『それでも恋するバルセロナ』/"Vicky Cristina Barcelona"


2009年6月27日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開

2008年/アメリカ=スペイン/96分/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/日本語字幕:古田由紀子/配給:アスミック・エース/後援:スペイン大使館/協力:セルバンテス文化センター東京/写真提供:スペイン政府観光局/(c)2008 Gravier Productions, Inc. and MediaProduccion, S.L.

◇監督・脚本:ウディ・アレン ◇製作:レッティ・アロンソン、ギャレス・ワイリー、スティーヴン・テネンバウム ◇共同製作:ヘレン・ロビン ◇製作総指揮:ハウメ・ロウレス ◇共同製作総指揮:ジャック・ローリンズ、チャールズ・H・ジョフィ、ハビエル・メンデス ◇撮影監督:ハビエル・アギーレサロペ ◇美術:アラン・パネ ◇編集:アリサ・レプセルター ◇衣装:ソニア・グランデ ◇キャスティング:ジュリエット・テイラー&パトリシア・ディセルト

◇キャスト:スカーレット・ヨハンソン、ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、レベッカ・ホール、パトリシア・クラークソン、ケヴィン・ダン、クリス・メッシーナ、ザック・オルス、キャリー・プレストン、パブロ・シュライバー、クリストファー・エヴァン・ウェルチ、ホアン・ケセダ、エミリオ・デ・ベニート、マネロ・バルセロ、ホセ・マリア・ドメネック



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【解説】

2009年第81回アカデミー賞助演女優賞<ペネロペ・クルス>
2009年第66回ゴールデン・グローブ賞作品賞ほか
映画賞16部門受賞、42部門ノミネート


◆恋で人生は変わる?
"自分"が勝つか、"恋"に負けるか あなたなら ―
ひと夏、情熱のラブ・バカンスへ!


2009年のアカデミー賞受賞、そしてゴールデン・グローブ賞作品賞を受賞したウディ・アレンの"恋"の傑作、『それでも恋するバルセロナ』。舞台は、今までのニューヨークやロンドンとは真逆、太陽が降り注ぐロマンチックな街、バルセロナへ。恋するゴージャスなキャストに、本作がアレン作品主演3作目となる新ミューズ、スカーレット・ヨハンソン、本作でアカデミー賞受賞、今最も光り輝く女優ペネロペ・クルス、新星レベッカ・ホールに加え、『ノーカントリー』の殺人鬼から一転、セクシーなモテ男にハビエル・バルデム。

ひと夏を過ごすためバルセロナにやってきた親友同士。2人はあるセクシーな画家に惹かれていく、それも同時に ― 。そこに画家の元妻まで現れて ― !? 性格も嗜好もかけ離れた3人の女と、1人の男。恋し、恋され、入り乱れ、4人の関係は予想だにしない怒濤の展開を迎える。この恋、最後に勝つのは恋する情熱か、冷静な自分か? 女心を熟知する魔術師ウディ・アレン。彼が本作で描くのは、ままならない男女関係のみならず、それでも人を惹き付けてやまない恋の魔力。バルセロナの空の下、最高にセクシーでスリリングな、"恋"の傑作が誕生した。あなたもきっと、バルセロナで恋に落ちたくなる ― 。



◆この恋、想定外

ヴィッキーとクリスティーナは親友同士。ヴィッキーは慎重派で、堅実な彼と婚約中。一方のクリスティーナは恋愛体質な自由人。2人はアメリカを離れ、ひと夏をバルセロナで過ごすことに。ある日、2人はセクシーな画家、フアン・アントニオと出会う。クリスティーナが一目で恋に落ちる一方で、ヴィッキーも少しずつ、戸惑いながらも彼に惹かれていく ― 。ヴィッキーの悩みとは裏腹に、順調に付き合いだしたクリスティーナとフアン・アントニオ。そこに、フアン・アントニオの元妻、激情的な天才、マリア・エレーナまで現れて……。


◆ロマンスの主役、ゴージャスなスターたち

奔放で型にはまらない情熱家、クリスティーナには、『マッチポイント』『タロットカード殺人事件』に続き、本作でウディ・アレン作品では主演3作目となるアレンの新ミューズ、スカーレット・ヨハンソン。才能あふれる激しい美女、マリア・エレーナには、本作でアカデミー賞助演女優賞受賞、世界各国で賞を受賞する快挙を成し遂げたペネロペ・クルス。今を代表するゴージャスな2大女優が夢の共演を果たしている。婚約者がいながらもフアン・アントニオに惹かれ、悩むヴィッキーを繊細に演じるのは、『フロスト×ニクソン』など話題作が続く新星、レベッカ・ホール。そしてフアン・アントニオ役には、アカデミー賞助演男優賞を受賞した『ノーカントリー』のオカッパ殺人鬼から一転、セクシーなモテ男を魅力いっぱいに演じた名優、ハビエル・バルデム。ウディ・アレンのもと、豪華キャストが集結、緊張感とユーモアを紙一重で行き来する、素晴らしい演技を見せている。


◆毎日がアヴァンチュールの街、バルセロナ

ウディ・アレンは言う。「脚本を書き始めた段階から、バルセロナをキャラクターの1人にしたような物語にしたいと思っていた。バルセロナという街が大好きだから、敬意を表したかった」。本作には、バルセロナという街の魅力が余すところなく詰め込まれている。ガウディの建築から裏路地まで、まるでマリア・エレーナのように、艶めかしく、温かく、少し危険な香りを放っている。また、ヴィッキーとフアン・アントニオの恋のきっかけとなるスパニッシュ・ギターの調べ、深夜まで営業しているにぎやかなレストラン、青い海やオビエドの美しい町並みなど、スペインの風土が本作の独特のロマンチックなトーンを、きらびやかに創りだしている。


◆ウディ・アレンを支える
本作ならではの実力派スタッフ


今回のウディ・アレンは、旧知のスタッフに加え、スペインで活躍する優秀なスタッフを集めている。撮影監督には、スペイン国内で6度、ゴヤ賞を受賞した『アザーズ』『トーク・トゥ・ハー』のハビエル・アギーレサロペ、美術には、『キカ』のアラン・パネ、衣装には『蝶の舌』『海を飛ぶ夢』のソニア・グランデ。そして、印象的な曲"バルセロナ"を、ウディ・アレンと運命的に出会ったジウリア・イ・ロス・テラリーニが軽快に歌う。


 


【プロダクションノート】

◆際立った4人のキャラクター

ヴィッキーとクリスティーナがバルセロナに来た時、2人は人生において全く異なる段階に立っている。レベッカ・ホールは語る。「ヴィッキーには計画があるの。結婚して、博士号を取得して、引っ越しをして、赤ん坊を生むという計画。そして、全てが計画通りに進んでいると感じている」。一方で、クリスティーナは全く将来が見えていなかった。スカーレット・ヨハンソンは言う。「クリスティーナは迷える魂なの。目的もなく、欲しいものも決まっていない。責任も取らずに青春を探求し、その時の気分でフラフラと動き回っている」。ウディ・アレンは、2人の女性の人生の選択に、極端に良い面と悪い面があると言う。「ヴィッキーのように慣習的な中流階級の人間は、世間一般が"より幸福な人生"と考えるものを手に入れる確率が高い。建設的で、安定していて、実用的な人生だ。計画以上のものは望めないけれど、誠実な夫と良い人生を歩み、問題なく過ごせる。それに対して、クリスティーナのような人間は、自分を満足させる可能性が低い。なぜなら、彼女は常に何かを探していて、本当に欲しいものは解らず、明確なのは"望まないもの"のみ。しかし、彼女の人生の選択はより広く、ある日やがて幸運に見舞われ、何か大きなものを手に入れる可能性を持っている」。

ハビエル・バルデムは語る。「フアン・アントニオは、曖昧な人間ではないし単刀直入だ。彼は本当のことしか言わないから、他人を戸惑わせることがある。ヴィッキーとクリスティーナと出会った時、フアン・アントニオは、彼女たちの美貌と性格に圧倒されている。そして3人が、それぞれ異なった関係を築けるようになりたいと感じている。性的なことは彼にとってとても重要だが、到達点ではない。もっと重要なことの始まりにすぎない。彼の人生の見方は普通の人とは違う。その、道徳上は公平ではないかもしれない価値観が、この物語の鍵になっている」。アレンも同意する。「彼にはずるさがない。とても真面目な男で、彼にとって、セックスは人生の一部にすぎない。良い一部であることは間違いないけどね」。

真面目で比較的穏やかなフアン・アントニオと違い、マリア・エレーナは、荒れ狂う感情の嵐のような女性で、出会う全ての人を危険にさらす。「マリア・エレーナは、何をやらせても上手い。ピアノを弾くのも、絵画を描くのも。しかし、あまりにも感情の起伏が激しいために、何も形にならない」とアレンは言う。「彼女はあまりにも情熱的で感情的で、何かを最後までやり通すことができない。全ての出来事に対して深く心を乱されるので、非常に嫉妬深く、そのことで誰かをナイフで刺し殺しかねない」。ペネロペ・クルスは、マリア・エレーナの問題は、彼女が不幸だという点にあると言う。「彼女はひどく苦しんでいる。自分の心をコントロールすることが難しい。彼女は、どんどん自分の人生を面倒にしているけれど、自分ではどうしようもない。ただ単に、注目されたいからそうしているわけじゃない。あらゆる側面において完全に混乱していて、非常に大きな恐怖心を抱いているからそうなるの。でも、それは同時にすごく勇敢なことでもある」。



◆ウディ・アレンが語る、素晴らしいキャスト

スカーレット・ヨハンソンは、今回で『マッチポイント』『タロットカード殺人事件』に次いで3回目の起用である。「映画を製作していて、時々、その人物のために役を書きたいと思わせてくれる、特別な魅力を持った女優を見つけることがある。スカーレットは頭がよく、セクシーで、才能があって、無限の可能性を持っている。機転のきくユーモアのセンスもあって、そのアドリブの能力にはいつも感心させられる」。

アレンが初めて観たペネロペ・クルスの映画は、ペドロ・アルモドバル監督の『ボルベール(帰郷)』だった。「彼女は素晴らしかった。もちろん、すぐにでも僕の作品に出演してもらいたかったよ。すると、彼女のエージェントが僕に電話をかけてきて、僕がスペインで映画を撮影予定だということをペネロペが知っていて、ぜひ自分も出演したいと言っていると連絡してきたんだ。僕にとっては最高の知らせだった。マリア・エレーナは自然のエネルギーそのもので、まさにペネロペ自身だった。彼女は美しく、独自の色気を持っている。それは特別な美しさだ。さらに、素晴らしい女優で、実力がある。抵抗しがたい魅力がある」。

「フアン・アントニオ役には、"いわゆる美形な男優"ではなく、セクシーな魅力を持つスペイン人の男優が必要だった。もっと深い魅力の持ち主がね。ハビエル・バルデムの映画を観たことがあって、素晴らしいと思っていた。一緒に仕事ができてワクワクしたよ。彼が僕の作品に出ることになるなんて、思いもしなかった」。

「ヴィッキーは、ヨハンソンとクルスとは対照的な性格の女優に演じてもらいたかった」とアレンは言う。「キャスティング・ディレクターに、ぜひレベッカ・ホールに会ってくれと言われた。彼女を見てすぐにぴったりだと思った。レベッカは、本物の美しさと品位を持っていた。それに、優れた女優でもあることは明確だった」。



◆ウディ・アレンはいつも正しい

ヨハンソンは言う。「ウディと私は、似たような感覚とユーモアのセンスを持っていると思う。彼の脚本を読むと、強いつながりを感じるの。いつも一緒に笑って、楽しく過ごしているから、互いをアーティストとして評価すると同時に、共に仕事をすることを楽しんでいるのだと思う。友人と仕事ができるのは素晴らしいことだし、だからこそ何度も一緒に作品を撮っているのだと思う」。

尊敬する監督との初めての作品なので(ヨハンソンは例外)、俳優たちは多少なりとも緊張していたようだったが、アレンはそれを和らげた。バルデムは言う。「彼は本当に良い人だ。僕が彼を必要とした時、いつも正しい答えを教えてくれた。どうすればよいかを理解させてくれる適切な助言をしてくれた。それに、彼の脚本の言葉は、まるで宝石のようだった。とにかく台詞が素晴らしく、その言葉を通してその場面の意味を理解することができたし、次にどういう動きをすればよいかを示してくれた」。

クルスは言う。「他の監督だったら、どの場面でも同じようなテンションの高さのキャラクターを演じることに対して、恐怖心を抱いたかもしれない。あまりにも外交的で、うるさくて、トラブルばかり引き起こすキャラクターなので、抵抗を感じてしまって、少し静かめに演じたほうがよいのではと思う場面もあった。それは、恐怖心から生じた思いだったの。実際、抑えた演技をしてみた時に、アレンは言ったわ。"ダメだ、彼女は常にあの激しいテンションなんだ……勇気を持って!" 今思うと、彼は完全に正しかったと思うわ」。



◆独特なテンポを創りだすナレーション

アレンは、作品にナレーションを加えることを決断する。本作が展開していく所々でコメントが入る。彼は言う。「この作品は物語的要素が強い。ある夏の2人の女性についての物語だ。だから、誰かが客観的にそれを語ってもいいと思った。そのほうがうまくいくと考えた。それに、ナレーションという簡単な手法をひとつ取り入れるだけで、退屈で説明的な場面を省き、僕が望むようなテンポと方法で物語を進めることができる」。


◆音楽との運命的な出会い

ジウリア・イ・ロス・テラリーニによるキャッチーな歌、"バルセロナ"が本作の快活な雰囲気の土台を作っていて、作品の中で何度も用いられている。この曲は、思いがけずアレンにもたらされたと彼は言う。「多くの人が、絶えず僕に音楽を送ってくる。でも、それらを聞く時間がほとんどない。ある朝、撮影に出ようと急いでいた時、たまたま手に取ったものが彼らから届いた音源で、車の中でそれを聞いた。"素晴らしい! 今回の作品にピッタリだ!"って思ったよ。彼らの曲を使って皆が喜んだ。彼らは自分たちの曲が使われて嬉しかったみたいだし、プロデューサーは、たとえば、ジョージ・ガーシュウィンのように使用料の高い音楽を僕が選ばなくてホッとしたみたいだ」。


◆バルセロナという街が大好き

本作は、そのロケ地抜きでは形にならない作品である。「脚本を書き始めた段階から、バルセロナをキャラクターの1人にしたような物語にしたいと思っていた。スペインが好きでバルセロナという街が大好きだから、敬意を表したかった。視覚的にも実に美しい街だし、感覚がロマンチックだ。この物語は、パリかバルセロナ以外の設定では考えられなかった」。

撮影は、バルセロナと、北部アストゥリアス州にあるふたつの町、オビエドとアヴィレスで行われた。バルセロナのロケ地は、街を代表する場所ばかりだ。サグラダ・ファミリア、グエル公園等、アントニオ・ガウディの入り組んだ建築物である。アレンは言う。「グエル公園のシーンでは、トカゲの口から出る水量を少なく調整しなければいけなかった。そのままだと水の音が大きすぎて、会話が聞こえなかったんだ!」 ホールは言う。「美しい建築など、バルセロナには素晴らしいヨーロッパの街の要素が全て備わっているわ。でも、裏には無秩序な面もある。バルセロナに到着してすぐ、夜更かしして外で騒ぐことが多くなった。とにかく、すごく強い魂を持った街で、住人はそれを誇りに思っている。スペインに所属しない独自の街だと自負している。独自の文化と個性で独立しているの」。

ガウディの発情的な建築は、作品の中で絶えずひとつの基準となっている。彼が生涯を通して取り組んだサグラダ・ファミリア教会は、最も賞賛されている美術品だが、まだ完成されていない。だからこそ非常にロマンチックな建築物でもある。"成就されない愛のみが真にロマンチックな愛"と言うマリア・エレーナの考えを表している。



◆ほんのわずかなひとつの要素が欠けると、
それが男女関係の死につながる可能性がある


『アニー・ホール』以降の作品で見られるように、アレンは、キャラクターたちの心理を通して、男女関係の成功と失敗を探求する。それは、紋切り型のハリウッド的恋愛物語に見る表面的な表現ではない。彼は言う。「人間は非常に複雑で、全員がそれぞれ非常に細かい要求を持っているので、男女関係を維持するのは難しい。その要求が満たされなければ不機嫌になる。作品の中でフアン・アントニオが言うように、食事の中に、たとえばビタミンA、ビタミンC、ニコチン酸、鉄分が入っていても、ほんのわずかなひとつの要素、たとえば塩等が欠けていると、それが死につながる可能性がある。また、あるひとつの要素、たとえば兄弟姉妹、母親、親友、上司、精神科医、転職等が加えられたとしても同様だ。フアン・アントニオとマリア・エレーナの場合、互いを激しく情熱的に想いながら、まるで犬と猫のように絶えず喧嘩をしている。だが、クリスティーナの存在が介入することによって、2人の関係に化学変化が起こり、上手くいくようになる。彼らの情熱がクリスティーナにも注がれ、そして、クリスティーナからも情熱を受けて、2人の間に生じていた怒りと不満が少なくなり、冷静な関係になるのだ」。

3人の関係についてヨハンソンは語る。「フアン・アントニオとマリア・エレーナは、互いに自分自身の嫌な面を見てしまうのだと思う。クリスティーナは2人の緩和剤のようなもの。2人がクリスティーナを同時に愛せば、互いの存在を認め合うようになり、激しい関係も落ち着いたものとなる。クルスは言う。「マリア・エレーナにとって、同時に2人の人間と住むのは自然なことなの。そういった普通でない関係は、彼女をかえって安心させる。彼女は矛盾に満ちているから、逆にそういう関係が落ち着くの。奇妙な思考回路よね。クリスティーナのことは、彼女とフアン・アントニオの関係を脅かす存在ではなく、逆に関係を円滑にする存在だと思っている」。



◆"愛"に関しては、人はとにかく柔軟じゃないといけない

アレンは言う。「ドニ・ド・ルージュモン曰く、"愛は満たされるとロマンスを失う"。つまり、素晴らしい人生を築くための他の要素を得ることはできても、ロマンスを再び取り戻すことは不可能なんだ」。ヨハンソンは語る。「ひとことで"ロマンチック"と言っても、さまざまな種類があるわ。非常に魅惑的な、恋愛ゲームのようなロマンスがあり、そして、30年連れ添った後に、それでもまだ互いについて新発見し、学ぶことができるようなカップルのロマンスもある。それってすごくロマンチックだと思う。この作品は、さまざまな種類の愛を見せてくれる。マリア・エレーナとフアン・アントニオの無限で不思議な愛、クリスティーナがマリア・エレーナとフアン・アントニオに感じる夢中な芸術的表現のような愛、そして、ヴィッキーのフアン・アントニオに対する取りつかれたような熱狂的な愛。この作品は、全ての愛が正当だと教えてくれる」。バルデムは言う。「愛にはさまざまな側面がある。それを感じる人によって姿を変える。この作品は、さまざまな考えを持つ多種多様な人々の愛とその関係について描きたいのだと思う」。

アレンは言う。「本作には、監督である自分すらも気付かなかった"愛"が描かれている。僕は、"愛"について何か深いことが言いたいわけじゃない。でも、登場人物を生み出し、彼らが関係性を持つと、何らかの考えが浮かび上がってくる。映画が完成してみると、当初描きたいと思っていたことと違っていたり、矛盾する要素もあった。ただ一方で、一貫してどうしても伝えたいメッセージがあったんだ。人生にはたまたまことがうまく運ぶこともある。でも、それは事前にはわからない。だから、"愛"に関しては、人はとにかく柔軟じゃないといけない」



 


【ストーリー】

ひと夏のバカンスでアメリカからバルセロナへとやってきたヴィッキーとクリスティーナ。学生時代から親友の2人だが、恋愛に関しては正反対。ヴィッキーは男性に誠意と安定を求める堅実タイプで、真面目な好青年ダグと婚約中。クリスティーナは情熱的な恋を求める自由奔放タイプで、魅力あふれる男性を探し中。

2人はヴィッキーの親戚夫妻の家に滞在して、毎日バルセロナの街を観光。ガウディの建築物やミロの芸術に酔いしれ、堪能する日々を過ごしていた。ある晩、夫妻と訪れた画廊のパーティーで出会ったのは、画家のフアン・アントニオ。野性的な魅力を持つ彼は、元妻とドロ沼離婚したばかり。その噂にクリスティーナは興味を持つ。

深夜のレストランで、2人はフアン・アントニオに偶然再会する。「オビエドに招待したい」「何があるの?」「週末を過ごして街を案内する。食事とワインを楽しんでセックスをする」。彼の提案を厚かましいとヴィッキーは憤慨するが、クリスティーナは喜んで話に乗る。「面白そうな男」「どこが!? ハンサムじゃないし」「とてもハンサムよ。男っぽくてセクシーだわ」結局、親友を放っておけないヴィッキーも同行し、飛行機でオビエドへ。

オビエドでは観光に出かけ、街で写真を撮り、3人は芸術や恋を語り合う。「愛はむなしすぎる。最高の女を愛したが、終わった……」フアン・アントニオから元妻にナイフで刺された話を聞いて、ヴィッキーは呆れるが、クリスティーナはますます彼に惹かれる。その夜の食事後、フアン・アントニオは2人をセックスに誘うが、婚約者がいるヴィッキーは拒否。酔っぱらったクリスティーナは1人で彼の部屋を訪れる。しかし、これからという時に気分が悪くなり……。

翌日、ホテルで休むクリスティーナを残して出かけた2人。共に1日を過ごす中で、最初はいけ好かない男だと思っていたフアン・アントニオを知るにつれ、ヴィッキーも彼に魅了されていく。「今夜の私、どうかしてるわ」「君を見たのは美しかったからだ」。ワインを飲み、スパニッシュ・ギターを聴きにいった帰り道、2人は一夜の関係を持つ。

オビエドから戻ったヴィッキーは、フアン・アントニオとの幻のような夜を忘れられない。しかし、婚約者のダグが近々バルセロナへやってきて、結婚しようという。クリスティーナがフアン・アントニオにデートへ誘われた話を聞いて、さらに心の中がざわつく。一方、旅先での失態を悔やんでいたクリスティーナは、フアン・アントニオからの誘いに大喜び。自宅兼アトリエに招かれ、激しくお互いを求め合う。

クリスティーナはフアン・アントニオの家で同棲を始める一方、ダグがニューヨークからやってきた。ダグとは対照的なフアン・アントニオ。彼への想いを募らせ、悩むヴィッキーは、4人でランチをした日、フアン・アントニオに密かに告白する。「あなたのことが忘れられない」「元妻が言っていた。"成就しない愛だけがロマンチックだ"と」。フアン・アントニオの気持ちが自分ではなく、今はクリスティーナにあると知り、ヴィッキーはダグとの結婚を決意する。

念願だった芸術家の彼女となったクリスティーナ。フアン・アントニオと街へ出かけ、写真を撮り、詩を書き、彼の仲間たちと最高の時を過ごしていた。アメリカにはなかった憧れの生活。ところが、彼の元妻マリア・エレーナが自殺未遂を起こし、2人の家へ転がり込んでくる。美しいが情緒不安定なマリア・エレーナと、彼女を助けておきながら、何かと激しく口論するフアン・アントニオ。「君は壊れてる!」「気まぐれな私が好きなくせに!」。元夫婦の不思議な関係に戸惑うクリスティーナ。

3人は不思議な共同生活を始める。高飛車で自分勝手だが、天才的な芸術家のマリア・エレーナは、クリスティーナに写真を教える。最初は距離を置いていたクリスティーナも、彼女の才能と美しさに魅了され、ついにはフアン・アントニオと寝ることも許してしまう。さらには、クリスティーナ自身もマリア・エレーナと……?

オビエドの週末を忘れられず、ダグとフアン・アントニオの間で揺れるヴィッキーの想いは!? フアン・アントニオとマリア・エレーナと完璧な三角関係を築きながらも、少しずつ乱されていくクリスティーナの心は!? 同じ男性を愛してしまった親友2人と、男とその妻。情熱の都バルセロナで絡み合う、4人のひと夏の恋の行方は ― !?