『ジャンヌ・ダルク』記者会見
 11月2日(火)帝国ホテル蘭の間にて
●出席者:リュック・ベッソン監督、フェイ・ダナウェイ、デズモント・ハリントン、 エリック・セラ


PHOTO BY H.AIKAWA

【挨拶】

■リュック・ベッソン監督: こんにちは。特に今お話しすることはありません。今まで、いろいろ話してきましたので、むしろ皆様の質問にお答えしたいと思います。

【質疑応答】

◆質問: 「私は、小学校の頃フランスで育ちまして、『ジャンヌ・ダルク』はさんざん習いまして、ある意味でフランスの小学生にとってはうんざりしていると思うのですが、なぜ、今これを取り上げようと思ったのか。それで、特に、ダスティン・ホフマンの役は、監督の解釈が強く出ていると思うのですが、プレスの中では「良心」とおっしゃっていましたが、そこのところをもう少しくわしくお伺いしたいのです。それと、カトリック的な物語にも関わらず、なぜ、最後の歌をイスラエルの方が歌っているのかということをお伺いしたいのです」

■リュック・ベッソン監督: 「私は、ジャンヌという少女を撮りたいと思ったのです。ですから、神話として出来上がっている『ジャンヌ・ダルク』に、特に興味があったわけではなくて、思春期から思春期にありがちな夢を、実際大人になって現実社会とぶつかっていった時の彼女のショックを、私は撮りたいと思ったのです。500年前の彼女の衝撃を撮りたいと思った。あとは、良心の存在というのは、この映画の機動力になるような存在ですね。ジャンヌと良心の対峙している様というのを撮るのが、私の一番の興味でした。良心とジャンヌの対峙している様を撮りたいと申し上げましたけれども、それは、神の、何人たりとも殺してはいけない傷つけてはいけないという教えを信じているわけですよね。ですから、そういったジャンヌがそういう教えに則っていながらも、人に手をくわえてしまう状況に身を置いてしまったこと。そこで、神の教えと、実際に存在してしまう曖昧なものということをやはり意識していかざるを得なくなってしまった。自分が持っている神に対する信仰心、自分が守らなければいけない神、神を守るためにそういう状況になってしまったこと。その自分の曖昧な気持ちをどう解決していこうかというようなことを、自分は描きたいと思いました。一番最後に、自分が抱えている曖昧なものへのジャンヌの結果というのが、いかなる状況に陥っても、神の名の元においたとしても、人を傷つけてはいけない。自分がやったことは罪深かったんだと認識したことだと思います。いかなる神でも、どのような神でも、すべての神は、人間に愛情を注がなければならない。何人なりとも傷つけてはいけないと言っているわけです。しかしながら、そのような神を信仰している者同士が、それぞれの神を守るために傷つけ合っている現状というのは、厳然としてあるわけですね。あとわずかで新しい世紀を迎えようとしている今、曖昧な神を信じることと、それを信じるために行われている曖昧な状況というのを認識すべきだと考えました」

◆質問: 「リュック・ベッソン監督にお伺いしますが、監督は、最近の映画では英語を使ってらっしゃいますが、フランス人は失望しないでしょうか。あるいは、フランス・バージョンというのは作っておられるんですか。特に、この『ジャンヌ・ダルク』は、アカデミー賞が近いのでそういうのを狙っておられるのか。英語圏の方がお金が儲かるからか、その辺をお伺いしたいのですが」

■リュック・ベッソン監督: 「それは、フランス人に聞いていただけないしょうか。フランス人がどのように思っているかについて、私が代表して答えることは出来ない。とりあえず今言えることは、フランスでは1週間前に公開になりまして、100万人ぐらいの人が観ている。ということは、そんなにガッカリしていないと思うのですけれども。英語版とフランス語版があります。私は、たとえ、英語で『ジャンヌ・ダルク』の映画を撮ったとしても、フランスの文化を擁護していると思います。鉄仮面の映画にくらべればずっと。フランスにも勿論、素晴しい役者さんがいらっしゃるんですけれども、でも、フランスの中でだけ生きているフランスの役者さんを考えると、大変小さいんですね。ただし、それが、アメリカとかイギリスとか自由なところに広がっていくと、より多くの役者さんの中から選ぶことが出来るんですね。ですから、私としては、より広がりを持っていきたいので。ただし、感動というのは言語が決定するものではない。フェイさんの感情と音楽と、そういうものが重なって感動というものは起こると思います」

◆質問: 「デズモント・ハリントンさんにお伺いしたいのですが、フェイ・ダナウェイさんをはじめ、そうそうたるメンバーとの共演となったわけですが、撮影中のエピソードで特に印象に残ったことをお聞かせいただきたいんですが。それと、今回はじめてベッソン監督と仕事をされたわけですが、どのような感想をお持ちになりましたでしょうか」

■デズモント・ハリントン: 「まず、ベッソン監督との仕事ですが、自分にとっては光栄なチャンスだったと思います。やはり、私はまったくの新人、本当の意味での新人だったので、監督は、何も自分の演技だとかが確立してないところの自分を気に入ってくれたのだと思います。ですから、監督との仕事は私にとって大変いいきっかけだったと思います。そして、最初の質問ですが、いろいろな役者さんと共演することができたわけですけれども、特にジョン・マルコヴィッチさんとの共演シーンが、言葉では表わすことが難しいんですけれども、ジョンの目を見ながらの演技が、非常に自分としても、安心感と共に、本当に言葉にするのが難しいんですけれども、何か吸い込まれるような、安心感を与えてくれるような存在でした。彼とのシーンは、自分にも出来るということを確信させてくれるような共演だったと思います」

◆質問: 「エリック・セラさんに質問ですが、これまで何作もベッソン監督と仕事をされてきていますが、今回はどのように作曲されたのでしょうか。撮影現場などへ行かれたのでしょうか」

■エリック・セラ: 「まず、監督から大体の物語やイメージを話していただきます。それで、監督は撮影に入るわけですけれども、最初に物語を語ってもらう段階では、漠然とした物語しか私の方には話されません。そこで、ある程度、自分の方でイメージを作りはじめます。そして撮影に入るわけですが、撮影現場には私はたまに行く程度です。今回とても面白かったのは、チェコ共和国で撮影をしたんですけれども、お城とか、オルレアンの町の一部、ジャンヌ・ダルクが生まれたドンレミという村の一部を再現しまして、そこで1,500名という役者さんを使って、まるでタイムスリップしたような現場が作られました。そこへ私も足を運んで行ったわけです。それで、撮影が終わった段階で、編集段階に入ったわけですけれども、そこで監督と一緒にスクリーンを見ます。映像を見ながら彼の方から、ここではこのような音楽がほしいというような要請を受けます。で、リュックという人は、自分が作っていく場面場面に対して、このような場面にはこのような役割を音楽に持たせたいという、確たるイメージを持っている監督です。ですから、編集段階で、意見を聞きながら曲作りをしていきます。で、その後、私の方は、5か月ないし6か月ほどスタジオに入りまして、本来の作曲の仕事に入るわけです」

◆質問: 「とっても素敵な映画だったのですが、今回はフェイ・ダナウェイさんにお伺いしたいのですが、とてもリュック・ベッソンさんのファンとお伺いしたのですが、オファーを受けた時にどのような気持ちだったのかということと、演じられた役がとてもチャーミングで、そしてとてもしたたかな女というふうに私には映ったんです。ただ、残念ながら、他の『ジャンヌ・ダルク』の映画には、その人があまり登場していないというお話だったんで、フェイ・ダナウェイさんは、どのようにこの役を作っていったのかをお聞かせ願えれば」

/ ■フェイ・ダナウェイ: 「私はかねがねベッソン監督のファンでした。そもそも、『ニキータ』が世界で公開された時からファンになったんですけれども、なんというオリジナルな映画だろうと感心しまして、本当にこの監督は、自分自身の世界を作り上げる監督だと感心しました。『ニキータ』を観た後、劇場を出ましても、まだ、自分がベッソン監督の世界にいるような感じがいたしまして、それは『フィフス・エレメント』でも同じでした。これだけの監督は、なかなかいないと思いましたし、あともうひとつ。彼の特徴としましては、大変女性が好きな監督だと思いました。つまり、大変女性を描くことがうまい監督だと思いました。そして、少し変わった意味では、往年のハリウッド映画を彷彿とさせるような監督だと私は思ったわけです。したがって、このオファーをいただいた時は、大変光栄に思いました。それで、みなさんご存じのようにヨランダという女性は、歴史的には、大変重要な位置を占めていた人なんですけれども、いわゆる歴史の影に隠れた人物です。影で糸を引いていたというか、大変優れた政治家であり、大変心からフランスを愛していた女性で、大変知性に恵まれた女性でした。それと同時に、大変芯の強い女性で、彼女が将来のフランスを握っていた人物だったんです。ジャンヌを見い出したのも彼女でありますし、彼女は、フランスの各地にスパイを送り込んで、平民たちの情報を察知して、ジャンヌが平民たちの間で永遠の処女、聖女だというふうに信じられていることも察知しまして、彼女を招き入れたわけです。それから歴史が変わっていきまして、戦争をする資金が底をついてお金もなくなってしまうわけです。今回の役作りに関して、監督もそうですけれども、正確を期すことを心がけました。ハーバード大学を訪れて資料を集めたんですけれども、その中でも、2つ機関誌の記事があって、これはフランス語の記事だったんですが、これが大変役立ちました。そして、フランスに渡ったあとは、ベッソン監督もいろいろと資料を集めてらっしゃったんで、それも参考にさせていただきました。それと、彼女の肖像画も参考にして、額が広い部分とか、肖像画を見ると全然メークをした痕跡がなかったので、今回はノーメイクで演じました」

◆質問: 「ベッソン監督に質問ですが、撮影中、鎧をかぶって撮影したらしいですけれども、どうしてそうなさったのかお聞かせください」

■リュック・ベッソン監督: 「戦争のシーンを撮っていたわけですが、1台は私が近くで、もう1台は外からという感じに。ですから、外のカメラから撮って私が目立たないように鎧をかぶりました。かといって、1,500名ほどの役者が参加したんですけれど、誰よりも私が勇敢だったというわけではありません」


『ジャンヌ・ダルク』は12月11日より丸の内ピカデリー1ほかにて公開。


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