『ノッティングヒルの恋人』でヒュー・グラントが来日
 1999年9月2日(木)13時よりホテル西洋銀座(サロン・ラ・ロンド)にて
 司会:クリス・ペプラー/ゲスト:神田うの





 『ノッティングヒルの恋人』(9月4日公開)のプロモーションのため主演のヒュー・グラントが来日し、ホテル西洋銀座(サロン・ラ・ロンド)にて記者会見を行った。会見の模様は以下のとおり。


司会:それでは、はじめに日本のファンにメッセージをお願いします。

ヒュー・グラント:みなさん、こんにちは。本当に、これだけ多くの皆様方にお集りいただいて興奮しております。今日で来日2日目で、短い滞在なんですけれど、なんか日本にずっといたいぐらいです。日本人になりたいぐらいです。

司会:それでは、質疑応答に入りたいと思います。

質問者:日本人になりたいと言ってくださって、本当にありがとうございます。簡単な質問なんですけれど、映画の中であなたは、アダ名が、子供の頃から髪の毛がフワフワしてらっしゃって、ブラッキーというアダ名になっていたと思うのですが、実際のあなたの子供の頃のアダ名を教えて貰えますか?

ヒュー・グラント:思い出します。確か、子供の頃の1つのアダ名は、ピギー(子ブタちゃん)だったと思います。なぜかと申しますと、非常に、食べる時に、ボロボロこぼす子供でして、実は、今でもまだピギーなんです。昨日も天ぷらを食べに行って、ボロボロこぼす恥ずかしい失態を演じてしまいました。

質問者:あなたが出ている映画の中で、私がとても気に入っている映画で、『ア・オーフリー・ビッグ・アドベンチャー(原題)』なんですが、それでは、かなりの悪党を演じているんですけれど、これから先、悪党とか悪役を演じる予定はありますでしょうか?

ヒュー・グラント:これから先は、是非、悪党も演じて行きたいと思っております。で、悪党を演じるって凄く楽しいです。大体、俳優さんは、そう思っているんですけれど、実はですね、役者になって最初の7年間ぐらいは、悪党ばかりやっていたんです。ですから、こういうプレスに出ますと、質問は、あなたはイイ人を演じてみたいと思いませんか? という質問がかなり出たくらい、悪党ばかりをやっていました。それが今は逆転しまして、イイ人ばかりを演じているんで ― 。今まで、何本か悪役を演じているんですが、それは全部失敗作で、皆様にお目にかける機会がなかったんです。

司会:それでは次の方

質問者:今回ジュリア・ロバーツさんと共演されていて、役柄的に、ジュリア・ロバーツさんにドキッとして、魅了されてしまう役なんですけれど、あなた自身は、ジュリアさんと共演されていて、役柄のようにドキッとされた瞬間とかはありましたか?

ヒュー・グラント:実は、ジュリア・ロバーツさんはあれだけのビッグ・スターだったんで、私は恐れていたんですね。緊張していました。でも実は、10年前に彼女とは初めて会っているんです。それは、彼女がロンドンで共演者を探しているオーデションをしていて、私は、無名の失業している非常に悲しい役者だったんです。その時、非常に緊張してホテルに入って、監督と握手して、ジュリア・ロバーツさんとも初めて会って、もう〜、緊張のあまりですね、座った時に、椅子に座らないで、肘掛けのところに座ってしまいました。で、どうしようと考えた。僕ったらこんな所に座ってしまったと正直に言うべきか、もしくは、私はいつも肘掛けに座る馬鹿なヤツだと思わせるか。どっちにしょうかと悩みながら、結局そのまま、アームに座っていたという失敗があるんです。10年前もそうやって緊張しましたし、今回もまた初めての共演で、彼女が来る時はとても緊張しました。

司会:次の方

質問者:この映画の中で、有名人像などがシッカリと描かれていると思いますか?

ヒュー・グラント:確かに有名になるってことは、私の短い期間なんですけれど、有名になってからというもの、とっても素晴しい経験ばかりで、まあ〜、たまにちょっと落ち込むことも悪い面もあるかもしれないんですけれど、全体的に、私は、とっても、有名になって良かったと思っています。で、映画自体は、非常に有名人の悪い面を正確に、反映をさせているとは思います。ただし、これはラブ・ストーリーですし、その中でも、ロイヤル・ファミリーにしろ、有名人にしろ、本当は人間なんだというコメントを、非常に正確なコメントをしていると思います。

質問者:『ノッティングヒルの恋人』という映画はアメリカ映画ですけれど、キャスト、スタッフ共に、非常にイギリス人が多くて、イギリス映画と、ある種言ってもいいと思うのですが。今、イギリスの映画というのは、とても面白い映画が多いんですが、イギリス映画が元気な理由と面白い理由を教えてください。それからもう一つ。イギリスで作る映画とアメリカで作る映画の制作過程は、具体的にどんな所が違うのでしょうか?

ヒュー・グラント:まず、最初の質問ですが、『ノッティングヒルの恋人』という映画は、実際にイギリスの映画と言ってもいいと思います。イギリスの脚本家ですし、プロデューサーもそうですし、もともとは、ポログラムが資金を提供しているんで、まったくのイギリス映画です。それで、今のイギリスの状況というのは、私にとってもエキサイティングな状況だと思っています。やっと花開いたという気持ちがします。なぜっていうのはハッキリとはわからないんですけれど、何本かのヒット作が出たというのが活気づいた理由の1つだと思うんです。『フォー・ウェディング』もそうですし、『フル・モンティ』とか、こういうビッグ・ヒットがあったので。

 でも、本当に不思議なんです。この8年間ぐらい、イギリス映画はお金がなくて、資金がなく、映画が出来ない状況を見てきましたのでね、今はかなりお金があって、かなり良い状況になってきたと思います。次の質問ですが、アメリカ映画とイギリス映画の制作過程の違いは、私の経験ですと、アメリカの映画作りは華々しさがありますし、とても格好良くて、私も非常に興味深いと思います。それからスタッフが非常にプロフェッショナルですし、資金が沢山あるというメリットがあると思うのですが、デメリットとしては、あまりにも、工場で生産しているような感じがありまして、なんか、冷蔵庫を作っているとか、ソニー・ウォークマンを作っているような気持ちにもさせられます。それに比べて、イギリスの映画作りというのは、もっともっとお祭り騒ぎのような感じです。まず、資金集めに苦労してますんで、やっと資金が出来たということで、みんな大喜びで始まりますんで、もっとパーティのような雰囲気があります。みんな夜は酔っぱらって、スタッフ同士が関係をもったりとか、そういう楽しさもあります。


司会:次の方

質問者:映画の中で、ジュリア・ロバーツさんをたてて、非常に受け身の演技をしてらっしゃるのは流石だなと思ったという点と、劇中で、アナのセリフで文芸ものをやらなければダメかしらというセリフがあるんですが、そういえば、最近ヒュー・グラントさんの文芸ものを見ていないなという気がするんですが、文芸ものを作る予定などはあるんでしょうか?

ヒュー・グラント:まず、最初のコメントなんですが、受け身の演技をお褒めいただいてとっても嬉しいです。称賛してくださることならなんでも歓迎します。ただし、私はもう少し積極的な役もやってみたいし、今回のウィリアムという役は、あまりにも受け身過ぎてですね、たとえば、パパラッチがドアの外に来ていて、それをアナがドアを開けて見てしまうという場面があるんですけれど、どうしてあの時、ウィリアムは止めなかったのか??? 今だに自分でも不思議なんです。もう少し積極性がある人物にしたかったです。

 で、文芸ものですが、最後にやった文芸ものは『いつか晴れた日に』だったんですけれど、それ以前には、かなりそういう時代ものをやっていて、まあ〜、もし良いものがあればやってみたいと思いますが、でも、あまり衣装がキツイので、やりたくないという気持ちもあります。


司会:次の方

質問者:今の話で、ウィリアムよりもう少し積極性のある人物をやってみたかったという話ですが、このウィリアム・タッカーという男性は本当に誠実で、不器用な男性という役柄で、見事にハマッていたんですけれど、この映画を見た私の周りの男性陣は、凄く共感できる部分があったという感想が多くあるんです。女性から見ると少し不器用で、煮え切らないんじゃないかなって部分があるんですけれども、ヒュー・グラントさん自身が、このウィリアム・タッカーという男性に、実際に共感できる面、逆に共感出来ない面について、具体的に教えていただきたいんですけれども。

ヒュー・グラント:このウィリアム・タッカーという人物と自分の共通している部分は、長い間私は売れない俳優でした。西ロンドンに住んでいましたが……。それと、このウィリアム・タッカーという人物も、売れない本屋を営んでいるという面では共通しているかもしれません。それからウィリアムは、自分の周りの友達の意見をちょっと聞き過ぎるぐらい聞くというところも、私に似ています。私もそういう面も持っています。で、共通してないところは、非常に憧れている部分でもあるんですが、あそこまでの心の広さ、優しさ、これは実際は、脚本家リチャード・カーティス氏自身の性格を取り入れていると思います。彼もプロデューサーも面白がるんですが、本当に、私がウィリアムほどイイ人だと、みんなに思われるのが不思議だと。本当は、もっと、邪悪な人間なんです。

司会:それでは、最後の質問をどうぞ。

質問者:この映画の最後のシーンで、あなたは記者会見場で愛を告白しますよね。もし、あなた自身がこういう記者会見の席で愛を告白されたら、あなたはどうしますか?

ヒュー・グラント:是非、そうしてほしいです。

司会:それでは、これで質疑応答を終了したいと思います。それでは、花束贈呈に、今度、大島渚監督の『御法度』に出演しています、女優の神田うのさんが駆けつけてくれました。

神田うの登場。ヒュー・グラントに花束を渡す。しばし2人揃っての写真撮影。

司会:うのさん。映画のご感想はどうでしたか?

神田うの:凄く素晴しかったです。先ほどヒューさんが、もう少し積極的な役にしたかったと言っておられましたが、全然、観ていて相手は大スターですし、積極的だなぁと感じまして。謙虚にも自分の気持ちを伝えたいという部分が良かったです。

ヒュー・グラント:本当に素敵なことばかり言っていただいて、嬉しいです。

司会:うのさんは、どのシーンが一番良かったですか?

神田うの:たくさんあったんですよ。私は、記者会見に乗り出して告白するところ、その勇気が素晴しいと感じました。私の周りにいる男性も、このぐらいグイグイ来てくれる人ならば、恋に落ちられるのにと思いました。

司会:ありがとうございました。それでは、そろそろ終わりにしたいと思います。ヒュー・グラントさんありがとうございました。



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