『ポーラX』 レオス・カラックスほか来日記者会見
 1999年7月22日(木)銀座・東武ホテルにて
 出席者:レオス・カラックス監督、ギョーム・ドパルデュー、カテリーナ・ゴルベワ




 7月22日午後2:00銀座東武ホテル。'99年カンヌ映画祭のオープニングを飾った『ポーラX』の監督レオス・カラックス、主演ギョーム・ドパルデュー、カテリーナ・ゴルベワの来日記者会見が行われた。天才とも噂されるレオス・カラックス監督の会見とあって、当日会場には多数の取材陣が詰め掛けた。気難しいといわれる監督は、非常にラフな格好で現れ、終始煙草を吸いながらの会見が展開された。ギョーム・ドパルデューも同様で、しまいにはビールまで持ちだして少しほろ酔いぎみ。カテリーナ・ゴルベワは、1人ドレスアップしていたものの、やはり煙草を離さなかった。この限りでは公の場という印象があまりなく、日本人記者たちはいささか困惑ぎみ。質疑応答における監督の答えは非常に慎重で、時に知的かつトリッキーに記者を煙に巻く場面も見られた。記者からの質問は、この作品がもつ哲学的側面や原作の映画化という2点に集中していた。原作同様、(監督曰く)「未成熟」というテーマをもつこの作品についての、監督自身の発言が非常に印象的だったので、ここに引用する。



レオス・カラックス監督
「今までの3作品は、私と同じ年齢の役者たちと作ってきて、今回初めて、私より若い子供、ベイビーたちと一緒に仕事をしました。前の3本は、私の若い時の、青春時代の映画だったと思います。それに比べて今回の映画は、年をとってからの映画というわけです。しかしながら、このピエールという青年と私との年の差に興味を持ちました。原作では、このピエールの未成熟さについて、作者はむしろ皮肉に語っています。しかし、私は皮肉に語るつもりはありませんでした。ピエールとともに居ようと思ったんです。ピエールと私が一致するのではなくて、ピーエルと共にあろうと思いました」



 この言葉から、今回いかに彼自身の中で新たな展開があったかがうかがえるだろうか。彼の内面的展開そのものが、おそらくは、今回の『ポーラX』という作品なのだろう。ある種未成熟な若い俳優を起用し、自分もその中に飛び込んで製作したこの作品には、これからのレオス・カラックスが目指す、映画の方向性のヒントが隠されているような気がする。なにせ、知的で破天荒な青年、ギョーム・ドパルデュー(会見でもその破天荒ぶりは十分に発揮されていた)を使って、こういう作品を撮ってしまったのだから(賛否は見事に分かれると思うが)。



 質疑応答が終わると写真撮影。監督とカテリーナ・ゴルベワは撮影を辞退したため、主演のギョーム・ドパルデュー1人の撮影会となった。この時、もしかしてレオス・カラックスをはじめとする3人の煙草は、この記者会見への退屈や気ののらない感じ、イラダチの象徴だったのではないだろうか…という思いが頭をよぎった。しかし、会見後、集まった記者の何人かが監督にサインを求めると、彼の"サイン会"は実に15〜20分にも及び、1人1人と笑顔でシッカリと握手をしている監督を見ていると、その疑惑は消し去られるかのようだったが…。

 『ポーラX』は、1999年10月9日よりシネマライズにて公開。