『ターザン』来日記者会見
 11月5日(金)パークハイアット東京・ボールルームにて
●出席者:グレン・キーン、フィル・コリンズ
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第12回東京国際映画祭クロージング作品であり、12月18日(土)より全国東宝洋画系にてロードショー予定のディズニー・アニメ『ターザン』の記者会見が行われた。当日は、スーパーバイジング・アニメーターのグレン・キーン氏と、主題歌を含む挿入歌の作詞、作曲、ボーカルを担当し、今年の映画祭最終日にプレミア・ライブ(『ターザン』終映後)を披露したフィル・コリンズ氏を迎えての会見となった。

【挨拶】

■グレン・キーン: 「今回は、残念ながら“ターザン”はジャングルにいますので、代わりに私が参ったわけで光栄に思っております。今回、東京国際映画祭では、はじめてアニメ映画が上映されるということで、非常に喜んでおります。ありがとうございます」

■フィル・コリンズ: 「私、日本に来ることができまして大変嬉しく思っております。今回、このような素晴しい映画に参加することができまして大変光栄に思っております。そして誇りにも思っております。今回、世界各国のプレスの方とお話させていただいて、皆さん気に入ってくださることがわかりました。本当にありがとうございます」

【質疑応答】

◆質問: 「フィル・コリンズさんにお伺いいたします。フィル・コリンズさんは、映画に参加すること、映画というフィールドをどのように思ってらっしゃるかお聞かせください」

■フィル・コリンズ: 「以前、自分が関わった映画、出演した映画で音楽も担当したことがありますけれども、今回、このような形でディズニー映画さんと関わったことは自分にとっては初めてです。実際に自分は、小さい頃、ディズニー映画を観て育っておりますし、自分の子供たちにもディズニー映画を観せてきましたので、本当に、今回、自分がこういう形で関わったことを誇りにも思っております。今回、こういう形で仕事をさせていただいたわけですけれども、初めにお話をいただいた時は少し不安もありましたが、とてもいい機会に恵まれたと思いますし、実際に自分でも映画の仕事に取りかかりたいと思っておりましたし、非常にうれしく思っております」

◆質問: 「グレン・キーンさんにお伺いします。今回の映画は、ターザンの躍動感が重要だと思うのですが、ターザンの動きだとかで特に注意した点や、1番難しかったシーンはありますでしょうか」


■グレン・キーン: 「キャラクターとは、動きで決まるといっても過言ではないと思います。今回の『ターザン』の場合、過去のターザン映画のターザンは、動きが決まってしまっていたわけです。みなさんご存じのように、あの蔦にぶら下がって叫ぶターザンで決まっていたわけで、なぜ、もうあの素晴しいターザンがあるのに今さらなぜ?という疑問がありました。ですから、今回は、新しいターザンを作らなければならないということで、私は今回、原点に戻りまして、バローズの原作を読みました。そこに書かれていたターザンとは、私たちが目にしてきたターザンとはまったく違うものでした。原作のターザンは、野獣のようなアニマルの部分が多かったんです。それと、物真似の天才。他の動物の物真似がすごくうまかった。それで、本当にこれの動きを人間の俳優がやりましたならば、1日で死んでしまうようなすごい動きをします。ですから、ターザンというのは、アニメに適したキャラクターであると私は実感したわけです。

ちょうどこの作品に携わりはじめた頃、私の息子マックスは16歳で、スケートボードに熱中していました。毎日、膝を擦りむいて帰ってくるわけです。私はマツクスに、「なぜそんなに痛い思いをしてもやるんだい?」と聞いたところ、「だって楽しいんだもん」と言ってくれまして、それで、目が開いた感じがしまして、ターザンも本当に、ジャングルを楽しんで自由に駆け回っていると思い、ターザンにもサーファーのような動きを対応させようと思いました。ターザンをツリー・サーファーにしようと思ったわけです。ジャングルの木の枝をあたかも道のようにして、若者がよくスケートボードを道でしますね、それと同じように、ターザンは枝を使ってスケートボードをしようと思ったわけです。

1番難しかったシーンということですが、私が1番印象に残っているシーンは、ターザンがジェーンと初めて会いまして手を合わせるシーンがあります。あの場面で、ターザンは初めて自分を発見するわけです。自分と同じ人間と初めて会うわけですから。アニメーションを描くには、自分の実体験を参考にしなければいけなくて、果たして、私の実生活の中でそういった瞬間はいつだったろうと考えました。そこで思いあたったのは、私の娘クレアが生まれた瞬間でした。ちょうど生まれて30秒くらいたったクレアを、お医者さんが私の手の中に下さって、彼女を抱いた瞬間に、そして、彼女の顔を初めて見た瞬間、それはあたかも小さな鏡のようでした。私自身を彼女の顔に見ることができまして、その瞬間を、私はターザンの表情に描き込みました。そして娘に、あのシーンを見た時、『あれはお父さんがクレアを初めて見た時の表情だよ』と伝えました」


◆質問: 「フィル・コリンズさんに質問です。あのオープニングの音楽と映像が見事にマッチしていると思ったのですが、ご自身で見ていただいてどのような感想を持たれたのでしょうか」


■フィル・コリンズ: 「今回のこの映画を作るにあたりまして、4年間という長い年月をかけました。当初は、映像がまだ出来上がっていなかったので苦労しました。はじめは、アーティストの方が描かれたジャングルの画ですとか、動物、ターザンの画しかなかったので、私自身のインスピレーションを膨らませて曲を書いていき、アニメーションを描いた方々は、自分の曲を聞き、インスピレーションを膨らませていったという感じでした。そして、このオープニングシーンは、実際には、一番最後に出来上がったシーンで、ここの場面だけは、実際の映像を見ることができました。このシーンというのは、ターザンとその家族、そして、ゴリラの家族、母親も出てくるシーンなんですが、この2つの家族がどのように歩み寄っていくのか、どこに接点があるのかということを、この曲や映像で決めていくわけですが、はじめのこの曲(ここでフィルはメロディーを口ずさむ)これがカーラのテーマ。そして、(ここでもフィルが口ずさむ)これがターザンのテーマになっていると思います。とにかく、この映像を見た時、私は凄く満足し感動しました」

■グレン・キーン: 「この映画のストーリーボードを書いている時点では、まだ、フィル・コリンズさんの歌が出来ていませんでした。私どもが大変心配していたのは、映画の冒頭が、なんて暗い、なんて悲しい始まりなんだろうと思っておりました。なぜならば、考えてみますと、ゴリラの赤ちゃんが死んでしまい、そして、ターザンのお母さんもお父さんも死んでしまうわけです。果たして、こんなオープニングで、これから先をお客さんが観ようと思ってくれるのかと心配していたんですけれども、実際、曲をいただいた時には、本当にこれで大丈夫だと実感いたしました。これはやはり、コリンズさんの音楽の質だと思いますし、なぜコリンズさんの曲がこんなにディズニー映画にマッチしているのかという証しだと思います。彼の曲の中には「希望」というものがあるんです。あたかも、暗闇の中に一筋の光が差し込むような「希望」を彼の曲から感じました。それで、お客さんに、こんなに暗く悲しい始まりだけれど大丈夫。これからドンドン見たこともない冒険が始まるからと、語りかけているようなオープニングになったと思います」


◆質問: 「ターザンの漫画を書いているバン・フォーガンスが最近亡くなったのですが、以前、会ったことがあるんですが、その時に、『ターザン』が映画化されるにあたってコンサルタントとして参加するとお伺いしたのですが、スタッフ・クレジットには名前がなかったのですが、参加はやはりされていないのでしょうか。画、たとえば、木などに彼の影響が感じられたのですけれども」

■グレン・キーン: 「実は、私が9歳の時に父が初めてくれたアート・ブックというのが、フォーガンスさんの本だったんです。それは素晴しい本で、私はそれを真似て夢中になって書いていたんです。よく、学校に行くバスに乗って書いていましたところ、同級生たちが後ろから見て、この子、裸の男の絵を書いているよと言われたことを覚えています。残念ながら、私がパリに移り住みましてこの作品に携わりました年に亡くなってしまいまして、まさにこれは、彼の意思を受けついでやらなければいけないと実感いたしました」

◆質問: 「クレジットの中に、ジェフ・ジョーンズと名前がありましたが、アーティストの彼ですか?」

■グレン・キーン: 「同姓同名の人で別人です」

◆質問: 「ドロンズです。日本で有名なコメディアンです。ご存じですか?ドロンズ(ここで、お待ちしてましたとフィル・コリンズ氏。グレン・キーン氏は、体格のいい方の彼を指して、ゴリラのモデルとして絵を書かせていただきますとジョークを)。映画『ターザン』で気に入っているシーンはどこですか」

■グレン・キーン: 「ラストシーンです。ターザンとジェーンが蔦を持って飛んでるシーンが好きなんです。といいますのも、3年かけてこの作品を作りまして、やっと最後のシーンに辿りつきまして、あのシーンでは、ジェーンはほとんど何も身につけてませんよね。やはり、アニメーターとしては、女性が何も身につけていないシーンを描くのは好きですし、本当に2人が幸せそうで、これほど人間にとって幸せな瞬間はないだろうなと思いまして描きました」

◆質問: 「(もう1人のドロンズ)フィルさんへ質問です。ターザンのような暮らしが好きですか?」

■フィル・コリンズ: 「蛇とが蜘蛛とかが苦手なので、ジャングルでの生活は苦手でしょう。でも、最終的には、ジェーンが自分のものになるというところは気に入ってます。ただ、あの裸に近い衣装が自分には似合わないと思っております」

◆質問: 「グレン・キーンさんに質問です。あの壮大なジャングルは、グレンさんの頭の中の想像ですか。それとも、実際にどこかのジャングルを参考にされたのでしょうか?」

■グレン・キーン: 「実は、私の想像するジャングルというのは、パーフェクトな木が一杯繁っていて鬱蒼としたジャングルだったんです。ですから、正直言って、実際にジャングルに行ってジャングルがそうでなかったら嫌だなと思っていたのです。でも、実際のジャングルに行ったら、私の想像を絶する素晴しい私の想像以上のものでした。本当に一杯木があって、蔦が一杯降りていて、やはり、ジャングルで蔦を見ますとぶら下がってみたくなりまして、ぶら下がったんですが切れてしまいまして、その時、私はやはり、この映画はアニメーションでやった方が無難だなと思いました」


◆質問: 「フィル・コリンズさんに質問ですが、新婚3か月ちょっとだと思うのですが、おめでとうございます。その奥様が、今回の音楽に関しても随分と貢献なさっているというお話なんですが、どういった点で助けになってくれたのか、お教えください」

■フィル・コリンズ: 「お祝いの言葉をありがとうございます。今回は、英語はもちろんのこと、ドイツ語、イタリア語、フランス語、スペイン語の方でも、自分の歌を歌わせていただいたわけですけれども、妻はスイス人で、ジュネーブに住んでいてフランス語も話すんです。それで、フランス語のレコーディングをしているときに、フランス語の訳が少し違うという指摘をしてもらって、翻訳を助けてもらったし、歌の方もちょっと違うと言ってもらったりして、貢献してもらいました。今回、これが最後の質問ということで、ここで話しておきたいことがあるんですが、今回、こうしてチームで仕事が出来たことを嬉しく思っております。以前にグループ活動をしておりましたけれども、最近はソロ活動をしていて、今回、またチームの一員として仕事をする素晴しさを味わうことができました。今回は、グレンさんをはじめ、監督、プロデューサーと仕事をさせていただきまして、辛かったこと嫌なことが1つもなく、非常に楽しく仕事をさせていただきました。先ほど、グレンさんもおっしゃっていましたが、自分の娘もこれを見ることができ、こうして仕事に関わることができて光栄に思います。本当にありがとうございました」


この後、フォト・セッションが行われたが、その間に、グレン氏がターザンのイラストをスケッチブックにササッとスケッチして見せた。  花束贈呈には、日本語主題歌を担当したV6の坂本昌行クンが会場に駆けつけた。坂本クンには、両氏からキーン氏が書いたターザンのスケッチにサインを添えプレゼントされた。


『ターザン』は12月18日(土)より全国東宝洋画系にてロードショー。


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