『パーフェクト・ストーム』来日記者会見
 2000年7月24日(月)パークハイアット東京ボールルームにて

●出席者:ウォルフガング・ペーターゼン監督、ジョージ・クルーニー、マーク・ウォールバーグ
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【挨拶】

■ウォルフガング・ペーターゼン監督: 今回、日本に来られて非常に興奮しております。特に、これだけのカメラのパチパチというのは、非常に久しぶりと言いますか、その興奮が1つ。そしてもう1つの興奮というのは、皆さんもうご存じだと思うのですが、なかなかジョージ・クルーニーが飛行場から到着しなかったので、30分遅れで到着した。それだけで私たちは、楽屋といいますか、裏の方で随分興奮しておりました。一応ですね、2時間半かかって成田からこちらに来たわけですが、今回のこの映画が、皆さんにとっても、人生またとないスリルになると思います。それは、たぶん2つ理由があると思います。今回のこの映画が、アメリカにおいても非常に大きな成功をおさめている理由の1つというのは、映画の観客のみなさんが、これほどのローラーコースターに乗っているくらいのスリル。今回の映画というのは、特に、サンフランシスコのILM社の協力によって、史上最大の視覚効果を出した、完全なる「嵐」を映画化できたというのが1つの理由。もう1つの理由というのは、非常にエモーショナル、感情的なインパクト。特に、マーク・ウォールバーグとダイアン・レイン、この2人が描く人間のドラマ、人間の愛の物語というのが今回の映画作品のまったくの中心という、この2つの理由が、非常にうまく相乗効果を出したということが、今回この映画を画期的な作品にしたと監督として私は思います。

■マーク・ウォールバーグ: 今回日本に来て、『パーフェクト・ストーム』の話、そして多分、ジョージー・クルーニーに関する質問が一杯出ると思います。そのことをお話しすることをとてもエキサイティングに思っております。

■ジョージ・クルーニー: 私は、日本に戻って参りましたのは、多分、2、3年ぶりだと思います。また、再来日できて大変嬉しく思っております。監督が今、スピーチをなさいましたけれど、2つ言い残されたことがあります。1つ、マークは、映画の中でシャツを脱いで、素晴らしい裸体を見せている。それから、この映画を見るお客様に、すべて車をただで差し上げるということを監督は言いませんでした(会場笑い)。


【質疑応答】


◆質問: こんにちは。ようこそ日本にいらっしゃいました。この映画で、見ているほうもずっと船酔い状態だったんですけれども、撮影の最中に、実際お2人が船に酔っている気分を味わったとか、怪我などがあったかどうか伺いたいんですけれど。

■(ジョージ・クルーニー): 怪我は幸いありませんでした。これは、監督が安全第1で撮影を進めてきたからです。また、監督の意思もありまして、この映画の中のスタントは、全部、俳優がほとんど自分たちでやろうというふうにとらえました。けれども、怪我などはありませんでした。危険でしたかね?(監督へ)。

■(ペーターゼン監督): まあ、皆さんの安全は考えていたつもりです……。

■(マーク・ウォールバーグ): 今、振り返ってみると、数回、恐かった、危険なことがあったなぁと思うことが幾つかあります。監督とジョージは、非常に船に強いんですけれども、私だけが船酔いをしたんです。やはり、1番辛かったのは私ということが記憶に残っております。

◆質問: マークとジョージの素晴らしいコンビネーションがスクリーンから伝わり、ただの災害パニック映画ではない感動を覚えました。2人にご質問なんですけれども、ハラハラするシーンが沢山あったんですが、お2人が「死」を感じるほどの撮影シーンはどんなところでしたでしょうか。教えてください。


■(ジョージ・クルーニー): 1番恐かったシーンは、ラストのシーンなんですけれども、船がひっくり返ってしまって、クレーンで引き上げて逆になってしまっている場面がある。そのまま監督は、水に“ドボーン”と落としたんです。そこから脱出できないということもありまして、救急班が酸素マスクを持って待機していて、流石にその時には、命の危険を感じました。

■(マーク・ウォールバーグ): 今、振り返ると楽しくなってしまいますけれど。

◆質問: 今の質問にちょっと関連するんですが、これだけ水に濡れる俳優さんというのも久々に見たという感じがするんですが、実際、水の中でそういうことをされていて、セリフが言えなくなったり、滑っちゃったりとか、そういうことはあったんでしょうか。因みに、マーク・ウォールバーグさんは中耳炎になったとお伺いしているんですが。

■(ジョージ・クルーニー): まあ、水の中じゃなくてもセリフは間違えるんで(会場笑い)。


■(マーク・ウォールバーグ): 確かに、セリフを言うのは普通の状況とは全然違うので、大変難しかった。セリフを喋っている内に、どっちの方向から水が来るかわからない。しかも、凄い勢いで水がかかってくるんです。それをわからないようにセリフをちゃんと喋るのは大変難しくて。確かに、機械は“グー”と唸って、「水が来るな」と思うと、その向こう側から、監督さんから「行くぞ」って声が聞こえてくる。すると、“バーン”と水が来るというような。そういうシチュエーションの中で演技をするわけですので、非常に難しかったというのが事実です。

■(ペーターゼン監督): 監督として1つ付け加えたいのは、やはり、今考えてみると、これだけ危険な要素が一杯ある映画の中で、この2人の役者が、映画を作るという意識を常に失わずに、そしてこれほどの、2人の非常にうまいコンビを、このエレメント、所謂、要素の中に相乗効果を出しながら、よくここまでやってくれたと誉めてやりたいと思います。

◆質問: 監督にお伺いします。今日いらしているお2人をはじめ、男性も女性もみなさんアクティブではなくて、漁港の人々になりきってらしていて、なんか画面から魚の臭いがしてきそうだったんですけれども、演出のポイントとして如何だったんでしょうか。


■(ペーターゼン監督): 今回のこの映画は、まったくその通り。演技というよりも、実は、どの人が1番魚臭いかなっていう感覚で選んだつもりですので、ここに今日、1番魚臭いのが2名、登場しているわけです(会場笑い)。とりあえず、魚臭さの冗談はさておいて、今回、監督としてのこの映画作りに関しては、まったく今のコメント通りに、出来ればいい映画、作品が出来ると思ったんです。つまりこれは、本当に、マサチューセッツ州グロースターにいる漁師の方たちの暮らし、その人たちが持っている妻、またはガールフレンド、または親戚、つまり、グロースターというそこのコミュニティーを、そのまま現実に実現できることができれば、監督にとってはこれほどの素晴らしい作品はないんじゃないかと思った。自分としては、今回、マークとジョージがただ素晴らしい演技をする、プレイをするのではなく、本当にグロースターの漁師になり切るという意味においても、彼らと同じ生活を共にして、そして、そこからもし今、みなさんが言われたように、そう思っていただければ、私が今回、本当に満足する作品が出来たと思っております。ありがとうございます。

◆質問: これは実話をもとにしているのですが、もちろん犠牲者の方がいるわけで、ご家族もいらっしゃる。そういう実話を基本に娯楽映画を作るという時に、亡くなった方やご家族の方に、責任ということをお感じになったでしょうか。


■(ジョージ・クルーニー): これは、ここにいる3人、そして、この映画に関わった全ての人たちが重く受け止めておりました。また、このベストセラー小説の原作を書きましたセバスチャン・ユンガーに対する責任といいますか、彼のこの素晴らしい本を決して傷つけてはならないという責任を感じておりました。で、私は、自分が演じたビリーという人物の家族、マークはマークなりに彼が演じた実際の家族たちと接触いたしまして、彼らの気持ちなどを聞いて、彼らを傷つけないような、そういう演技を作ったわけです。これは本当に最近起こった事故です。18歳、19歳という漁師、漁船に乗った人たちが命を奪われた。1991年です。ですから、これは決してタイタニックでもないし、そういう昔の話でもないし、80年前に起こったことでもない。最近起こった悲劇です。だからこそ、フェアーな作り方をしなければならない。そして、この亡くなった方を正直に描く ― そういった中で描かなければならないという責任を感じていました。それから、町に対する責任も感じておりました。で、監督は、この映画の企画の最初の段階から、話をイージーにするために嘘を作ってしまうというのは絶対に避けようということを、私たちにいつも話していました。みんながそういう責任を感じて作り上げたのがこの映画です。


◆質問: ジョージさんにお伺いしたいんですが、最近のアメリカ版プレイボーイのインタビューで、初めての俳優としての仕事が、日本のパナソニックのコマーシャルだったとおっしゃっていたのを読んだんですが、それはいつのことで、どんなコマーシャルだったんでしょう。その時にギャラが幾らで、今、同じコマーシャルをやったら幾らぐらいギャラを要求しますか。

■(ジョージ・クルーニー): プレイボーイのような雑誌を読んじゃいけませんよ(会場笑い)。電通を通して、パイオニアのコマーシャルに出ました。1984年で12歳だった(会場笑い)。もちろんギャラは上げます(会場笑い)。日本に来て撮影をしました。正確なギャラは覚えておりませんが、もちろん、食べなきゃいけないということで、クリスマス・イブに東京に来て撮影しました。シャレードという車のコマーシャルもやりました。

◆質問: マークさんとジョージさんは共演が多いのですが、どういう所がお互いに気持ちが通い合うのか。どういう所が魅力なんでしょう。


■(マーク・ウォールバーグ): 最初の共演は『スリー・キングス』です。で、今回、ジョージが僕の名前を監督に言ってくれました。で、それから僕は、ジョージからくっついて離れないんだ。そして今度、彼がプロデュースした映画に出るし、また次の映画にも出る。そういった具合に企画が沢山あります。

■(ジョージ・クルーニー): 私は、本当にマークと一緒でラッキーそのものです。本当に、マークは、ムービースターの座は約束されているし、素晴らしい俳優でいいヤツなんです。それで、こういった感じで彼と仕事を出来て私は幸せです。また、とにかく本当に私にとって、この『パーフェクト・ストーム』はラッキーな映画です。監督と仕事が出来た。ウォルフガング・ペーターゼン監督は、私が全てを放りだしてもついていきたい監督です。そういう監督はあまりいらっしゃらない。ですから、何でもお仕事、リピート大歓迎です。(監督に)こんな感じでよろしいですか?

■(ペーターゼン監督): もうちょっと。

■(ジョージ・クルーニー): 彼は偉大な監督だ(会場笑い)。