失い絶望の淵に立つ男と、死の淵から蘇生し、自分を死姦した男を追う女の出会いを通し、愛と死の狭間に揺れる恋人たちを鮮烈に捉えた愛の物語である。 監督のディディエ・ル・ペシュールは語る。
「これは、愛とセックスのバランスを失った現代の人々に贈る"眠れる森の美女"の物語である」と。



■愛、セックスに纏わりつく死の香り

人類の歴史にエイズが出現して以来、セックスは死の危険を伴う非常に危険な行為であるという一つの常識が誕生した。例えば、相手に対してごく自然に欲望を抱いた人間は、同時に「死」という危険な要素とも付き合わなくてはならない。

「生」という人間の根本的な欲求から発生していたはずの「愛」や「セックス」というコミュニケーションの手段は、「死」や「恐怖」というこれまで対極に位置していたネガティブな要素に纏わりつかれ、もはや瀕死の状態にある。その絶望の中で、仏巣に愛を語ることも普通のセックスを行うこともできなくなった人々。愛を求めて彷徨い、失っては傷つき、いつの間にか危険なセックスゲームに身を置く恋人たち。

この映画の主人公ベンも、愛を失い絶望の中で彷徨う男である。
そんな彼の前に、突然テレーザという若い女が現れた。最初は死体という形で、次には彼を追う美しい女として。



■新聞の三面記事が愛の物語の発端

10年位前の新聞に載った「死体公示所で犯された死体が蘇る!」おいうショッキングな三面記事を読み、この映画のモチーフにしたというペシュール監督。彼は死姦により蘇生したテレーザに、彼女の死体を犯した男ベンを追わせる。

そんな彼女に対し頑なに心を閉ざし、拒絶するベン。
ベンはもはや快楽も生をも否定し、ただひたすらに自己破壊の危険なセックスの中だけに、自分のいる場所を見い出しているのだ。

やがてテレーザは、ベンの心の裏側に棲む、死の病の床の友人、彼の許を去った妻、愛を失った男、そして女たちと出会う。
そして彼女は、次第にベンの人生に巻き込まれていくのだが……。



■純粋なものを追い求めて

1988年以降、数多くのミュージッククリップを発表してきたディディエ・ル・ペシュールは、1996年初長編"Des Nouvelles Du Bon Dieu"を発表。この「激怒の喜劇!」と呼ばれた映画は、ニューヨーク、ビアリッツ等の映画祭で高い評価を得、グランプリを獲得、"鬼才ペシュール"の名を高めた。

監督のぺシュールは語る。
「この世紀末において、なぜ人間たちのセックスや愛という基本的な人間関係はこkまで傷つけられてしまったのか? そして人類はそれを克服できるだろうか? こういった疑問や自分自身の悩みの中で、この映画の撮影が始まった。この映画の登場人物も、物語も、出演者も、そして私自身も純粋なものを持ち続けるだけを目指し、この映画を作った。」

テレーザを演じたのは、『天使が見た夢』で1998年カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞、J・ビノシュ、R・ポーランジェを追う新進若手女優エロディ・ブシェーズ。「テレーザがベンを追うのは、決して彼を"命を救った救世主"と崇めたからだけではない。彼女が蘇生し、人生を見つけ、再び歩き始めた時に出会った男がベンだからよ」と彼女は語る。

一方のベン役には『グラン・ブルー』でセザール賞主演男優賞受賞以来、一躍スターダムに乗り、エロディ・ブシェーズがヒロインを演じた"Lovers"では主演、監督の二役を務めたジャン=マルク・バール。
「死から蘇ったテレーズを受け入れないのは、彼女の行動を恐れたからではなく、蘇った生命を拒否したのだ」と彼は語っている。



■撮影とロケーション、音楽について

ペシュール監督は、映画の中の暴力やセックスに対し、その表層的な部分の描写を否定した。彼がこの映画で試みた「絞りを開放にしたフィルターなしのカメラをカメラマンが抱えて撮影する」という手法は、人を背景から遠ざけ、内面的エロティシズムと人の心の動きに焦点を合わせるのに効果を呼んだと言う。

この映画の映画音楽を担当したのは、フィリップ・コーエン=ソラル。彼は心臓の音と音楽のシンコペーションをシンクロさせながら、この映画の恋人たちを象徴的に捉えた。 また映画の冒頭のセンセーショナルなクラブのシーンには、ミュージック・コンクレートの創始者、現代音楽の巨匠ピエール・アンリが参加。テクノミュージックの開祖としても知られる彼と彼の音楽は、現代のクラブシーン、ミュージックシーンに多大な影響を与えている。

法医学研究所の死体公示所の撮影は、とある精神科病棟の解剖教室とその廊下を使い、本物の死体が行き交う中での撮影となった。 また、見た者に強い印象を与える、ベンの友人ニコが死を迎える森と湖に囲まれた美しいシークエンスのロケは、クレルモン・フェラから100キロほどのところにあるオーベルニュ地方にある湖で行われた。
このシーンで使用したアルカションの船は、この地方ではル・カロンと呼ばれ、「死者の渡守」という意味があるという。



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【ストーリー】


深夜のモルグでのパーティ。
白衣を脱ぐ男たち、検視所のベッドで戯れに抱かれる女。
クラブの喧噪。ストロボの閃光に浮かび上がる女。
そして恍惚。

「毎日が無為に過ぎる」と、暗闇の中で男が囁いた。


ある夜、病院の死体公示所に美しい女の死体が運び込まれた。
彼女の名前はテレーザ。
クラブでドラッグを過剰摂取し、エクスタシーの中で死に至った若い女だ。
補足、白い腕。美しい肢体。
男の目が怪しく揺れた。

彼の名はベン。病院の死体公示所に勤める検死官だ。
ある衝動に駆られたベンは、深夜テレーザの眠るモルグに戻り、彼女の死体を犯した。

その時、衝動が走った。突然彼女が蘇生したのだ。


事件の余韻も醒めぬまま、警察の取り調べが始まり、
公示所での懲罰が決まる。そして妻の離反。

その中でテレーザだけは、ベンを批判しようとはせずに、ただ彼の後を追う。
そんなテレーザに対し、頑ななまでに心を閉ざすベン。
彼は過激なセックスゲームに溺れる自分の姿を晒し出し、冷酷に彼女を突き放す。
しかしテレーザは、かつてとは違う人生を歩み出している自分を自覚していた。


やがてテレーザは、ベンの心の裏側に棲む、死の病に侵された友、
彼の許を去った妻、愛を失った男や女たちと出会う。
テレーザは、次第に彼の人生に巻き込まれていくのだが……。




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【特製パンフレット】

『日曜日の恋人たち』特製パンフレット

 製作:アルバトロス・フィルム + シネマ・キャッツ(定価1,000円相当)



●主演のエロディ・ブシェーズ&ジャン=マルク・バールの魅惑的な表情が満載!
作品の不思議な雰囲気が漂う写真集仕様のパンフレット。

●作品解説、ディディエ・ル・ペシュール監督と、エロディ・ブシェーズ&ジャン=マルク・バールのインタビューも掲載された豪華版です。



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