『新・仁義なき戦い』 製作発表記者会見
 6月15日(木)六本木タトゥー東京にて

●出席者(敬称略):阪本順治(監督)、豊川悦司、布袋寅泰、佐藤浩市、岸部一徳、村上淳、哀川翔、佐藤雅夫(東映取締役企画開発部長)
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【挨拶】

■佐藤雅夫(東映取締役企画開発部長): 東映の佐藤でございます。今日は、本当にお集まりいただきましてありがとうございます。この『仁義なき戦い』第1作が発表されて27年ぶりですか。2年ぐらい前ですか、これの担当プロデューサーであります、松田仁さんが私のところに来まして、実は、『仁義なき戦い』を改めて映画にしたいんだという相談を受けまして、実はその時、私、いささかためらったのでございます。ご存じのように、『仁義なき戦い』、深作監督で公開された当時の映画がですね、エポック・メイキングなセンセーショナルな反応が示され、お客さんも、実際の戦後の日本の映画史の中のひとつの1ページを刻んだ作品であります。果たして、これを現代に甦らせることが可能なのかどうかという形で、若干、疑問符を呈したわけでありますが、その後、阪本監督がこれに興味を持っていると。そういう話も聞きまして、これはもう優劣の問題ではなしに、阪本監督が、この『仁義なき戦い』の素材なら、あるひとつの今に合ったルールの仕方があるんじゃないかと。ということから今日に至ったわけであります。まあ、ご承知のように、この『仁義なき戦い』、この発表当時はですね、当時のヤクザ映画全盛にあっても、いわゆる任侠というヒーロー像から一転してですね、人間の持つ欲望とかぶつかりを生のまま描写してドラマにしたということで衝撃を受けたんですが、この同じ素材を阪本監督が料理するってことで、ここにお集まりの豊川さん、布袋さんを含めてですね、素晴らしいキャスト陣が賛同してくれたということで、これは新たに2000年の新しい戦いが出来るのではないかと私自身も期待しております。東映としましては、この作品を10月の末からですね、東映を合わせてのチェーンで、30館とをブッキングをしたいと考えております。ほどなく直ぐに入るらしいんですが、東映京都撮影所で、残念ながら、当時の関係者はあまりおりませんが、まだ、当時の雰囲気を知っているのもおります。その中で、新しく撮影されるものに関して、是非、皆さま絶大なる支援をお願いいたしまして、挨拶にかえさせていただきます。

■阪本順治(監督): こんにちは。まだ前作の『顔』の公開も始まってないのに、今日は変な気分なんですが。ヤクザのリアリティーで言うと、今日集まっている東映株式会社の方々の方が、よっぽどヤクザに見えるんですが。え〜今回は、こういう面々で、現実のヤクザの資料に基づきながら、僕自身がやりたかったヤクザ映画をやろうと思います。この『仁義なき戦い』というタイトルを背負うのは非常にシンドイんですが、クランクイン3日前にして、ちょっとこのプレッシャーを一端忘れて、頑張って、勢いで撮りたいと思います。この仕事のオファーを受けたのは、27年前ですか、前作のこのシリーズが好きだったという、そこから、それしかないです。また応援してください。ありがとうございます。


■豊川悦司: 豊川です。まあ、『仁義なき戦い』、前作、深作監督、はじめ撮られた数々の名作が心の中に大切な宝物になっている方も沢山いるんで、そのイメージを逆に壊すことになってしまうかもしれないんですけれども、逆に、ヤクザ映画とかまったく見たことがない若い人たちに、その両方の人たちに喜んでもらえるように、一緒に並んでいらっしゃる魅力的な役者の方々と頑張っていきたいと思いますんで、よろしくお願いします。

■布袋寅泰: 栃野役をやることになりました布袋と申します。この話をはじめにいただいた時というのは、非常に戸惑いましたし迷いましたが、今は、こうやってやると決めたからには、ビシッとかっこいい素晴らしい作品にしたいなあと、気合いも随分入ってまして。今回、音楽の方も手がけるということもあって、男ってしょうがないよなぁって言いながらも、男っていいよなぁって、女性の方にも、そして男性の方にも、男の存在みたいな、愛おしさ、切なさ、ささやかさ、そんなものをこの役を通して演じられたら、表現できたらと思います。とにかく精一杯やりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

■岸部一徳: どうも、岸部です。20幾つぐらいの時に、僕、『仁義なき戦い』をずっと観ていたんですけれども、その頃はたぶん興奮してみていたと思うんですけれども、今、自分がこういう映画の中で、こういう役をやるというのが想像できないなぁって思うんですけれども。今回、この映画で、阪本監督、布袋さん、豊川くん、なんか楽しんで思いっきりやってみたいなぁと、そんな風に思っております。どうか応援してください。

■哀川翔: 哀川翔です。え〜、自分にとっての『仁義なき戦い』という映画は、記憶の中にある1番、遠いヤクザ映画だなという気がします。たぶん、高校生の時に、シリーズ的には最終話を友達と見に行って、なんとなく興奮したことを、今思えばいいなあという感が残っておりますので、そういう風な作品になってくれればいいなぁと、凄く自分も嬉しいなぁと思っております。阪本監督と、この間、初めてお会いさせていただいて、凄くあの真っ直ぐものをおっしゃるんで、素敵な方だなと思いまして、現場で、面白いものが出来そうな気がしますんで、楽しみにしてください。

■村上淳: こんにちは。凄いメンツの中に居ちゃったもんだと凄い緊張しているんですけれども、監督から求めてもらうものだったらなんでもします。


【質疑応答】

●司会者: この『仁義なき戦い』、音楽がふわ〜っと思い浮かぶんですけれども、監督、それは、もしかしてお使いになります? それに布袋さんの新しいサウンドが入ってくるんですか?

■阪本: 今日これから打ち合わせをしようかな。

●司会者: 頭の中にはどんなプランが入ってらっしゃいます?

■阪本: まず、御本人に聞いていただいたほうがいいと思いますけれども。

●司会者: そうですね。布袋さん、演じることと、大変ですよね両方。

■布袋: いえ。それは逆に凄く楽しみでもありますし、自信がないと言っちゃうと、監督、スタッフの皆さんに申し訳ないんですけれども、音楽に関しては、圧倒的に自信がありますし、とは言いながら、不滅の名曲でテーマですから大切にしたいし、しかし、自分で新しいテーマにしたいなぁと思いますし、まあ、映画もまだクランク・インもしていませんし、いろんな方々、今日初めてお会いする方もいらっしゃいますから、いろんな空気だとか、パッションみたいなものを感じながら、それを僕なりの音楽にしていきたいと思っております。

●司会者: ということは、もしかして、『M:I-2』のように、オリジナルのメロディはキープしつつ、布袋さんが味付けをした今風のミレニアム・バージョンの『新・仁義なき戦い』のテーマ曲も流れてくるということですか。

■布袋: はい。あのテーマはあのテーマで、俺なりの解釈で作ろう思いますし、新たに作るものもあります。

●司会者: サントラもなかなか期待できそうですね。それでは質問をどうぞ。


◆質問: 豊川さん。そのお髭は今回の役のためなんでしょうか。

■豊川: 違います。

□質問者(同上): では、これから伸ばすというわけではないんですね。

■豊川: はい。綺麗な身体で望みたいと思います。

◆質問: 豊川さん自身は、これまでの『仁義なき戦い』をご覧になったのでしょうか?

■豊川: 僕は、凄く昔にみたことがあるんですけれども、今回、このお話をいただいてから、第1作目を見させていただいて、凄く面白かったです。

◆質問: どういうご感想をお持ちになりました?

■豊川: 今でこそ、いろんな映画的な手法が出てきているんでしょうけれども、いろんな時代で、題材はともかく、深作欣二監督の凄さと、俳優さんたちの生命というんですかね。その勢いがお客さんを魅了したんではないかと思うんですが。

◆質問: どうしても、菅原文太さんのイメージが色濃く出てくると思うんですけれども、そのイメージをうち破るために秘策というのはあるんでしょうか。

■豊川: 頭を角刈りにしなかったという事だと思うんですけれども。

◆質問: ヘアー・スタイルはそのままの感じで。

■豊川: 決めてないです。


◆質問: 布袋さん、映画は3年ぶりで2作目だと思うんですが、この役をもらって、役作りというのは、今何か普段からなさっていますか。

■布袋: 役作りと言いましても、役作りの仕方も知りませんから、豊川さんにいろいろ教わりながら、豊川さんに限らず出演者の皆さんにいろいろ教わりながら、かみ砕いて、でも、あまり無理してもしょうがないなぁ〜というか、自分は自分でしかいられないと思いますから、そこをわかった上で、阪本監督は、僕にこの役をふってくれたと思うし、自分らしくやれればいいなぁと思いますけれども。

◆質問: 村上さん。緊張なさっているということですが、映画が続いているんですけれども、かなりの大抜擢だと思うんですけれども、今の心境を。

■村上: さっき言った感じですけど、嬉しいです。

◆質問: 役作りの方はいかがですか、今のところ。

■村上: とにかく、現場に入ってからですね。

◆質問: 戸惑いの方が大きいですか?

■村上: 戸惑いはないですけれど、こうあがってしまうほうなんで。

◆質問: 先輩たちとはどのようなコミュニケーションを取っていかれようと思ってますか。

■村上: 仲良くというのもおかしな話ですよね。本当に迷惑をかけないように。

◆質問: 豊川さんお願いします。やはり、この役は大阪弁ということになるんですか。

■豊川: そうですね。

◆質問: 『仁義なき戦い』と言えば広島弁が皆さんには浸透していますけれども。

■豊川: でも、今回は大阪が舞台になっている話なんですよね。

◆質問: 大阪弁のほうは?

■豊川: 僕、関西出身なんで、思い出しながら。

◆質問: 豊川さんは、イメージ的には優しい話し方なんですけれども、なんか、『仁義なき戦い』と言えば、ドスが効いていて恐いというイメージがあるんですけれども、その辺は、今までのラブ・ストーリーと違って変わりますか?

■豊川: う〜ん。優しいヤクザをやりたいと思います。

◆質問: 京都撮影所ということですから、随分長い間、滞在されることになりますか?

■豊川: そうですね。僕は、だいたい3週間弱くらいになるんではないでしょうか。

◆質問: 布袋さんは、布袋さんもとっても優しいイメージがあるんですけれども、ドスの効いた感じで?

■布袋: 役柄云々かんぬんよりも、男は何かに集中しているときって、ガッと入りますよね。僕も、幼少の時分はふわ〜とした男でしたけれども、ギターをやり始めて、ミュージシャンとして20年近く、どんどんどんどん一本通ってくるようになって来ますし、そのミュージシャンとしてのプライドがどこまで映像の中で通じるかどうか。監督から優しく可愛がっていただくしかないと思うんですけれども、無理やりドスを効かせたりというよりも、集中するときの男のスルドさみたいなものをね、そこにフォーカスを当てたいなぁと思っていますけれども。

◆質問: 音楽のことは頭の中で沸き上がってくるものなんでしょうか。

■布袋: 毎日毎日、寝ていても音楽のことしか考えられない人間ですから、こうやってこの現場にいながらも、いろんな音やメロディが聞こえてきたり、そういったものを、ある瞬間にひとつの形にしていくことが僕の性というか。自分の中でも楽しみにしています。自分の中から何が出てくるか楽しみにしています。

◆質問: かなり激しいものですか。

■布袋; どうなんでしょうかね。冷た〜い熱みたいなものもあるでしょうし、本当に、火傷しそうな熱もあるだろうし、その熱の温度感というものが、僕のひとつのテーマでしょうけれども、まだ自分では固まっていません。



◆質問: 岸部さんは?

■岸部: 僕ですか。

◆質問: はい。やはり、優しい感じが。

■岸部: ええ、優しいです。

◆質問: でも、いざとなったら。

■岸部: いざとならないように……。まあ、優しくてもいいと思っているんでね。

◆質問: こういう役はどうでしょうか。

■岸部: あまり意識しないですけれどもね。僕がその組織に入っていても、こんな感じではないだろうかと思いますし。

◆質問: 哀川さんお願いします。先ほど、「遠い記憶の」って言ってらっしゃいましたけれども。

■哀川: 自分たちの時代というのは、『その後の仁義なき戦い』を映画館で観たという記憶があるんです。その前は、多分、観てないんですよ。ですから、小学生の頃からヤクザ映画を観ていたわけではないですから。ヤクザ映画というよりは暴力映画の方が作られていた感じですよね。ですから、ヤクザ映画ということでは、自分はギリギリ観たという感じですかね。

◆質問: 阪本監督に質問したいんですけれども、27年ぶりに『仁義なき戦い』といっても、まったく違った阪本監督ならではの映画になると思うのですが、クランク・インを前に、今だからこそ撮るという、前作までとは違ったキーポイントはあるのかということと、東映京都で撮るということに関して、思い入れとかがあるかということ。それから、深作監督がなんかおっしゃっていたかをお聞きしたいです。

■阪本: もう、去年の秋頃オファーをいただいて、今日まで、前作との距離のとりかたというのは非常に難しくて、結局、あの『仁義なき戦い』の技術も含めて、スタイルというのは、「仁義」のスタイルというよりは深作さんのスタイルなんで、僕は僕のスタイルでヤクザ映画を撮るしかないなという。似て非なるものというより、全く非なるものを目指そうかなと思います。それから、東映京都撮影所には、僕は昔16年ぐらい前に助監督で行ったことがありまして、ずっとインディーズで、自分たちの事務所で下請けとして映画を撮ってきた人間として、10本目に撮影所の中で映画を撮れるというのは幸せだし、興味もわくし、ほとんどの人が知らないスタッフなんですが、まあ、順調にうまくコミュニケーションをとってやっています。僕は、セットを立てたことがないんで、映画で壁を外すということが出来て、本当に嬉しいなぁと思います。それと、深作さんには、オファーをいただいてすぐに挨拶に行きまして、「がんばれ」ということで、後は出来上がったものを観ていただくしかないなぁと思っていますけれども。もう、前の「仁義」に勝てるのは役者の平均身長ぐらいなんで、それ以外は、自分の新たなスタイルを作っていくしかないんで、27年空いたけれども、その中の、時間は空いたけれども、1本に添えていただけるように頑張りたいなぁと思います。

◆質問: 今の質問の続きのようになるかもしれないんですが、『仁義なき戦い』という映画が成立するような1970年代の気分みたいなものがあったと思うんですね。それが、現代の2000年代の気分は当然違ってくると思うんですけれども、監督は、それをどう考えていらっしゃるかというのがひとつと、今の時代のヤクザ映画、または、暴力を描く時に、どう、単なる暴力映画と一線を画すかということを、監督のお考えがあればお願いします。


■阪本: 公開は1973年ですかね。撮った年は1972年になるんですかね。浅間山荘もあれば、いろんなことがあった年ですから。今の時代背景を借りて、もの凄い差があるし、難しいと思うんですけれども、自分では、前に出てきた、広島の原爆ドームに変わるものは探そうと思っているし、いわば、その1972年、1973年頃の子供の時からの話にしようと思ったのは、逆に、僕自身の原爆ドームに変わるもののヒントがあったからなんで、また、それは観てもらえばわかると思うんですけれども。それと、暴力って、皆の中に衝動としてあるものだと思うし、それが非常にあからさまに出ているのがヤクザという組織だと思うし。いわば、会社の組織でも、政治の組織でも、警察の組織でも、そうは変わりはないと思うんで、小渕さんが倒れてから、森内閣が出来るまでの密室劇も、映画を借りてやりたいと思うし、ヤクザの世界の解決の仕方が直接的な暴力であるというだけで、組織論を抱えているわけではないですけれども、似たようになると思うんですよね。密室であるとか。だから、密室劇みたいなものをカット・バックしながら作れればと思っております。

◆質問: 岸部さんに質問なんですが。『仁義なき戦い』と言えば、どうしても山守組の組長を思い出してしまうんですが、今回、岸部さんが演じられる役柄のストーリーを見ますと、煮え切らない性格のキャラであるということから、ひょっとして、その辺の役割を岸部さんが担うことになるのかなぁと期待しているんですけれども、その辺にかけるキャラ作りの意気込みがあればお聞かせください。

■岸部: そうですね。今、いいヒントを頂きました。映画をやる時、自分のやる役割というのを考えるんですよね。その役割というものを、自分の中で、こういう役というのは僕、初めてなんですよ。だから、今までやったことがない役なんで、その新しい中に自分が入っていくということと、作品の中に自分が入っていくということと、やっぱり、さっき監督が言っていたように、暴力という世界を、監督がいうところを理解するというか、楽しみなんですね。で、役作りということに関して言うと、僕今、全くの白紙なんですよ。1日1日過ぎていくということが何か、そこから生まれてくると思っているんで、まあ、こういうことがあって、現場に入っていって、いろんな人たちと出会ってということから、自分は何か見つけられるかなぁと、そんなふうに思っていますけれども。

◆質問: 布袋さんにお伺いしたいのですが、4点ほどあるんですが。まず、『仁義なき戦い』の映画を映画館で見たことがあるのかということ、まあ、ビデオでもその全シリーズの印象と。2点目は、ドラマのオファーもあると思うのですが、映画に拘ってらっしゃるのはなぜかということと。あと、今回の映画が新しいシリーズになった場合、2作目、3作目にお出になりたいという意志があるのかということ。あと、最後ですが、製作発表のようなものにあまり布袋さんはお出にならないと思うのですが、今日、どのように感じてらっしゃるのかお教えください。

■布袋: スクリーンで見た記憶は微かにあるんですけれども、定かではありません。ビデオになってから見ました。今回のお話をいただいてから、すべてをさらおうという気持ちにもならなくて。なぜかというと、名優たちの名演、その時代のエネルギーみたいなものに、あまり圧倒されてしまうのはどうかなぁと思うので、意識的にすべてを見ないようにしようというところがあります。それと、ふたつ目の映画に拘るという風に伝わっているのは、嬉しいような……。別に拘っているわけでもないですし、そんなにドラマからオファーも来ませんし、来れば全部やりたいという気持ちでもないし、やはり、ものを作るのがとても好きですから、そして、素晴らしい監督をはじめ、共演者の方々も、何か一緒にやりたいなぁと前々から思ってましたから、こうやって一緒にものを作れるみたいなものを、そこに一番惹かれてお引き受けいたしました。みっつ目は、今、集中してますから、想像も出来ませんね。その時、なってみないとわからないです。4つ目は、確かに、横浜アリーナでコンサートする方が全然緊張しないですし、ギターを持って一曲歌えと言われたらします。今日は、やけに早く起きてしまいました。自分にとって、新しいエクスペディションですし、非常にワクワク、ドキドキしてますから、このビート感みたいなもの、それをそのままぶつけられたらと思っております。

◆質問: 布袋さんにお願いしたいのですが、役に入る時に、参考にしたい人物がいらっしゃいますか。

■布袋: これは、非常におこがましく捉えられたら残念なんですけれども、自分で居たいなぁと思いますよね。自分のこと好きですから。

◆質問: 同じ作るということで、音楽と演技の一番違うところはどこでしょうか。

■布袋: 音楽は、僕の中で血のように流れてますから、本当にここを切ったら音が出てくるというような人間ですから。キャリアという一言で言うと、皆さんに失礼と思いますけれども、やっぱり圧倒的に違うのは、僕の中から沸き上がってくるものとは言い切れない部分があるでしょうし、だからこそ、自分にないものだからこそ、興味があるのではと思います。

◆質問: あとは、前作もそうだったんですけれども、お芝居が自分の音楽に何か影響するものがありますか。

■布袋: 非常にありますね。

◆質問: どんなものですか。

■布袋: その内容だったりとか、映画そのものではなくて、やはり、俳優さんとお会いする機会はなかなかないですし、自分以外を演じる機会もないですし、その中で、改めて自分のことを見つめたりすることもできますし、結局、音楽をやっている時というのは、かっこいい言い方ですけれども、まあ、自分とはなんぼのもんじゃいということが知りたくて、自分を知りたくて、勝ち負けのない世界ですかれども、ずっと頑張っている部分があるので、いろんな方の、自分とは違う世界の方々を見るとやはり感動しますし、そこから新しいメロディやビートが生まれてきます。

◆質問: 阪本監督にお伺いしたいのですが、今、そこにいる5人のどこに魅力を感じ、何を期待してキャスティングしたのかをお伺いしたいのですが。

■阪本: まあ、皆さんが出ているものを見たり。豊川さんは、もう4本連続なんで、実際に触って感じたりということです。村上君は、何度か出会いそうになりつつ出会わなくて、『ナビィの恋』も良かったし、布袋さんは映画に出ない人だと思っていたんですけれども、『サムライ・フィクション』を見て、スクリーンの中の佇まいとか、そういうのが強烈なのがあって、前から気にかえていたんですけれど、気にかけていたわりには、初めて会った時に、布袋寅泰(トラヤス)さんと言ったり、名前間違っていたり。今回のヤクザの映画の中で、彼はヤクザの役じゃないんですよ。ヤクザの外に居て、ある程度社会も知っているという。岸部さんは、わりと『ビリケン』とか、コメディ・タッチのものをやってきたんで、その岸部さんの恐いところを、本当は恐い人じゃないんですけれども、なんか、全く異質なものを見たいと思って。で、哀川さんは、ヤクザじゃないものでふたつぐらい感じるものがあって、今回、哀川さんはヤクザの役じゃないんです。だから、今までヤクザをやってこなかった人にヤクザの役をやって、ヤクザの役をやってこられた方に異質の役を。だから、哀川さんも、髪の毛は黒くなります。サングラスはかけません。あと、まあ、佐藤浩市さんとか、僕の撮ったヤツの大和武士とか、そういう芸能界の旬の方を集めて、集団劇ですからね、一種の。お客さんにドドーと押し寄せようかなと思っております。

(質疑応答は映画関係のもののみ採録。細部の言い回しなどには若干の修正あり)