『ファンタジア/2000』/ワールド・プレミア・ツアーinジャパン 記者会見
1999年12月27日(月)渋谷Bunkamuraオーチャードホールにて

●出席者
ロイ・エドワード・ディズニー(製作総指揮)、ジェームズ・レバイン(映画音楽/コンサート指揮者)、ドン・アーンスト(映画製作)
【挨拶】

■ドン・アーンスト: ありがとうございます。今回、日本にはじめて参りましたが、大変わくわくしております。是非、今夜ありますコンサート、そして演奏の方をお楽しみください。

■ロイ・エドワード・ディズニー: 私だけではなく、全員が楽しみにしているこのイベントなんですけれども、特に今回は、ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団、そして、その指揮をとられますジェームズ・レバイン氏をお迎えしてのこういったイベントを、私ども一同、大変嬉しく思っております。私自身は、実は、10日ほど前にこの旅に出始めたんですけれども、それから、ニューヨーク、ロンドン、パリと回りまして、この度日本に参りました。これが終わりますとアメリカのほうへ戻りまして、大晦日には、ロサンゼルスのほうで大きなコンサートを行います。その後、来年(2000年)の1月1日に、アイマックス・シアターでこの映画が上映されることになります。

■ジェームズ・レバイン: 私自身、日本には何度か来ております。メトロポリタンオペラハウスとも来ておりますし、フィルハーモニー管弦楽団とも来ております。それから、3大テノールとの共演ということでもやらせていただいております。そして、今後も、メトロポリタンオペラハウスやフィルハーモニー管弦楽団と共に来日したいと思っておりますが、実は今回、2日だけなんですけれども、今回の旅が1番楽しみにしていたものです。今回の『ファンタジア/2000』のほうは、先ほど、ロイ・ディズニー氏のほうからも言っていただきましたとおり、私自身も何年か携わっておりますし、本当にエキサイティングな嬉しい機会であります。1月1日の皮切りが大変楽しみです。ツアーに関しましては、今回、すでに何カ所かやりまして東京のほうに来ているわけですけれども、すでにこの何回かの間に、素晴しいものであることは立証されている次第であります。ありがとうございます。

【質疑応答】

◆質問: ロイ・エドワード・ディズニーさんに質問します。ウォルト・ディズニーさんは、この『ファンタジア』を、毎年、内容を新しくして公開するコンスタントな映画にしたいと考えられていたそうですが、この『ファンタジア/2000』は、このシリーズの新しい幕開けになるのでしょうか? また、3作目はお考えですか? あと1点なんですが、コンサートでの1番お気に入りのパートがあったらお教えください。


■(ロイ・エドワード・ディズニー): まず、2つ目の質問からお答えしたいと思います。私のどの部分が1番好きかということですけれども、それは、どの子供たちが好きかと聞かれているのと似ておりまして、どれも難しいので、そういうことでご勘弁を頂きたいと思います。さて、最初のほうの質問なんですけれども、叔父のウォルト・ディズニーなんですけれども、これを最初に構想しました時に、ずっと継続的にやっていこうという考えがありました。定期的に、古いものを抜いては新しいものを入れようという風に考えていたわけですけれども、いろいろな理由がありまして実現しなかったということもありますが、まあ、お金もかかって大変だったという理由も入っているんですけれども、私自身としては、こういったことをやっていきたいという構想をずっと頭の中で練っておりまして、実に、ディズニーにとってのアニメーションのルネッサンスが起きたのは10年ほど前の話なんですけれども、コンピューターによって、私どもアーティストが使えるツールというものがいろいろと出てきた。この10年前がルネッサンスだったわけです。そして、その時に再度、『ファンタジア』のことを考え直しまして、実験的に、音と映像、この融合というものをやっていこうではないかということを考え直したわけなんです。是非、次作もやっていきたいと思っているんですけれども、できれば、次作は10年もかからずに作り上げたいと思っておりますが、いつ、どれくらいで出来るかということに関しては、ここではお約束できませんが、是非、楽しみにしていただきたいと思います。



■(ドン・アーンスト):こちらの記者会見場に向かっている途中で、指揮者のレバイン氏とこういう話をしていたんですけれども、是非、次回作もやっていきたいとレバイン氏も言って下さってますので、大変楽しみにしている次第です。

◆質問: 次回作があるとしたらなんですが、1作目の『ファンタジア』の時に、まず、ウォルトさんが、ラージ・フォーマットのフィルムを使いたいということと、「トッカータとフーガ」の立体映像にしたいということと、それから、「くるみ割り人形」で会場に花の香りを流すということを考えていたと思うんですが、今回、ラージ・フォーマットのフィルムは、アイマックスということで実現していますが、立体映像と花の香りは今後お考えでしょうか?

■(ロイ・エドワード・ディズニー): 『ファンタジア』に関しましては、私どもは、当初から映画のみに留まるものではないと考えておりました。ありとあらゆるメディアを使ってやるというのは何でも可能だと思います。将来的には、オーディエンスの参加型のイベントを作ろうではないかという構想もあります。これは1つの考えでありますけれども、映画の映像をオーディエンスによって少しずつ変えていけるような、そういうオーディエンス参加型のものを作ろうというような考えもあります。3Dに関しましては、実は、私はよく知らないんですけれども、まあ、カッコ悪い眼鏡を長時間かけていますと目も痛くなりますし、まあ、見栄えがしないということもあって、これはちょっと実現しそうもないと思っております。それからもう1つ、香りの話ですけれど、以前、私の友人で、会場に香りを流すという企画をやった方がいるんですけれども、これは、館にニオイが染み着いてしまいまして、しまいには悪臭となってということもありますので、これもちょっと難しいのではないかと思っております。

◆質問: 劇中にダリのデザイン画が出てくるんですけれども、サルバドール・ダリの研究家の人たちは、一般的にディズニーとのコラボレーションというのは、1946年の『ディスティーノ』という作品のことだと思っているんですけれども、これと『ファンタジア』というのは関連があったのでしょか?

■(ロイ・エドワード・ディズニー): 確かに、1945年、46年の短い期間ではありましたが、サルバドール・ダリ氏とウォルト・ディズニーの間には多少の協力関係がありました。ダリが実は持ち込んだ歌、曲があったんですけれども、これが「ディスティーノ」という、大変変わった曲でした。これを基に、ストーリーボードの解説まではいってみたものの、最終的には、ダリとウォルト・ディズニーが大きく違うということがわかりまして、結局、このプロジェクトはボツになりました。ただ、そこで作られたアートの部分は、大部分、私どもが所有しておりますので、いつかこれを使いまして、何か短編のようなものを作ろうというような構想はあります。ただ、いつになるかということはお約束できませんが、そういうことも考えていますということでご勘弁をいただきたいと思います。

◆質問: 今回、使われた曲は、ベートーベンの運命を除けば、大体19世紀後半から20世紀のものなんですけれども、その中でも、わりと親しみやすい曲がほとんどですので、たとえば、曲の選考基準ですとかをお聞きしたいと。ジェームズ・レバインさんがシカゴ交響楽団と一緒に、確か「ラプソディ・イン・ブルー」を録音されていたと思うのですが、そのことについてお伺いしたいのですが。

■(ジェームズ・レバイン): まず、「ラプソディ・イン・ブルー」のほうからお答えします。曲を選考するにあたりましては、複数のフレーズによって行うんですけれども、とりあえず、私どもの作業者はとても優秀な方がそろっておりますので、想像力豊かにやっていくということは、上手にできるんですけれども、やはり、実際に出来た映像、音を聞いてみなければわからないということもあるわけです。最終的に、その「ラプソディ・イン・ブルー」を製作したときも、これは実は、あらかじめスタジオで「ラプソディ・イン・ブルー」を録音してから映像をつけたものなんです。で、それ以外に関しましては、シカゴの楽団を指揮しまして、映像に合わせてしたものなんですけれども、後に、このフィルハーモニア・オーケストラでフィルムの中では使っていない曲、2曲をCD用に改めて録音して、全体を聞いた時に、統一した感じを持てるような、そういうCDに仕上げるという話もあります。

■(ロイ・エドワード・ディズニー): 選曲については、一般的な質問ではと思うのですが、実は、こういったアニメーションを作るということは、非常に多くの手を使わなければいけないことなんです。画面に1番最後に流れるクレジットのところをご覧いただきますと、実にこれに携わった方の名前が1400名あまり列挙されております。この多さからも、どれだけの手がかかっているかということがご理解いただけると思うのですが、こういった曲を選定するにあたって、あるいは、映像を決めていくにあたっても、これだけの人数、それ以上の人数からのインプット、考えが出てきたわけです。そうやってやっていくからこそ、達成感もあるわけです。

■(ジェームズ・レバイン): ベートーベンに関しましては、随分と早い時期から目つけていたのですが、オリジナルの『ファンタジア』で使用しておりましたバッハの「フーガ」、こういった音楽と似たようなイメージで持っていきたいなぁという考えがありました。そして、芸術的に抽象的なものであって、こういったイメージが共通するものということで、ベートーベンの5番を選択したわけですけれども、最初の4つの音は、世界中の誰もが知っているような曲ですので、そういうこともあって選んだ曲なんです。そして、人の心を非常に捉える強いものを持っている曲と、こういった理由でこの曲を選択しました。


■(ドン・アーンスト): こういった音楽を選択するにあたっての基準は2つありまして、とにかく、好きで楽しめると思えるもの。そして、この曲をもとに何かストーリーを展開していけるようなもの。映像を観ていただければわかると思うのですが、場合によっては、あまりハッキリとはわからないストーリーのものもありますし、逆に、ストーリーがきわめて明らかなものもあります。いずれにしましても、オーディエンスがそれを観て理解できるストーリー性があるものを選んだわけです。

◆質問: 今回の『ファンタジア』は、美しい映像と音楽が感動的だったのですが、それ以上に、とてもハートフルな優しさに心を動かされたんですけれども、最新テクノロジーを駆使しているなかでも、人間の暖かさですとか、そういったものは制作段階から常に心がけていたのでしょうか?

■(ドン・アーンスト): おっしゃる通りです。私どもは、制作段階から感情、エモーショナルな部分をとても大切にしてきました。そして、日々の作業の中でも、なんとか感情を、とやってきたわけです。音楽、映像がそれぞれ持つ情緒、感情という部分を最大限に出して、さらに、それを組み合わせた時に大きな感情となって表われる。そういったものを目指して我々はやって参りました。

●司会者: ありがとうございました。最後にロイ・エドワード・ディズニーさんから挨拶をいただいて会見を終えたいと思います。

■(ロイ・エドワード・ディズニー): 是非、映画を楽しんでくださいという1言に尽きるんですけれども、できましたら、映画と生のコンサートの両方を、かなり2つは違うものですので、ご覧いただければというふうに思います。映画をご覧になっていらっしゃらない方々には、是非とも映画の方だけでもご覧いただきたいんですけれども、またとない経験ができると保証いたします。それから、コンサートのほうもまた、映像だけでは味わえない、経験できないことがあります。生でオーケストラが演奏しているわけですから、そして、私の横におられるレバイン氏が指揮をとられて、演奏者の1人1人をまとめて指揮する姿を観れるわけですから、素晴しい経験になることは間違いないと思います。是非、映画、コンサートを楽しんでいただきたいと思います。



『ファンタジア/2000』は、現在、下記4会場にて公開中。

  東京アイマックス・シアター(東京・タカシマヤ タイムズスクエア内)
  サントリーアイマックスシアター(大阪・天保山)
  パラマウント ユニバーサル シネマ11(札幌・ファクトリーサッポロ1条館内)
  穂高アイマックスシアター(長野)