『シックス・デイ』アーノルド・シュワルツェネッガー来日記者会見
●10月27日(金)新宿パークハイアットにて
●出席者:アーノルド・シュワルツェネッガー、ロジャー・スポティスウッド(監督)、マイク・メダヴォイ(プロデューサー)
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【挨拶】

■マイク・メダヴォイ: 今日はおいでいただきましてありがとうございます。随分沢山の方においでいただきまして、大変嬉しく思っております。私は、数年前に東京に参りまして、今回、私の映画が映画祭のオープニングに選ばれ大変名誉に思っております。実は、審査員も務めたことがありますので、東京国際映画祭でいかに観客が来た方を歓待してくださるかも身をもって体験しておりますので、日本にまた来ることが出来まして大変嬉しく思っております。ありがとうございました。

■ロジャー・スポティスウッド: 日本に戻ってくることが出来て大変嬉しく思っております。国際映画祭に私どもの映画が招待されまして、大変光栄に思っております。実は私、5年前に日本に来させていただいたことがありまして、素晴らしい映画人の方がいらっしゃる日本に戻ってこられて大変嬉しく思っております。

■アーノルド・シュワルツェネッガー: 去年、日本に『エンド・オブ・デイズ』を引き下げて来まして、また戻って来られて大変嬉しく思っております。去年、私は「アイル・ビー・バック」とお約束をしましたが、その通り約束を守ってまた参りました。今回は、この『シックス・デイ』を引き下げて参りまして大変エキサイトしております。と言うのは、今回、プロデューサーのマイクと監督が一緒に来てくださいまして、お二人はこの素晴らしい映画を実現させて下さった方々ですので、一緒に連れてくることが出来て嬉しく思っております。この映画は、ロサンゼルスで何回かテスト試写をしたんですが、反応が凄くて、映画館の屋根が吹っ飛ぶくらいでした。今回は、日本のジャーナリストの方にお話しするために参ったわけです。それと同時に、私がいつもサポートしております「スペシャル・オリンピックス」の宣伝も兼ねて、来られたことを嬉しく思っております。それから、この映画に関するジャーナリストの方々の質問を待っております。ハングリーな顔をしたジャーナリストの方々が沢山いらっしゃいますけれども、私の妻もジャーナリストですので、別に恐いとは思いません。なんでもお聞きいただきたいと思います。ありがとうございました。

【質疑応答】

◆質問: あなたは、私たちが思っている方なんでしょうね。

■(アーノルド・シュワルツェネッガー): 私は私ですけれども、私のクローンもその辺にいますので、後でやってくるかもしれません。

◆質問: シュワルツェネッガーさんにお聞きします。映画は、近未来のSF作品という形の話になっていますが、クローン問題だったり、現代的なテーマが扱われているこの映画に出演されていかがでしたか。


■(アーノルド・シュワルツェネッガー): この映画を作った理由が正にそこにあるわけでありまして、現代的なリアルなテーマを扱っているという ― 。メダヴォイプロデューサーは、いつも仕事をしようとシナリオを送ってくださるんですけれども、このシナリオは、受けとって読んだ瞬間に、これはタイミングのいい、パーフェクトな企画だと思いました。アメリカ、または、世界中の雑誌でクローン問題が取り上げられていた。牛のクローンからクローンニングの技術があっという間に進歩しまして、実際に、人間のクローンに関しても討議されていましたし話題になっていました。人間のクローンが出来るのはいつかということも語られる時代になっていた。正にこのシナリオは、タイミング的にパーフェクトだったわけです。それで飛びついて、スピーディーに撮影を進めていきました。撮影を始めた頃には、25年から30年後にはこうなるかなと思っていたわけなんですが、映画の撮影中にもドンドン技術の方は進みまして、現在では「15年後には……」というほど、テクノロジーの変化は凄いわけです。それで、こういうテーマの中に、素晴らしいドラマを盛り込みまして、感情的にも同感できるような話を作っていった。自分が家へ帰ると別の自分が存在していた。そして、家庭から全てを奪い去ってしまうというドラマです。

■(マイク・メダヴォイ): 私は300本以上の映画を製作しておりますが、この映画ほど誇りに思う映画はない。製作したうちの7作品はアカデミー賞を受賞したような映画でしたが、今回は、アーノルドとロジャーによって、人間のハートにタッチする、感情を掻き立てる、そして、笑いあり感動ありユーモアもあり、そこにリアリティを出して、人間が人間を作るという倫理の問題も含ませてこういう映画を作ってくださった。この映画のように、カリフォルニアでは、ビジネスとしてペットのクローンを作ろうということまで考えられている時代に、こういう映画がタイミングよく作られた。このふたりに改めて感謝したいと思います。どうもありがとう。

◆質問: シュワルツェネッガーさんに質問します。今回の映画で特にご苦労された点はどんなところでしょうか。

■(アーノルド・シュワルツェネッガー): この映画は、いろいろな次元のものを組み合わせておりますので、どこかひとつ選べと言われても困るんですが、アクションという次元で語りますと、水槽の中の場面です。あそこのアクション場面が気に入っております。銃を持った男たちに追われて、まだブヨブヨのクローンたちの間をぬって水の中を逃げる。でも、水の中ですから、2分、3分経つと息が切れそうになる。そういう状況で、クローンたちがくわえている酸素供給パイプから酸素をもらうという、とても気持ち悪いんですが、あそこのアクションはドラマ的にも盛り上がるので好きな場面です。それと、アクションではありませんが、クローンのアダムが自分がクローンだと気付く場面がとても好きです。あの場面を見るたび背中がゾクゾクするんです。編集と音楽、ロジャーの演出が強いインパクトとなって、大変ドラマチックな場面になっていると思います。今はふたつですが、もっと語れば1時間30分語れます(会場笑い)。

●司会者:監督は、一番苦労なさったところはどこですか?


■(ロジャー・スポティスウッド): 私も、水槽の中のシーンは楽しく撮影させていただきました。私は入ることができませんで、彼だけを泳がせて私は大丈夫でした。あと私も、面白いシーンはと聞かれれば、アダムが自分はクローンだと気付く場面ですね。あそこは、脚本もよく書かれていたと思いますし、誰もが共感できるシーンだと思います。それと同時に、俳優たちの演技が素晴らしかったと思います。それと、ロバート・デュバルとシュワルツェネッガーさんのシーンが良かったと思っております。それで、あと、撮影で初めてロバート・デュバルさんとシュワルツェネッガーさんが一緒になった日なんですが、その日、シュワルツェネッガーさんから「今日は特別な日だ。なんで特別な日かわかるか?」というふうにスタッフに質問がありまして、みんな考えまして、「素晴らしいアクション俳優と、素晴らしいキャラクター俳優が一緒になった記念すべき日ですか?」と言ったなら、彼は、「決してそうではない」と言うんです。では何かと聞くと、「民主党員(スタッフはほぼすべて)の前で、共和党員の俳優(2人とも)が一緒になって演技をする記念すべき日だ」と(会場笑い)。

◆質問: 今回は短い滞在とのことですが、おみやげで買いたいもの、やりたいこと等教えてください。

■(アーノルド・シュワルツェネッガー): 今回滞在が短いのは、メキシコで新作を撮っているからなんです。この無精髭もそのためです。セクシー・ガイを気取っているわけではないんです。で、滞在は短いですが、家族へのおみやげは忘れません。子供には最新のゲーム。妻にも何か買って帰りたいと思っております。

◆質問: シュワルツェネッガーさんにお聞きしたいのですが、実際にご自身のクローンが目の前に現れたらどうしますか?

■(アーノルド・シュワルツェネッガー): ある日突然、予期せぬ時に現れたら凄いショックだと思います。でも、自分が決断してクローンを作る状況もあるわけです。それならば喜んでもうひとりの自分を作りたい。そして、もうひとりの自分にここにいてもらって、自分は東京の街でショッピングをする(会場笑)。

◆質問: ということは、映画で語られるように、ご自分の延命をクローンに託されたりするのでしょうか?

■(アーノルド・シュワルツェネッガー): そういうことではなく、私なら同時に生きる自分を作ります。その方が楽しいです。

◆質問: 「アイル・ビー・バック」という言葉で、日本で大人気の「シュワちゃん」ですが、日本の食べ物で、好きな食べ物と嫌いな食べ物を、是非ご自分の口から日本語で伺いたいのですが。

■(アーノルド・シュワルツェネッガー): 日本食は本当に好きなので、嫌いな物は申し上げられないのですが、やはり好きなのは「スシ」です。メキシコの撮影中、メキシコでも食べますし、もちろんロサンゼルスでも食べます。私の故郷のオーストリアでは、あまり「スシ」はないのですが、“スシ・バー”を探して食べるくらい好きです。

◆質問: お三方に質問ですが、クローン技術の倫理観についてどのようにお考えですか?

■(マイク・メダヴォイ): それは、やはり監督からお答えしたい。

■(ロジャー・スポティスウッド): 皆さんご存じのように、この映画で、主人公のアダムは、最初はクローン技術に対して非常に批判的ですね。自分の娘のペットでさえクローンにすることを反対するわけです。でも、映画の後半には、自分のクローンのアダムが、「私は研究室で作られたし、本当の人間であろうか? 魂があるのだろうか?」と問いますと、「もちろん君は魂がある人間だよ。善と悪の区別もつく。君は家族のために命を張っていたではないか」というわけです。私は、この映画は灰色というか、クローン技術を肯定していると考えております。もちろん、そこには賛否両論もあります。でも、この映画は、クローン技術はたぶんいい事だろうと語っていると思います。これからの50年間、このクローン問題はどんどん議題にあがってくると思います。そして、本当にいいものか悪いものか。人間の臓器ならばクローンしてもいいのであろうか。または、人間全体をクローンしてもいいのであろうかということが問題になってくると思います。可能性もありますが、この問題は、これからの人類が抱える大変難しい複雑な問題だと思います。

■(アーノルド・シュワルツェネッガー): この映画では、クローンといえども人間であるということがクリアに描かれていると思います。そして、もうひとつ言えば、こういう新しい技術が、悪い人の手に渡ったら非常に危険なことになるということも示唆していると思います。この映画のトニーたち一部のように、悪い意図を持って使われると危険なことになる。ですから、この映画のメッセージは、こういう技術はプラスに使えば本当に素晴らしい利益を人類にもたらすけれども、悪い人の手に渡れば大変なことになる、と。ですから、ルールとかガイドラインをしっかりもうけるべきだと私は思っております。そして、映画ではそういうことを言っていると思います。

◆質問: 映画の完成を見て、もうひとりのご自分と共演されるのを見てどう思われましたか。それから、エピソードをお聞かせください。


■(アーノルド・シュワルツェネッガー): こういう一人二役というのは、俳優側からは非常に複雑な難しいことでして、芝居の相手はいつも空気なんですね。グリーン・スクリーンの前で、空に向かってセリフを喋る。今度は、反対側のクローンの立場になって演技をする。服装や髪から、演技までもが少し違うわけです。クローンは初めて社会に出てきたわけですから、周囲との調和が出来ていない。迷っている部分を演技で出すわけですよね。これは、俳優としては非常に難しい。そこを、監督がうまくガイドしてくださって、自分も演じ分けなどで迷ってしまうところを、よく誘導してくださいました。

■(ロジャー・スポティスウッド): 誉めてくださって嬉しいけれど、あれは、彼が素晴らしい俳優なので、その素晴らしい演技で成り立ったんです。僕は、ふたりのアーノルドが殴り合うシーンを楽しく撮影させてもらいました。本当に殴り合うわけですから、強く殴るんですが、果たして彼は、本当に自分が目の前にいたらあれほど強く殴れるだろうかとか考えながら監督して、大変楽しく撮影をしました。

■(マイク・メダヴォイ): アーノルドの凄いところは、常に自分のベストを尽くすところです。周りの人間にもそれを要求する。完璧なものが得られるまで徹底的に、粗いものを完全にする。つまり彼は、スターのみならず、プロデューサーの看板もしょっているわけなので、それに恥じないような、満足のいくギリギリのベストまでいつも追求している。そこを、私はいつも尊敬しているのです。
(通訳者の表現をもとに採録。細部の言い回しなどには若干の修正あり)


ここで、「スペシャル・オリンピックス」のアスリートの方々が花束を持って会場に駆けつけた。アーノルド・シュワルツェネッガーは20年間、インターナショナル・コーチという肩書きで、世界中でさまざまな障害を背負った人々のスポーツ・トレーニング・プログラムをデザインし、大使としてピーアールしつつ活動してきたという。この後、フォト撮影が行われ、会見は終了した。

『シックス・デイ』は2000年12月16日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開。