『バベル』/"BABEL"


2007年4月28日よりスカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開

2006年/メキシコ/原題:BABEL/143分/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:松浦美奈/PG12/提供:ギャガ・コミュニケーションズ/配給:ギャガ・コミュニケーションズ powered by ヒューマックスシネマ

◇監督・製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ ◇脚本:ギジェルモ・アリアガ ◇原案:ギジェルモ・アリアガ/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ ◇製作:ジョン・キリク/スティーヴ・ゴリン ◇撮影監督:ロドリゴ・プリエト ◇美術:ブリジット・ブロシュ ◇編集:スティーヴン・ミリオン ◇音楽:グスターボ・サンタオラヤ ◇衣装:マイケル・ウィルキンソン ◇共同製作:アン・ルアーク ◇キャスティング:フランシーヌ・メイスラー/奈良橋陽子

◇キャスト:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、アドリアナ・バラッザ、菊地凛子、エル・ファニング、二階堂智、ネイサン・ギャンブル、ブブケ・アイト・エル・カイド、サイード・タルカーニ、モハメド・アクサム



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<海外評>

ローリング・ストーン誌
今年最高に豪華で、複雑で、最も胸を打つ作品!!

シカゴ・トリビューン紙
究極的に美しく、スリルに満ちた迷宮のように観客を巻き込んでいく。

ハリウッド・レポーター誌
複雑に交錯する物語が見事に一つにつながり、衝撃的に素晴らしい!

USAトゥデイ誌
今年一番挑戦的な映画!

ニューヨーク・ポスト紙
驚くべき俳優たちの演技!
特に菊地凛子は空気のように美しい ─ 。

ロサンゼルス・タイムズ紙
監督の並外れた洞察力により、俳優たちから感動的な演技を引き出した!!




【解説】

神よ、これが天罰か。
言葉が通じない。心も伝わらない。想いはどこにも届かない。
かつて神の怒りに触れ、言語を分かたれた人間たち。
我々バベルの末裔は、永遠にわかり合う事ができないのか?
モロッコの片隅で偶然放たれた一発の銃弾が
アメリカ、メキシコ、日本の孤独な魂をつなぎ合わせてゆく。
耳をすませば聴こえてくるはずだ。
初めて世界に響く、魂の声が。
2007年、世界はまだ変えられる。



◆2006年度アカデミー賞最有力候補
ブラッド・ピット、役所広司ほか、
国境を超えたスーパーキャストたちによって描かれる
今年最大の問題作が世界を揺るがす!

3大陸4言語、世界規模のスケールで人類の絶望と希望を描く
衝撃のヒューマン・ドラマ、いよいよ日本上陸!


遥か遠い昔、言葉は一つだった。人間たちは神に近付こうと、天まで届く塔を建てようとした。怒った神は言葉を乱し、世界はバラバラになった ─ 旧約聖書の創世記に記された、バベルと呼ばれた街の物語だ。

21世紀の今、この星全体が“バベル”のようになってしまった。世界のあちこちで争いが絶えないばかりか、もはや言葉が通じる隣人や親子でさえも心を通わすことができない。かつてない急速な発展を遂げた情報化社会に暮らしているのは、どこにも届かない想いを抱いてさまよう私たちの孤独な魂なのだ。

4言語が飛び交うなか、3大陸にわたる壮大なロケを敢行して、そんな私たちの魂を救おうとする衝撃のヒューマン・ドラマが完成した。雄大な自然を映し出すオープニングから息をのむ怒涛のラストまで、観る者もいっしょに、バラバラになった世界をつなぐカギを探す旅に出る ─ それが『バベル』なのだ。



◆バラバラにされた私たちが、再びひとつにつながるには、どうすればいいのか?
その答えを秘めた銃弾が今、放たれた。


リチャードは、妻のスーザンとモロッコを旅していた。ある哀しい出来事が原因で壊れかけた夫婦の絆を取り戻すため、アメリカからやってきたのだ。まだ幼い息子と娘はメキシコ人の子守に託していた。山道を行く観光バスの中で、事件は起こった。どこからか放たれた一発の銃弾が窓ガラスを突き抜け、スーザンの肩を撃ち抜いたのだ。

あたりに病院はない。リチャードはバスを移動させ、スーザンを医者がいる村へと運ぶが、溢れ出る血を止める応急処置がやっとだった。リチャードが救助に来ないアメリカ政府に苛立つ間、徐々に事件は解明され、やがて1人の日本人男性に辿りつく。

一発の銃弾は国境を超えて、孤独な魂を抱える人々をつなぎあわせていった ─ 。

銃を手にいれたモロッコの山羊飼いの少年、銃の所有者である日本人男性、彼の聾唖(ろうあ)の娘、そして子守の女がメキシコへと連れていった子供たち。果たして、生命と魂の危険にさらされた彼らの運命は ─ ?



◆ブラッド・ピット×役所広司×ケイト・ブランシェット×菊地凛子
国境を超えたキャストたちが、本年度賞レースの話題を独占!


アメリカ人夫婦の夫を演じるのは、ハリウッド屈指のスーパースター、ブラッド・ピット。スターの顔を脱ぎ捨て、モロッコの砂漠の村で苦闘する1人の男になりきり、11年ぶりとなるゴールデングローブ賞助演男優賞ノミネートを果たした。彼の妻に扮するのは、アカデミー受賞女優、ケイト・ブランシェット。銃弾に倒れ身動きのできない役どころだが、母の悲しみと夫への揺れる愛情を表情だけで見事に演じた。ライフルの所有者には、日本が誇る国際派俳優、役所広司。少ない台詞のなかで、自殺した妻との心の溝、聾唖の娘との葛藤を演じきり、強い印象を残した。彼の娘を演じるのが、日本人女優としては実に35年ぶりという、ゴールデングローブ賞助演女優賞ノミネートの快挙を成し遂げた菊地凛子。愛を求める魂の叫びを全身から発する迫真の演技に全米マスコミも絶賛、数々の賞に名を連ね、本年度賞レースの台風の目となった。日本から世界に羽ばたく演技派女優が誕生したのだ。また、メキシコ人乳母の暴走する甥を演じるのは、日本でも人気の高いガエル・ガルシア・ベルナル。美しい顔立ちの奥に秘めた荒ぶる魂を魅惑的に演じた。

そして、何よりも私たちの心臓を鷲づかみにするのは、遠く離れた3大陸で、それぞれの役を“生きた”キャストたちの演技を超えた化学反応だ。また、映画出演は生まれて初めてという現地の人々が多数起用され、土地のパワーを吸収した彼らのリアルな存在感がフィルムに命を与えた。



◆ゴールデングローブ賞を始め、名誉ある映画賞を席巻!
長編映画3作目にして、世界の映画界を担う破格の才能


監督は、2000年のカンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリを獲得、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた長編デビュー作『アモーレス・ペロス』(1999)で一躍注目されたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。その後は母国メキシコを飛び出してグローバルに活躍、続く『21グラム』(2003)でも数々の賞に輝いた。3作目となる本作で、3大陸で1年以上にわたる撮影という想像を絶する破格のプロジェクトを実現、世界初披露の2006年カンヌ国際映画祭で、いきなり最優秀監督賞に輝いた。またゴールデングローブ賞では、自身初の監督賞を含む最多6部門7ノミネートを果し、名実共に世界の映画界を担う監督となった。

4つの物語をダイナミックにシンクロさせて、観る者を驚愕と感動のラストに誘う脚本は、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』(2005)でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したギジェルモ・アリアガ。それぞれの土地の特色を捉えた撮影は、『ブロークバック・マウンテン』(2005)でアカデミー賞にノミネートされたロドリゴ・プリエト。また、孤独な魂を優しく包み込むような音楽を手掛けたのは、『ブロークバック・マウンテン』で同賞を受賞したグスターボ・サンタオラヤ。



 


【プロダクションノート】

「境界を形成するものは、言語、文化、人種、宗教ではなく、私たちの中にある」
─ アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督


◆関わる者すべての人生を変えた、イニャリトゥ監督の映画人生最大の挑戦

『バベル』は、3大陸を移動しながら1年以上かけて撮影された。この映画を作ることは、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督にとって、大きな転機だったと言う。「私の映画人生における最大の挑戦で、関わった者すべてを奥深くから変えた。『バベル』は、他のどの映画ともまったく違った」と、イニャリトゥ監督は振り返る。「撮影中、私たちは“コミュニケーションの難しさ”という、この映画のテーマと同じ問題を抱えていた。たとえばモロッコでの撮影では、アラブ語、ベルベル語、フランス語、英語、イタリア語、そしてスペイン語が飛び交った。しかし、撮影を進めるうちに、本当の境界線は言葉ではなく、私たち自身の中にあると気付いた。人を幸せにするものは国によって違うけれど、惨めにするものは、文化、人種、言語、貧富を越えて、みんな同じだ。人間の大きな悲劇は、愛し愛される能力に欠けていること。愛こそが、すべての人間の生と死に意味を与えるものなのに」。

「『バベル』は“どこから来たのか?”ではなく、“どこへ行くのか?”の答えになった」と、自身も祖国を去ったイニャリトゥ監督は語る。「一番よかったのは、人を隔てる壁についての映画を撮り始めたのに、人と人を結びつけるものについての映画に変わったことだ。つまり、愛と痛みについての映画だ」。



◆タイトル『バベル』に託した想いと映画にしかできない役割

「私は、コミュニケーションにおける問題点を、1つの言葉で捉えたかった」。イニャリトゥ監督は、タイトルを『バベル』にした理由について、そう語る。「とてもたくさんのタイトルを考えたけれど、創世記の話を思いついた時、この映画の比喩として理に叶っていると思った」。イニャリトゥ監督は、映画という普遍的で視覚的な言語は、人と人の間に立ちふさがる誤解や境界を突き破ることができると主張する。「言葉とは、私たちを誤った方向へ導き、混乱させる蜃気楼のようなものだ。言葉の障壁を乗り越えるのに、力強い映像と音楽ほど完璧な道具はないと思う。言葉に頼らなくても、それは普遍的な人間の感情を引き起こすのだ」。


◆ハリウッドを代表する2人の俳優をキャスティング

キャスティングは、アメリカ人夫婦から始められた。イニャリトゥ監督は、ハリウッドで引っ張りだこのブラッド・ピットとケイト・ブランシェットを起用した。彼は、夫のリチャードには“いかにもアメリカ的な男性”を思い描いていた。「こういうタイプの役を演じたことがないブラッドを、危機に陥る中年男性に変身させるのには、ワクワクした。彼は、自分の持てるすべてを出し切ってくれた」。

妻のスーザン役に扮したケイトは、脚本を読むとすぐに、「イニャリトゥのヴィジョンに完全に惑わされてしまった」と言う。次に、彼女は、この登場人物に潜む難しさについて考え始めた。「アレハンドロが訪ねてきた時、私の最初の反応は“これはすごい物語だけど、ここでの私の課題は何?”だった。でも、すぐに夫婦の間にある深い亀裂や複雑な誤解を、わずかな会話や表情で表現することが課題だと気がついたわ」。



◆リアルな映像のために、実際にモロッコで暮らす素人を起用

イニャリトゥ監督は、モロッコ人兄弟の役には、プロの俳優ではなく現地の少年を起用することにした。「大きな挑戦だったが、すべてがよりリアルになった」と彼は言う。モロッコで撮影を始める前、サハラ砂漠の村でモスクのスピーカーから出演者募集を呼びかけると、何百人もの熱心な人々が列を作った。その中から、ブブケ・アイト・エル・カイドとサイード・タルカーニが選ばれた。彼らの1度見たら忘れられない表情豊かな顔が、群集の中で目立っていたからだ。

アメリカ人の妻の手当てをする獣医役は、本物の獣医だ。ガイドにも、素人のモハメド・アクサムがキャスティングされた。「初めてブラッドとケイトに会った時、大スターだと知っていたけれど、素朴で感じのいい人たちだった」とアクサムは語る。「ブラッドのおかげで私にも能力があると感じることができたし、ケイトはとても冷静でプロフェッショナルだった」。



◆メキシコの物語には、イニャリトゥ監督作品でお馴染みの俳優を起用

イニャリトゥ監督は、子守のアメリア役を見つけるために、何百人ものバイリンガルの女優をオーディションした。『アモーレス・ぺロス』で主人公の母親役を演じたアドリアナ・バラッザを提案したのは、彼の妻マリア・エラディアだった。「アドリアナが送ってきたテープがあまりにも素晴らしかったので、私は泣きそうになった」とイニャリトゥ監督は振り返る。「彼女は無償の母の愛に満ち、タフで多くの痛みに耐えている。見えざる市民としてアメリカで暮らしている何百万人ものメキシコ人を象徴する存在だ」。

アメリカ人夫婦の子供たちには、新人のネイサン・ギャンブルと、ダコタ・ファニングの妹のエル・ファニングが選ばれた。「アメリカ社会にはメキシコに対する偏見があるから、私は子供たちの目を通してこの国を描きたかった」とイニャリトゥ監督は打ち明ける。「汚く、奇妙で、貧しく見えるものが、子供たちの目を通せば、陽気で、カラフルで、楽しいものに見える」。

アメリアの甥、サンチャゴ役には、ガエル・ガルシア・ベルナルが起用された。「ガエルなしでは、この映画は完成しなかった。彼はサンチャゴの複雑な性格を細やかに演じた。毎日国境を越えているメキシコ人たちが、アメリカ当局のことをどのように感じているかも表現している。彼が突然怒りだしたのは酔っていたからではなく、何年も押さえてきた屈辱と憤慨が爆発したからだ」。


◆聴覚障害のある女優を起用しようとした監督の考えを覆した菊地凛子

妻の自殺の後、娘ともうまくいかないヤスジローの役には、役所広司が起用された。「この父親は数シーンに登場するだけだが、観客の記憶に残る演技ができる俳優でなければならなかった」とイニャリトゥ監督は語る。

一方、ヤスジローの娘で聴覚障害者のチエコ役を探すためのオーディションが始められた。イニャリトゥ監督は「オーディションに来た菊地の才能に圧倒された」が、聴覚に障害のある女優を探していたので、一旦は彼女を諦めた。引き続き何百人もの女優を9カ月かけてオーディションしたが、菊地がイニャリトゥ監督の心を捉えて離さなかった。さらにイニャリトゥ監督は、菊地が誰からも役を約束されていないのに、手話の訓練を始めていたことを知り、感激する。「彼女が捉えていた悲しみと孤独には誰も近づけなかった。彼女を選んだことは、僕がこれまでにしてきた判断の中でも、最も優れたものだった」。



◆4つの物語を壮大な1本の映画にまとめあげたスタッフの力

撮影監督のロドリゴ・プリエトは、それぞれ独自のスタイルで撮った4つの物語を、1つにまとめる方法を見つけた。「違うレンズとフィルムを使用することで、4つの物語の地理的な違いを表現した」とプリエトは言う。「次に異なるレンズ形式を、1つのフィルムにデジタルで合成していった」。

美術監督のブリジット・ブロシュは、「国ごとに色調の違う赤で色づけすることに決めた。モロッコにはアース・オレンジ、メキシコには鮮やかな赤、そして日本ではより繊細な赤紫にした」と語る。編集のスティーヴン・ミリオンは、「2500以上のカメラで撮影したため、およそ4000カットあった。細かく複雑にデザインされたタイルから巨大なモザイク画を組み立てるように、少し後ろに下がって見た時に初めて全貌が明らかになる。見るたびに、新しいつながりや意味を見つけることができる映画なんだ」と語る。

また、作曲家のグスターボ・サンタオラヤは、「私は『バベル』のテーマを表す音をウードと呼ばれる楽器に見つけた。アラブの楽器で、スペインのギターの祖先で日本の琴にも似ている」と語っている。



◆人は限りなくやさしく、自然は際限なく厳しいモロッコ

モロッコの撮影で鍵となったのは、タザリンという村の代わりとなるロケーションを見つけることだった。イニャリトゥ監督は、タゲンザルドというベルベル人の村を見つけた。アトラス山脈の前側に位置するこの村は、ドラー・ヴァレーの岩壁の渓谷の中にあり、先祖伝来の日干し煉瓦で造られた家々が立ち並んでいる。村人たちは、主に遊牧と農業で生活している。電気が通っていなかったのでTVもなく、村人は誰も俳優を知らなかった。ブラッド・ピットでさえも。おかげで彼は、かつてないほど「役に集中できた」と語る。約200人の現地の人たちが、喜んでエキストラとして出演した。人々の温かいもてなしとは逆に、自然は厳しかった。気温は定期的に38度まで上がり、午後の暴風がサハラ南部から砂を運んできた。それでも、この不快さのおかげでよりリアリズムが強くなった。


◆スタッフが入院する騒ぎになった、メキシコの砂漠での撮影

モロッコの後、メキシコのティファナでの撮影に飛んだ。このエル・カリソのノルテノ町は田舎で、“ロス・ロボス”村落にあるアメリアの、今にも壊れそうな家の代わりである。アメリカとメキシコの国境沿いでも、鍵となるシーンが撮影された。そこでイニャリトゥ監督は、メキシコ側からの景色を捉えた。長いフェンスと監視カメラ、メガワットのスタジアム用照明で、まるで要塞のようだ。アメリアと子供たちが壮絶な国境越えをするシーンは、ソノーラ砂漠で撮影された。「5人がソノーラ砂漠の病院に入院した。アドリアナはあやうくセットの上で熱射病にかかるところだった」とイニャリトゥ監督は振り返る。


◆唯一都会が舞台なのに、問題山積だった東京ロケ

最後に、イニャリトゥ監督とクルーは東京に到着した。この映画の中で唯一都会が舞台であるにも関わらず、東京独自の課題がいっぱいだった。「東京は素晴らしい経験でもあり、難しい経験でもあった。許可がなくては何も撮影できなかったため、いつもどの街角でも警察から逃げていた。私たちは勇気を出してゲリラスタイルのクルーのように仕事をしなければならず、即席で撮影する用意をし、素早く移動しなければならなかった」。また、ヤスジロー役の役所広司は「車の中のチエコとの対話シーンは、撮影のために人工的に渋滞を作ったゲリラ的なもの。怒鳴り声やクラクションが飛び交っているのに、監督がなかなかOKを出さずにドキドキした(笑)」と語っている。


 


【ストーリー】

今、モロッコで放たれた一発の銃弾が、アメリカ、メキシコ、
そして日本の孤独な魂をつなぎあわせる。
LISTEN ─ 聴いてほしい。初めて世界に響く魂の声を。

言葉が通じない。心も通じない。想いはどこにも届かない。
─ 世界は、バラバラになってしまった ─



◆始まりは、モロッコの少年が放った、一発の銃弾

モロッコの険しい山間の村で暮らすアブドゥラはその朝、知り合いから一挺のライフルを買った。ライフルは2人の息子、アフメッド(サイード・タルカーニ)とユセフ(ブブケ・アイト・エル・カイド)に手渡される。生活の糧であるヤギを襲うジャッカルを撃ち殺すのだ。兄弟には、争いがあった。兄のアフメッドは弟のユセフが姉の裸を覗くのが許せなかった。

さらにアフメッドを苛立たせたのは、ユセフの射撃の腕前だった。試し撃ちが全く当たらない兄に代わって、ユセフは眼下の山道を走るバスを狙い、一発の銃弾を放った。



◆撃たれたのは、見失った絆を探しにきた、アメリカ人夫婦の妻

アメリカ人夫婦はその時、ユセフが狙った観光バスに乗っていた。夫のリチャード(ブラッド・ピット)に誘われて気乗りしない旅にやってきたスーザン(ケイト・ブランシェット)は、揺れる想いを抱えていた。夫婦には、葛藤があった。まだ赤ん坊だった3人目の子供が突然亡くなり、その悲しみと罪悪感に正面から向き合えずにいたのだ。

なんとかこの旅で、夫婦の絆を取り戻したい、そう願うリチャードの隣で、スーザンの体に衝撃が走る。銃弾が彼女の鎖骨の上を撃ち抜いたのだ。リチャードは血まみれのスーザンを抱え、医者がいるというガイドの男の村へと走る。



◆帰れない両親、子供たちは、メキシコ人の乳母の故郷へ

アメリカに残されたリチャードとスーザンの子供たちにも事件の影響が及ぶ。兄のマイク(ネイサン・ギャンブル)と、まだ幼い妹のデビー(エル・ファニング)は、メキシコ人の乳母アメリア(アドリアナ・バラッザ)に連れられ、彼女の甥サンチャゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が運転する車でメキシコへ向かう。その日は息子の結婚式だと、かねてから子供たちの両親に伝えてあったが、彼らは戻れない。アメリアには、責任があった。知らない人に預けるくらいなら、連れて行くほうが安全だと思ったのだ。初めて見るメキシコの風景に目を丸くする子供たちを優しく見守るアメリア。


◆銃弾は海を超え、日本に住む会社員へとつながっていく

捜査の結果、ライフルの書類上の所有者は、日本人の会社員のヤスジロー(役所広司)だと判明する。ヤスジローには心労があった。最近妻が自殺し、そのことで警察による事情徴収を受けていた。更に、それが原因でたった一人の家族である高校生の娘チエコ(菊地凛子)との心の溝が大きくなりつつあった。聾唖(ろうあ)であるチエコは母親の喪失によるショックから立ち直れず、何かにつけて父親に反抗するのだった。誰かに強く抱きしめられることでしか、この寂しさを埋められない。チエコはそう感じていたが、障害を持つ彼女には好意や欲望を伝えるのも簡単なことではなかった。


◆血を流すモロッコ、暴走するメキシコ、怒りのアメリカ、傷だらけの日本

アメリカのメディアはテロだと騒ぐが、モロッコ警察はライフルの流れを突き止めていた。息子たちに真相を打ち明けられたアブドゥラは、激怒しながらも2人を連れて山へ逃げる。追いかける警察の発砲、思わず迎え撃つユセフ。

息子の結婚式は大成功に終わり、アメリアは再びサンチャゴの運転で子供たちと国境へ向かう。ところが、飲酒運転がバレたサンチャゴは国境を突破、アメリアと子供たちを砂漠に置き去りにして逃走してしまう。翌朝、灼熱の太陽に意識が薄れていくデビー。政治的な問題のせいで、救助はいつになっても現れない。バスにも置き去りにされ、怒りと絶望の涙を流すリチャード。チエコは父と話したいという若い刑事(二階堂智)を自宅に呼び出す。好意を伝えるために服を脱ぎ捨て、いつものように拒絶され孤独の縁へと追いやられるチエコ。子供のように泣きじゃくるチエコの肩を、そっと抱きしめる刑事。撃たれた兄を抱いて泣き叫ぶ父を見て、ライフルを叩き壊すユセフ。子供たちを置いて、汗と涙に濡れながら助けを求めるアメリア。衰弱していくスーザンと、子供が死んだ時のことを初めて語り合うリチャード。

見つめたい。抱きしめたい。この想いを伝えたい。 ─ 世界は、ひとつになろうともがき始めていた ─





 


【キャスト&スタッフ】

■ブラッド・ピット(リチャード)

「父になった今、改めてこの映画に感謝する。子に誇れる作品となった」

世界中で最も有名な俳優の1人。自身の製作会社プランBプロダクションズを設立、プロデューサーとしてのキャリアもスタートさせている。

1963年、アメリカ、オクラホマ州生まれ。ミズーリ州で育ち、ミズーリ大学コロンビア校に入学。その後、ロサンゼルスに移り、演技を学ぶ。1991年、リドリー・スコット監督の『テルマ&ルイーズ』で脚光を浴び、続くロバート・レッドフォード監督の『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)で、一躍人気を集める。その後、トニー・スコット監督の『トゥルー・ロマンス』(1993)、吸血鬼に扮したニール・ジョーダン監督の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)、ゴールデングローブ賞を受賞したテリー・ギリアム監督の『12モンキーズ』(1995)、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』(1995)、ジャン=ジャック・アノー監督の『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997)、再びフィンチャー監督と組んだ『ファイト・クラブ』(1999) 、ガイ・リッチー監督の『スナッチ』(2000)、スティーヴン・ソダーバーグ監督の『オーシャンズ11』(2001)と『オーシャンズ12』(2004)、ウォルフガング・ペーターゼン監督の『トロイ』(2004)など、次々と“巨匠”“奇才”と呼ばれる監督たちの作品に出演、名実共にハリウッドを代表する俳優となる。

その他の主な出演作は、『ジョニー・スエード』(1991)、『カリフォルニア』(1993)、『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』(1994)、『スリーパーズ』(1996)、ハリソン・フォード共演の『デビル』(1997)、『ジョー・ブラックをよろしく』(1998)、ロバート・レッドフォード共演の『スパイ・ゲーム』(2001)、ジュリア・ロバーツ共演の『ザ・メキシカン』(2001)、アンジェリーナ・ジョリー共演の大ヒット作『Mr. & Mrs.スミス』(2005)など。また、レオナルド・ディカプリオ主演の『ディパーテッド』には製作として参加している。

最新作は、『THE ASSASSINATION OF JESSE JAMES BY THE COWARD ROBERT FORD』(2007)、ソダーバーグ監督の『オーシャンズ13』(2007)、 フィンチャー監督の『THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON』(2008)。



■ケイト・ブランシェット(スーザン)

「撮影時、身も心も限界まで追い詰められた。でも作品を観たとき監督の慈愛に涙が出たわ」

1969年、オーストラリア生まれ。オーストラリア国立演劇学院(NIDA)を卒業後、主に舞台で活躍する。1998年、シェカール・カプール監督の『エリザベス』(1998)でエリザベス女王を演じ、ゴールデングローブ賞女優賞(ドラマ部門)を始め数多くの賞を受賞し絶賛される。また、全世界で大ヒットを記録した3部作『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001/2002/2003)でエルフ族の王妃を演じ、世界にその名を知られる。2004年には、マーティン・スコセッシ監督の『アビエイター』で、伝説の女優キャサリン・ヘプバーンを演じ、アカデミー賞最優秀助演女優賞に輝き、ハリウッドを代表する演技派女優の地位を不動のものとする。その他の主な出演作は『リプリー』(1999)、サム・ライミ監督『ギフト』(2000) 、『バンディッツ』(2001)、『シッピング・ニュース』(2001)、ジム・ジャームッシュ監督の『コーヒー&シガレッツ』(2003)など数多くの作品に出演。

最新作は、ジュディ・デンチ共演の『NOTES ON A SCANDAL』(2006)、スティーヴン・ソダーバーグ監督の『THE GOOD GERMAN』(2006)、『エリザベス』の続編『THE GOLDEN AGE』(2007)、ボブ・ディランの生まれ変わりを演じるという、トッド・ヘインズ監督の『I'M NOT THERE』(2007)。



■ガエル・ガルシア・ベルナル(サンチャゴ)

「僕は偏見を受けるすべての人の怒りと衝動の代弁者なんだ」

1978年、メキシコ生まれ。メキシコで子役として活躍、1999年にイニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』で、長編映画デビューを果たす。世界中で絶賛されたこの映画での画期的な演技により、シルバー・アリエル賞(メキシコのアカデミー賞)、シカゴ国際映画祭シルバーヒューゴ賞主演男優賞を獲得する。続いて、アルフォンソ・キュアロン監督の『天国の口、終りの楽園。』(2001)に出演、ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞に選ばれる。その後、ウォルター・サレス監督の『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2003)で、若き日のチェ・ゲバラを演じ、サンダンス映画祭やカンヌ国際映画祭で絶賛される。スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の『バッド・エデュケーション』(2004)、ウイリアム・ハートと共演した『キング 罪の王』(2004)では共にセンセーショナルな役どころを演じて、高く評価される。

最新作は、ミシェル・ゴンドリー監督の『恋愛睡眠のすすめ』(2006)。また、出演もしている『DEFICIT』(2007)で、監督デビューを果たした。



■役所広司(ヤスジロー)

「観るたびに引き込まれる。出演者である前に作品の熱烈なファンになった」

1956年、長崎県生まれ。海外でも高い評価を得ている日本人俳優。『Shall we ダンス?』(1996)、『SAYURI』(2005)で国際的にも名を馳せた。50本以上の映画、TVドラマに出演している。カンヌ国際映画祭パルムドール賞を受賞した『うなぎ』(1997)、同映画祭で国際映画批評家連盟賞とアキュメニカル賞をダブル受賞した『ユリイカ』(2000)で主役を演じ、『CURE』(1997)で東京国際映画祭主演男優賞、『赤い橋の下のぬるい水』(2001)でシカゴ国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞するなど数々の国際映画祭で高い評価を得ている。また日本でも、数々の映画賞で主演男優賞を受賞している。

その他の主な出演作は、『KAMIKAZE TAXI』(1995)、『どら平太』(2000)、『笑の大学』(2005)、『THE有頂天ホテル』(2006)など。最新作は、黒沢清監督の『叫』(2007)、周防正行監督の『それでもボクはやってない』(2007)、キーラ・ナイトレイ共演、フランソワ・ジラール監督の『SILK』。



■菊地凛子(チエコ)

「この役は私にしかできない、そう思いました」

1981年、神奈川県生まれ。15歳のときに、菊地百合子の名前でデビュー。映画デビュー作は、新藤兼人 監督の『生きたい』(1999)。その後、映画やCMを中心にキャリアを重ね、熊切和嘉監督『空の穴』(2001)のヒロイン役で注目を集める。また、浅野忠信監督の『トーリ』(2004)では得意の乗馬も披露し、力強い演技を見せている。2005年、名前を菊地凛子に改名。

その他の主な出演作は、新藤兼人 監督の『三文役者』(2000)、石井克人監督の『茶の味』(2003)、『ナイスの森 The First Contact』(2004 監督:ナイスの森/石井克人・伊志嶺 一・三木俊一郎)など。本作が、アメリカ映画初出演となり、ナショナル・ボード・オブ・レビュー(米映画批評会議賞)では新人女優賞を受賞。2006年度の米国ゴールデングローブ賞助演女優賞などにもノミネートされ、国際的な注目を集めている。

http://www.anore.co.jp/rinko/



■エル・ファニング(デビー)

1998年、アメリカ、ジョージア州生まれ。姉は女優のダコタ・ファニング。5年に満たない女優歴だが、10本近い映画に出演している。

映画デビュー作は、姉の幼少時代を演じた『I am Sam アイ・アム・サム』(2001)。以来、『チャーリーと14人のキッズ』(2003)、『ドア・イン・ザ・フロア』(2004)、『きいてほしいの、あたしのこと ウィン・ディキシーのいた夏』(2005)、トニー・スコット監督、デンゼル・ワシントン共演の『デジャヴ』(2006)、姉が主演の『シャーロットのおくりもの』(2006)などに出演している。最新作は、ホアキン・フェニックスと共演した『RESERVATION ROAD』(2007)。



■アドリアナ・バラッザ(アメリア)

イニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』(1999)で、ガエル・ガルシア・ベルナルが演じる主人公の母親役に扮し、国際的にその名を知られる。監督としても秀でた才能を発揮、数多くの映画、TVドラマの製作に携わっている。『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』(2004)では、アクセント指導も務めた。


■二階堂智(ケンジ)

1966年生まれ。大学卒業後、1989年、脚本家・演出家である倉本聰氏主宰の富良野塾に第6期として入塾。2年間演技等を学び1991年ニューヨーク公演に参加。公演帰国後、作詞家・演出家・英語教育家でもある奈良橋陽子代表のユナイテッド・パフォーマーズ・スタジオ【UPS(アップス)】に入り、1993年、TBSドラマ東芝日曜劇場「丘の上の向日葵」(脚本 山田太一、出演 小林薫、竹下景子、大地康雄)でデビュー。

2003年公開の映画「ラストサムライ」ではトム・クルーズ演じるオールグレン大尉に付き添う少尉役を好演し注目を浴びる。その後、映画・ドラマ・CM・舞台等に多数出演、現在も幅広い分野で活躍中。



■アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(監督・製作・原案)

1963年、メキシコ・シティ生まれ。1986年からメキシコのラジオ局WFMで、音楽番組のDJを務める。その後、メキシコ最大のTVネットワーク、テレビサのクリエイティブ・ディレクターとなる。2000年、長編監督デビュー作の『アモーレス・ぺロス』(1999)で、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、英国映画テレビ芸術アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞を始め、東京、サン・パウロ、エジンバラ、サン・セバスチャン、トロントなどから53もの栄誉ある賞を受賞、世界中にその名を轟かせる。続く『21グラム』(2003)では、監督、脚本、製作を担当、主演のナオミ・ワッツとベニチオ・デル・トロは、アカデミー賞にノミネートされる。

その他、短編映画を2作品監督している。BMWの広告プロジェクトの一環である『Powder Keg』(2001)は、2002年度カンヌ国際映画祭で、サイバー・ライオン賞グランプリに輝き、クリオ賞でも3部門を受賞した。もう1本の『Darkness』(2002)は、セザール賞にノミネートされたオムニバス映画『11'09"01/セプテンバー11』(2002)の中の一編。



■ギジェルモ・アリアガ(脚本・原案)

1958年、メキシコ・シティ生まれ。作家としても活躍。イニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』(1999)、『21グラム』(2003)の脚本、共同プロデューサーを務めた。同監督の短編『Powder Keg』(2001)の脚本も手掛けている。また、トミー・リー・ジョーンズの監督デビュー作『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』(2005)の脚本を手掛け、出演も果たし、2005年カンヌ国際映画祭脚本賞を獲得する。最新作は、製作にも携わった『BUFALO DE LA NOCHE,EL』(2006)。


■スティーヴ・ゴリン(製作)

プロパガンダ・フィルムズの共同設立者、会長として、『ワイルド・アット・ハート』(1990)、『ある貴婦人の肖像』(1996)、『スリーパーズ』(1996)、『ゲーム』(1997)などの製作を手がける。大ヒットTVシリーズ「ビバリーヒルズ高校白書」、「ビバリーヒルズ青春白書」、「ツイン・ピークス」などの製作も担当した。また、プロパガンダ・フィルムズを世界最大級の音楽ビデオ・CM制作会社へと成長させ、ローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイ、マイケル・ジャクソン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ジョージ・マイケル、そしてマドンナといったアーティストの作品によって、数々の賞を獲得した。その後、アノニマス・コンテント社を設立、最高経営責任者となり、『マルコヴィッチの穴』(1999)、『偶然の恋人』(2000)、『ベティ・サイズモア』(2000)、『エターナル・サンシャイン』(2004)、『50回目のファースト・キス』(2004)などを製作している。


■ジョン・キリク(製作)

1956年、アメリカ、ニュージャージー州生まれ。『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)、『マルコムX』(1992)、『クロッカーズ』(1995)、『ラストゲーム』(1998)、『25時』(2002)など、スパイク・リー監督の12本の映画の製作で知られている。製作を手掛けた他の主な作品は、ロバート・デ・ニーロ監督の『ブロンクス物語/愛につつまれた街』(1993)、ティム・ロビンス監督のアカデミー賞受賞作『デッドマン・ウォーキング』(1995)と『クレイドル・ウィル・ロック』(1999)、ジュリアン・シュナーベル監督の『バスキア』(1996)、『カラー・オブ・ハート』(1998)、ハビエル・バルデムがアカデミー賞最優秀主演男優賞にノミネートされた『夜になるまえに』(2000)、『ポロック 2人だけのアトリエ』(2000)、オリヴァー・ストーン監督の『アレキサンダー』(2004)、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した、ジム・ジャームッシュ監督の『ブロークン・フラワーズ』(2005)など。


■ロドリゴ・プリエト(撮影監督)

1965年、メキシコ・シティ生まれ。メキシコで20本以上の映画のカメラマンを務めた後、イニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』(1999)を手掛け、シルバー・アリエル賞を受賞、一躍国際的にも注目される。続く『フリーダ』(2002)では、全米撮影協会賞にノミネートされ、『25時』(2002)、『8 Mile』(2002)など話題作を手掛ける。その後、イニャリトゥ監督と再び組んだ『21グラム』(2003)、『アレキサンダー』(2004) を経て、数々の賞を受賞したアン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』(2005)でアカデミー賞にノミネートされる。今最も才能に溢れた撮影監督の1人として高く評価されている。アン・リー監督の最新作も手掛けている。


■ブリジット・ブロシュ(美術)

イニャリトゥ監督作品は、『アモーレス・ペロス』(1999)、短編『Powder Keg』(2001)、『21グラム』(2003)に続く4作目。1943年、ドイツ生まれ。現在は第2の故郷であるメキシコ・シティに在住。バズ・ラーマン監督の『ロミオ&ジュリエット』(1996)でアカデミー賞にノミネートされ、再び同監督と組んだ『ムーラン・ルージュ』(2001)で、同賞最優秀美術/舞台賞を受賞する。その他の主な作品は、ギレルモ・デル・トロ監督の『クロノス』(1992)、スパイク・リー監督の『セレブの種』(2004)など。


■マイケル・ウィルキンソン(衣装)

衣装デザイン助手としてのキャリアを、『ロミオ&ジュリエット』(1996)、『マトリックス』(1999)、『ムーラン・ルージュ』(2001)でスタートさせた。その後、『パーティ・モンスター』(2003)、『アメリカン・スプレンダー』(2003)、『ダーク・ウォーター』(2004)、『終わりで始まりの4日間』(2004)、『スカイ・ハイ』(2005)などを手掛けている。最新作は、ジェラール・バトラー主演の『300』(2007)、スカーレット・ヨハンソン主演の『THE NANNY DIARIES』(2007)など。


■グスターボ・サンタオラヤ(音楽)

1952年、アルゼンチン生まれ。『ブロークバック・マウンテン』(2005)でアカデミー賞最優秀作曲賞を獲得、ゴールデン・グローブ賞でも映画部門最優秀音楽賞と映画部門最優秀歌曲賞の2部門にノミネートされ、最優秀歌曲賞を受賞した。今最も尊敬されている音楽家の1人である。イニャリトゥ監督作品は、『アモーレス・ペロス』(1999)、『21グラム』(2003)も手掛けている。その他の主な作品は、アルゼンチン映画批評家協会賞最優秀音楽部門シルバー・コンドル、英国アカデミー賞の映画音楽賞、クラリン・エンターテイメント賞を受賞した『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2003)、『スタンドアップ』(2005)など。また、マイケル・マン監督の『インサイダー』(1999)では、彼の作曲した歌曲が起用された。


■スティーヴン・ミリオン(編集)

1969年、アメリカ、カリフォルニア州生まれ。スティーヴン・ソダーバーグ監督の『トラフィック』(2000)で、アカデミー賞に輝いた。同監督の作品は、『オーシャンズ11』(2001)、『オーシャンズ12』(2004)も手掛けている。イニャリトゥ監督作品は、『21グラム』(2003)に続いての担当。その他の主な作品は、『スウィンガーズ』(1996)、『go』(1999)、『クリミナル』(2004)、ジョージ・クルーニー監督の『コンフェッション』(2002)、『グッドナイト&グッドラック』(2005)など。最新作は、ソダーバーグ監督の『オーシャンズ13』(2007)。