『カオス』/“CHAOS”
2000年10月21日よりテアトル新宿ほかにて公開

2000年 第18回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭招待作品
1999年/日本/ビスタサイズ/カラー/35mm/1時間44分/制作:ツインズ・ジャパン/製作協力:ギャガ・コミュニケーションズ/製作:タキコーポレーション/配給:タキコーポレーション、サンセントシネマワークス/宣伝:ミラクルヴォイス

◇エグゼクティブ・プロデューサー:甲斐真樹 ◇協力プロデューサー:小寺剛雄 ◇プロデューサー:神野智、原公男
◇監督:中田秀夫 ◇原作:歌野昌午「さらわれたい女」講談社刊 ◇脚本:斎藤久志 ◇音楽:川井憲次 ◇撮影:喜久村徳章 ◇照明:豊見山明長 ◇録音:郡弘道 ◇美術:丸尾知行 ◇編集:菊池純一 ◇スクリプター:川野恵美 ◇助監督:李相国 ◇制作担当:山下秀治 ◇メイク:宮内三千代 ◇スタイリスト:堀越絹衣、宮本まき江 ◇衣裳:杉山敦子 ◇スチール:渡辺俊夫 ◇宣伝美術:大寿美トモエ

◇キャスト:萩原聖人、中谷美紀、光石研、國村準、菜木のり子、夏生ゆうな、山村美智子、新恵みどり、MIKI、田中哲司、浜田学、諏訪太郎



| 解説 | ストーリー | キャスト&スタッフ |
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【解説】

『リング』『リング2』で日本映画界に一大ホラーブームを巻き起こした中田秀夫監督+中谷美紀。この最強コンビに、『CURE』の萩原聖人を迎えて作り上げた話題の新作『カオス』。本作で新境地を拓く“デッドエンド・サイコ・サスペンス”の誕生である。

「私を誘拐して下さい」……。 謎めいた美貌の人妻が、冴えない便利屋に奇妙な依頼を持ち込んだ。それは夫の愛を確かめる単純な狂言誘拐。しかし、便利屋と人妻の間に生まれた“誘拐劇のリアリティ”が、二人の関係を妖しくねじれさせていく。
運命に導かれるように出会ってしまった男女。行き止まりの愛憎の裏には、秘められた想いが隠されていた。はたして騙されているのは誰?
現実と回想の時空が交錯し、幾重にも仕掛けられた叙述の罠が、観る者を迷宮へと誘い込む…。*





日本国内にとどまらず、アジアを中心に世界規模で影響を与え続ける中田ホラー。『女優霊』、『リング』シリーズなどで目に見えぬ心霊的な恐怖を描いてきた中田秀夫が、今回は日常の中で人間心理の深淵を剔りだした。「原作小説はハードボイルド的作品だが、映画では男女の愛憎のもつれ合いをしっかりと描きたい。そう考えた時、浮かんだイメージはヒッチコックの『めまい』でした」と語る監督は、犯罪映画の形を借りながら、いつしか混沌とした日常での行き場のない不安に観客を陥れていく。
主人公の便利屋を演じるのは、『CURE』で戦慄のサイコキラーを演じた萩原聖人。2年ぶりの主演作品となる本作では、自分を陥れた女を愛してしまう複雑な役どころを微妙なタッチで演じ、抜群の演技力を遺憾なく発揮している。
男を罠に陥れる人妻を不思議な存在感で演じる中谷美紀。『リング』ブームも覚めやらぬまま、テレビと映画を巻き込んだ『ケイゾク』、さらには99年度ベストセラー・ミステリーのドラマ化「永遠の仔」と主演をつとめている。映画とテレビの枠を超えてつねに話題を独占している彼女。そのミステリアスな魅力は本作でさらに深く、美しい危険な香りに満ちている。
脇を固めるのは『Helpless』の光石研、『萌の朱雀』の國村準など日本映画界を支える実力派俳優ばかり。音楽は『攻殻機動隊』『リング』の川井憲次が担当し、さらなるサスペンス性を盛り上げている。




 


【ストーリー】

幻のような午後、とある高級レストラン、実業家の小宮山とその妻佐織理が二人で食事をしていた。平和で優雅な夫婦の時間に見えたが、小宮山がほんの少し目を離した隙に、佐織理は夫に何も告げぬまま姿を消した。
不審に思いながらも仕事に戻った小宮山の元に、一本の電話がかかってくる。

「あんたの女房を預かっている」
誘拐犯からの脅迫電話だった。受話器の向こうで恐怖に震える佐織理の声。犯人は3千万円の身代金を要求する。小宮山は妻の身を案じつつ、警察の指示を仰ぐことにした…。
しかし、実はこの誘拐は狂言だった。すべては佐織理が、便利屋の黒田を使って仕組んだ芝居なのである。

「私を誘拐してください」……。
最初に佐織理からそう言われた時、黒田は何かの冗談だろうと思ったが、彼女は真剣だった。夫の自分への愛情を、狂言誘拐を仕掛けることで確かめたいのだと佐織理は懇願する。そして今日、彼女は夫の前から姿を消して黒田のところへやってきたのだ。思いつめた彼女の強引な依頼を、多額の報酬と引き替えに黒田は引き受けたのだった。

BR> 誘拐を装う間、佐織理は留守中の友人のマンションに身を隠すことにした。初めは気の弱そうな男に見えた黒田だが、犯罪のリスクを背負うことになると、その態度は豹変した。
「奥さん、もう金持ちの遊びじゃないんだよ」
相手を騙すにはリアリティが必要だと主張する黒田は、佐織理の手足をロープできつく縛った。身動きのとれない佐織理を押し倒し、彼女の唇を無理やり奪う黒田。涙を流し、喘ぎながら恐怖とも歓喜ともつかぬ表情を浮かべる佐織理。その声を黒田は小宮山への脅迫電話に聞かせたのだった。


小宮山は黒田に要求されたとおりに3千万円の身代金を用意し、受け渡し場所へ向かった。狂言誘拐の筋書きはここまでだ。小宮山の態度を確かめるのが目的だから、身代金を受け取る必要はない。ところが黒田は、小宮山と警察の裏をかき、小宮山の姉、冴子を同時に脅していた。これは佐織理も気づかなかった、黒田だけの企みである。冴子から500万円を奪った後、黒田は佐織理が潜んでいるマンションへと向かった。あとは佐織理が犯人から解放されたことにして、夫の元へ戻ればすべては終わる。
しかし、そこで黒田が目にしたのは……。
これは単なる狂言誘拐ではなかったのか?いったい、本当に起こった事件とは何だったのか?そもそも事件はいつ、どこからはじまっていたのか?もつれた事件の真相を黒田が解き明かしていく時、隠された佐織理の素顔が明らかになっていく……。



 


【キャスト&スタッフ】

■萩原聖人(黒田五郎)

1971年神奈川県生まれ。1990年「ハイスクール落書2」TBSでテレビ界にデビュー。 アイドル性よりも役者としての存在感と、素直な表現力で女性のみならず、幅広いファンを持つ俳優として、映画やドラマ、CFと活躍。日本アカデミー賞、ブルーリボン賞、日本プロフェッショナル大賞など、数々の新人賞、男優賞を受賞した。1997年、黒沢清監督の『CURE』で、カリスマ的サイコキラー役を熱演。目に見えぬ狂気と凶暴性を浮遊感たっぷりに演じ、若手の中から群を抜き、海外でも大絶賛される。この作品をきっかけに、さらなる実力と新たな魅力が開花した。本作は、『CURE』に続き、待望の2年ぶりの映画出演となる。主な映画出演作は『月はどっちに出ている』(1993)、『学校』(1993)、『教祖誕生』(1993)、『熱帯楽園倶楽部』(1994)、『マークスの山』(1995)、『7月7日、晴れ』(1996)、『ドリームスタジアム』(1997)など。テレビ出演作には「夏子の酒」(CX・1994)、「若者のすべて」(CX・1995)、「キャンパスノート」(TBS・1996)、「それが答えだ」(CX・1997)、「愛、ときどき嘘」(NTV・1998)、「恋の奇蹟」(ANB・1999)、「砂の上の恋人たち」(CX・1999)と数多く出演している。


■中谷美紀(津島さと美)

1976年東京都生まれ。1993年、「ひとつ屋根の下」(CX)にゲスト出演し、透明感溢れる美貌で注目を集める。翌年、日本石油のイメージキャラクターに大抜擢される。このCF出演をきっかけに一躍スターの座を獲得。その後も伊藤園、コーセーなど、数々のイメージキャラクターとして多くのCFに出演する。また、同時にテレビ界では欠かせぬ女優としてレギュラー出演し、活躍する。1999年、TBSの人気テレビドラマ「ケイゾク」の主人公、柴田純役で出演。コミカルで不思議な力を持つ、難しい役所を見事に演じ抜いた。この作品により、実力と人気を併せもった若手女優としての地位を不動のものとする。また、坂本龍一プロデュースでアーティストとしてのマルチな才能も発揮。今までにシングル8枚、アルバム5枚をリリースした。映画界へのデビューは1995年、武田真治と共演した『大失恋。』同年、利重剛監督の『BeRLiN』で初主演を獲得。テレビでは見られない新鮮な表情で、海外でも高く評価された。そして、中田秀夫監督とのコンビで日本映画界にホラー旋風を巻き起こした『リング』『らせん』(1998)、『りんぐ2』(1999)と立て続けに出演。映画界にも欠かせぬ存在となった。2000年には、『ケイゾク/映画』、「永遠の仔」(YTV)と主演作が続いている。


■光石研(小宮山隆幸)

1961年福岡県生まれ。『博多っ子純情』(1978)で主役デビュー後、様々な作品で名バイプレイヤーぶりを発揮。どんな役柄も自由に演じ、日本映画にはなくてはならぬ存在として活躍。近年では、テレンス・マリック監督の『シン・レッド・ライン』(1999)に日本兵役として大抜擢された。外国人俳優に負けぬ迫力ある演技は、監督のみならず、スタッフ、俳優たちを唸らせた。最新作には『五条霊戦記』(2000)、2000年第53回カンヌ映画祭コンペティション部門正式招待作品『EUREKA』(2000)が控えている。主な映画出演作は『Love Letter』(1995)、『スワロウテイル』(1996)、『ピーター・グリーナウェイの枕草子』(1996)、『Helpless』(1997)『のど自慢』(1999)、『独立少年合唱団』(2000)。テレビ出演作には「ギフト」(CX・1997)、「ケイゾク」(TBS・1999)など多数。


■國村準(浜口警部)

1955年生まれ。大阪出身。1981年、井筒和幸監督の『ガキ帝国』で映画デビュー。演技派俳優として、独特の存在感と親しみやすさで映画、テレビに幅広く活躍。主な映画出演作に、故松田優作と共演した『ブラック・レイン』(1989)、1997年カンヌ映画祭カメラドール賞を受賞した『萌の朱雀』、1998年モントリオール映画祭国際批評家連盟賞受賞作『愛を乞うひと』、『オーディション』(2000)、『真夜中まで』(2000)、『顔』(2000)、『独立少年合唱団』(2000)と公開が続く。そして10月東宝邦画系ロードショーのサイバーアクション超大作『五条霊戦記』(2000)にも出演。主なテレビ出演作に、NHK連続テレビ小説「ふたりっ子」(1996)、NHKドラマ新銀河「この指とまれ2」(1997)、「ナニワ金融道4」(CX・1999)「アフリカの夜」(CX・1999)がある。また、最近ではサントリーのBOSSシリーズの人気CFで、野球チーム監督として出演。コミカルなキャラクターで注目を集めた。


■中田秀夫(監督)

1961年岡山県生まれ。東京大学卒業後、日活撮影所に助監督として入社。小沼勝、澤井信一郎、神代辰巳らの助監督としてキャリアを積む。1992年にテレビ朝日「本当にあった怖い話」シリーズの「幽霊の棲む旅館」「死霊の滝」「呪われた人形」で監督デビューを果たす。同年末、文化庁芸術家在外研修員としてイギリスに渡り、赤狩りでハリウッドを追われた映画監督ジョセフ・ロージーに関するドキュメンタリーの制作準備に着手する。劇映画監督デビュー作『女優霊』(1996)は助監督時代に日常の空間であった撮影所を描いたホラー映画で、映画製作現場のリアルさと底知れぬ恐怖が融合された作品として高い評価を得る。同作品でみちのく国際ミステリー映画祭97年新人監督奨励賞を受賞。その後、関西テレビ「学校の怪談1」などの作品を発表。『リング』(1998)『リング2』(1999)と立て続けにヒット作を飛ばし、心臓鷲掴みの深層心理に訴えかける演出で、若手監督の中で最も新作が期待される一人となった。2000年春公開された『ガラスの脳』では、故手塚治虫氏の原作を映画化し、純愛ラブストーリーという新境地を拓いた。最新作は、ロマンポルノの名匠、小沼勝監督を描いたドキュメンタリー『サディスティック&マゾヒスティック』、人気漫画か山岸涼子原作のホラー『私の人形は良い人形』の公開が控えている。


■斎藤久志(脚本)

1959年東京都生まれ。高校時代から8mm映画を撮り始める。1985年、『うしろあたま』(8mm)がぴあフィルムフェスティバルに入選。石井聰亙、長崎俊一、長谷川和彦らの支持を得てスカラシップを獲得し、翌年『はいかぶり姫物語』(16mm)を制作する。ドラマの脚本やSMAP主演のビデオ「はこめての夏」などを手がけ、1998年劇場用映画『フレンチドレッシング』で監督デビュー。国内外の数々の映画祭で好評を博し、主演の唯野未歩子は第53回毎日映画コンクール新人賞を受賞。2000年、映画監督・塚本晋也を主演に迎えた劇映画第2作『サンデイドライブ』を発表。また、本年春には初の舞台作品「お迎え準備」で戯曲・演出も手がけている。


■川井憲次(音楽)

1957年東京都生まれ。東海大学工学部原子力工学科を中退後、ギタリスト、作曲家として音楽の世界へ進出。映画音楽のデビューは押井守監督『紅い眼鏡』(1987)。以降、『機動警察パトレイバー』(1989)や『攻殻機動隊』(1995)など、押井監督とのコラボレーションで一躍脚光を浴びる。中田監督とは、『リング』(1998)で初めて組んだ。以降中田監督作品を支える原動力となり、『リング2』(1999)『ガラスの脳』(2000)、そして本作と続けて参加。絶妙なタイミングと観る者を引き込む音の世界を築き上げた。その完璧な音の世界観に魅了される監督、観客は多い。近年手がけた映画音楽に『さくや妖怪伝』(2000)『アヴァロン』(公開未定)がある。


■歌野昌午(原作)

1961年千葉県生まれ。東京農工大学農学部環境保護学科を卒業。1988年、島田荘司氏の推薦を受け、「長い家の殺人」(講談社刊)で長編作家デビュー。を果たす。本格ミステリーベスト10に選ばれた「ヴードゥー・チャイルド」(角川書店刊)の他、「死体を買う男」(光文社刊)「正月十一日、鏡殺し」(講談社刊)「放浪探偵と七つの殺人」(講談社刊)など、モチーフと独自性を重視した謎解きミステリーを相次いで発表する。最新刊は「安達ヶ原の鬼密室」(講談社刊)。


■喜久村徳章(撮影)

沖縄県生まれ。1990年『十六才歳のマリンブルー』で劇場用映画のキャメラマンとしてデビュー。以降、『勝手にしやがれ』シリーズ(1995〜1996)、『CURE』(1997)、テレビシリーズ「学校の怪談」(1997)、「卓球温泉」(1998)、「発狂する唇」(2000)などの撮影を担当。最新作は、本作に引き続き中田監督の『私の人形は良い人形』。


■豊見山明長(照明))

1957年沖縄県生まれ。劇場用映画でのデビューは『あさってダンス』(1991)。以降、水谷俊之、高橋伴明といった監督と組みキャリアを積む。主な作品に『アンドロメディア』(1998)、『がんばっていきまっしょい』(1998)、『ISORA 多重人格少女』(2000)、『ガラスの脳』(2000)、『カリスマ』(2000)がある。最新作は赤川次郎原作の学園ミステリー『死者の学園祭』。


■郡弘道(録音)

1954年長崎県生まれ。映広音響にて録音技術を学んだのち、フリーに。『Wild Life』(1997)で技師として一本立ちする。主な作品に『CURE』(1997)、『冷たい血』(1998)、『がんばっていきまっしょい』(1998)、『シェイディー・グローブ』(1999)などがある。


■丸尾知行(美術)

1953年福島県生まれ。美術助手として『祭りの準備』(1975)や『太陽を盗んだ男』(1979)に参加。1988年『死霊の罠』の美術を担当し、以降『どついたるねん』(1989)、『獅子王たちの夏』(1991)、『エンジェル・ダスト』(1994)、『フラート』(1996)、『CURE』(1997)、『ニンゲン合格』(1998)、『鮫肌男と桃尻女』(1999)、『カリスマ』(1999)、『MONDAY』(2000)など話題作を次々と手がけている。


■菊池純一(編集)

1950年北海道生まれ。1969年日活株式会社に入社。1979年に独立し、翌年JKS編集室を設立。主な作品に『ガキ帝国』(1981)、『逆噴射家族』(1984)、『ファンシィ・ダンス』(1989)、『シコふんじゃった』(1991)、『Shall weダンス?』(1996)、『Wild Life』(1997)、『破線のマリス』(2000)がある。