『ナインスゲート』/"The 9th Gate"





6月3日より丸の内プラゼールほかにて公開

1999年/スペイン・フランス/133分/カラー/スコープサイズ/ドルビーデジタル/8巻・3.644m/字幕翻訳:関美冬 サントラCD:カルチュア・パブリッシャーズ/原作:集英社文庫刊 提供:パイオニアLDC、ギャガ・コミュニケーションズ/ギャガ・ヒューマックス共同配給

◇製作・監督:ロマン・ポランスキー ◇脚本:アンリック・ユルビズー、ジョン・ブラウンジョン、ロマン・ポランスキー ◇原作:アルトゥーロ・ペレス・レベルテ ◇ライン・プロデューサー:スザンヌ・ワイセンフェルド ◇製作総指揮:ウォルフガング・グラッテス、マイケル・チェイコ ◇共同プロデューサー:イナキ・ヌャナズ、アントニオ・カーディナル、アレイン・ヴェニエ ◇撮影:ダリウス・コンディ A.F.C.,A.S.C. ◇美術:ディーン・タヴラリス ◇編集:ハーヴ・デルーズ ◇音楽:ヴォイチェック・キラール ◇衣装:アンソニー・パウエル ◇キャスティング:ハワード・フィヤー

◇キャスト:ジョニー・デップ(ディーン・コルソ)、フランク・ランジェラ(ボリス・バルカン)、レナ・オリン(リアナ・デルファー)、エマニュエル・セイナー(謎の女)、バーバラ・ジェフォード(ケスラー男爵夫人)、トニー・アモーニ(ボディガード)、ホセ・ロペス・ロデロ(パブロ・ペドロ:セニサ兄弟)



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【解説】

「神に聖書があるように、悪魔にも秘密の書があった」

◆3冊の本 9枚の挿し絵―
禁断の書がいざなう
究極の恐怖迷宮。


およそ言語というものが生まれてから、書物は人類とともに長い歴史を歩んできた。崇高な理念や叡智、深い洞察と思考、激情や諦観、感情と理性を綴り、知識と娯楽を求める人間の渇きを充たしてきた膨大な数におよぶそうした書物の中には、人間の心の闇を暗黒面に導く、紐解いてはならない禁断の書があった……。

収集家のために世界中を股にかけて稀覯書を探し出す辣腕の本の探偵、ディーン・コルソは、ニューヨークの書物愛好者ボリス・バルカンの依頼を受けて、1666年に発表された伝説の悪魔祈祷書「影の王国への九つの扉」を探すことになる。世界に3冊現存しているこの本の1冊を入手したバルカンは、残りの2冊と照合して、3冊すべてが本物かどうか鑑定したがっていた。コルソの書物捜査の旅はニューヨークからスペイン、ポルトガル、フランスに及ぶにしたがい、邪悪な意志に満ち満ちた暴力と死の彩りをみせていく。それは人間のあくなき欲望と人知を超えた凶凶しい存在とのせめぎあいでもあった……。

1962年に『水の中のナイフ』で衝撃的なデビューを飾り、『反撥』『袋小路』『吸血鬼』など群を抜いた演出力と映像感覚で、鬼才の名をほしいままにしてきた稀代の匠、ロマン・ポランスキー。私生活でもスキャンダラスな事件を巻き起こし、どこかしら悪魔的な雰囲気をもつこの監督が、6年の沈黙を破って送り出した本作は、彼にとっては1968年の『ローズマリーの赤ちゃん』以来のひさびさの“オカルト映画”。三冊の奇書に秘められた謎をめぐって本の探偵、コルソがいざなう世界は、ミステリーの体裁で始まりながら、次第にデモニッシュな装いを見せはじめ、思いもつかない結末に導く。サスペンスに溢れ、趣味性充分、官能的で、ウィットに富んだその語り口はまさにポランスキーならでは、である。

主人公コルソを演じるのは、ポランスキー自身が原作を読んだときから頭に描いていたというジョニー・デップ。『ノイズ』、『スリーピー・ホロウ』、『GO GO L.A.』と出演作目白押しの彼だが、今回はポランスキーの指導のもと、もみ上げに白髪をたくわえた扮装で、謎に挑む情熱的な探究者を巧みに演じてみせる。好奇心に富み、人好きがする表情をもつ、したたかなヒーロー。この役が彼の新しい一面を引き出したことは間違いない。共演はポランスキーの永遠のミューズ、『フランティック』や『赤い航路』のエマニュエル・セイナー。『ドラキュラ』のフランク・ランジェラ、『蜘蛛女』のレナ・オリン、『フェイク』のジェームズ・ルッソという個性派たちがミステリアスな登場人物を熱演している。

原作はスペインの“知”のミステリーの旗手、アルトゥーロ・ペレス・レベルテの「呪のデュマ倶楽部」(集英社刊)だが、大胆に脚色がされている。ポランスキーは、『テス』や『赤い航路』で仕事をしてきたジョン・ブラウンジョン、アンリック・ユルビズーとともに、ペダンチックな原作の枝葉を刈り取り、より映像的で引き締まったスリリング満点のストーリーに変えている。スペイン・ポルトガルの風光明媚な風景のなかからすばらしいテクニックで陰影に富んだ映像を切り取った撮影は『セブン』のダリウス・コンディ、オカルティックな意匠を揃えたプロダクション・デザインは『地獄の黙示録』のディーン・タヴラリス。

冒頭のクレジット・タイトルの悪夢のようなシーンからぐいぐい引き込まれる迷宮のような世界。これぞ、ポランスキーが世紀末に贈る、圧倒的に面白い黙示録エンターテインメントだ。



 




【プロダクションノート】

演技派として名高いジョニー・デップを主役に迎え、名匠ロマン・ポランスキーは、17世紀に書かれた悪魔の書のためならどんなこともいとわない人間として描かれていたコルソを、超自然的な冒険をする騎士へと変身させた。原作を読み進む段階で、ポランスキーは主役にはジョニー・デップを考えていた。「本を読みながら、作中の登場人物についてあれこれと考えていたが、すぐにコルソ役にはジョニーがぴったりだと思った。ジョニーは笑顔のよさや、人をひきつける魅力、それにいたずらな雰囲気を併せ持っているからね」 デップは役柄に対して、「コルソは、本に対して非常に強い情熱を持っていると思う。ただ、同時に、抜け目のないビジネスマンであり、非常に皮肉屋でもある。僕の想像では、コルソはもともと作家志望でその夢がかなわなかったから、自分が愛するもの、つまり本に対しては強い愛情と憎しみを抱いているんじゃないかと思う」とコメントしている。 デップがコルソ役をこう解釈したことにより、コルソ役は、無関心な皮肉屋から情熱的な探究者へと深みを増し、肉付けされていった。ポランスキー監督はこのアプローチに手放しで賞賛を送った。「ジョニーがコルソを演じることによって、役に思いがけない表情が生まれた。私自身、コルソに対しては少し違うイメージを抱いていたが、ジョニーがせりふを言うたびに、ジョニーの解釈の方が正しいと感じた。彼の言いまわしにはあやしいところがまったくなく、いつも確かだった」また、ポランスキーは、デップが芝居を本能的に理解する点に感銘を受けたという。「役者によっては、演技を付ける際に、非常に具体的にディテールを説明する必要がある者もいる。でもジョニーに対してはそんな必要は一切なかった。彼は本能で演技するんだ!」

キャスティングにおける一番の収穫は悪魔のようなセニサ兄弟を演じたホセ・ロペス・ロデロだろう。ロデロはスペイン映画ではベテランで、スタンリー・キューブリックやジョゼフ・L・マンキーウィッツそしてニコラス・レイといった名監督の助監督として映画界でのキャリアを踏み出した。本作以前には演技経験のないロデロを、カメラの前に引っ張り出すのは大変だったとポランスキーは語る。「演技と英語が達者なスペイン人俳優はなかなか見つからなかった。膨大な量のキャスティング用テープを見れば見るほど、うちのスペイン担当プロダクション・マネージャーのペペ(ロデロのこと)がいいんじゃないかと思うようになった。彼は英語がうまいし、いい顔をしているからね。ロデロ役をやってくれないかといったら、部屋を逃げ出してしまったので、あわててつかまえたぐらいだ。2ヶ月かかってやっと口説き落としたよ」

事実、ロデロは、セニサ兄弟の両方だけでなく、映画の最後に店を改修する2人の職人まで演じることになった。「役者デビューだね。初日はがちがちだったが、見事にやってのけたよ。たいしたやつだ」

「ナインスゲート」の主な撮影は、1998年6月、パリで開始され、プラザ・アテネ・ホテル、サン・ルイ島、セーヌ河岸などでロケを行った。リアナ・テルファーの一族の屋敷には、パリの東約25キロに位置するフェリエール城が使われたが、ここは、19世紀にはロスチャイルド家の屋敷だったことで有名である。この後、撮影隊は、ポルトガルのシントラ、スペインのトレドへと移動した。


 




【ストーリー】

★ニューヨーク―幅広い知識と鋭い観察眼、さらには他を出し抜く機動力を兼ね備える本の探偵、(ブックハンター)のディーン・コルソ(ジョニー・デップ)は、バルカン出版のボリス・バルカン(フランク・ランジェラ)から仕事を依頼される。悪魔研究者としても名高いバルカンの注文は、最近彼が入手した1冊の本―コレクター仲間のアンドリュー・テルファーから譲られた17世紀の悪魔書「ナインスゲート(影の王国への九つの扉)」にまつわることだった。悪魔自身の作とされ、翻訳した作家のアリスティデ・トルキアが火あぶりの刑に処せられたことでも知られるこの伝説の書は、現在、世界中に3冊しか存在していない。ようやく入手したバルカンは、残りの2冊を探し出し、あらゆる角度から比較して真贋を判断するように、コルソに依頼した。

コルソはまず、テルファーの屋敷を訪ねる。しかしテルファーはバルカンに本を譲った翌日に謎の首吊り自殺を遂げていた。コルソは危険な匂いを感じつつ「ナインスゲート」を稀覯書専門の本屋を営む友人のバーニー(ジェームズ・ルッソ)に預ける。そして、帰宅した彼を待っていたのはテルファーの未亡人リアナ(レナ・オリン)。彼女はコルソを誘惑し、情事の余韻に浸るふりをして「ナインスゲート」を取り戻そうとするが、コルソが本を持っていないことを知ると逆上する。

図書館へ出かけたコルソは、バルカンの悪霊学の講義に出席していたブロンド美女(エマニュエル・セイナー)を見かける。声をかけようとしたが、次の瞬間、彼女の姿は消えていた。翌日バーニーの店に立ち寄ったコルソは第2の死に遭遇する。バーニーは「ナインスゲート」に挿入されている版画の通りの奇妙な姿で殺されていたのだ。コルソは隠しておいた「ナインスゲート」を抱えて空港へと向かった。

★トレド(スペイン)―コルソは、テルファーが「ナインスゲート」を購入したというセニサ兄弟(ホセ・ロペス・ロデロ)の店を訪れた。そこは製本屋と店を兼ねていて、話好きの兄弟は「ナインスゲート」にまつわる多くの情報と、テルファー夫妻に関する興味深い事実を教えてくれた。実は本を欲しがっていたのはテルファーではなくリアナだったこと。そして挿し絵の版画には、ある秘密が隠されていること。

★シントラ(ポルトガル)―2冊目の「ナインスゲート」を求めて、コルソは裕福な一族の子孫であるヴィクター・ファルガス(ジャック・テイラー)の屋敷を訪ねた。何かに憑かれたようにヴァイオリンを弾き続けるファルガスの横で、コルソは詳細に2冊の「ナインスゲート」を調べていく。そして、版画のサインが微妙に違っていることに気がついた。

調査を済ませて門をでたコルソは、猛スピードの車に突っ込まれそうになる。車から降り立った屈強な男は、テルファーの屋敷でみかけたボディ・ガード(トニー・アモーニ)によく似ていた。その後ホテルに戻った彼は、またもやブロンド美女とラウンジで遭遇する。彼女に導かれるままファルガスの屋敷を再訪すると、池にはファルガスの遺体が。急いで書斎に駆け込むと、暖炉の中で2冊目の「ナインスゲート」が燃え尽きかけている。しかも、挿し絵の部分は破り取られていた……。

★パリ―最後の1冊を所有するケスラー男爵夫人は悪魔崇拝者だった。「ナインスゲート」についての歴史をコルソにレクチャーしてくれた上、その教えを伝える秘密結社“銀蛇教団”の存在についても及んだ。翌日、秘書の留守を狙ってコルソはケスラーのオフィスに押し入るが、気づくと周囲は炎と煙に包まれ、ケスラーは絶命していた。肝心の本は、ファルガスのときと同じように挿し絵の部分だけ盗まれていた。

いまや、コルソは完全に「ナインスゲート」に取り憑かれていた。守護天使とも呼べるブロンド美女に導かれ、彼は稀覯本の闇の世界をさまよい続ける。そして“9番目の扉”は、彼の到着を静かに待っていた―。





 




【キャスト&スタッフ】

■監督・脚本:ロマン・ポランスキー

1933年8月18日、パリで生まれる。3歳の年に一家はポーランドに移るが、1941年、両親は強制収容所に送られ厳しい少年時代を送る。20歳まで舞台俳優を続け、1954年にウージの国立映画学校に入学、アンジェイ・ムンクの指導を受ける。パリで短編「太った男とやせた男」(1961)を演出。ポーランドに戻って撮った長編第一作『水の中のナイフ』(1962)がアカデミー外国語映画賞にノミネートされる。ロンドンで『反撥』(1965)、『袋小路』(1966)、『吸血鬼』(1967)を監督。アメリカに移り、『ローズマリの赤ちゃん』(1968)が大ヒットしたが、1969年に妻のシャロン・テートが惨殺される。1974年『チャイナタウン』を監督し絶賛されるが、1977年に13歳の少女をレイプした容疑で逮捕。保釈後、撮影のために出国したままで、アメリカでは逃亡犯として扱われている。以来『テス』(1979)、『フランティック』(1988)、『赤い航路』(1992)、『死と乙女(おとめ)』(1995)とヨーロッパで映画作りを続けている。


■ジョニー・デップ(ディーン・コルソ)

1963年6月9日、ケンタッキー州オーウェンズボロ生まれ。ギターにのめりこみ、高校をドロップアウトしていくつかのバンドを渡り歩く。イギー・ポップのオープニングをつとめた経験から、プロのロック・ミュージシャンを目指してL.A.に出るが、ニコラス・ケイジに勧められて目標を俳優に変更。『エルム街の悪夢』(1984)で映画デビューした後、テレビシリーズ「21 JUMP STREET」(1987〜1990)で人気を得た。『クライ・ベイビー』(1990)で初主演。以降は着実なスタンスで話題作に出演している。なかでもティム・バートンとは『シザーハンズ』(1990)、『エド・ウッド』(1994)、『スリーピー・ホロウ』(1999)と三作で組んでいる。監督・脚本・主演の三役に挑んだ『ブレイブ』(1997)もある。音楽でも、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのメンバーとバンド“P”を結成、アルバムをリリースしている。L.A.郊外でナイトクラブを共同経営する実業家の側面も持ち、私生活ではヴァネッサ・パラディとの間に子供も生まれた。


■エマニュエル・セイナー(謎の女性)

1966年6月22日、パリ生まれ。父は有名なカメラマン、母はジャーナリスト、そして祖父は著名なコメディアンであるルイス・セイナー。14歳からモデルとしての仕事を始め、ヨーロッパの主要雑誌の表紙を飾ったほかシャネルの広告にも登場する売れっ子に成長。映画デビューは1985年の『ゴダールの探偵』。続いて『COURS PRIVE』(1986)に出演後、ポランスキー監督と出会い、彼のヒロインとなる。その結果『フランティック』(1988)ではハリソン・フォードの相手役を務め、『赤い航路』(1992)ではピーター・コヨーテと共演。この他にも『オデールの夏』(1994)、『ニルヴァーナ』(1996)『ヴァンドーム広場』(1998)などで独特の個性を発揮している。


■フランク・ランジェラ(ボリス・バルカン)

1941年1月1日、ニュージャージー生まれ。学生時代から演技に興味を持ち、大学卒業とともにニューヨークに出る。リンカーン・シアターでプロとしての初舞台を踏み、『わが愛は消え去りて』(1970)でスクリーン・デビューを果す。舞台同様、映画化された『ドラキュラ』(1979)でも主役を演じて評判となったが現在はバイプレイヤーとして個性を発揮している。その他の出演作は『デーヴ』(1993)、『ジュニア』(1994)、『カットスロート・アイランド』(1995)、『エディー/勝利の天使』(1996)など。


■ジェームズ・ルッソ(バーニー)

1953年4月23日、ニューヨーク生まれ。大学時代から脚本に興味を持ち、短編“CANDY STORE”は学生映画祭で最優秀作品賞に輝いた。役者としての映画デビューは1982年の“A STRANGER IS WATCHING”。『レイプ/殺意のエンジェル』(1986・ビデオ)では暴行魔を熱演。『初体験 リッジモンド・ハイ』(1982)、『ボディ2/スネーク・アイズ』(1993)、『バッド・ガールズ』(1994)、『ポストマン』(1997)などで脇を固めている。役者になる前、タクシーの運転手をしていた経歴も持っている。


■レナ・オリン(未亡人レアナ)

1955年3月22日、スウェーデン生まれ。父も役者で、20歳のときに演劇学校に入学。その後、ストックホルムのロイヤル・シアターに進んだ。映画デビューはイングマル・ベルイマンの『鏡の中の女』(1976)、『存在の耐えられない軽さ』(1988)における体当たりの演技でアメリカを始め世界中に衝撃を与えた。翌年の『敵、ある愛の物語』ではアカデミー賞主演女優賞にもノミネート。『蜘蛛女』(1994)で演じた、したたかに男を誘う悪女のキャラクターも強烈な印象を残している。


 









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