コンペティション受賞者記者会見
 11月7日(日) 渋谷 Bunkamura B1Fの映画祭記者会見会場にて

●出席者
バフティヤル・フドイナザーロフ監督(最優秀芸術貢献賞『ルナ・パパ』)
モーリッツ・ブライプトロイ(最優秀芸術貢献賞『ルナ・パパ』)
リー・カンイ(東京グランプリ、東京ゴールド賞『ダークネス&ライト』)
パク・ジョンウォン監督(審査員特別賞『虹鱒』)
ベニート・サンブラノ監督(最優秀男優、女優賞『アローン 〜ひとり〜 』

進行:襟川クロ氏
【挨拶】

■バフティヤル・フドイナザーロフ監督(『ルナ・パパ』): 「こういうような賞を受賞するということは、作品がとても特別だったということ、そして注目されるということを意味すると思いますので、本当に嬉しく思います。いつも、自分では喋らず、映画が私の代わりに喋ってくれますので、このくらいにしておきます」

■モーリッツ・ブライプトロイ(『ルナ・パパ』): 「とにかく、この映画に出られたことがとっても自分にとって幸せで、幸運だったと思います。もっともっと世の中にこのような映画、『ルナ・パパ』のような映画が増えて欲しいと私は思います」

■リー・カンイ(『ダークネス&ライト』): 「本当にとても嬉しいです。思いがけなくいただいた賞でしたし、しかも大きな賞を2つもいただきました。実は、先ほど台北の方へ電話をいたしました。その時、監督の方から、これで借金が返せると言ってました」

■パク・ジョンウォン監督(『虹鱒』): 「私は日本が大好きです。それから、東京国際映画祭というのは、なんだか縁があると思います。私の前の作品の『永遠なる帝国』という作品も、東京国際映画祭の本選に上がって上映されました。それから2年前には、私の3作品が、東京、大阪ですとか、日本全国で上映されたこともあります。日本での韓国映画の市場というのはまだ小さいんですけれど、どんどん大きくなっていくと思います。それから、日本の映画も韓国でどんどん観られるようになればいいなと思います。個人的に、日本と韓国の合作、映画を通した交流を深めていきたいと思います。この賞をいただきまして、その一躍を担うことができたと思っております。『虹鱒』は、21世紀を前にして現代の関係、夫婦関係、友達関係を表現した映画です。20世紀の最後になりました。そこで私たちの明るい顔を映していきたいと思います。20世紀では反省をしなければならない人もいます。そこには私も含まれます。ありがとうございました」

■ベニート・サンブラノ監督(『アローン 〜ひとり〜 』): 「俳優たちの代表として賞を受け取ったことが私の幸せです。この『アローン』の映画で、一番大切だったのは俳優たちでした。この私の感情を俳優たちを通して発信したかったので、とても俳優たちは大切だった。そして、この東京国際映画祭において、映画の俳優たちスタッフたちが伝えたかった感情は、東京のみなさんに伝わったと手応えを感じております。こういった感想を持てたことが、とても大切だったのです。私の故郷、アンダルシアと日本とは大変離れた距離でありますが、心、ハートというのは、どこの土地に住む人も同じであるということを映画が証明したのであり、センチメンタルなもの、すべて感情的なものが、日本の観客の心を揺さぶることができるということもわかりました。そして、すべてがこの賞を取ったことによって証明されているのだと思います。この賞は日本での大切な思い出になると思います。ありがとうございました」



【質疑応答】

◆質問: 「パク・ジョンウォン監督への質問。韓国は経済的不況に陥って3年ぐらいになると思いますが、1つは、ここ3年ぐらいの韓国の映画業界についてのコメントをお願いします。2つめは、貴方の映画の資金集めはどうやってしたのでしょうか。そして、回収についてもお伺いしたい」

■解答(パク・ジョンウォン監督): 「最初の質問については、韓国の映画業界というのは、3年前から大企業が撤退するようになりまして、それからは、金融会社が投資するようになりました。最近の製作傾向は、ハリウッドのブラックバスター系の大きな大作を作ろうとする動きと、作家主義的な映画を作ろうとする人たちもいます。その割合は80:20ぐらいです。ハリッウッドのブラックバスター系の映画は、製作費が30億ウォン。ドルでは300万ドルぐらいです。2番目の質問にお答えします。『虹鱒』の製作費は3億ウォン。3,000万円ぐらいで、韓国の振興委員会から映画を担保に借りることができました。それから、製作前からビデオの半権を3,500万円くらいで売りました。それから残りの1,500万円くらいは、配給会社から支援してもらいました。昨日韓国で封切りなんですけれども、それほど興行面で成功してるとはいえません。それは作る前から予想しておりました。映画の企画の段階で、2つの種類の映画は分かれております。大体、国内の収入を計算してみますと、1,500万円ぐらいは損をするだろうと予測しております。そのリスクは配給会社が背負っております。でも、まだはじまったばかりで、結果が出たわけではありません」

◆質問: 「リー・カンイさんへの質問。この映画の中の俳優さんたちの演技が自然なんですけれども、何か特別、監督さんから雰囲気作りなどで指示されたことはあるんでしょうか。それから、脚本で何か、即興でその場で作っていくとか、リー・カンイさんが自分のアイディアを入れた部分などがありましたなら教えてください」

■解答(リー・カンイ): 「1つめの質問にお答えします。演技が自然と言っていただきありがとうごうざいます。撮影期間は2ケ月ほどあったんですが、その内の1ケ月は、出演者同士がコミュニーケートして、お互いが知り合うという時間をもうけました。特に今回は、盲人の方がいらしたり、私の弟役の方は知能的に障害を持っていたので、やはり、お互いに時間をかけて適応していくということが大切でした。で、また、演技をする時に、監督は、スタートということを知らせずに、実は撮影がはじまっていたということもありました。そういう意味では、自然に観ていただけたのではないかと思います。そもそも私たちの今回の脚本というのは、監督が、台湾には補助金の制度があり、国家に申請して補助金をもらうことができまして、この脚本でお金を得ました。でも、いざ撮影に入りますと、それぞれにあったセリフ、たとえば、私が水泳が好きだということが分かると、私が泳ぐ場面を足して下さったりとかありました。もう1つは、やはり、監督ともコミュニケートが1月に渡りましたので、減らすものは減らし足すものは足すという具合で、実際の脚本とは随分違うものになっていました」

◆質問: 「ベニート・サンブラノ監督への質問。この映画の俳優たちは、どのようにキャスティングしたのか教えてください」

■解答(ベニート・サンブラノ監督): 「最初にマリアさんを見つけた時には、全然、この登場人物の印象とは違っていたのです。それで、最初は他の女優を探そうとしました。ただし、彼女はとても知性的な女性だったので、彼女にシナリオを渡し、彼女に後で感想をくださいと言いました。すると、少しすると、彼女はとてもこのシナリオに興奮して私に話してきたのです。そこで、1度機会を与えてみるのもいいと思いまして、一緒に人物を想像していこうと思い、彼女と仕事を始めました。そこで、1週間の間、彼女を試験してみたのですけれども、それから他の俳優たちも加わってテストをやってみました。すると、彼女と出演者たちとの間に独特な雰囲気が生まれていったんです。その結果から、当初とは違ったんですが、この俳優を使おうと思い決定しました。

それから、隣人役のカルロス・アルバレスについては、また違う話をしなければなりません。この映画は、最初の企画段階から私の生まれ故郷であるスペインの南部で撮影しようと思ったんです。私たち南部の人間は、独特の訛を持って話します。スペイン映画で、この訛を使う役というのはあまり目立つものではなく、ちょっと愛敬がある役や、お馬鹿な役、または、執事のような役という具合にあまり重要性を持っていなかった。そのような理由から、アンダルシア出身の俳優たちが、まずしなければいけないのが、自分の訛をなおして、純粋なスペイン語を話す訓練をするわけです。しかし、この私の映画では、自分たちのナチュラルな方法で、アクセント、方言で演技をしてくださいといいました。そして、この俳優たちの中で唯一、アンダルシア出身ではない俳優が、カルロス・アルバレス=ノボアだったのです。私は、キャスティングの際、オーデションで知り会った彼をすぐに気に入りましてお願いしました。でも、すぐに彼に言われました。「ベニート、僕はアンダルシア人の役はできないよ。だってすぐにバレてしまうからね」と。そこで彼が提案したのが、アストリアスという別の地方の方言で話すことでした。その提案は、私を非常に驚かせたのですがやってみました。しかし、その方言を交えた演技というのが非常に素晴しく、それでいこうと決めたわけです。なので、私にとってこの映画にとって俳優たちが重要だったんです。彼らのおかげでこの映画が非常にリッチになりました」


◆質問: 「バフティヤル・フドイナザーロフ監督への質問。モーリッツ・ブラプトロイさんを選んだ理由は?」

■解答(バフティヤル・フドイナザーロフ監督(一部修正)): 「通常、私が映画にキャスティングする場合は、物語をより豊かにするためにも、俳優から入っていくのです。そして今回は、モーリッツ・ブラプトロイをよく知っていましたし、彼ならば素晴しい演技をしてくれるということもわかっていました。できるだけ、私の場合は、知っている人、気に入っている俳優さんたちと仕事をしたいと思っていますので、脚本を書いている段階で決まっているのです」

◆質問: 「モーリッツ・ブライプトロイさんとはお友達だったのですか?」

■解答(バフティヤル・フドイナザーロフ監督): 「俳優と友達になるのは、とても難しいのですが努力しています(笑)」

◆質問: 「モーリッツ・ブライプトロイさんは?」

■解答(モーリッツ・ブライプトロイ): 「本当に、今回は素晴しい体験をさせていただきました。撮影状況は過酷だったんです。タジキスタンで撮影したのですが、とても貧しい国で、本当に撮影は過酷だった。でも、今まで私が参加してきたいろいろな映画がありますが、この映画が1番得ることが多かったです」




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